読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

第24回ISSミッションステータスブリーフィング/第24回きぼう利用勉強会:メダカのOsteoclast(破骨細胞)

取材 ISS

登壇者

f:id:Imamura:20121113151614j:image

  • ISSプログラムマネージャ 三宅正純

関連リンク

配付資料

  • 第24回ミッションステータスブリーフィング資料(2012年11月13日)[ PDF: 692KB ]
  • 上記資料の配布元:報道関係者向け資料:「きぼう」日本実験棟 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXAhttp://iss.jaxa.jp/kibo/library/press/

「きぼう」日本実験棟のミッションステータス

  • 星出飛行士もあと1週間の滞在を残すのみ
  • 長期滞在のいろいろな成果を総括する
  • 3回の船外活動は有人宇宙活動の中でなしえた作業と思っている
  • 星出飛行士のコメント「歯ブラシを活用してボルトのねじ穴を掃除するなどは人間の知恵を活用、有人ならでは」
  • 地上もよい経験になった
  • こうのとり3号機のミッション完了
  • 実験装置を輸送した(AQH、ポート共有実験装置、小型衛星など)
  • 曝露パレットの移設を地上から遠隔操作で
  • 地上から操作できるという「きぼう」機能の拡張
  • 小型衛星放出成功
  • 衛星放出をロボットアームでというのは初(船外活動でというのはしたことあり)
  • 新たな利用機会を提供できた
  • 衛星放出は年1回を目標に継続していきたい
  • ISS輸送機運用
  • スペースXのドラゴン宇宙船が実証機と運用第1号機ともに成功
  • 各国の輸送機の運用を星出飛行士が担当。いい経験になった
  • 利用ステータス(4月〜11月)
  • 総括
  • 星出飛行士はとても忙しい滞在となった
  • 電力逼迫などにクルータイムを多く取られた
  • タイムリーに計画を見直して実験は予定通りに実施できた
  • 「きぼう」はロボットアーム、エアロックなどユニークな機能を持つ
  • これを武器に将来の有人宇宙探査に向けた技術開発も成果を上げ世界的にも貢献していきたい

質疑応答

産経新聞くさか:マクロ的、長期的な観点で聞きたい。星出飛行士の滞在は日本の宇宙開発の歩みの中でどういう意義があるか所感を聞きたい。また宿題は

三宅:星出飛行士に限らず管制している我々も宇宙環境利用をどう広げていくかという段階に来ている。彼が作業を通じて衛星放出やメダカの実験で身をもって示してくれた。さらに人間と(ロボットアームのような)無人の機器がバランスよくコンビネーションして一緒のシステムとして宇宙開発をさらに広げることが大切。将来JAXAにとっても火星などの有人探査において貢献できる道をつけてくれた。今後も新たな宇宙活用の方法を見いだし、さらに高みを狙っていきたい

読売新聞おおやま:スケジュール変更は具体的にどう修正したか

三宅:EVA(船外活動)は1回追加されると飛行士の時間(クルータイム)を数十時間使う。いくつか「この作業はもうちょっと待てる」というような優先度が低いものを削って後ろに回したりしている。「きぼう」利用実験の優先度は高く、メンテナンスよりも優先している。実験の必要なクルータイムは極力確保するようにしそのようにできた。
星出飛行士やほかのISSクルーががんばってくれて当初計画の移設や運搬を予定の半分くらいの時間でやってくれてカバーできた。

おおやま:休日に仕事をしたりしたと聞いた

三宅:仕事がないときも飛行士や医師の判断で可能な作業は入れてよいとしている。その範囲内で作業をしてもらった。医師の管理もあり追加作業はこの滞在に関してはギュウギュウということはない。

ニッポン放送はたなか:ISSの老朽化の現状についてどのような感触か。きぼうのメンテナンスが増えていくことはあるか

三宅:当初交換を予定していたものは軌道上で10年使っていた。予定より早く壊れたものもある。ISSは最初の組み立てから10数年たっており交換作業が出てくる時期ではある。たまたま星出飛行士のミッションでほかにも壊れたものがありバックアップに切り換えた。2020年まで使う中でそういうものが出てくる。クルータイムは本来メンテナンスではなく利用に使うべき。ロボットアームの遠隔操作でメンテすることも考えている。無人でできることはクルータイムを使わないように。有人と無人のバランスということ。

共同通信ふかや:3回の船外活動について。将来のためのいい経験について具体例を

三宅:MBSUの交換でうまく外れずツールをその場で作ったりした。そのツールを臨時で作るのではなく、ああいう道具が必要とわかった。2回目の船外活動でもしボルトがうまくはまらないとき船内に持ち込んで修理するということも考えていた。そうなったら「きぼう」のエアロックを使う方法も検討していた。NASAとも徹夜で打ち合わせた。単純作業は飛行士の手間をかけずにできるようにしたく、その経験を積めた。

