登壇者
- 星出彰彦(宇宙飛行士)
- 星出彰彦宇宙飛行士:JAXA宇宙飛行士によるISS長期滞在 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA(http://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/hoshide/)
中継録画
2分50秒くらいに始まります。
質疑応答
読売新聞ほんま:宇宙滞在後初の帰国ということで感想と楽しみにしていることは
星出:東京は思ったほど寒くなかった。天気予報は雪が降るかもということでやっぱり寒いのかも。関係者と技術的な意見交換などする機会がある。宇宙と地上で一緒に仕事をしてきた仲間と久しぶりに直接会えるのを楽しみにしている。
時事通信かんだ:いま星出さんの経験をふまえどういうことを訴えていきたいか
星出:ISS計画がいかに役に立っているかを伝えているつもりだがなかなかというところもある。ISSでは累計1500件以上の実験を行っている。6か月では150件以上、ロシアの実験を除いて。自分が滞在中に携わったのは37件。それだけの実験をできる軌道上実験室であることをアピールしていけたら。
成果というと宇宙での実験がすぐに役立つことを期待しているかもしれないが今は基礎研究に近い。実験のデータを受けて次の実験へというサイクルがある。それぞれは成果が出ている。
テレビ東京かのう:ISS離脱前に「この美しい惑星に生まれてよかった」とツイートしたが(https://twitter.com/Aki_Hoshide/status/270202740670603266)どんな光景が?
星出:地球を毎日のように窓から眺めるぜいたくな時間があった。山や海、夜の街などいろいろな表情。ISSから離れるとこれを見られないと感じた。この4か月間一緒に仕事をした地上の仲間と出会えたことを幸運だったと感じて。
ニッポン放送はたなか:帰還後のリハビリの最中で感じたことは
星出:予想に反して筋力が落ちていなかった。ISSの運動器具や運動メニューがよかったのでは。すぐに立ち上がれた。バランス感覚は衰えていた。船から陸に上がった感じでふらふらしている。数日から2〜3週間後。自分が思っているようにバランスをなかなか取れない。3週間後トレーナーから「3週間前と比べてわかるだろう」と言われてその通りだと思った。
はたなか:もどかしいと思ったか
星出:そうは思わず、ある意味楽しんでいた。人間の体はこういうものかと。自分の体のどういうところを回復しなければならないかなども発見。
NHKこぐれ:3回の船外活動の意義
星出:当初予定は1回やるかやらないかだった。いろいろ判断してやることに。1回目はうまくいかず次があった。自分の腕がよかったわけではなくトラブル対応。3回目はこのタイミングでするのかもう少し遅らせるのかという話のときにメリットデメリットを評価して行った。ISS全体に関わる故障だったのできちんと対応しておく必要があった。
地上のスタッフ含めてなにをすべきかが絞られた。なにをクルーとして知っていなければならないかなど。
こぐれ:今後どういうことに役立つか
星出:宇宙服は小型の宇宙船。技術が詰まったもの。日本は関わっていないが独自研究をしている。そういうところに自分なりのフィードバックをできたら。
こぐれ:超小型衛星放出のとき福岡工業大学で取材していた。宇宙に興味がなかったが小型衛星を作って意識が変わったという学生がいた。小型衛星の意義について
星出:教育的な目的で従来使われていたのをロケットによる打ち上げだけでなくISSからの放出という新手法を試せたのがよかった。ビジネスにも広がっていくかも。ロシアも同時期に船外活動で放出している。いろいろな放出の方法がある。日本はきぼうとロボットアームで。新しいインフラとなる意義は大きい。
共同通信ふかや:次回長期滞在の若田さんをどう見るか。コマンダーへの期待など
星出:若田さんとはNASDAの入社年度が同じで長いつきあい。誕生日は自分が2か月早い。人柄、技量、NASAを含めた各局の宇宙飛行士からの信頼、どれも一級。コマンダーとして新しいチャレンジもあるだろうが乗り越えていけるはず。苦労話も聞けたらと思う。
フリーライター林:1回目の船外活動後の節電についてと、「自己管理が大切」について自分の中の疲労サインなど自己管理で気をつけていることについては
星出:どの機器の電源を切ったかはとてもたくさん。電灯がひとつ消えているとか。生活に不自由するとか作業に支障が出たりはしなかった。
自己管理については昔ほど若くないなと。毎日きちんとできるだけ定時で上がる、ISSでは朝礼や夕礼がありその範囲で仕事を終わらせ残業をしない。ISSの環境は空気や湿度、温度が管理されていて快適。緊急事態時に動ける余力は意識して残しておかねばならない。自己管理が大切。常にできているかは疑問だが余力があるから残業するのではなく余力を残して仕事を終わらせる。
テレビ朝日たかいし:夕べの食事は、またどんなものを食べたいか、楽しみにしていることは
星出:昨日はうどんを食べた。せっかく帰ってきたのでいろいろとと思っているが忙しいのでどこまでできるか。どちらかというとメニューはそのときの気分で決めるので今これをぜひ食べたいなどはあまりない。
たかいし:今後具体的にどんなことをしていきたいか
星出:ISSから帰ってくるとISSの最新状況を一番把握している人ということでトラブル改善の作業。これはアメリカ、日本とも。今後宇宙へ行く若田飛行士、油井飛行士のサポート、こうのとりミッションのサポートを地上からしていければ。
