小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(2018/11/8)

小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。

今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、10月23日~25日に実施したタッチダウンリハーサル、11月~12月に実施予定の合運用などについて説明を行う予定です。

また、大学コンソーシアムが開発して「はやぶさ2」に搭載しているMINERVA-II2について、東北大学より説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/11/8) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年11月8日(木)11:00~12:00

登壇者


(image credit:JAXA

※左から吉田氏、久保田氏、吉川氏

配付資料

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中継録画

リンク

本日の内容

(吉川氏から)

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

ターゲットマーカを着地させることができた。

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2.TD1-R3運用報告

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2.TD1-R3運用報告

TD1-R3の実際の進捗

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2.TD1-R3運用報告

TD1-R3低高度シーケンス

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2.TD1-R3運用報告

リュウグウ表面に静止したターゲットマーカ

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ちょっとずれたがほぼいい場所に下ろすことができた。

2.TD1-R3運用報告

降下中のターゲットマーカの画像(ONC-W1で撮影)

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2.TD1-R3運用報告

ターゲットマーカ周辺をONC-Tで撮影

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2.TD1-R3運用報告

ターゲットマーカ周辺をONC-W1で撮影

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2.TD1-R3運用報告

参考:L08-B周辺の様子(TD1-R1-Aで撮影)

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2.TD1-R3運用報告

星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン2

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2.TD1-R3運用報告

ターゲットマーカに搭載した名前シートの搭載過程

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2.TD1-R3運用報告

ターゲットマーカに搭載した名前シート

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2.TD1-R3運用報告

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2.TD1-R3運用報告

小型モニタカメラが撮影した画像

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Twitterでは1秒間隔としたが実際は5秒間隔だった。訂正させてほしい。

3.BOX-C運用

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3.BOX-C運用

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4.合運用

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4.合運用

合運用における軌道と軌道制御

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4.合運用

合運用の詳細

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5.DPSでのプレスコンファレンス

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5.DPSでのプレスコンファレンス

説明の概要(説明順)

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5.DPSでのプレスコンファレンス

DPSでのプレスコンファレンスの様子

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6.リュウグウ形状模型

(久保田氏から)

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6.リュウグウ形状模型

JAXA宇宙探査イノベーションハブによるリュウグウ簡易形状模型のデータ公開

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7.その他

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7.その他

参考:小惑星Bennu

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8.今後の予定

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参考資料

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小型モニタカメラ(CAM-H)

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BOXの定義

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ターゲットマーカ

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はやぶさ搭載小型ローバ・ランダ

(吉田氏から)


MINERVA-II2ローバ2の開発の経緯


MINERVA-II2

初代MINERVAに似ている。

複合型移動アクチュエータ


MICAMカメラ(東京理科大学


MINERVA-II2(ローバ2)の現在の状況


  1. はやぶさ2打ち上げ後、機上にて動作チェックを行い(2014年12月、2015年6月、2017年10月)、はやぶさ2とローバ2との間で通信が確立していることを確認している。
  2. しかしながら、ローバ2データ処理系の動作不安定によりローバ2の内部状態に関するテレメトリデータ(HKデータ含む)の取得には至っていない。これは、打ち上げ前の試験でも同様の事象が起きている。分離後の動作状態について検討を行ってきたが、復旧の可能性が厳しい状況である。
  3. ローバ2の分離運用(2019年7月頃を予定)を通して有意義な成果を得る運用計画について、JAXAの協力を得て、大学コンソーシアムにて検討を進めている。

現時点での結論はすべての性能を発揮させる可能性は低いと判断している。

ただし分離運用まで時間があるので、これまでの情報を精査して科学的に有意義な運用計画を検討中。

いま機能していないが切り離せばうまくいくかも、のような運まかせにはしない。なにができるのかを冷静に見極め、科学的な成果のためになにができるかを検討中。

質疑応答

読売新聞とみやま:2点。15.4メートルの誘導精度の評価について。「ほぼ狙った通り」とは。タッチダウンには十分なのか

吉川:重要なポイント。資料10ページの写真を参照。赤い丸の中にターゲットマーカが下りればよかったが外れた。

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ただしタッチダウンできる可能性は残している。これで十分かはボルダーの位置、大きさを検討して航法誘導精度の検討もして判断。今のところ結論は出ていない。
ターゲットマーカ1つだけでタッチダウンするか、別のターゲットマーカを下ろしてタッチダウンするかは決まっていない。

とみやま:南極の大きいボルダー「オトヒメ」について却下に近いと聞いたが

吉川:金星の地形に同じ「オトヒメ」がある。小惑星と金星で場所が違うし、同じ名前がついているケースもすでにある。議論中ということ。オトヒメがダメなら「オトヒメサマ」にするとか。これは長くなるが竜宮城には乙姫様がいてほしい。

産経新聞くさか:MINERVA-II2の現状について。このまま復旧しないとなにができてなにができないのか

吉田:現時点では詳細を検討中だが、例として山形大学ペイロードは電源なしで温度変化があれば機能する。これを実験できるかもしれないが動作したことをどう確認するかが問題。切り離して落ちていくところでなにか観測できないかなど。
貴重な実験機会を有効に使うチャンスはある。

くさか:データ処理系のトラブルというのは観測や動作がなにをしているのかわからないというようなこと?

吉田:その通り。特に移動のメカニズムや移動確認のセンサの情報を得られない。

ライターあらふね:合運用について。通信の頻度と内容は

吉川:合運用といってもずっと休みではなく、毎日運用が入っている。テレメトリを取れるうちはモニタリングする。23ページのようにイベント中にもマヌーバがある。合運用中でも太陽から比較的離れているタイミング。

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あらふね:MINERVA-II2について。カメラのデータも取れない?

吉田:カメラのデータを取得する可能性は低いと現時点では考えている。これまでに投下されたローバはすばらしい画像を送ってきた。我々もと思っているが。写真撮影以外で科学的な成果を上げたい。

NHKきぬた:ターゲットマーカが半径10メートルの円の外側に着地したけれどその範囲内に着地させる? また着地の予定時期に変更はないか

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吉川:危険なボルダーがない地域ということでL-08B内に着陸したいと思っている。5.4メートル離れたターゲットマーカを見ながらその範囲内に着陸できるか検討中。別の場所に平らなところがあるかも検討していきたいが、現在はL-08Bが目標地点。
着陸予定は一番早くても1月下旬(前回の説明の通り)。決定はしていない。

毎日新聞永山:LRFについて。資料7ページにある6自由度制御とは。それからフラッシュでターゲットマーカが光っていることを確認したのか。またBOX-Cで再度確認しに行った理由は

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吉川:探査機の位置と姿勢を制御する。位置の3次元と地形の3次元で6自由度制御と呼んでいる。LRFは4本のビームがあるので小惑星表面との距離だけでなく傾きもわかる。傾きによって探査機の姿勢を変えるのも今回やってみた。空間的な位置と姿勢を変えて6自由度の制御を行った。
ターゲットマーカを撮影した写真はいずれも太陽光の反射をとらえているが、フラッシュを使ったターゲットマーカの捕捉も行っている。いまデータの精査中。機会があればフラッシュランプでターゲットマーカが光っている写真も公開したい。追跡もちゃんとできています。
BOX-Cで再度下りていって撮影したのはターゲットマーカを確認できるかを調べたかったため。たとえばターゲットマーカがレゴリスに埋もれてフラッシュの反射光が弱くなったりしないか(実際にはレゴリスはほとんどありませんが)などを確認するため、本番のタッチダウン前にカメラでターゲットマーカをとらえられることを確認したかった。

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朝日新聞いしくら:リハーサルを2回追加した結果の評価は。順調なのか、まだ不安要素があるのか

吉川:基本的にはリハーサルとしてはわりとうまくいった。ちょっと残念だったのはターゲットマーカがL-08Bの赤い丸から5メートルほどずれたこと。しかし基本的にはタッチダウン予定地点の近くに下ろせた。かなりの進展。
しかし楽観視はできない。近くに大きなボルダーがいくつもある。ぶつからないよう探査機を下げなければならない。どれだけ正確に着地まで制御できるかが課題。合期間を使って検討を重ねていきたい。制御のチームが検討を進めている。

フリーランス大塚:FTJの問題は最終試験の時初めて出たそうだがその時特別な状況があったのか

吉田:開発中は各コンポーネントを机に並べてプログラムを書き込んだり動作確認したりしている。その段階では正常に動作していた。異臭的にそれを小さな空間に押し込めなければならない。組み上げてふたを閉じた段階で動作に不安定性がみられるようになった。アース線の取り回しや電気的な環境が変わったために動作が不安定になったというのが現状。

大塚:合運用中は通信はできないのか、通信できなくても安全ということか

吉川:資料23ページから24ページ。SEP角(太陽-地球-探査機がなす角)が6度から3度に減少する。探査機が太陽から3度以上離れていればこれまでの経験から通信できる。この間に姿勢制御マヌーバを行うのは問題ない。

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久保田:合運用は初号機のときもあった。安全を見てやっている。通信できないときも距離を離すことが可能。

共同通信すえ:MINERVA-II2と通信はできているが内部のデータを取得できないとのことだが、どういうデータを取れているのか

吉田:MINERVA-II2の通信系は正常に動作している。コマンドを送ると受け取ったという返信がある。そこから先、ある機器にコマンドを出す、その機器からステータス情報を取ってくるところが正常ではない。
通信が取れていることでできる実験がいくつかあるため切り離し運用でなんらかの科学的成果を得られることを目指して準備を進めている。

NHKすずき:ターゲットマーカが落ちた場所へ探査機を下ろしていったとき、カメラの視野からターゲットマーカが出る高度はどのくらいか。またターゲットマーカが見えなくなってからはどう誘導するのか

吉川:まさにその点が議論になっている。L-08Bを目指すには高度5メートルほどまで来ると現在地表にあるターゲットマーカが見えなくなる。見えなくても大丈夫かを詰めないとタッチダウンの判断ができない。その検討を進める。

(以上)

