(Image credit:NVS)
日時
- 2019年3月19日(火)11:30~13:00
登壇者
インターステラテクノロジズ株式会社
出席者
- 元サッカー日本代表監督/FC今治オーナー 岡田武史(おかだ・たけし)
- 株式会社コルク 代表取締役会長 佐渡島庸平(さどしま・ようへい)
- 実業家 丹下大(たんげ・まさる)
- 丸紅株式会社 航空宇宙・防衛システム部長 岡﨑徹(おかざき・とおる)
- 株式会社ユーグレナ 代表取締役 出雲充(いずも・みつる)
- レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役 藤野英人(ふじの・ひでと)
- 株式会社キャステム 代表取締役 戸田拓夫 (とだ・たくお)
- 株式会社バスキュール 代表取締役社長 朴正義(ぼく・まさよし)
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究開発部門 角田宇宙センター所長 吉田誠(よしだ・まこと)※ビデオメッセージのみ、ほか一名出席
中継録画
- 【放送予定】 3月19日11:30~ インターステラテクノロジズ:宇宙輸送サービスに関する事業戦略発表会 | NVS-ネコビデオ ビジュアル ソリューションズ-(http://blog.nvs-live.com/?eid=570)
発表資料
- 「みんなのロケットパートナーズ」発足のお知らせ | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(http://www.istellartech.com/archives/1820)
- 【PDF】宇宙輸送事業の実現を後押しする法人サポーターズクラブ「みんなのロケットパートナーズ」始動(http://www.istellartech.com/7hbym/wp-content/uploads/2019/03/IST-PressRelease_031901.pdf)
インターステラテクノロジズから
堀江:MOMO3号機の打ち上げ時期は未定、ZEROについても報告したい。
稲川:MOMO1号機は宇宙空間に到達できず。2号機は離床後すぐ墜落。クラウドファンディングでの支援や企業スポンサーとして3社加わっていただいた。
観測ロケットMOMOについて
(稲川氏から)
MOMO2号機の実験失敗分析と3号機に向けた方針
- 新規要素の姿勢制御用スラスタ燃焼器が設定範囲外で動作
- 姿勢制御用ガス温度が設計値を大幅に上回り、配管が溶融
- 漏れた高温ガスがバルブ駆動系配管を焼損しエンジン停止
外部原因対策委員会の設立
2018年10月、原因究明および対策実施を行った。
縦噴き燃焼実験(CFT、2分間)の映像
実際に飛翔できる状態で地上に固定し2分間燃焼(実際の燃焼時間と同じ)、問題がないことを確認。
実験場所は大樹町の打ち上げ場所のすぐ近く。試験用発射台を設置。
圧力、振動など実機より多いセンサーを搭載、健全性を確認。
スポンサー紹介
- レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役 藤野英人(ふじの・ひでと)
- 実業家 丹下大(たんげ・まさる):個人でスポンサー、命名権獲得
- 株式会社日本創生投資 代表取締役社長 三戸政和(みと・まさかず)
丹下:ITで企業支援、宇宙には夢がある。宇宙へ行くことは究極のUFOキャッチャー。自分の息子の時代に橋渡ししたくスポンサード。
藤野:MOMO2号機に続きスポンサード。個人で2/3、会社で1/3。小学校2年生くらいの男の子が2号機の打ち上げ見学に来ていた。爆発するロケットを見て泣いてしまった、悲しんでいた。この子にちゃんと飛ばすところを見せたい。もう一度来てもらってMOMOが宇宙へ行く瞬間を見せたい。次は笑顔で帰ることになるだろう。
(三戸氏からのメッセージ代読)
(キャッチフレーズ「宇宙品質にシフト MOMO3号機」は機体にも表示とのこと)
衛星軌道投入ロケットZEROについて
堀江:MOMOはサブオービタル、地球を周回できない。宇宙へ到達することと地球を周回することには大きな差がある。これまでにやってきたことを役に立ててZEROを開発。
横にあるのが実物大の模型。これだけ大きさが違う。ただこれでもイプシロンロケットよりは小さい。
MOMOは小型衛星打ち上げ市場を狙っている。
衛星のペイロードが安くなってきてニーズが増えてきた。ニュージーランドのロケットラボなどがライバル。我々は遅れているかキャッチアップしていきたい。
かつてIT会社ではインターネットの可能性を信じてがんばってきた。当時は回線が遅かった。今後宇宙は現在想像もつかないマーケットが広がっていると考えている。打ち上げロケットのニーズ、世界の打ち上げマーケットも大きくなるだろう。チャレンジする人が増えていくだろう。
