編集を担当した『プラネタリウムを作りました。』(ISBN:4767802512)の著者である大平さんが、玉川大学の先生に呼ばれて工学部の学生に話をするというので、本の即売のために同行させていただく。
大平さんの話の内容は、これまでのプラネタリウム作りの軌跡についてが中心。面白いと思ったのは、ここまでやってこれた理由の1つに、「適度に不満のある環境」を挙げていたことだった。極端な話、もしプラネタリウムがすでにある家に生まれていれば、プラネタリウムを自分で作ることはなかっただろう。投影機を作っても投影できるドームを持たないから、たためるドームや可搬式の投影機を作ることになり、その結果ほかに類を見ない移動式プラネタリウムとなった。天の川を星の集団として表現することになった一因も、投影機をコンパクトにしたいと考えてのことだ。また、投影機を作るためにいろいろと技術を学ぶ。その投影機ができ上がる頃には、新しく習得した技術を盛り込んで、もっといい投影機を作りたくなる。そのくり返しだという話だった。
学生は約200人、持ち込んだ本は10冊。売れたのは3冊で、うち2冊は先生が、1冊は学生さんが買ってくださった。講演ではなく授業の一環であるから、メガスターや大平さんに興味のある人が集まっているわけではない。であれば3冊でも上出来だ。
この場での収支は、単純に人件費や交通費を考えると赤字である。しかし本、特に書籍の販売は、1冊が10冊を呼ぶものだ。本を読んだ人が気に入れば、ほかの人に紹介してくれるだろう。紹介された人が興味を持って、本を買ってくれるかもしれない。それのくり返しで、こつこつと売り重ねていく。今回の話も、工学部の先生が本を読み、すごい人だと大平さんに連絡したことで実現した。そして今日、3冊が売れた。つまり先生の読んだ1冊が、今日の3冊の売り上げを呼んだともいえる。本を売るのは、この積み重ねなのだ。