ブログの長年日記機能はウェブ日記生活を豊かにする

時間があいてしまいましたが下の記事の続きです。

  1. はてなダイアリーのインポート機能ではてなブログにしてほしいこと - ただいま村(http://ima.hatenablog.jp/entry/2018/08/31/235959
    • ダイアリーからはてなブログへのインポート時、「id:Imamura:20110818:rougan」などの日付入りid記法を「<a href="http://blog.hatena.ne.jp/Imamura/20110818/rougan">id:Imamura:20110818:rougan</a>」のように展開してほしい
    • ダイアリーで改行の設定を「段落モード」「改行モード」のどちらにしていても、ダイアリーからはてなブログへのインポート時にpタグやbrタグの入り方が変わってしまう。各モードを正確に再現してほしい
  2. はてなダイアリーの全文一括置換などを可能にする環境作り - ただいま村(http://ima.hatenablog.jp/entry/2018/09/07/120000
    • はてなブログライター」に「はてダラスプリッタ」相当の機能がほしい(運営への要望ではありません)
    • はてなブログライター」を使わずに登録したエントリを「はてなブログライター」で管理できるようにしたい(運営への要望ではありません)

はてなダイアリーが終了するので、はてなブログへ移行する。それにあたっては、はてなダイアリーでできていたことをはてなブログでもできるようにしたい。また、はてなブログへ移行する前にダイアリーの内容を全文一括置換しておきたい人がいそうだ。そう考えて上の2つの記事を書いた。

そしてこのシリーズの最後となる本稿では、はてなブログにも長年日記機能がほしいということについて書いていきたい。

長年日記とは、去年の今日、おととしの今日、3年前の今日…の日記をまとめて表示できる機能である。tDiaryなどで提供されていたもので、はてなダイアリーでは2007年に実装された。

twilogには、「1年前の今日のツイートを見る」というリンクがある。

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facebookも「過去の思い出をふり返ってみましょう」という長年日記の通知が来るようになっている。

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このような長年日記の機能があるとどうなるか。たとえば非公開のダイアリーに子供の写真を載せ続けていると、子供が成長していく写真を日替わりで楽しめる。こんな具合。画像はイメージです。

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自分のはてなダイアリーhttp://d.hatena.ne.jp/Imamura/)には、はてなダイアリーを始める前にWebに書いてきた日記的コンテンツも集めてある。1997年から20年ぶん以上である。そして毎日、今日の長年日記を読み返して楽しんでいる。そのためのブックマークレットも作った。

また、はてなダイアリーからリンクすると、リンク元の情報からそのダイアリーの長年日記へ移動できるページも作った。これを自分のダイアリーで紹介しようと思っていたら、はてなダイアリーの終了が発表されてしまったのは皮肉だ。

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自分のダイアリーには自分が面白いと思ったことを書いている。それを自分が読み返せば面白いのは当たり前である。1年おきにふり返るというペースもなかなかよくて、書いたことを忘れていたりするから新鮮な気分で読める。思考の棚卸しになったり、いま考えていることのヒントが見つかったりする。

自分のダイアリーで、ほかの人が読んでも面白いと思えそうな長年日記は…元日の長年日記はどうでしょう。初詣のおみくじを記録していると、「これは去年のと同じだ」なんてことがわかる。

Twitterでは「昔の今日の日記から」シリーズというのをたまにやっている。書いた当時はとくに注目されなかったお気に入りの記事をしつこく紹介していたら数年後にブクマが伸びたりした。

ほかに、こんなことを書いてきた。

ささいな「いま」を記録しよう - Imamuraの日記

だから、まさに今、目の前に見えているものを記録しよう。今はとるに足らない見慣れた風景に思えても、時を重ねるうちにかけがえのない、懐かしい思い出に変わっていくだろう。

ささいな「いま」を記録しよう - Imamuraの日記

この記事に載せた12年前の写真は実際に、今となっては懐かしい写真になった。ほかの人が見ても別に…となるだろうところがさらにいい。

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ライフログについて考える - Imamuraの日記

クローズアップ現代ライフログを扱っていたのを見て)自分の行動を写真や各種の履歴で記録する方法は、番組で紹介されていたEvernoteをはじめいろいろある。でも単に記録するだけではあまり意味がなくて、たまったログをあとからうまく見直せることが大事なのだと番組を見て改めて感じた。

(…)

ライフログの考え方には惹かれるものがある。こうやってWeb日記を公開することでも、一番多くのものを得るのはほかならぬ自分自身だからだ。昔の日記を読み返すと、自分が面白いと思ったことが書かれているから今読んでも面白い。当たり前かもしれないが、自分が以前なにを見て面白いと思ったのかは簡単に忘れてしまうから読み返すと新鮮な面白さがある。日記をつけ、それをふり返れるようにしておくのは自分のためになるのだった。

ライフログについて考える - Imamuraの日記

はてなダイアリーには、日々の暮らしを淡々と記録してきた蓄積がある。はてなブログへ強制的に移住しなければならないなら、過去をふり返るのに便利な長年日記の機能をぜひ実装してほしい。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(2018/10/23)

小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。
今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、10月14日~15日に実施したタッチダウンリハーサルと、10月24日~25日に実施予定のタッチダウンリハーサルについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/10/23) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年10月23日(火)16:00~17:00

登壇者

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(image credit:JAXA

※左から久保田氏、吉川氏

中継録画

リンク

本日の内容

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.TD1-R1-A運用報告

TD1-R1-Aの目的
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TD1-R1-Aの運用実績
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LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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時刻はUTC
航法誘導の精度の実績
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ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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太陽電池パドルの隙間やスタートラッカー(本体の右側にちょこんと出ている2つのツノ)もはっきり見えている。
ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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写真の右側に大きなボルダーがある。たぶん高さは7~8メートル。こういうものを避けて接近する必要がある。丸で囲んだL-08-Bには大きなボルダーがないことを確認。

3.TD1-R3運用計画

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TD1-R3のスケジュール
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TD1-R3 低高度シーケンス
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ターゲットマーカ
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最初に分離するターゲットマーカはBと決まっている。

4.DPSでのプレスカンファレンス

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5.今後の予定

(久保田氏から)

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12月6日には記者からの質問を受け付ける懇談会を予定。合運用(はやぶさ2が太陽に隠れて地球から見えない期間)に入っているのでメンバーも多めに出席できると思う。

質疑応答

読売新聞とみやま:ターゲットマーカを切り離す高度は

吉川:ほとんど20メートルでホバリング。そこから2~3メートル下で切り離す。

TD1-R3 低高度シーケンス
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久保田:探査機が少し速度を上げて下りていき、ターゲットマーカを切り離す。そこではやぶさ2が降下を止めるとターゲットマーカだけが地表へ下りていく。初代のはやぶさと同じ方式。

とみやま:今回は下りる目標高度は20メートル?

久保田:20メートルを目指していく。切り離しのとき少し下りるので、図は少し下げている。18メートルなのか17メートルなのかはそのときの状況による。20メートルより少し低いところへ行く。

とみやま:「条件が満たされれば、ターゲットマーカを切り離す」とあるが、必要な条件は

3.TD1-R3運用計画
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吉川:LRFによる制御ができるかどうか。前回は高度を測っただけ。今回はLRFの計測データを使って探査機を制御する。それがうまくいけばターゲットマーカを切り離す。

とみやま:TD1-R1-Aでの誘導精度の実績値が「小惑星地表に対して10.8メートル」とある。ここを詳しく

航法誘導の精度の実績
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吉川:最下点(22.3メートル)でどのくらいのずれができたかということ。

とみやま:TD1-R1-AではL-08Bへ行きたかった?

吉川:この近辺へ行ってみるということ。LRFの計測状況を確認。L-08Bも含めて周囲の状況を観測。

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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とみやま:誤差の数字の意味について。目標のポイントに対して実際に下りた場所は10.8メートルずれていた?

吉川:その通り。

ライターあらふね:LRFを誘導制御に使うと精度は上がるのか

吉川:今までLIDARのデータでナビゲーションしていたが、低高度のナビゲーションにLRFを使うということ。

あらふね:ナビゲーション精度があまり変わらないとしたらなぜLRFを使うのか

久保田:制御をかけると精度が上がると思うのではないか。9ページの「LIDARからLRFへの引き継ぎの実績」を参照。

LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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久保田:LIDARで高度50メートルまで来たとき精度は10メートルとお話していた。そこから下は速度誤差があると高度を下げたとき時間が経つにつれてずれていくなと思っていた。相対速度の誤差が小さいと伝搬(?)も小さくなるだろうということで、今回は10.8メートルということで位置だけでなく相対速度も比較的小さくできた。(今村註:ちょっとよくわからない)
LRFは4本のビームを地表に当てて高度を測る。表面地形の影響を受けるということ。制御をかけると精度は上がるだろうが地形の影響がどれだけ出てくるか。でこぼこしているときの影響の大きさを今回のリハーサルで確かめたい。
また小惑星は自転しているので地表は動いていく。10メートルの精度は、探査機の1.5倍くらいの精度で誘導できているということ。

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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であれば赤丸のL-08Bには時間をかければ誘導できるだろう。写真ではL08-Bは離れて見えるかもしれないが、かなりうまくいっている。
地形の影響を受けつつ制御できるかを次のリハーサルで確認する。ターゲットマーカを追跡できるとわかれば、タッチダウンの準備が整ったということになる。

あらふね:L-08Bは20メートルの円と前回聞いた。そこに誘導できそう?

久保田:なんとか入るところに行ったかなと思っている。L-08Bにある岩は1メートル以下なのでやはり候補の一つとして準備している。

あらふね:ピンポイントタッチダウンについてはどうか

久保田:ピンポイントタッチダウンの方式を使わなくても、通常の方法でかなり追い込めていると思っている。

時事通信かんだ:TD1-R3の低高度シーケンスに「小惑星自転速度に同期するために横方向スラスタ噴射」とある。これは前回のリハーサルでも行った?

TD1-R3 低高度シーケンス
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吉川:TD1-R3で初めて行う。

かんだ:12ページの写真での位置のずれは自転速度を考慮するともっと近づける?