今は打ち上げコストがネックになっている。これを1桁2桁下げて、さまざまなアイデアを実現できるロケットにしたくてチャレンジしている。
液体燃料ロケットは大変だが、さらに大型のロケットの開発や有人宇宙船の開発を進めていきたいと計画してのこと。
あと2~3年かかると思うがZEROを応援してほしい。
稲川:ZEROと事業戦略について。
MOMOの開発と同時並行でZEROの基礎研究を行ってきた。開発を進めるためパートナーを募ろうということで「みんなのロケットパートナーズ」を提案。
当社のロケット開発マスター計画
稲川:現在はMOMO3号機に向けて準備中。MOMO3号機がうまくいったら量産化へ向けて動き出す。
平行してZEROを開発してきた。研究から開発段階へ。液体ロケットの軌道投入にはさまざまな開発が必要。現在プロトタイプモデルを開発中。2022年末から2023年ごろ打ち上げ予定。
ZERO開発の背景~超小型衛星の需要拡大
宇宙産業の課題①:世界的なロケット不足
稲川:ZEROが宇宙輸送するのは100キログラムまでの超小型衛星。
近年数十機以上の小型人工衛星が打ち上げられている。打ち上げロケットの需要が加速度的に伸びてくると言われている。
- 2018年に打ち上がった小型人工衛星(50キログラム)は世界で250機
- 今後5年間で打ち上げを待つ超小型人工衛星は2,000~2,800機という試算
- 超小型ロケットを搭載可能な打ち上げ機会は現在年間30本ほど
- 世界的なロケット不足が宇宙開発のボトルネックに
稲川:中型・大型ロケットの相乗りでしか宇宙へ行けない不都合がある。
- 待ち時間が長く打ち上げ中止も
- 最適な軌道を選べない(例:打ち上げてから1年かけて軌道を変更している最中のALE(人工流れ星衛星))
- 打ち上げ機会を選べない
- 1回の打ち上げコストが高い
- →超小型ロケットによる専用打ち上げの安定供給が世界的に求められている
民間発想の低コストロケットへの期待の高まり
稲川:民間・ベンチャー発想での低コスト超小型ロケットが世界的に求められているが、これまでベンチャーで打ち上げに成功したのは世界でもRocket Labs社(アメリカ)のみ。
Rocket Labs社に続くロケットベンチャーを目指して
稲川:世界でロケットベンチャーは100社ほどと言われているが、実質の競合は数社。ISTも開発状況で負けてはいない。
きちんとこれから開発できれば世界に伍するものができる。
開発を目指す二段式液体燃料ロケット「ZERO」
稲川:射場は大樹町に。
MOMOと比較した開発の難易度
- 心臓部「ターボポンプ」の新規開発
- 大きさ:機体重量はMOMOの約30倍、エンジンの出力(推力)は約50倍
- エネルギー量:4~5倍の速度→20倍のエネルギー量
- 軽量化
- エンジンの強力化
稲川:外の知見で開発を効率化できる。
難易度の高いZEROの開発は当社単独では困難→本日、ともに開発を目指す法人サポート組織「みんなのロケットパートナーズ」を発足。
ロゴは日の丸をイメージ、富士山のシルエットも。
みんなのロケットパートナーズ
日本のロケットを盛り上げるISTの応援組織。
- MINROKE | インターステラテクノロジズ株式会社 – Interstellar Technologies Inc.(http://www.istellartech.com/minroke)
発起人代表挨拶
コルク佐渡島:「宇宙兄弟」担当編集。その中でも日本人のベンチャーがロケットを作る内容がある。それを実現できたらいい。作品はいま2030年くらい。ISTはそれに先行している。
「ドラゴン桜」を担当していた時期に堀江氏とのつながりあり。
IT企業時代の堀江氏は「インターネットが広がれば自分に想像できないことが起きる、そのためのインフラを作っている」と語っていた。宇宙で同じようにインフラを作ろうとしている。応援したい。
各社の担当
- 販売促進支援:丸紅「ISTと2016年に業務提携、日々の営業活動で小型人工衛星の需要を実感している」
- バイオ燃料のロケット活用を支援:ユーグレナ「石油の出ない日本でCO2を出さないバイオ燃料を実現しようとしている。ケロシンを作るため提携。世界初のクリーンなバイオケロシンを完成させたい。国連目標にかなった新しい燃料を海外からではなく、日本から発信していきたい」
- Webサイト、コミュニケーション支援:バスキュール(https://www.bascule.co.jp/)「テクノロジーや宇宙といえばということで声をかけていただいた。つながらなかったものをくっつけて新しい価値を生み出している。ISTは宇宙へつながらなかった人を宇宙につなげて価値創造している。新しい組み合わせを生み出したい」