日本テレビのい:4か月の滞在の中でこれは一生残るだろう、自分が変わったと思う体験は。また長期滞在で一番違ったことは
星出:難しいですね。船外活動が初めてだったので外から地球を見るのは大きかった。毎日毎週が新しい体験であり思い出に残った。作業もそうだしクルーとのやりとりもそう。貴重な経験だった。その中からひとつ挙げることはできない。
前回の2週間の滞在では分刻みのスケジュールで、運動時間に仕事をしたりなどもあった。今回は逆で意識して運動しなければならない。そこは意識してやっていた。自己管理の中で無理をしない。
TBSいとう:日本での報告会について。どういったことを伝えたいか
星出:それぞれの場所でさまざまな年齢層の人と話をするだろう。伝えたいのは地球の美しさ宇宙の楽しさだけでなく、多くの人と仕事をするすばらしさを。宇宙開発は最先端と思われがちで確かにその通りだがその根本には人間があり、人間が思いを込めて作ってきたもの。それが形になっている。自分の体験を通してこういう人たちがいたからこういうミッションができたと伝えていきたい。
広報:東京での報告会は21日開催です。
フジテレビまるやま:無理をしないときはなにをしていたか
星出:無理をしないと言いつつ翌日の準備、書類を見たりメールの整理、仲間との歓談。食事のあと寝るまで、クルーどうしで食事と話をした。人間関係を維持しよりよくしていく役に立っただろう。
日刊工業あまの:ISS予算の縮減について、一方で運用延長が議論されている。飛行士から見てISSの延長について考えを
星出:宇宙基本計画が開始して25年。利用できる間は利用するべき。ハードウェアの劣化に対してアップグレードを行い、利用していただく期間を延ばし利用しやすくすることが大切。
あまの:延長について賛成か
星出:2020年以降の運用に賛成。どこを使えるかアップグレードするか見ながらだがそうやって延長するのはあり。これをなくしてゼロからISSを作るのか、次の計画を検討している間は運用できる範囲で運用するべき。コストを削減しつつ。
NHKこぐれ:宇宙を身近にしたいと滞在前に言っていた
星出:自分の中では宇宙はもう身近で遠いところではない。4年ぶりに出張してきたという感覚が強い。宇宙をそんなに遠いところではないと感じてほしい。今の子どもはそうだと思う。宇宙に人間がいる状態が10年以上続いている。成果は広報イベントなどいろいろな機会でご紹介できたと思っている。
フリーランス大塚:小型衛星の放出について。スムーズにいったか。やってみて次こうしたらと思ったことがあれば
星出:放出機構の組み立てというゼロから関わった。MLIの巻きつけのとき配線などを考えて作られている。組み立て手順が複雑だった。地上で訓練したのでうまくいった。ここは難しいと理解しつつ地上とも連携して。地上から「そこクローズアップ、そこはこうして」など指示をもらいつつ。地上のスタッフもこうして組み立てられるとわかっただろう。次回は衛星が入ったカセットだけを交換すればよく効率的な運用が可能。
今回初めてだったのでひとつめのカセットの放出は自分がやった。2つめの放出は地上からアームを操作して。いろいろ効率が上がるだろう。
大塚:作業時間のトータルは
星出:のちほど確認させてほしい。
時事通信かんだ:ソユーズによるリエントリについて。前回シャトルで今回ソユーズ。宇宙飛行士は「ソユーズ上がりのシャトル降りがよい」というが
星出:リエントリについて語ると一日では終わらない。いろいろ話を聞いていた。パラシュートが開く瞬間宇宙船がゆれる。事前に聞いていたのはタオルの先にソユーズがついていてそれを振るようなものとかナイアガラの滝から樽で落ちるようなものとか。パラシュートがいつ開くかは事前にわかる。とてもゆれた。吐くかなと思ったが。終わった後サニータ・ウィリアムズ飛行士とともに絶叫し「もう一回やろう」と(笑い)。
ソユーズ内に高度計がある。表示には少し遅れがありゼロになるのを待っていては遅い、数百メートルで身構えるようにと言われていた。くるぞくるぞ、あれ来ないと思ったときにズンと来た。自分の席の真下が着地した。ゴロゴロ回ってパラシュートを引きずり、頭が下に下がったような状態で救助隊を待っていた。救助隊はハッチを開けやすい方向にぐるぐる回す。最後の瞬間まで楽しい時間だった。
星出:優しいほう(シャトル)がありがたいがそれぞれ特長がありどちらが優れているというものではない。カプセルにはカプセルなりの信頼性がある。日本が将来有人宇宙船を作るならカプセル型は避けては通れないだろう。種子島から行って帰ってくるときにはまずはカプセルからだろう。
共同通信ふかい:ISSコマンダーとしてのどんな苦労があると思うか
星出:若田さんは苦労を苦労と思わないところがあるだろうがコマンダーは各クルーの安全に気を配る。シャトルやISSの3人のコマンダーの下で働いたが個性がいろいろある。
ふかい:若田さんはどんなコマンダーになると思うか
星出:あんな感じのコマンダーになりますね(笑い)。厳しくはないがきっちりするタイプ。
朝日小学生新聞:人間関係を円滑にする心がけについて
星出:ISSにはいろいろな国が参加していて尊重するべき。否定から入るのではなく相手を受け止めて初めて次の議論に進む。15か国が参加していて優先度や利害が異なるが、ISSが重要で成果を上げるために来ているところは同じ。苦労を乗り越えてきた最初のステップは相手をよく理解し尊重すること。それがベースになる。
(フォトセッションへ)
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