ONC-W1が最下点付近で撮影した画像
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吉川:この写真は高度47メートルで撮影したもので最下点ではない。L-08Bにかなり近づいていると認識している。今回もL-08Bを狙って下りていく。

久保田:この写真は横方向の速度をキャンセルしていないときのもの。
TD1-R3では横方向の移動速度をキャンセルするので、高度ゼロになったときに赤丸の範囲に入る。また横方向の相対速度がゼロになってターゲットマーカを分離するとき赤丸の上空に行くよう決めていて、その位置誤差が10.8メートル。TD1-R3では探査機の影が赤丸の中に入っていることを祈りたい。

かんだ:L-08B周辺の地形を見ていて、着陸の安全性を現在どのくらいと見立てているか

久保田:資料9ページ。LRFの黄色い線は4本のレーザーの情報をもとに平均斜面の高度をプロットしている。緑色の線と黄色い線が少しずれているのは、測っているところが違うことからくる誤差の範囲。このくらいの誤差であればいけそうと思っている。

LIDARからLRFへの引き継ぎの実績
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久保田:地形の影響は受けているが、そこをなるべく減らして平均高度を出すことを考えている。どの程度うまくいくかはこのデータとTD1-R3の結果から判断したい。突発的な影響は受けないようにしたい。

朝日新聞いしくら:ターゲットマーカはL-08Bの中心に落とせるもの? はねたりはするのか

吉川:そこが一番気になっているところ。中心に下ろせればよいが高度20メートルで誤差10メートル。どこまでできるかというところ。

久保田:MASCOTなどは着地してバウンドしたが、ターゲットマーカはなるべく早く整地してほしい。反発係数が0.1以下。地形にもよるがバウンドは数回ではないか。誤差10メートルだと端の方に落として少しバウンドしたらL-08Bの範囲を少し外れる可能性もないではないが、バウンドそのものはあまりない。

いしくら:直径20メートルの範囲の中心に落とす?

久保田:上空に到達したとき誤差10メートルだと円の端に行くかも。相対速度をどこまで小さくできるかも検証していきたい。

いしくら:ピンポイントタッチダウンでは目標地点に対してどのくらいのずれにおさめれるのか

久保田:ターゲットマーカを直接狙うのか、一度上昇してターゲットマーカの位置からオフセットして着陸するのかにもよる。ターゲットマーカが視野に入る距離であればターゲットマーカから離れて着陸できる。場合によってはターゲットマーカと目標点の間にもう一つターゲットマーカを落として目標点を狙うことも。
そういったことを確認するのが次のリハーサル。

いしくら:視野の広さはどのくらいか

久保田:L-08Bの直径20メートルの範囲にターゲットマーカが入っていればL-08Bに着陸できる。外れていたらオフセットをかける。

ライター喜多:12ページの画像に対して、はやぶさ2がどんなふうに着陸するのか見てみたい。

※下のツイートは記者説明会後のもの

ニッポン放送はたなか:誘導精度10.8メートルというのは、半径10.8メートルの円の中が平らであれば安全に下りられるということ?

吉川:上空20メートルでのことなので、そこから下りる間に誤差が出るとマズイがその通り。

はたなか:10.8メートルという数字は想定通り?

吉川:最初に想定していたのは半径50メートルの範囲に下りるということだったので、はるかにいい精度で運用ができている。

はたなか:わりと楽観している?

吉川:しかし地表が予想外にでこぼこしているので、いまの10メートルの精度ではまだ危ない。ターゲットマーカを使うなどしてうまく半径10メートルの地点に入るように誘導したい。

はたなか:精度がよくなった工夫は

吉川:工夫というよりは、スラスターの吹き方やリュウグウの重力がわかってきて、どのくらい制御するとどのくらい動くかがわかってきた。

久保田:はやぶさ初号機のときは誘導精度10メートルだった。リュウグウは大きいので重力が大きく、自転速度も速い。誘導精度としては10メートルよりは50メートルと考えるのが妥当だった。しかし着いてみると、そういうところ(着陸に向く平坦な地形)がないとわかったので、リハーサルで画像を見ながら修正をかけるのをうまくやって、高度が高いところへの誘導はできるようになった。
それをうまく伝搬して小さくいくということで、スラスターの性能やLIDARの性能、LRFのデータを見て精度を追い込めた。
厳しい天体なので訓練やシミュレーションを行いリュウグウに合わせた戦略を練ってきた。

朝日新聞はまだ:誘導精度10メートルの意味は、地上のある地点から半径10.8メートルの範囲に下りられるということ?

吉川:上空20メートルの地点での精度ですがそんな感じ。

久保田:最終的にはL-08Bの赤丸の中央にタッチダウンしたい。そのために高度20メートルならこの位置にいたい、という目標と実際の到達地点が10.8メートル離れていたということ。

はまだ:リハーサルでは自律で下りていく?

久保田:本番とほぼ同じシーケンス。高度500メートルくらいまでは地上から支援していたがそこからは探査機自身が自分で判断する、完全自動の自律モード。オンボードなのはリハーサルも共通。

はまだ:LRFについて。4本のレーザーで測距するしくみについてもう少し詳しく知りたい

久保田:目標地点に行くためには、高度と横方向の位置の情報が必要。高いところにいるときはLIDARという高度計と、画像を地球に下ろしてそれを見て判断している。LIDARが検出できるのは30メートルくらいまでで、そこから下はLRFを使う。
LRFは本来1ビームでよいが4ビーム使うのは、高度とともに地上の傾きを知るため。それには最低3ビーム必要で、冗長系として4ビーム使っている。高度を測っているというよりは、平面を仮定して距離を測っている。
横方向ははやぶさ2自身がターゲットマーカをカメラで見て判断する。左右位置はカメラで、高度はLIDARとLRFで見る。地面の傾き(斜度)は4ビームあるLRFで見る。
小惑星の表面を平面と仮定すると、そこにはやぶさ2がある程度以上傾いて下りていくとサンプラーホーンより先に太陽電池パネルが地面にぶつかってしまう。そうならないよう、地上の傾きを見て地上に正対して下りていくようにする。

はまだ:DPSで発表されるのはどんなことか

4.DPSでのプレスカンファレンス
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吉川:リモートセンシングの解析結果。

はまだ:有機物や水などの新情報もある?

吉川:サイエンスチームから詳しいことはまだ聞いていないが、学会発表ではぎりぎりまで解析をしているので最新のデータが発表されるだろう。

毎日新聞いけだ:2回のタッチダウンのスケジュール見通しは

吉川:3回目のリハーサルの結果を見てから検討するので確定的なことはいえない。
結果がよければさっそくタッチダウン、精度が足りないとなればもう一度リハーサルをするかもしれない。今回のリハーサル次第。

いけだ:タッチダウンの回数が減ることはあるのか

吉川:最大3回としてきた。まずは1回目をきちんとやりたい。

久保田:リュウグウの温度環境が予想より低く、タッチダウンできる期間が1~2か月長くなった。余裕が出てきた。

いけだ:MINERVA-II1の現状は

久保田:一度どこかでまとめた記者説明会を開きたい。1Aは今も元気に飛び跳ねている。小惑星上の100日(7.5時間×100日)を迎えようとしている。1Bは途中で電力不足になりデータが来ていない。太陽の当たり方が変われば通信が取れるかも。1Bはテレメトリは受け取っていない。データを見ると電力不足がわかった。
1Aは太陽電池の面積が広く元気。運用時間が延びてきて受け取ったデータを整理しきれていない。一度報告をしたい。画像は100枚以上ある。
画像はまずはやぶさチームに、小惑星上の様子の知見ということで提供している。タッチダウン場所ではないが参考になるだろう。

××新聞くわは:ターゲットマーカをBから落とす理由は

吉川:落とす順番は決まっている。底面はいろいろな機器があって混雑している。Bを落とさないとインパクタを切り離せないためまずBを落とす。

くわは:B以降はどういう順序か

吉川:B→A→E→C→Dだったかもしれない。正確なところはのちほど。

くわは:この会議室の入口にクレーター生成運用は3月~4月とあった。根拠は?

吉川:プロジェクトチームとしてスケジュールを決めてはいない。インパクターを使うのは来年の春。そのあと3回目の着陸を予定していた。1回目のタッチダウンが延期になっているので具体的にはなんともいえない。

フリーランス大塚:LRFがきちんと機能してターゲットマーカも見えた場合精度は上がるか

吉川:ターゲットマーカを追跡できれば精度はもっと上がる。

大塚:着陸直前に地形に合わせて姿勢を変える制御はTD1-R3では行わない?

吉川:今回は姿勢を表面に平行にする運用は行わない。着陸時まで行わない予定。

日刊工業新聞とみい:ターゲットマーカは硬いのか

吉川:よくお手玉のようなものと説明しているがふにゃふにゃはしておらず、殻の中にポリイミドの粒がたくさん入っている。殻の周りは光をよく反射する素材でおおわれている。

とみい:ターゲットマーカの上に下りてしまうことはないのか

吉川:ターゲットマーカを基準に制御はする。ちゃんとできれば問題はない。

NHKはるの:仮にターゲットマーカがL-08Bから大きく外れて落ちた場合リハーサルをもう一度するのか

吉川:もう一度リハーサルをするか、タッチダウンを決行するかは検討の余地がある。ナビゲーションの精度が低いときはターゲットマーカを落としてピンポイントタッチダウンを行うかも。少なくとも年内はリハーサルを追加しない。

はるの:当初より精度よく下りられるとわかったことについてチームの受け止めは

吉川:確かに精度は当初の想定よりよいが、リュウグウの表面に平らな場所が少ないため楽観はしていない。
実際にターゲットマーカを使ってL-08Bに下りられるかを非常に気にしていて、検討を深めていかなければならないという雰囲気。

(聞き取れず):ターゲットマーカを狙い通りに落とせた場合、タッチダウン時に追加でターゲットマーカを落とさないこともある?