- ターボポンプなど鋳造:キャステム「目標は部品のコストを1/10にすること。堀江氏と宇宙から紙飛行機を飛ばしたいと盛り上がった。扇子型のこの飛行機を飛ばしたい」
- 衛星軌道投入ロケットの射場などサポート:大樹町(町長メッセージ)「ISTの本社がある大樹町は30年以上前から宇宙事業を行ってきた。みんなのロケットパートナーズでISTのロケット開発が加速することに期待」
- ロケットエンジン共同研究:JAXA(角田宇宙センター所長吉田誠氏のビデオメッセージ)「産業振興に向けた取り組みを強化中、J-SPARCを立ち上げ協業を始めている。この枠組みでISTと協力。角田宇宙センターはロケットエンジンを開発してきた。ターボポンプなどの基礎研究も。ZEROのエンジンにJAXAの知見を活用できないか検討、角田の設備で試験し結果を共有。ISTのエンジニアの受け入れも。技術で貢献していく」
- JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC) | JAXA新事業促進部(http://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/j-sparc/)
- JAXA | 新たな事業を共創する研究開発プログラム 『宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)』の開始について(http://www.jaxa.jp/press/2018/05/20180511_jsparc_j.html)
レオスキャピタルワークス、日本創生投資もみんなのロケットパートナーズに参画。
トークセッション
岡田:自分がこんなところにいるなんて場違いだね。
堀江:いえいえ、同じ日本代表ですよ。
岡田:いま愛媛県の今治市でFC今治のオーナー、経営者。大きなスタジアムが必要だが今治市は加計学園でお金を使ってしまったので大変(笑)
堀江:岡田さんはチームのためにお金を集めている。すごいこと。
岡田:集まってくれた人たちを食わせないとと思うとやーめたとは言えない。ほらに近い夢を語ってお金を集めている。
堀江:やっていることが似ている。結果を出すのに苦労する。FC今治は去年J2に上がれなかった。MOMOも次きちんと打ち上げたいなーと。ロケットもサッカーと同じ見世物の要素。
岡田:新しいことにチャレンジしているからわくわくしている。堀江氏はいろいろ言っていて変な人だなと思っていたらけっこうまとも。皆さんが思う以上にいい人間。今治にも来てくれて。余計なことをしなければ食べていけるのにチャレンジしている。そういうチャレンジが世界に必要。
堀江:夢ありますよ。わかっていないことだらけですから。
岡田:お互い失敗をなめあっている。以前はいろいろあったが、そろそろみんなで堀江さんを応援しようという話を控え室でしていた。
堀江:感慨深い。
岡田:堀江さんに最初に紹介したのは本田圭佑。異端の部類。
堀江:いろいろやってもらっています。
岡田:JAXAも手伝ってくれる。堅いところだけれど認められてきている?
堀江:風向きが変わってきた。J-SPARCという仕組みに乗っからせてもらって。非公式での意見交換は今までもあったが公式の枠組みを作ってくれてありがたい。
岡田:認められてきているということ?
堀江:ロケットは民間の競争原理で開発が加速するというのが世界の流れ。もう一段進めたい。宇宙ロケットを上げているスペースX、Rocket Labsは政府の枠組みの中で打ち上げ契約を前倒しでしていて前払いでもらっている。国がベンチャーへ投資。スペースXには1,500億円。
ISTは始めたときは自分のポケットマネーで余裕だったが最近はそうもいかず。
岡田:支援者がユニーク。さまざまな業界から。先ほど飛ばした紙飛行機(キャステム)は大気圏再突入で燃え尽きないという。すごい。
堀江:衛星軌道から下ろすようになって大型化すれば紙飛行機に荷物を載せておろす
岡田:安いロケットができたらいろいろなことが起きる。
堀江:はやぶさ2のプロジェクトマネージャの津田さんと先日対談。宇宙で効率がよいイオンエンジンの開発は日本が先行。ロケットが高く打ち上げ機会が少ないから一発勝負。はやぶさ2のイオンエンジンも宇宙で検証したかったがテスト機会すらない。ZEROで機会が増える。
岡田:いろいろな人のアイデアが現実になる。
司会:ロケット開発が若者にインパクトがある。岡田さんからチャレンジへの応援メッセージを。
岡田:先が見えない社会だからこそ夢が大事。目に見えるもの以外にもお金が回っていく社会でないと。若者は社会に足りないものがあると感じている。夢にチャレンジしている堀江さんを応援したくなるのは当然。
チャレンジには勇気もいるが、自己資金を投じても行っている。自分も応援します。
質疑応答
産経新聞まつむら:MOMO3号機の正式名称について。資料では「宇宙品質へシフト」「宇宙品質にシフト」?
