映画「ロード・オブ・ウォー」を観た。副題は「史上最強の武器商人と呼ばれた男」。80年代から現代にわたって、「需要に対して供給を満たす」という単純な理屈で武器を扱ってきた商人(ニコラス・ケイジ)の話。
映画の最後に、「この映画は事実にもとづいている」と出る。武器商人の大口顧客がアメリカなどの国家であることは事実だし、武器売買でのエピソードの多くは実際の武器商人たちの体験によるそうだ。
こういう映画を撮る監督って何者? と思ったら、「ガタカ」の監督アンドリュー・ニコルだった。なるほどと納得したのは「ロード・オブ・ウォー」の冒頭のシークエンス。銃弾が工場で生産され、箱に入れられ、運ばれていき、自動小銃の中に込められ、発射され、少年の頭に接近するまでがワンカットで示される。「ガタカ」を撮った人らしい、美学的で説得力のある見せ方だ。
不時着した輸送機のくだりなど、おかしみを誘うところもあるけれど、まことに気の重くなる映画。でもとてもすぐれた作品だ。ノベライズもある↓。
ロード・オブ・ウォー―史上最強の武器商人と呼ばれた男 (竹書房文庫)
- 作者:アンドリュー ニコル
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2005/12
- メディア: 文庫
映画の後半は、冷戦後のアフリカに焦点が合う。国は国の体をなしておらず、部族間の武力衝突が絶えない。アフリカでの商売で扱われる銃の多くがAK47、1947年式カラシニコフ自動小銃である。ソ連で開発されたもので、ソ連の崩壊で管理が行き届かず国外へ流出したり、ライセンス先の旧ユーゴなどはAK47を勝手に生産し国外へ売ったりしている。「ロード・オブ・ウォー」の中でも、「真の大量破壊兵器は核兵器ではなく、AK47だ」と言及されている。それほど多くの人に使われ、人を殺してきた。
このあたりの話を知りたくなり、『カラシニコフ』(ISBN:4022579293)を読んでみた。
本の中で、カラシニコフは「小さな大量破壊兵器」と紹介されていた。AK47は故障しにくく手入れが簡単なので、過酷な環境での戦闘、十分な訓練ができない状況で好まれる。ベトナム戦争末期、アメリカ軍兵士は故障しがちな自軍のM16自動小銃を捨てて、敵軍から押収したAK47を使ったそうだ。
ソマリアは無政府状態にあり、首都モガディシオでの取材ではAKを持つ護衛が7人ついた。NGOは、教育と引き替えの銃の回収プログラムを行っているが、AK47は今まで1丁しか回収されていない。国家が機能していないため、銃を返還したあとの安全を誰も保証してくれない。ほかの銃は返しても、実用性が高いAK47を手放す人はいないという。
作家のフレデリック・フォーサイスから、「失敗した国家」という考え方が示される。アフリカでは、独立はしたものの政府が国家運営を行わない国が多い。国としてのまとまりを得られないのは、現在の国境が植民地時代に宗主国によって引かれたもので、現地の部族間の関係などを無視しているからだという。その結果、国民は国や政治に関心を持たない。それをいいことに、政府の幹部は利権を奪い合い、クーデターが頻発する。大統領府を落とせば、政府は簡単に転覆できる。
警官と兵士、教師の給料をちゃんと払っているかどうかで、「失敗した国家」を見分けられる。ソマリアは「きわめて失敗した国家」であると指摘される。アフリカには20カ国以上の「失敗した国家」があるという。チャドに住む女性は「植民地時代のほうが、強盗がない分ましだった」と嘆く。
一方、ソマリアの北西部には「ソマリランド共和国」として独立を宣言した地域がある。ここでは銃の回収が成功し、治安がよい。首都では両替商が安心して商売をしている。「銃で倒れない国」を目指して、歩み始めている。
というような内容の本。連載をまとめたもののせいか、ときどき同じ内容がくり返されるのが気になったけれど、カラシニコフを中心に、アフリカについての理解をある程度得られた。うーん、アフリカは大変だ。
本ではソマリアでの「ブラックホーク・ダウン」事件ももちろん言及されているけれど、これの映画はまだ見ていない。少し前に放送されたNHKスペシャル「アフリカ・ゼロ年」をちゃんと見ていないのも痛い。アフリカについて、もうちょっといろいろ調べてみよう。もちろん「ホテル・ルワンダ」も観に行きます。
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- 関連リンク:「ロード・オブ・ウォー」上映館
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