吉川:タッチダウンするのにちょうどよい場所に落ちたなら、追加で落とす必要はないと判断する可能性もある。

(…):その判断は早いうちに行われるのか

吉川:合の期間でじっくり検討したい。

(以上)

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(2018/10/11)

小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。 今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、「はやぶさ2」搭載の小型着陸機MASCOT分離運用の結果、タッチダウンに向けたリハーサルなどについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/10/11) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年10月11日(木)15:30~16:30

登壇者

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(image credit:JAXA

JAXA宇宙科学研究所はやぶさ2」プロジェクトチーム

※左から久保田氏、津田氏、吉川氏

中継録画

配付資料とリンク

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本日の内容

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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(吉川氏から)

2.MASCOT分離運用

運用概要

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MASCOT分離運用シーケンス

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ONC-W2によるMASCOTの撮影

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ONC-W1によるMASCOTの撮影

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MASCOT本体の写真、白い点があり周囲が黒くなっている。MASCOTの底面の白いアンテナが光っているものと推測。こういう写真が何枚か撮れておりリュウグウ表面近くでの動きを確認したことになる。

MASCOTのカメラ(MASCAM)による撮影

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リュウグウ表面での写真はたくさん撮れていて、いまMASCOTチームが解析しているところ。

MASCOT着地点

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欧州での反応

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12日にMASCOTの最初の成果報告になる記者会見が予定されている。

3.タッチダウンに向けたリハーサルとタッチダウンの方針

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(津田氏から)

10月後半に着陸を目指すとしていたが、リュウグウの状況がよくわかってきたことと、はやぶさ2の実力をもう少し知る必要があるため立ち止まろうと思う。その決断に至った経緯、なにを判断したかを説明する。

はやぶさ2の運用は今のところ非常に順調。6回の降下運用のうち中断したのはリハーサル1のみで、そのほかは計画通り進んでいる。中断したリハーサル1についてもうまくいかなかった部分を克服しMINERVA-II1やMASCOTを運用している。

今後のスケジュール。当初は10月末にタッチダウンをやれればやろうと想定していたが、タッチダウンではなく「TD1-R3」というリハーサル運用に変更する。

「TD1-R1-A」は2回目のタッチダウンリハーサル。「TD1-R2」と呼んでもいいが、すでにその名前で計画されていたリハーサル内容から変更したためTD1-R2は欠番とする。TD1-R1-AはTD1-R1と同じことをする。その結果をふまえてTD1-R3を行う。

合運用ははやぶさ2と通信できない期間。リュウグウと太陽、地球の位置関係から決まるため動かせない。この期間にタッチダウン運用の計画を立てる。

最初のタッチダウンはどんなに早くても来年1月以降になる。

タッチダウンに向けた基本方針

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ローバーを分離するとか重力を計測する裏では、小惑星の表面に肉薄するための航法誘導技術をここまでは順当に磨いてきたということ。

現時点で得られている結果・情報(1)

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実績軌道を図示したもの。はやぶさ2の降下方式はリュウグウの側面、赤道に下りるのが高精度。しかし赤道上空でMINERVA-II1やMASCOTを下ろしてしまうと、はやぶさ2自身が下りる場所がなくなってしまう。そのために途中で軌道を曲げ、北半球や南半球の高緯度地域で分離した。

タッチダウンでは赤道上空へまっすぐ下りていく。

精度は10メートル程度。リュウグウに到着する前に考えていたよりは精度が出ている。着陸するには高度0メートルまで行く。高度50メートルから0メートルに行く時、今まで得られている精度をどこまで維持できるかを見極めたい。そのためにリハーサルを積む必要がある。

現時点で得られている結果・情報(2)

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スケジュールを遅らせる一番の原因はリュウグウの地形。難しいのは、表面のでこぼこが全域にわたって一様に広がっているということ。
現時点でボルダーの分布は50センチサイズまで把握している。

近づいてみると案外すべすべなのではという期待もなくはなかったが、そう簡単ではなかった。下りてみるとでこぼこが厳しいと判明。

L07、L08、M04はともに100メートル四方。はやぶさ2の着陸精度は当初100メートルとしていた。それぞれの領域の真ん中を狙えばその中のどこかに下りられるということだったがリュウグウに対してそれでは歯が立たない。

100メートル四方にわたって平坦な場所はないが、ある広さで平坦な場所はある。そこに向かって着陸できる精度を実現しなければならない。そういう見方でリュウグウを見直さなければならない。

着陸の可能性ではL07、L08、M04が相対的によいということはわかっている。この2か月ほど、この中のどこだったら下りられるか検討してきた。

現時点で得られている結果・情報(3)

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探査機そのもののデータではなく3機のローバからのデータも着陸点の選定に役立てる。ローバのチームも含めた国際的な総力戦でやろうとしている。

タッチダウンに向けて300名ほどの科学者で解析を進めている。MASCOTチームからも着陸に役立つデータはいち早くいただいている。

画像からわかるのは、「地面そのものが大小さまざまな岩の集合」ということ。

タッチダウン前に確認すべきこと

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これはリュウグウを攻めるためになにが足りないかの3点。

高度50メートルまでは当初見込みまでより高い精度で下りられるとわかった。この技術をフルに生かしていく。

小惑星の温度環境は技術的に想定した最悪ケースよりだいぶ低いとわかってきた。リュウグウの軌道は楕円形で、これから太陽に近づき温度が上がっていく。それでも思ったより温度が上がらない。そのため、1年半のリュウグウ滞在の中でタッチダウンに挑戦できるのは5月くらいまでと思っていたが、今は6月末まで可能であると考えている。

LRF(レーザーレンジファインダー)の性能は、このあとTD1-R1-Aで25メートルくらいまで下りて初めてわかる。LRFは低高度での高度計測を担うもの。高度30~40メートルから下でないと計測できない。

ターゲットマーカーはタッチダウン本番でのみ使う予定だったが、次の次のリハーサル(TD1-R3)で落としてみようと思う。はやぶさ2がターゲットマーカーをきちんと認識するかテストする。リハーサルでは5個あるターゲットマーカーのうち1個を落としてみる予定。

状況が許せば「ピンポイントタッチダウン」の技術を投入することも考える。

TD1-R1-AとTD1-R3で行うこと

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TD1-R3でこれらを行うかどうかは、TD1-R1-Aの結果をふまえて決定する。

タッチダウン候補地点:L08-B

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TD1-R1-Aで目指す模擬着陸点。L08の中でできるだけ平坦な場所、L08-Bを目指す。ここに実際に下りられるか、下りられてより高精細な画像を得られたら実際の着陸点としてよいかどうか確認する。

TD1-R3でもここを目指す。

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MASCOT運用の時撮影したL08-Bエリアの写真。

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全ページと同じ画像を拡大したもの。直径20メートルという当初予定より狭い領域内に着陸できるかどうかはこれから見極めていく。

TD1-R1-Aのスケジュール

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4.今後の予定

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(久保田氏から説明)

参考資料

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MASCOT

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ピンポイントタッチダウン

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合運用

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質疑応答

読売新聞とみやま:タッチダウンスケジュールの変更で地球への帰還時期は変わるのか

津田:帰還は変えません。2019年末にリュウグウを出発し2020年末に地球に帰還するのは変わらない。滞在期間中のスケジュールを組み替えるということ。

とみやま:今後2回のリハーサルのあと合期間の前、11月の上旬や中旬にタッチダウンはできないのか

津田:ちょっと立ち止まって長考する期間が必要と判断した。リハーサルの首尾がよくても同じようにすれば着陸できるというわけではなく、今後2回のリハーサルの結果を評価して行いたい。リハーサルの結果タッチダウン前にもう一度とか二度リハーサルをするかもしれない。そういうことを考える時間が欲しい。

とみやま:今後必要なことについて。今の10メートルの精度を維持できれば大丈夫なのか

津田:高度50メートルより下の航法誘導は地表面のでこぼこをLRFで計測しながらなので地形に大きく影響を受ける。50メートル以下でも現在の10メートルという精度を得られるかどうかや、LRFが性能を発揮するかはやってみなければわからない。

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落としたターゲットマーカーをはやぶさ2が認識するかも落としてみないとわからない。そういうわからないところをなくしてから本番に臨みたい。

とみやま:TD1-R1-Aは何メートルまで下ろすのか

津田:25メートル程度と思っている。表面の凹凸によっては5メートル前後の差が出る。

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とみやま:そこまで下ろさないと「タッチダウン前に確認すべきこと」の3点はわからない?

津田:はい。

時事通信かんだ:23ページの図で、L08-BはL08の領域の中心から20~30メートル北という感じ?

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津田:緑の四角がだいたい100メートル四方。L08-Bは中心から40メートルほど北。

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かんだ:L08-Bの選定理由は

津田:18ページ右端のカラフルな図。青が安全、赤系統になるほど危険。サンプラーホーンの長さ70センチ、太陽電池パネルの大きさ(5メートルくらいのスパン)を勘案して下りられる場所を評価したもの。右上の青いところをL08-Bとした。
BのほかにAなどもあり、いくつか候補があった中でL08-Bを選択した。

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NHKすずき:スケジュール変更に至った当初の予想との一番大きな違いは

津田:地形。一様に凹凸が激しい。イトカワを含め既知の小惑星には必ず平坦な地形がどこかにあった。小惑星とはそういうものと思っていた。リュウグウは徹底的にデコボコしていて平坦な場所がひとつもない。探査機を着陸させるには意地悪きわまりない。そこが一番意外だった。

すずき:ピンポイントタッチダウンでなくてもいける?