司会:「宇宙品質にシフト」。
まつむら:稲川社長へ。みんなのロケットパートナーズを立ち上げた動機になるできごとはあるか
稲川:MOMO2号機の打ち上げ失敗が大きい。MOMOは15~20人で開発していてそれでも苦労している。もっと大きく、技術的難易度が上がるZEROを開発するのに枠組みを考えなければとなった。
宇宙フリーマガジン「テルスター」しょうじ:高校生にどういう勉強や活動、経験をしたらよいかメッセージを
堀江:今の時代は自分でがんばりたいと思っている学生は勉強するしくみはネットでいくらでも論文を読めるしいくらでも勉強できる。
宇宙をやりたければそこへ集中してもよい。若いうちは時間がある。大人になるとしなければならないことが増えていく。高校生は衣食住があり生活のために仕事をする必要がなく勉強に理想的な環境。そのアドバンテージを生かして。
自分が高校の頃ネットはなかったので論文を読むことができなかった。今はどんなものにもアクセスできる。理想的な勉強環境。宇宙をやりたければ片端から論文を読んだり見聞きしたり行ってみたり、やっていけばすばらしい技術者や科学者になれる。
ISTもそんな若者にいつでも来てほしいと思っている。
稲川:ISTは高校生から大学院生までインターンシップ、アルバイトなど学生さんに来てもらって見てもらい、学んでもらっている。
宇宙ベンチャーはそういうことをしているところが多い。JAXAなど大きなところだけでなくさまざまなチャンスがある。
(ここで堀江氏退席)
時事通信たかはし:資料の確認。2023年の打ち上げは
稲川:ZEROの試験機ではない初号機の打ち上げです。
たかはし:JAXAの支援を受けてZEROを開発している?
稲川:ZEROのエンジンについて角田の設備を利用、共同研究、事業性の確認などをJ-SPARCという枠組みで。
フリーランスなかやま:海外の宇宙輸送サービスに対して丸紅がどう市場を取りに行くのか。売りはなにか
稲川:まず価格。また地域性。アメリカの会社で打ち上げるために海外輸出するとなると大変。日本やアジアのお客さんには日本で打ち上げられればインパクトがあるだろう。
東洋経済新報社りゅう:みんなのロケットパートナーズの初期の会社はどう声をかけたのか、JAXAとはJ-SPARCとみんなのロケットパートナーズの関連を
稲川:JAXAのJ-SPARCはZEROで提携。JAXAとはこれまでも非公式に話をしてきた。J-SPARCができたので参加させてもらいみんなのロケットパートナーズにも。
ほかの会社さんはこれまでもご協力いただいていた。きちんと形を整えて支援していただける体制を作ろうということでみんなのロケットパートナーズを立ち上げた。
朝日新聞いしくら:MOMO3号機の打ち上げ時期は
稲川:先ほどの縦噴き燃焼実験が最後の燃焼実験。大きな実験はすんでいて、折を見て北海道で機体公開もしたい。打ち上げ時期はそのとき正式アナウンス。なるべく早くとしかいえないが準備はいいところまで進んでいる。
フリーライターあらすね:MOMO3号機のあと商用化とのことだがMOMOはIST単独で?
稲川:はい。MOMOは新規開発が減ってきて保守的な開発や継続運用になる。そこはISTで。打ち上げ事業には丸紅の支援も
共同通信やまもと:MOMOにあわせてZEROも開発とのことだが同時並行する理由は
稲川:ZEROはビジネスの本丸。なるべく早くしたい。2017年の夏にMOMO初号機で成功していればよかったが今も開発が続いている。MOMOはいいところまで来たのでZEROの開発にアクセルを踏んでいこうということ。
日系アジアンレビューおおべ:MOMO3号機。春? 今年前半?
稲川:今年の早い時期にと思っている。
おおべ:JAXAへ送るエンジニアの数は
稲川:まずは1人。その後数人。JAXAとは随時ミーティングを行っていく。
(以上)