ふかや:宇宙服の開発については

三宅:星出飛行士の船外活動経験でアメリカの宇宙服の作業性を知ることができ参考になるだろう。3回もやってくれたので帰ってきたら話を聞きたい

ふかや:すべての輸送機に関与できたというが

三宅:ドラゴンは彼が初めてつかんだ。こうのとりも。ATVは前回の古川飛行士の滞在でつかんだ。星出飛行士にクイックに感想を聞いたところではHTVの技術が民間機に使われていると感じた。日本の技術はすばらしいとも。

(以上)

登壇者

f:id:Imamura:20121113153249j:image

配付資料

  • 第24回「きぼう」利用勉強会資料(Medaka Osteoclast)(2012年11月13日)[ PDF: 1.12 MB ]
  • 上記資料の配布元:報道関係者向け資料:「きぼう」日本実験棟 - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXAhttp://iss.jaxa.jp/kibo/library/press/

関連リンク

Medaka Osteoclast

宇宙では飛行士の骨が減るとわかっている。カルシウムが骨から溶け出している
破骨細胞が活性化されて血中にカルシウムが出てくる
毎月1%カルシウムが減る
2年間で20%減ると地上では歩くと骨折するレベル
寝たきりの年寄りが年間1%と言われている
2年間は火星探査などの期間
どうやってカルシウムの減少を止めるかが大切
「きぼう」が完成して初の長期動物実験

メダカとゼブラフィッシュ

装置を開発したのは三菱重工

メダカの特徴

実験魚は世界的にはゼブラフィッシュが有名、マウスと並び称されている
日本ではメダカが多い
メダカは体が透明で骨が透けている
骨の発達が早くすぐに骨の様子を見られて骨発生の研究に便利
トランスジェニックを作れる

破骨細胞(Osteoclast)とは

骨髄の幹細胞由来
いくつかの細胞が融合した多核細胞

メダカの破骨細胞

破骨細胞が光るトランスジェニック(遺伝子導入生物)を作るためにマーカーを使っている
人でもマウスでもよく知られた破骨細胞マーカーを使う

咽頭歯

歯と背骨が代表的な破骨細胞のありか
歯は食べたものを腸に運ぶ役目をしている
歯が抜け替わるときに破骨細胞が働く

脊髄の構造

メダカの背骨は神経管と血管の間に脊髄がある

造骨・破骨トランスジェニックメダカ

破骨細胞は造骨細胞の近くにある。両方見えるようにする
造骨細胞が赤く光るように、破骨細胞が緑に光るようにした。これが今宇宙に行っている

脊髄骨上の造骨・破骨の3Dイメージング

どうやって解析するか:今回宇宙では生きたまま解析はしない。ホルマリンのようなもの(パラホルムアルデヒド)に固定して地上へ持ち帰り体をスライスしてスキャン、立体的に構築する

実験の概要

10月23日にソユーズで打ち上げ、2日後に星出飛行士が飼育装置に移動。2週間後(先週)に6匹を採取しパラホルムアルデヒドに固定。来週星出さんと一緒に帰ってくる
残りのサンプル(10匹)は5匹ずつ2つの水槽で飼育中。クリスマスくらいに固定しスペースXの3月か4月のフライトで戻ってくる
組織だけの解析ではなく遺伝子レベルの解析もしたい
実験開始時にRNAを保存(8匹)、スペースXのフライトで戻ってくる
残りの10匹は2か月後に採取、化学固定(6匹)とRNA保存(4匹)する

メダカの選抜・飼育経過

メダカは日本からの移送時4日間飲まず食わず、しかもロシアの寒いところにいることになるため保温箱を利用、26度前後が飼育に適した温度のところ23度くらいに抑えられた
312匹全部生きており輸送は完璧
バイコヌールで水槽に移し選抜
ほかのメダカを追い回すような気の強いメダカは取り除く。追われた方はえさやりのとき逃げるので、太るものとやせているもののばらつきが出る
宇宙飛行士と同じようにほかと仲良くできる協調性を持つメダカを選抜
また育ちがよいものを選抜。えさをたくさん食べるもの(宇宙に出たあと飼育空間に移動されるまで絶食のため)
回転盤で目がよいメダカを選抜(後述)
17匹を選抜し16匹が宇宙へ、さらに8匹を選抜して計24匹が宇宙へ
(ここからは資料になし、スライドショーと動画)
バイコヌールでの様子、プロジェクトチームの集合写真。東工大JAXA、三菱、エネルギアの人
軍事機密だったのでいつもエネルギアの人がついていて移動中の写真撮影も禁止
円筒形の水槽の外側で筒状の回転盤を回転させる。回転盤の内側には白黒の縞模様が縦に印刷されている。回転盤の速度を上げてメダカがそれに追従して速く泳ぐか、止めたときメダカも止まるかを見る
f:id:Imamura:20121113155559j:image
賢いメダカはまん中で小さく回る(そういうメダカが選ばれる)
メダカによってはぐるぐる回るうちに回転半径が広がっていく個体もあった
ソユーズの打ち上げ準備風景と上昇するロケット
ソユーズはどんなに風が強くても飛ばす
初めて宇宙へ行ったメダカがえさを食べるか心配だった