津田:技術的にはピンポイントタッチダウンをしてみたいと思い盛り込んだ機能だが、そこまでしなければならないか、ほかの方法はないかを考えたい。このあとのリハーサルの結果によっては、まったく別の着陸方式のアイデアが出てくるかもしれない。そこも含めてピンポイントタッチダウンは現在のところ一案にすぎない。

すずき:インパクターで平らにするのは

津田:それは最後の奥の手としてあるかもしれないが…(笑い)。なにかぶつけたら平らになる地形とはあまり思えない。そこに期待するのは楽観的。

すずき:スケジュールについて

津田:ターゲットマーカーはリハーサルで1個だけ落とすと決めた。その後は未定。着陸回数を減らすことは考えていない。与えられたスケジュールの中でやれることをやりたい。本番の着陸がいつできるかによるが、はやぶさ2は少なくともサンプルを1回取って帰ってくるのが最低限の至上命題。そこを押さえてから次のことを考えたい。

ライターあらふね:長考の時間でどういうことをするのか

津田:まずはTD1-R3が終わったあと、どのくらいの精度で下りることができたのか、LRFやターゲットマーカーの結果を評価する。結果が期待通り、また期待以上だったら年明けに着陸を目指そうとなる。一方で小惑星の地形そのものについても情報が集まりつつある。ローバーのチームからも解析結果が出てくるだろう。それらをまとめて年末までに方針を決めたい。
12月にははやぶさ2の全科学者が集まる会議を予定している。そこでまとまった議論ができるだろう。

あらふね:ローバーから来ているデータはどんなものか

津田:現時点では画像を見ている。画像から類推できることを…ローバーが送ってくるのは着陸点そのものの画像ではないので。
リュウグウはある程度一様な風景が広がっていそうだとわかっているので、ミリメートル、センチメートル級の解像度の画像からL08-Bがどれだけでこぼこしているか、どれだけ固そうか、どういう成分かということを見ている。
MINERVA-II1やMASCOTが分離やバウンドしたときの情報も出てくるだろう。そこから小惑星の表面について力学的な情報が得られると期待している。

あらふね:着陸点のボルダーはどのくらいの大きさまで見えているのか

津田:解像度のおおよそ3倍くらい…現在の写真では分解能20センチなので50~60センチくらいの岩が見えている。

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あらふね:100メートル四方の範囲に着陸させるのと、直径20メートルの範囲に着陸させるのでは難易度はどのくらい違うのか

津田:どれくらいというのは難しい。かなり難しいのは確かだが不可能なことではないと考えている。実力をある程度把握していることと、ピンポイントタッチダウンという方式を考えてきた経緯がある。精度を上げるためのポイントはわかっている。精度向上の障害になる条件をどうつぶしていくかを考えていかなければならない。

NVS齋藤:現在のMINERVA-II1の状況は

久保田:健在です。2台とも通信はできていて時々データを送ってきてくれる。さらなる情報が得られればと期待している。

齋藤:新しい画像はあるか

久保田:MASCOTの運用中はお休みをしていたがその後もデータが来ている。リハーサルに向けての情報提供とデータ解析を並行して進めている。新しい情報があったらお知らせする。

齋藤:合運用のときはホームポジションから離れると聞いているがどのくらい?

津田:正確な数字はいま思い出せないが、100~200キロメートルくらい離す。

齋藤:ホームポジションからのサイエンス的な観測はひと通りすんでいる?

津田:ある意味終わりがない活動を1年半の間ずっと続けることになっている。計画以上にこなしている。観測は今も続いていて地上に降りてくるデータの量は当初の予定より多い。

共同通信すえ:ピンポイントタッチダウンは当初、インパクター運用の時行う予定だった?

津田:おっしゃる通りです。

すえ:ピンポイントタッチダウンを複数回行うことに技術的な問題などはあるのか

津田:制約はターゲットマーカーの数だけ。5個のターゲットマーカーを使う範囲で何度でもピンポイントタッチダウンができる。
タッチダウンで減るものといえば燃料だが、普通のタッチダウンと比べてピンポイントタッチダウンの燃料消費が多いわけではなく損得はない。

すえ:予想外にでこぼこしているリュウグウは特殊な小惑星?

吉川:なにをもって特殊かというのがあるが、そもそも直径1キロ以下の小惑星に探査機が接近した例はイトカワリュウグウだけ。2例しかないため特殊かどうかはまだわからない。
直径数十キロと大きな小惑星と比較するとリュウグウはボルダーだらけだった。小さい小惑星どうしでの比較はまだわからない。いまOSIRIS-RExベンヌという小惑星に向かっている(ベンヌの直径は約500メートル)。ベンヌと比較することでいろいろわかってくるだろう。

すえ:これまで非常に順調だった中、いったん立ち止まることへの率直な感想は

津田:まったく新しい世界を探査するので、なにもかも計画通りにいくとは思っていなかった。いよいよリュウグウが牙をむいてきた。チーム全体でこれにどう立ち向かうか意気が上がっている。

日経かとう:タッチダウンの時サンプラーホーンから弾丸を発射するのか。この表面の状況で弾丸を発射することに危険はないのか

津田:はやぶさはやぶさ2のサンプリング方式は表面の硬さに対しては守備範囲が広いのが特徴。石であっても砂であってもサンプリングができる。あまりに凹凸が激しいと収量が減る心配はあるが、サンプラーホーンを接地させて弾丸を発射しサンプリングするという方式そのものに心配はない。

かとう:最初のタッチダウンでも弾丸を発射する?

津田:はい。

日経サイエンスなかじま:普通のタッチダウンとピンポイントタッチダウンの違いについて

津田:普通のタッチダウンでは、落としたターゲットマーカーに向かって下りていく。ピンポイントタッチダウンではターゲットマーカーを落としたあといったん上昇する。目標点とターゲットマーカーの位置関係がわかれば、ターゲットマーカーの位置を元に目標点へ誘導できる。
実際にターゲットマーカーから相対的な位置を指定できるかなどを評価した上でピンポイントタッチダウンを行うかどうか決める。

なかじま:複数のターゲットマーカーを使う条件は

津田:ターゲットマーカーの位置と目標点が離れているとき、橋渡し的に2個目、3個目のターゲットマーカーを落とす。

なかじま:着陸をともなう運用は来年6月末までに?

津田:太陽距離の観点だけからいうと10月~11月ごろはリュウグウが太陽から離れるため、来年11月もタッチダウンに向く温度環境になる。ただし最初からそこを使う計画は考えていない。来年末の帰還開始に向けて準備も必要。あくまで来年6月までにやりきるつもりでやりたい。

毎日新聞永山:当初計画では複数の場所からサンプリングするとしていたが、そうしない可能性もある?

津田:リハーサルの結果にもよるが、サイエンスのチームともよく議論していきたい。
リュウグウの表面が一様で地域性が少ないとわかっているのでサンプル採取は1回でいいじゃないかという人がいる一方、複数の場所からサンプルを取りたいという人もいる。インパクターでクレーターを作ってそこからサンプルを採取するという話はもともとあった。それらはまだ捨てていない。
最初のタッチダウンがうまくいけばもう一度となるかもしれない。今はまだ選択肢が広いままにしておきたい。

ニッポン放送はたなか:タッチダウンを合運用前に行うとしたときに考えられるリスクは。またタッチダウンそのものを断念する可能性はあるのか

津田:このあとのリハーサルなしにL08へタッチダウンした場合、たまたまL08-Bへ着陸すればラッキーだがそれ以外の場所に行ってしまうとサンプラーホーンが接地する前に太陽電池パネルや本体が損傷していたかもしれない。
損傷を防ぐために、ひどいでこぼこを検知したら上昇しなさいとプログラムすることはできる。しかしそうしてもたまたまL08-Bのような場所へ行けばいいが、現時点では(探査機は損傷しないが)サンプル採取できない確率が高い。
サンプリングを断念することは考えていない。このミッションのなりたちそのものであり、手ぶらで帰るわけにはいかないと思っている。なんらかの方法で挑戦したい。

(以上)

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOTの分離運用に関する記者説明会(15時~)

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOTの分離運用に際して、記者説明会を行います。

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOTの分離運用に関する記者説明会(18/10/3) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年10月3日(水)15:00~16:00

登壇者

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(image credit:JAXA

↑津田氏

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(image credit:JAXA

※左から吉川氏、岡田氏

中継録画

津田プロマネから

本日MASCOTを小惑星表面に分離。10時57分20秒にMASCOTを正常に分離したことを確認。その後MASCOTは小惑星表面へ下りていき、DERからは着地を確認したという情報が来ている。

探査機は着陸機を分離後高度3キロへ上昇し滞在、MASCOTとの通信を行う。これは24時間継続。MASCOTの地表面での運用は始まったばかりだが、まずは国際的に進めてきた着陸機を無事小惑星表面に送り届けることができた。またMASCOTの運用スタートに携わることができたことを報告する。

MASCOT着陸運用はいつもより大きい体制で行っている。NASAにサポートレベルを上げて対応していただいている。はやぶさ2のために1地域の2つのアンテナを使わせてもらっている。

MASCOTチームはケルンに管制室があり、数十名が運用にあたっている。

このような大きな体制で成功に導くことができた。ここまではひと安心。

津田プロマネへの質疑応答

共同通信すえ:MINERVA-II1に続くMASCOTの分離ということでこれからの運用への意気込みを

津田:MINERVA-II1、MASCOTと運用がうまくいき大きな自信になった。2回連続成功は運用チームの実力がついてきたといえるのでは。
目の前のMASCOT運用を完遂することが大事。はやぶさ2タッチダウンに向けて確実に運用を進めていきたい。

読売新聞とみやま:海外の着陸機を無事に投下でき着陸した。国際協力としてうまくいったことの意義は

津田:宇宙探査で大きなことをしようとすると、ひとつの国ではできないほどチャレンジングなことを人類はしていかなければならない。はやぶさ2プロジェクトはまさにその一例になった。
今回もドイツとフランスがMASCOTを開発した。8年以上にわたって開発、試験を積み重ねてきた。技術文化なども違うが理解しあいつつ、ひとつのプロジェクトとしてまとまって運用でき成功につながった。そのいい一例になった。

とみやま:タッチダウンに向けて。下りることについては完熟してきたのか、またボルダーの懸念については

津田:着陸技術について。MINERVA-II1は北半球の行けるところぎりぎりに下ろした。MASCOTは南半球ぎりぎり。今のところ小惑星で狙おうとしていた領域全体へアクセスできることを技術的に確認できた。
そこに平らな場所がないとわかっているので、リュウグウのひどいでこぼこさをどう克服するか。今日も低高度での観測を続けている。これをふまえて次のリハーサル、そして本番を迎えたい。

とみやま:地表に近づくだけとタッチダウンでは難易度が大きく違う?

