先日の宇宙作家クラブの集まりで、サイエンスライターの鹿野司さんが「脳トレもゲーム脳と同じようなもの」というような話をしていて、詳しく話を聞かせてほしいと思っていた。
そして、鹿野さんのブログ「くねくね科学探検日記」に、そのあたりの話が掲載された。
最初に「ゲーム脳」理論のトンデモさを引き合いに出した上で、「もっとまともな装いの研究でも、実際にはへんてこりんなのだ。」と川島隆太教授の研究を採り上げている。
以下は引用ばっかりで申し訳ないけれど、とても面白い話。
前編で書いたような結果を見て、みなさんはどう感じるだろうか。
すばらしい、脳研究は社会にこんなに役に立つのだから、どんどん応用すべきだと思うだろうか。
うーん。実は僕は、そうは思わないんだよなあ。まあ、現状はまだそうひどくはないかもしれないけれど、これを安易に敷衍していくのは、イクナイと思うのだ。
くねくね科学探検日記 - 脳科学のダメな人・その1(中編)
学校で前頭前野をフルに使ってきた子どもたちが、お家でゲームやマンガで脳を癒すのは、良いんじゃないのとおっしゃる。
あー、良かったね、川島さんはサブカルの味方だよ。
しかしだ。実は川島さんは、携帯電話を使っているときの前頭前野も、働かないことも突き止めている。
で、脳が成熟した大人が携帯を使うのは良いでしょう、しかし、脳の発達途上にある子供や、脳が衰え始めた高齢者が使うのは、果たして良いことなのでしょうか?とも言っているのだ。
ポカーン( ゚д゚)
えーっと、これはどういう事なんでしょう。
前頭前野が働かない状態は、ある時は癒しだから良くて、あるときは危ないというのは、カナーリ恣意的なように思えるのですが。
くねくね科学探検日記 - 脳科学のダメな人・その1(中編)
さらに、「前頭前野が活性化すればボケは治るみたいなことが一人歩きしてしまうと、たとえば脳に遠赤外線を当てて血流を良くしたらボケが治るみたいな、妙な方向に話が進んでしまう可能性もある。でも、それはたぶん無駄なんだよね。」「キレやすい=前頭前野が未熟だから、脳トレで鍛えようという短絡的な発想は、体重を減らすためにカロリー制限と適切な運動という唯一の合理的な方法を取らず、怪しげなダイエット法に填るのと似た感じがある。」という話へ。
ぼくは脳トレをとくに否定するつもりもない。
でも、この考えかたが権威になって、教育やら何やらに色々制限を課そうとするなら、それには断固反対したいと思うんだなあ。
くねくね科学探検日記 - 脳科学のダメな人・その1(中編)
また、脳の血流の様子を見るために川島隆太教授も使っている、光トポグラフィやfNIRS(エフニルス)といった機器の限界にもふれている。
またエフニルスは2001年に登場したばかりの装置で、まだ何を測っているのか明確でないというポイントも見逃せない。この装置は、非常に簡単に取り扱えるので、トレッドミルで走っているときの脳の様子まで計測できる。
これはデカイ装置の中に入らないと計測できないfMRIなどでは絶対に不可能だ。今までにない計測がたくさんできるようになったことで、研究者たちもちょっと浮かれ気分かもって感じ。昔、脳波が発見された直後は、これで脳のこと何でも解っちゃうよーみたいな浮かれ騒ぎが研究者たちの中で起こったんだけど、それと似た雰囲気が無くはない。
くねくね科学探検日記 - 脳科学のダメな人・その1(後編)
以下は鹿野さんの私見。でもこれもすごく刺激的だ。
僕が15年以上前から唱えている、科学的根拠の全くない俺様理論ではこう解釈できる。
僕は前々から、意識というものは、多くの人が思っている以上に、普段は存在していないと考えている。意識とは、新しいことを覚えたり、難しいことを間違えないようにするときだけ起動して、その操作を無意識化するための自己シミュレーションなのだ。
そして、それが起動している感覚、そのクオリアが意識と感じているものの正体だ。
くねくね科学探検日記 - 脳科学のダメな人・その1(後編)
今回の3本の記事は「その1」とされている。「その2」も間をおかずに公開されるだろう。
参考:「理系白書」の今回のテーマは「科学と非科学」
折よく、毎日新聞の「理系白書」が今回、「科学と非科学」というテーマを扱っている。
昨日の朝刊(東京本社版)から、今年の理系白書がスタートしました。「科学と非科学」。1回目は、波動をうたったビジネスに焦点を当てています。
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/rikei/
これから3月まで、いろんな題材を通して、非科学(未科学、ニセ科学も)とどう向き合うかを考えていきます。
初日から多くの反響をいただきました。
- 波動を信じないなんてかわいそう
- 友人が凝っているのは「波動」ビジネスか?
- 目に見えない、科学で実証されていないからといって、ぜんぶ「ニセモノ」と否定するのは科学万能主義の弊害だ
などなど、いろんな意見があります。いずれ反響特集もできればと思っています。
理系白書ブログ: ニセ科学、マスコミの責任