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とろけるような映像で眠りを誘う「メッセージ」

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テッド・チャンの『あなたの人生の物語』をドゥニ・ヴィルヌーヴが映画化した「メッセージ」を観てきた。地球に突如現れた物体を通したファーストコンタクトの話。宇宙人語の解読という直球のSF部分と、物語の進行でひねってあるところのバランスがよくていい感じだった。そしてとても静かな映画で妙に眠くなった。あれはわざとそう作っているのではないだろうか。

ピンボケ写真が好きなので、被写界深度(ピントの合う範囲)が狭い映像は気持ちよい。撮影監督はブラッドフォード・ヤングという人だそうだ。細部がぼんやりしているあの映像は、記憶の曖昧さのようなものを表しているのだと思う。

ピントが合っている写真は、他人が見てもその場にいたような気分にさせてしまいかねない。ピンボケにした写真は、なにを撮ったのか撮影者にしかわからない。裏を返せば、ピンボケ写真でも撮った人にはなにを撮ったのかがわかっている。写真とは撮った人が自分の記憶を掘り返す媒体であると考えるならば、写真をピンボケで撮っておくと自分だけの記憶のトリガーにできるのではないだろうか。ピンボケ写真には写真を自分だけのものにする効果がある気がする。

instagramにはピンボケ写真をいろいろ載せています。

この作品の原題は「Arrival」だそうで、それが「メッセージ」という邦題になってしまうのは「The Martian」が「オデッセイ」になるような残念さを感じる。とはいえそのまま「アライバル」にするとチャーリー・シーン主演のB級SF映画になってしまう。「アライバル」は宇宙人語の描写が妙によかったなあ。お、宇宙人語つながりですね。

  • 感想:「オデッセイ」は重力表現が不満だがプロフェッショナルしか出てこないのがよい(d:id:Imamura:20160212:themartian

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    • 岩崎修さんが作った「ライトイルミネーションオブジェ」という展示について書いている。SDカード内の画像を8×8ピクセルのフルカラーLEDでぼんやりと表示する。「たぶんこれ、自分が撮った写真を流している時が一番面白い体験になると思う」。

(2018年5月26日更新)