津田:おっしゃる通り。最初は接近することにも確証がなかったが、今は十分できるようになった。
小惑星にタッチするとなると表面のでこぼこさが直接ひびいてくる。それに対してどう応答するか、正しい場所に下ろさないと危険。技術的なハードルがある。精査して運用に反映させたい。

クリエイティブネクサスありもと:ターゲットマーカーはいつ下ろすのか

津田:着陸はターゲットマーカーを下ろして行う。リハーサルでは落とさない。リハーサルでは前回同様、高度20~30メートルに導けるかの試験を行う。
はやぶさ2はピンポイントタッチダウンという、クレーターの中に着陸する戦略を持っている。ターゲットマーカーを使うがこれをいきなりする予定はない。

フリーランス大塚:タッチダウンに向けて誘導精度が必要かと思うが今回の降下制度は。またMINERVA-II1の運用後変更したことなどはあるか

津田:誘導精度は速報値で10メートル(MINERVA-II1と同じ)。小惑星表面に対して、タッチする前まではこの精度で導いていける。
MINERVA-II1の結果をふまえた運用の変更や改善はとくにない。(シーケンスそのものは異なるが)

大塚:次のリハーサルはそのままいけそう?

津田:さらに低高度へ行くので、MINERVA-II1やMASCOTの運用をふまえて考えていきたい。

毎日新聞永山:MASCOTの着陸成功でCNESやDERからメッセージは

吉川:4~5人からおめでとうというメッセージはあった。CNESやDERからの正式なメッセージは今のところない。

永山:公式Twitterによると、MASCOTの分離確認後津田プロマネが「Good luck, MASCOT」と言ったそうだがどんな場面か

津田:最後のGO/NOGO判断で、ここから先ははやぶさ2が自律で動作する。探査機に「あとはまかせた」というコマンド。確認のひとつとして、MASCOTチームにGO/NOGOの意思を確認してもらった。GOの返事をもらい、これまで長くやってきたチームに対して今までありがとうという意味と、このチームだからいいチームワークでできた、あとはMASCOTにまかせようということを共有するつもりで「Good luck」と言った。

ライターあらふね:国際チームでの運用で今までとの違いは

津田:責任は重くプレッシャーはあった。一緒に開発してきた仲間はお互い気心も知れていて意思疎通がうまくいっていた。DERやCNESでも注目していただいていて国際会議でも速報されると聞いている。チーム外に国際的に注目していただいていることでいつもより責任を感じる。
技術的にしてきたことはいつもと変わらない。

あらふね:2回目のリハーサルとタッチダウンのスケジュールは

津田:具体的な日付や方法は次回の記者説明会で。

MASCOT分離運用

(岡田氏より)

MASCOTシステム概要

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通信機部分は日本と連携して開発。観測機器は大学も関わっている。

MINERVA-IIは主に工学的な目的。MASCOTは科学観測。装置の重量から約10キロと重い。

箱形なのは製造上の理由と、探査機から抜け出るのによい形状だから。

MASCOT分離運用

MASCOTシステム概要
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骨組み自体がある種の緩衝材になっていて、観測機器などがダメージを受けないようになっている。

一次電池の寿命がMASCOTの寿命。

通信機は日本から提供。

各面にLEDの反射光のセンサー。どの面が地表に接しているかがわかる。

MASCOT分離運用

MASCOTの小惑星上運用

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最初の夜までに整定して観測を開始していたい。

次の昼に1回だけのホッピング。整定に時間がかかりすぎないよう遠くまでは跳ばない予定。

MASCOT分離運用

MASCOTの着地点候補

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青いところが着地点候補。バウンドしたときにはやぶさ2タッチダウン領域に入らないことが大事。MA-9を#1(最優先)とした。

MASCOT分離運用

MASCOT着陸候補地点

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MASCOT分離運用

MASCOT着陸候補地点

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MASCOT分離運用

MASCOT分離運用シーケンス概要

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はやぶさ2のカメラでMASCOTの分離を確認する。上昇中も撮影。見えるかどうかは微妙。

MASCOT分離の主要なスケジュール

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質疑応答

NHKきぬた:はやぶさ2は現時点ではどの位置か

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岡田:ホバリングに向かっているところ。高度3キロで整定しようとすると、(リュウグウの重力に引っぱられるため)ある程度の頻度で上昇のスラスト(ガス噴射)を行う必要がある。

きぬた:予定通りか

岡田:予定から大きく崩れていると言うことはない。

きぬた:いつごろホバリング状態になるか

岡田:分離から3.5時間から4時間くらい。

吉川:予定では16時くらいから予定高度をキープする。

ライター村沢:サンプルリターン計画の中でMASCOTがその場観測を行う意義は

岡田:サンプルリターンではサンプリングシーケンスで表面状態が崩れる。大気圏再突入でもシェイクされる。小惑星の表面状態が保たれない。
MASCOTは小惑星表面をそのまま観測できる。

読売新聞とみやま:分光顕微鏡について

岡田:水といってもOH基のかたちで岩石にくっついている。それに特有の吸収帯がある。その特徴を見ることでOH基かどうか確認。

とみやま:以前の観測で水分が少ないとあったが

岡田:原理は変わらないがリモートセンシングの場合フットプリントが広い領域になる。分光顕微鏡のMicrOmegaは数ミリの領域を多数のピクセルに分けて観測。
全体の平均として水がなくても個々の粒子で見ると違うかもしれない。また見えたところが全体を表すとは限らない。

とみやま:含水以外にわかる鉱物特性は

岡田:吸収帯の特徴を見る。鉱物で明確な吸収があればわかる。含水鉱物にもいろいろあり、どれに近いかがわかる。
有機物のようなものが含まれている場合、ほかの波長で特徴的な吸収がある。

とみやま:分光顕微鏡の仕組みは

岡田:太陽の光の反射を見る。太陽の光を反射したとき、既知の太陽光からどんな光が吸収されるかを見る。

日経かとう:はやぶさ2タッチダウンの前に水や有機物の存在を確認する可能性はあるか

岡田:はい。今回の測定でわかる可能性はある。

かとう:データが上がってくればすぐに公表する?

岡田:それらは大量に含まれているわけではなさそうなのでキャリブレーションが大変そう。その上で公表する。

かとう:いつごろか、めどは?

岡田:データを全部下ろすのに一週間、それから詳細な解析をするので数週間。年内には解析を終わらせることになっている。

フリーランス大塚:MicrOmega顕微鏡は対象からどのくらい離れても見えるものなのか(リュウグウの表面はかなりでこぼこしているので、平らなところにぴったり接地するとは限らない)

岡田:焦点距離はかなり近くないといけない。距離が大きく開いてしまうとうまく観測できない。
MicrOmegaの部分はMASCOTから数センチ出っぱっている。その部分がきちんと小惑星表面にぴったり接することが必要。
1回下りてちょうどいい場所に来るかはわからない。1回限りのホッピングのほかにほんの数センチ移動するというモードを用意している。ちょっと動いて撮り、また動いて撮るとやってうまく観測できることを期待している。

大塚:ホッピングのときも含めて、着地時に立ってしまうようなことがありそう。おもりを動かせばどちらかに倒れると期待している?

岡田:Mobilityユニットは1軸だが少し偏心している。1方向にしか動けないわけではなく、ほかの方向にも転がることを期待している。

大塚:MicrOmegaの波長は

岡田:0.99マイクロメートルから3.65マイクロメートルまでカバー。水の吸収は2.7マイクロメートルから上、有機物の吸収は3.2~3.4マイクロメートル。有機物の吸収部分は(はやぶさ2本体の)NIRS3ではカバーしていないが、MicrOmegaはカバーしている。

ライターあらふね:岡田さんはMASCOTプロジェクトの中でどういう役割か

岡田:MASCOTの担当者としていろいろやっている。私はもともとサイエンス出身。最初はMASCOTを搭載するにあたってどういう観測機器を載せるのがいいかという議論に参加していた。
開発にあたって探査機との技術的なインターフェース、製造に関してデータのコミュニケーションなどが整合するようにする。
運用では実運用に即してテレメトリやコマンドを設計。打ち上げ前の試験、打ち上げ後のチェックアウト、実運用ではコマンドを打ち、状態を確認する。宇宙研の衛星を長く担当してきた経験をもとにそれらを調整し、彼らができないところを補う。
観測機器を使ってどういうサイエンスをするかが本来の仕事だったが、インターフェースの対応をそれよりもずっと長くやっている。

あらふね:磁力計について。小惑星に磁力はあまりないと思われるがMASCOTに載せることになった経緯は

岡田:始原的な小惑星はどういうものかわかっておらず、基本的な観測項目をひと通り行う。そこには磁場の観測も含まれるため磁力計を搭載した。また、この機器は搭載実績が豊富で小型軽量化できる。
太陽系内には太陽からの磁場がある。磁力計はその弱い磁場も測定できる。MASCOTの姿勢が変わったことも磁力計で検知できるためMASCOTの運動も調べることができる。
磁力計は小惑星の磁場だけでなく、MASCOTがどう運動したかも観測できる。バウンドして整定したかどうかなどもわかる。

あらふね:これからの着陸機の設計にも役に立つ?

