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爆音上映「ブルーベルベット」「ファイト・クラブ」

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吉祥寺のバウスシアターで恒例だった企画「爆音上映」が行われている。音楽ライブ向けの音響セッティングで大音響で映画を観るというもの。バウスシアターは5月いっぱいで閉館してしまうそうで、ここでの爆音上映は今回で最後になるとのこと。

今日はデビッド・リンチの「ブルーベルベット」とデビッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」を観た。爆音上映といっても耳が痛くなるほどではなく、でも明らかに大きな音で観ると没入できて心地よい。

ブルーベルベット

アメリカの平和な田舎町に戻ってきた好奇心旺盛な青年が、町の裏側にどす黒くうごめく人々がいることを知るという話。冒頭の青い空、白い花壇、黄色いチューリップ、赤い消防車などの原色の世界が町の明るい表側で、カメラが芝生の中へ入っていくとゴーッという音とともにその裏側、黒い昆虫がぞわぞわと隠れているのが見えてくる。その表と裏をつなぐのが、青年が原っぱで拾う人の耳である。

話の運びは奇をてらったところがなくテンポよく進む。もう何度も観ているから安心して楽しめる。

本筋とは関係ない見どころといえばなんといってもローラ・ダーンがわなわなと泣くときの口の形だし、盲目の店員がほかの人が挙げた指の本数を必ず当てることができるのは見えるものと感じられるものの関係について考えさせるし、「こんな夢を見たの」はお手軽にどうとでも作れるからちょっと安直かなとか、デニス・ホッパーが仲間の家から帰るときのパッと消えたようになるカットが面白かったりもする。

そして押井守の映画には川井憲次の音楽というのと同じでデビッド・リンチの映画にはアンジェロ・バダラメンティの音楽がついてくる。

ブルー・ベルベット

ブルー・ベルベット

途中の聖的なコーラス曲(Mysteries of Love)を歌っているのはジュリー・クルーズで、この人も「ツイン・ピークス」のテーマ曲を歌っていたりするおなじみの人。アンジェロ・バダラメンティと組んでアルバムも出している。

Floating Into the Night

Floating Into the Night

この映画を久しぶりに観て思ったのは、ジェフリー(カイル・マクラクラン)とサンディ(ローラ・ダーン)はこの10年後や20年後どうしているだろうということだった。昔観たときには考えつかなかったことだ。一度観た映画を10年以上たってからまた観ると、その間に自分に変化が起きているから考えることが変わってくる。二人はしばらくつき合うかもしれないが、そのまま結婚することはない気がする。なんとなく。

カイル・マクラクラン本人は最近どうしているかというと、「セックス・アンド・ザ・シティ」や「デスパレートな妻たち」に出ているそうです。

デイヴィッド・リンチ 改訂増補版 (映画作家が自身を語る)

デイヴィッド・リンチ 改訂増補版 (映画作家が自身を語る)

ファイト・クラブ

不眠症のサラリーマンが暴力によって充実した生活を得ようとする話。これは実に爆音上映向きの映画で、カイル・クーパー風のオープニングタイトルとともに大音響で激しい音楽が流れてくるとアドレナリンが出てきてこの映画の受け入れ準備が整う。

この映画は暴力がたくさん描かれるが決して暴力肯定映画ではない。よーく見ていると自分を傷つける暴力を尊ぶ演出になっていて、それによって生の充実を得ようとしている。このあたりは下のページ(ネタバレあり)で詳しく解説されている。

ロードショーで観たときに一番印象的だったのはコンビニ強盗のシーン。ブラッド・ピットタイラー・ダーデンがコンビニの店員に銃を突きつけ、「お前の夢はなんだった」と聞く。獣医になることだったと聞き出すと「生活のために夢をあきらめるのは許さない、6週間後に獣医になる勉強をしていなかったら殺す」。これは強烈だった。

ラストシーンは911テロみたいだけれどこの映画が作られたのは1999年。映画の爆破シーンは1993年の世界貿易センタービルの地下駐車場爆破事件や、1995年のオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件を思い出させようとしたのだろう。映画公開の2年後にそっくりな状況が現実化したとき、この映画はどう言われたのだったかな。思い出せない。

ファイト・クラブ (ハヤカワ文庫NV)

ファイト・クラブ (ハヤカワ文庫NV)

このあとの爆音上映

AKIRA」や「ブルース・ブラザーズ」なんかは実に爆音上映向きですねと思ったらやっぱり売り切れだった。

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下は2008年に「AKIRA」を観たときの感想。

バウスシアターが閉館したら左のクレープ屋さんはどうなるのかなと思ったりも。

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(5月12日記)