作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞とのこと。おめでとう! 日本では3月15日から公開。
- 公式サイト:「::: ノーカントリー :::」
コーエン兄弟のアカデミー賞受賞は「ファーゴ」以来で、作品賞は初受賞。風変わりで面白い作品が多いのでお気に入りの監督である。見た順に簡単に紹介。
「バートン・フィンク」(1991年)
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バートン・フィンク(ユニバーサル・セレクション第4弾) 【初回生産限定】 [DVD]
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- 発売日: 2007/10/11
- メディア: DVD
初めて見たのがこれ。カンヌ映画祭のパルム・ドールを取ったというのと、ポスターの異様なデザインに惹かれた。ポスターのデザインはこれ↓。額に蚊が止まっている。
脚本家バートン・フィンクが仕事に詰まりホテルにカンヅメになるも、次第に妄想の世界へ落ち込んでいくという話。不条理感がデビッド・リンチにちょっと似ているかも。怪しいホテルの蒸し暑さの描写がよい。舞台は1941年ということで、意匠にもすきがない感じ。
ホテルのフロントで呼び出しベルをチーンと鳴らすところとか、細かく凝るなあという印象を持った。
「ブラッド・シンプル」(1984年)
DVDは、1999年に制作された再編集版「ブラッドシンプル/ザ・スリラー」(こっちは未見)。
コーエン兄弟のデビュー作で、現代アメリカの田舎を舞台にしたサスペンス。細かい描写が美学的で、最初からこういう作風だったのね、とわかる。冒頭、雨の車中でワイパーが動くたびにタイトルやクレジットが消される演出。撃たれて倒れた人の周囲に、ゆっくりと時間をかけて広がっていく血だまり。夜のハイウェイで、はるか遠くにヘッドライトが現れて生じるサスペンス。なかなかいいんですよこれが。
「ミラーズ・クロッシング」(1990年)
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ミラーズ・クロッシング (スペシャル・エディション) [DVD]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2007/08/25
- メディア: DVD
禁酒法時代のアメリカが舞台のギャング映画。挿入歌の歌詞の「fire」に合わせて車の爆発カットが入るようにしたり、相変わらず凝り性な作り。林の中へ入っていくときはいつも曇りがちで、上を向いて歩いていくときの枝の動きがとても印象的。
「ファーゴ」(1996年)
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- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2007/11/21
- メディア: DVD
最近のパッケージは題字が赤いし写真も差し替わっているけれど、公開当時のポスターはこっちのデザイン。
アカデミー賞の主演女優賞(フランシス・マクドーマンドの婦人警官)と脚本賞を受賞。これは脚本が本当にすばらしい。雪に包まれた田舎町で、金に困った男の偽装誘拐計画がどんどん変な方向へ転がっていく、シチュエーションコメディにしてブラックコメディ。この作品では、人が必死になるほど滑稽に見えていくさまが、手を変え品を変えて描かれる。ひどいことが次々に起きる映画なのに笑いが絶えない。特にスティーブ・ブシェーミ演じるチンピラの末路が悲惨で…ああもう思い出すだけで笑ってしまう。
「この映画は実話にもとづく」と最初にクレジットが出るけれど、それはどうも嘘らしい。でも実話と思いながら見ると味わいが増すし、このクレジットをわざわざ入れたコーエン兄弟のブラックユーモアも面白い。
「ビッグ・リボウスキ」(1998年)
- 出版社/メーカー: アスミック・エース
- 発売日: 2006/01/27
- メディア: DVD
(何種類かあるDVDはどれもアマゾンでは品切れらしい。いま一番安く中古を買えるのはASIN:B00005FXN7)
「ファーゴ」でアカデミー賞を取れたからなのか何なのか、妙にハッピーなテンションで肩の力が抜けている怪作コメディ。非常〜にバカっぽくていいです。楽しいです。「バートン・フィンク」の主人公役だったジョン・タトゥーロがへんな動きをする紫のボウラー役で出ていて、その変わりように俳優ってすごいなあと思ったり。あと、スティーブ・ブシェーミがやっぱり悲しくも笑っちゃう役どころで笑っちゃう。
下の動画は「The Big Lebowski - F_cking Short Version」。だいたいこういう映画です。一応ネタバレには配慮されています。
「バーバー」(2001年)
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- 出版社/メーカー: 角川映画
- 発売日: 2007/03/02
- メディア: DVD
「ビッグ・リボウスキ」とはうってかわって、いつものコーエン兄弟の雰囲気を取り戻したサスペンス。無口な床屋がふと抱いた野望によって、周囲の状況がどんどん変化していく。モノクロの画面はますます切れがよく、光と影による凝った絵作りを堪能できる。ガラスにひびが入るカットは特にすばらしい。舞台を1949年に設定したところも、意匠で凝りがいがあったことだろう。
ところどころ入る静かなユーモアが作品に深みを与える。主人公は、並んでいる人のまず頭を見る(床屋だから)とわかる演出など、端的でうまいなあと思う。あれは北野武の、止め絵で見せる作風に近いかも。
町山智浩が紹介する「ノーカントリー」
話を戻して「ノーカントリー」。id:TomoMachiさんの紹介記事が面白い。
とにかく、ターミネーターに匹敵する殺人マシーンで何でもかんでも殺しまくる殺人狂シュガーをヘンテコな髪型で演じるハヴィエル・バルデムが凄まじい。
撮影中は、レストランに行ってもウェイトレスが怖がって店の端っこの席に隔離されたというくらい不気味。
だから今回インタビューしたんだけど、部屋で二人っきりになるのが怖くて、配給会社の木村さんに一緒に来てもらったくらい。
でも、実際に会うと「そんなに怖がらないでよー。あれは演技だってばー」と笑う気さくな兄ちゃんでした。
コーエン兄弟の新作は血と暴力の国『ノーカントリー』 - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
業界の皆さんにご連絡
私は今年のアカデミー助演男優賞確実なハヴィエル・バルデム氏の単独インタビューをしています。
どこかの雑誌で彼のインタビューを執筆させてください。
今のところ、どの雑誌も興味を示しません。
「『ノーカントリー』ならコーエン兄弟のインタビューをお願いします」と言われるので、
「ハヴィエルはどうですか?」と聞くんですが、
「怖いからけっこうです」と逃げてしまいます。
でも、あいつはああ見えてすごくいい奴なんです。
私も部屋で二人きりになる時は怖かったですが、殺されずにすみましたよ。
明日のアカデミー賞予想します - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
それから、今回「ノーカントリー」とオスカー争いで一騎打ちになったという「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」も面白そう。こちらは主演男優賞、撮影賞を受賞。