岡田:磁力計の使用は技術として確立している。これの担当グループが世界中にいくつかあり、そこから参加するとなればその通り。

あらふね:分離を終えてどんな感想かと観測結果への期待

岡田:最初に(はやぶさ2からの)リモートセンシングで見たとき期待を裏切る小惑星だった。表面に下りても期待を裏切る結果。そういうものが出てくるとよい。
カメラからの画像はMINERVA-II1が撮っているのである程度予測できる。顕微鏡で見て驚くような、考えもしなかった結果があるとよい。磁力計でも残留磁場があるなど、想定していないようなものが見つかると非常に面白い。

ライター秋山:①MicrOmegaの資料に「3次元的なイメージキューブを観測できる、サンプルサイズが3ミリ立方以内」とある。対象がこのサイズ以下でないといけないということ?
②熱放射計で測定する「熱慣性」とは

岡田:イメージキューブについて。X軸Y軸に波長を足した3軸がイメージキューブ。リモートセンシングの衛星でよくあるのは、1軸が空間、1軸が波長、それで表面を掃いていくことで3次元のイメージキューブを実践する。
MicrOmegaの場合はまず顕微鏡で撮る2次元画像があり、もう1軸は照射する光の波長をシフトする。0.99から3.65マイクロメートルまでを320ステップで変化させて撮影していきイメージキューブを作成。
3ミリというのは顕微鏡の画像1枚で見る範囲が3ミリ角ということ。
熱放射計について。
熱慣性は温度の変わりにくさを表す。普通の岩と砂利、砂で物理的な状態が変わる。空隙が多い岩、稠密(ちゅうみつ)な岩でも物理的な状態が異なる。化学的な組成が同じであっても物理的な状態が違い、それを調べる方法のひとつ。
昼間は日が照って、夜は日が当たらない。温度のサイクルができる。昼間温まり、夜冷える。温度のサイクルのしかたがすき間の大きさによって変わる。
すき間が多いと熱がしみ込まないので昼間は表面だけに熱がたまり温度がグーンと上がる。夜になり表面から熱が逃げると、内部からしみ出す熱がないため温度が一気に下がる。温度の幅が大きい=熱慣性が小さい。
中身がぎっしり詰まっていると熱がしみ込む。昼間になっても温度があまり上がらず、夜でもあまり冷えない。温度の変化が小さくなる。それを外から観測すると、温度の変動幅の違いが出る。物質の中の空隙の大きさが熱の伝わり方の違いとして出てくる。物体を割ったりしなくても空隙の大きさを調べられる。
熱慣性を調べるのは表面の物理的な状態を調べるということ。

秋山:リュウグウの中がどのくらいスカスカかがわかる?

岡田:リュウグウの表面に転がっている岩が稠密なら、母天体でそうなるような変成作用が起きたと推定する。逆に岩に隙間が大きいなら変成作用が起きなかったということ。表面の石を調べることで、リュウグウの昔の状態がわかる。

ライター林:昼のブリーフィングで、ヨーロッパは着陸機の経験があるためヨーロッパと組んだと聞いた。MASCOTでヨーロッパならではの知見や経験がどう生かされているのか

岡田:これほどの観測装置は日本で準備できない。ヨーロッパには過去に着陸型の観測プローブを運用してきた経験があり、小型軽量の観測装置を何度も開発してきている。その技術を応用して作った。短い期間でこれだけ優れた、小型軽量の観測装置を準備できた。
またロゼッタという彗星ミッションにフィラエという着陸機があった。フィラエは100キロほどと大きいが、MASCOTのバッテリーや搭載コンピュータはかなり共通、またはアップグレード版。
実際に作業する人にも経験者が豊富。
MASCOTプロジェクトはフィラエを作った人々が立ち上げた。フィラエの運用でいったん抜け、運用が終わって戻ってきた。フィラエの運用の経験が生かされた。
MASCOTがバウンドしたときのシミュレーションもフィラエのメンバーが作った。十分に経験豊富な人々が参加した。

林:小惑星リュウグウへの着地ミッションで難しかった課題は

岡田:10キログラムという重量制限に科学観測に必要な機器をおさめるということ。MASCOT本体の重量が10キロで、うち3キロを観測装置に割いている。観測機器が30%という割合はとても高い。着陸機本体を軽量化して実現。小型軽量にする技術や設計は苦労した。

林:リモートセンシングで期待を裏切っていたそうだが、具体的にどういうところか

岡田:小惑星は地上から観測すると点にしか見えず、限られた観測から予測する。
リュウグウの自転周期は遅めなのに形状がトップシェープ型だったこと、それから水の吸収がもっと見えると思っていたらそうではなかった。これらが想定と違っていた。

林:MASCOTに期待を裏切る結果を求めているというのは具体的には

岡田:見たこともないような鉱物や有機物に期待。
我々はどうしてもあの隕石に似ているなど既知の観測結果からものを考える。考える対象がそれしかないから。それとはまったく違う観測結果が出たらよい。

日経サイエンスなかじま:日本製の通信機はJAXAが開発?

岡田:MINERVA-IIと共通。開発主体はJAXA

なかじま:MINERVA-II1でははやぶさ2本体からの電波が強すぎ、応答するMINERVA-II1からの電波発信が弱かったという想定外があった。MASCOTでは克服している?

岡田:データの中身についてはヨーロッパに転送しているため詳細はわからないが、回線上はちゃんと取れている。

東京とびもの学会金木:MASCOTの外観について。資料2ページ目にフライトモデルがあるがMLIが一部切り取られたようになっている。

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これはこのまま搭載した?

岡田:驚くべきことにこのまま搭載しました。むき出しです。
当初はカメラの視野だけが開口していたが最終的にこうなった。内側のエレキには異物が入らないようシールドされている。開口部にはカメラと熱放射計、磁力計があり干渉を避けるためにこうなっている。磁力計はシールドされている。カメラと熱放射計はむき出しで外を向いている。必要な分だけ穴を開けるくらいなら全部とっぱらうのがよいと彼らが判断した。

NVS金子:MASCOTはMINERVA-II1と質量がだいぶ違うが、はやぶさ2からの放出のマヌーバで異なるところはあったのか

岡田:MASCOTは分離速度を毎秒5センチにコントロールしていて、MINERVA-II1のときのように水平方向の移動速度をキャンセルするためはやぶさ2が逆方向にスラストする必要はなかった。
MINERVA-II1よりはシンプルな分離になっている。

金子:MASCOTと通信しているときはMINERVA-II1と通信できない?

岡田:通信できるよう設定はできる。通信機は複数の相手と通信することも可能。ただ実際にはMASCOT運用の時はMASCOTとだけ通信する。

金子:MASCOTの運用時間帯の中で、はやぶさ2と地上で通信が途切れるタイミングはあるか

岡田:MASCOTを分離後、はやぶさ2が上昇するときONC-Tで撮影する。ONC-Tは視野が狭く、MASCOTを撮影するためにはやぶさ2の姿勢が変わる。その間はハイゲインアンテナ(高速通信アンテナ)が地球を向かなくなる。35分間くらい。それ以外の時間はつねに地球との通信が取れている。

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(以上)

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOTの分離運用に関する質疑応答(13時~)

登壇者

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(image credit:NVS

中継録画

午前10時からのひとつながりの動画になっていて、13時からの質疑応答と15時からの記者説明会をまとめて視聴可能。(放送前にタイムシフト登録せず視聴できるのはプレミアム会員のみ)

質疑応答

読売新聞とみやま:分離の高度、時間などを

吉川:分離時刻は日本時間10時57分。分離高度は速報値で51メートル。地上で確認できたのは11時17分。その後はやぶさ2は上昇に転じ、ホバリングの高度に向かって上昇中。
探査機はこちらが運用。MASCOTからテレメが届いている。それをこちらからヨーロッパへ転送していて、MASCOTの運用はヨーロッパで。

とみやま:着陸は成功しているのか

吉川:MASCOTからのテレメが届いているのでヨーロッパの記者会見待ち。シーケンスは予定通り進んでいる。

NHKきぬた:MINERVA-IIに続いて探査ロボットを分離できてお気持ちは

吉川:MINERVA-IIはJAXA側だがMASCOTはヨーロッパの装置なので是が非でも分離して着地させないと国際的な問題になっちゃいますので分離が成功してほっとしている。いいデータを送ってくれれば。

共同通信すえ:分離高度51メートルは誤差の範囲?

吉川:目標より数メートル低いが誤差の範囲。

すえ:MASCOTはMINERVA-IIとどう違う

吉川:MINERVA-II1の探査は基本が表面写真。温度も測る。MASCOTは写真だけでなく赤外線顕微鏡で鉱物を調べる。磁場も調べる。赤外線の熱…表面で詳しく熱の流れを調べるのもサイエンス的に重要。期待している。

ライターあらふね:MASCOTの観測結果が来るとリュウグウのどんなことがわかるのか

吉川:一番期待しているのはリュウグウの進化の過程を知りたい。それを通して惑星の形成過程にさかのぼる。イトカワはS型の岩石だけの小惑星。今回はC型を調べている。種類の違う小惑星の起源を調べるとゆくゆくは地球のなりたちに迫る。
MASCOTはリュウグウ表面のデータを調べることで形成過程を知るのに役に立つ。

あらふね:MASCOTのデータがはやぶさ2の探査に与える影響は

吉川:MASCOTが下りた場所にははやぶさ2タッチダウンしないが、データはタッチダウンの参考になる。

NHKきぬた:15時からの会見では新情報があるのか

吉川:15時からは私以外にもMASCOTのリエゾンである岡田も参加する。技術的な詳しい内容についてお答えできるだろう。
MASCOTの現状は17時のドイツでの会見を待つ必要がある。

きぬた:MINERVA-II、MASCOTと順調に来ているがお気持ちは

吉川:我々が一番気にしているのはタッチダウン。ボルダー(岩塊)が多く広い場所がない。ボルダーが少ない領域はあるが狭い。そこにうまく探査機を誘導しなければならない。高い精度のナビゲーションが必要。
MINERVA-II、MASCOTを下ろすために2回降下して探査機の誘導精度はわかってきた。そういうデータを使いながらタッチダウンのためにどうナビゲーションすれば狭い場所に精密に下ろせるかを検討している。今回もいい経験になった。

NVS金子:はやぶさ2からの通信では分離に関するどういうデータが来たのか

吉川:はやぶさ2がMASCOTを切り離したという情報を確認している。MASCOTからの電波も来ていると確認。

ライター林:MASCOTの電池は切り離してから16時間?

吉川:電源を入れるのは分離と同時。分離から16時間。

林:表面への着地をどうやって確認するのか

吉川:MASCOT表面に着地がわかるセンサーがある。

林:着地したことをはやぶさ2の管制室でも確認できる?

吉川:いえ、我々の管制室は中継するだけで、データの確認はヨーロッパで。
今MASCOTの管制室でデータを受けて解析中と思うが、MASCOTからどういうデータが来ているかはこちらにはわからない。着地宣言はヨーロッパからなされる。
日本にはMASCOTチームから2人来ている。通信が確保できているかを確認するなどの仕事をしている。

林:着地がわかるのはいつごろか

吉川:上空50~60メートルくらいから下降方向の速度が秒速3センチくらいで分離している。30分くらいで表面に着いているはず。着地は向こうですでに確認できているはず。それは先方の発表待ち。
MASCOTそのものについてはヨーロッパが17時に発表するのを待つことになる。

(以上)

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOT分離運用前説明

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載小型着陸機MASCOTの分離運用に関する説明を行います。

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載 小型着陸機MASCOT分離前説明(18/10/3) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年10月3日(水)10:00~11:30

登壇者

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(image credit:JAXA

中継録画

配布資料とリンク

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(詳細は15時から)

大きさは30センチ×30センチ×20センチ、重さ10キログラム程度。

カメラで表面を撮影したり赤外線の分光観測、磁場のデータなどを取る。MINERVA-II1よりも多くのサイエンス的なデータを取る。

MASCOTは1回だけジャンプする。バッテリーは16時間動作する。その間に取得したデータを探査機へ送る。

リュウグウの自転周期で2周の間に観測を行う。

運用そのものは9月30日開始。10月1日までは探査機降下のための準備。

10月2日に降下開始、先ほど高度400メートルに到達。今日の11時ごろMASCOTを分離する。現在のところ健全に運用されている。

MASCOT分離後はやぶさ2は上昇するがホームポジションリュウグウから20キロ)には戻らず、MASCOTと通信するため高度3キロでホバリングする。

質疑応答

読売新聞とみやま:科学観測のうち、分光顕微鏡は鉱物の組成を調べるというがしくみは

吉川:MASCOTの底面についている。はやぶさ2のNIRS2(近赤外線分光計)の顕微鏡型。小惑星表面に接して表面を拡大し近赤外線でスペクトルを取る。
岩石の成分がどういう物質かを調べる。

とみやま:はやぶさ2本体がサンプルリターンをするのと補完的な関係にあると思うが、MASCOTが取得する情報と合わせてどういうことがわかるのか

吉川:いろいろなスケールで表面を調べる。探査機本体は小惑星全体をリモートセンシングで物質の分布を調べる。採取するサンプルからは顕微鏡レベルで物質の組成がわかる。MASCOTはその中間。採取するサンプルは数ミリ。数センチレベルの測定をMASCOTが行う。

NHKきぬた:分光顕微鏡による観測で岩石の成分がわかるとのことだが水分もわかるのか

吉川:水分を直接調べるわけではないが、表面のミクロな鉱物分布として水分が含まれていればわかる。

きぬた:MASCOTはリュウグウの重力を観測するのか

吉川:探査機が接近するときのスピードを正確に測ることで重力はわかる。MASCOTがバウンドするときの状況から重力を推定できるが、バウンドの様子を正確に知るのは難しい。MASCOTのデータから重力を知るのは難しいのでは。

毎日新聞永山:JAXAはやぶさ2チームとしてMASCOTに期待することは

吉川:表面のサイエンス観測に期待している。写真はMINERVA-II1で撮影できたが、科学に使えるデータを表面で取得できることがサイエンス的に価値がある。

共同通信すえ:MASCOTがジャンプするときどのくらい移動する?

吉川:MASCOTは内部のおもりを回してホップする(MINERVAと同じ方式)。その回し方でホップ距離を調整できる。最近聞いた話では何十メートルも移動せず、数メートル移動する程度がいいのではということだった。
一度ホップすると整定するまで時間がかかる。MASCOTは動作時間に制限があるためそれを待つ時間がもったいないとのこと。
またリモセン観測によって、表面が比較的一様であるとわかっている。無理して遠くまで跳ばなくてもいいのではということ。

すえ:MASCOTが夜間観測もできるのはバッテリーだから?

吉川:その通り。よく「太陽電池を載せては」と言われるが、それだと夜間観測できない。また温度が高いとMicrOmega(分光顕微鏡)はいいデータを取れないという事情もある。

NHKきぬた:MASCOTで磁場を観測する目的は

吉川:小惑星にはたぶん磁場はないだろうが、仮に微量な磁場があれば小惑星の成り立ちを知るのに参考になる。そこで磁場観測をしてみることにしたのだろう。

きぬた:磁場と小惑星の成り立ちの関係は

吉川:磁場があるということは、表面物質がどこか別の天体で溶けて固まったもので、そのときの磁場を保存してリュウグウに集まっていると考えられる。
リュウグウは溶けた状態から固まってできた天体ではなく、がれきが集まってできたと考えている。磁場があれば、そのがれきのもとになった母天体の情報がわかるかもしれない。

ライター林:分光顕微鏡は下に接していないと観測できないのか

吉川:そのように聞いている。

林:顕微鏡が下になるよう姿勢を変えるとのことだが、岩が表面にたくさんある中でうまくいくのか

吉川:「Mobilityユニット」を回転させて、ひっくり返って整定しても向きを変えられる。
表面がでこぼこしたところに挟まってしまったらどうするのか聞いてみたらホップするとのことだった。ホップして別の場所へ移動することで観測に向く場所へ落ち着くことを期待する。

林:挟まったことをどうやって知るのか

吉川:カメラがあるほか、MicrOmegaがうまく観測できなければ姿勢がおかしいとわかる。自律で姿勢を変えようとし、それでもうまくいかなければホップするそうだ。

林:DLRやCNESと協力することになったいきさつは

はやぶさ2を提案する前、はやぶさを打ち上げる前に後継機の「はやぶさマーク2」を検討していた。マーク2はよりアドバンスなミッションをと考え、100キロレベルの着陸機を載せようとしていた。着陸機の運用はヨーロッパが進んでいるためヨーロッパと議論を進めた。
はやぶさマーク2は「マルコポーロ」と名前を変えてESAに提案したが通らなかった。
はやぶさ2は初号機より進んだことをしなければ予算が取れないということでヨーロッパと協議し、10キログラムで着陸機を作れるとアピールする流れで搭載することになった。

林:日本の小惑星探査機が海外の着陸機を載せられる実力を持ったとも考えられるのか

吉川:そうですね、ヨーロッパが日本のはやぶさ2を信頼してくれたので載せることになった。

林:お互いにとってのメリットは

吉川:我々が同じようなランダーを作ろうとすると予算がふくらむ。お互い協力することで進んだミッションができるメリットがある。
ヨーロッパにとっては自分が作った着陸機を目的地へ持っていってもらえるというメリットがある。

日経かとう:MASCOTの運用期間中に水や有機物の存在が確認される可能性はあるのか

吉川:MicrOmegaなどでそれらの有無はわかるが、具体的にどんな有機物かなどは難しく、持ち帰ったサンプルの分析が必要。

ライターあらふね:小天体への着陸はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着地したフィラエがある。MASCOTは2番目の科学観測用ランダーといえるのか

吉川:太陽系小天体、小惑星や彗星ではその通り。

あらふね:小惑星に着地しての科学観測は初めて?

吉川:その通りです。

あらふね:MASCOTが1回しかホップしないのはどうして?

吉川:おそらく電池が切れるまでに2回、観測とデータ送信ができるのだろう。

NVS金子:MINERVA-II1の投下実績をふまえてMASCOTチームへのフィードバックはあったか

吉川:MASCOTチームはMINERVA-II1に非常な関心を持っている。切り離されたあとどのくらいで整定するかを気にしている。正確なことは解析中だがおおむね1時間で整定する。これは向こうのチームも想定内のようだ。

金子:姿勢を直したりホップしたりはすべて自律?

吉川:MASCOTのプロマネのトラミ・ホーさんに聞いたところでは、自律で判断して姿勢を変えたり移動したりするとのこと。

共同通信すえ:水や有機物の存在はMASCOTが取得したデータをはやぶさ2を介して地球に下ろし、解析してからわかるということ?

吉川:その通り。16時間以内にデータを取得し探査機に送る。データは数日、あるいは1週間程度でMASCOTのチームに渡るだろう。

すえ:MASCOTの分離シーケンスはMINERVA-II1とはだいぶ違う?

吉川:分離までの手順はどちらもほとんど同じ。MINERVA-II1のときは分離時に水平方向への移動成分が出る。それをキャンセルするため探査機が水平方向に移動しながら分離した。MASCOTはまっすぐ落ちていくので探査機の水平移動はない。そのほかMASCOTを分離した探査機が高度3キロでホバリングするのがMINERVA-II1と違うところ。

宇宙作家クラブ渡部:MASCOT分離後の探査機がMASCOTに底面が向くよう姿勢を変えているように見える(下図「上昇速度50cm/s」のところ)

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吉川:その通りで、「姿勢スキャン」ではONC-W1やONC-Tで降下中のMASCOTを撮影しようとする。

渡部:撮影した写真は最速でいつ見られそう?

吉川:なんとも言えないがMINERVA-II1のときも同じことをして1日後くらいだった。MINERVA-II1は小さい点にしか見えないので同定まで時間がかかったがMASCOTもそんなに大きくないのでノイズかどうかの判断に時間がかかるかも。

ライター秋山:MicrOmegaが含水鉱物を見つけるかもしれないことについて、NIRSのチームからの期待は。またヨーロッパのチームはフィラエの経験があるという。彗星と小惑星の違いや期待は

吉川:MicrOmegaとNIRSのデータは似てくる。ミクロとマクロの比較は面白い。双方のチームが共同で検討している。
フィラエとの違いは直接聞いてはいないが、一般的には彗星と小惑星の違いは非常に興味深いテーマ。データが取れればサイエンス的には非常に重要なものとして扱われるだろう。

(以上)