給餌装置からえさが出てきても3日くらいは食べなかった(えさが出ていることに気づかない様子)
その後えさを食べてくれて安心した


給餌装置に泡がついたところへえさが出てきたら協力して泡を食べては吐き、泡を細かくして周囲に分散させえさにありつく様子を撮影できた

おなかを上にして(照明に向けて)泳いでいる
背光反応(光を背にして泳ぐ)があるというがそうでもない

宇宙に来たメダカは選抜を勝ち抜いたエリートであり、人間の宇宙飛行士と同じであるのでメダカ宇宙飛行士と呼んでいた
上下がなく自由に動いている様子も宇宙飛行士と同じ
光の方におなかを向けて泳ぐものも多い
宇宙飛行士はメダカを見るのを楽しみにしていた。「仲間が増えた」と感じていた
メダカは小さい泡を食べるくせがある
えさを食べると小さい泡を吐き、それをまた食べるようだ

質疑応答

時事通信かんだ:到着直後にRNAを採取しているのは

工藤:DNA→RNA→たんぱくという流れ。遺伝子によってはDNAからRNAへ30分で変わる。短時間で活性化する遺伝子があると連鎖的にほかの遺伝子も活性化する。宇宙へ着いた初期に活性化する遺伝子を見たかった。とはいえ宇宙へ着いて2日後なのであまり早くない。もっと早くてもいいくらい

かんだ:こうなるはずだというモデルは

工藤:破骨細胞が活性化されるはずだから緑の光が強くなり、相対的に赤い光の面積が小さくなるはずと考えた。すべての破骨細胞を調べるのでどの部分が活性化したか、どの部分が重力の影響を受けるかがわかる

かんだ:重力を感知して破骨細胞へシグナルを出すのか

工藤:重力は密度が高い組織(歯や骨)に強く働く。仮説だが無重力では骨や歯の細胞が一番影響を受けるはず

読売新聞おおやま:破骨細胞をマーキングすることについて。おなかにも発現しているようだが

工藤:それは破骨細胞ではない。画像のアーティファクト(にせ色)。

おおやま:人間とメダカでは地上で受ける重力が違う。それによる違いはあるのか

工藤:首は重い頭を支えており宇宙ではそこの破骨細胞が強く活性化する。一番注目しているのは咽頭歯骨。歯は生え替わりのためにつねに破骨細胞が活性化している。宇宙でさらに活性化されるかも。背中の破骨細胞と咽頭歯の破骨細胞は違うので比べるとわかることがある。
その質問はいつも聞かれる。地上で活性化している破骨細胞は宇宙でも活性化している。同じことがメダカの咽頭歯骨で出るはず

ニッポン放送はたなか:ロシアに持っていた段階での絶食(4日間)について

工藤:JAXAでコンテナに詰めてフライトしモスクワで検疫して…という期間。5日くらいの絶食には耐えられると考えられていたがぎりぎりだしロシアは寒いので心配した。結果的に死んだりはせずほっとした。大きめの個体群や小さめの個体群を用意した。打ち上げの延期もあり大きめのメダカを連れて行った。バイコヌールに着いたらえさの数を増やし2〜3時間ごとにえさをあげた。
メダカは仲間がいるとたくさんえさを食べる。残りの1匹はひとりぼっちでえさを食べずやせていってしまった。
絶食と寒さに耐えたメダカが宇宙へ行った。
水槽内は8匹と8匹、3匹ずつ減って5匹と5匹。星出さんが持ち帰るのは3匹ずつの6匹。固定したものは試薬につけてあり死んでいる。メダカは宇宙飛行士で子供の夢を壊したくないから死んだことはあまり大きく書かないでもらいたい。

NHKはるの:新しい映像で得られた新しい知見はあるか

工藤:メダカのビヘイビアはよくわかっていない。夜どう寝るかとか。背光反応は向井さんの実験のときに言われたがよくわかっていない。多くのメダカは背光反応を示しているがいくつかは光におなかを向けて平気で泳いでいる。メダカの泳ぎ方は自由であちこちを向く。
空気について。人工肺なので空気呼吸は不要なはずなのに泡をつついている。空気層があったほうがいいのかも。
えさを食べたあと小さい泡の空気を吐く。それもしばらくするとなくなっておりメダカが食べて吸収しているのだろう。
メダカのビヘイビア(ふるまい)は観察の話であり最近の遺伝子研究では無視している。ビヘイビアが好きな人に映像を見てもらえばいろいろわかることがあるだろう。
子供たちにかわいそうと思わせないようくるくる回らないメダカを宇宙へ連れて行ったがくるくる回るものはあった。無重力での自分の動作と実際の動きに差があってこれはたぶんメダカがよくわかっていないのだろう。ほかのメダカに追われたときなどによく回る。
今5匹になっていてくるくる回るものはほとんどいない。地上とほぼ同じような雰囲気。

(以上)

ぶら下がりで聞いた話

宇宙へ行ったメダカは地球帰還時すべて標本にされてしまう。ソユーズで持ち帰ることにできたのはロシア側の厚意。メダカ宇宙飛行士と同じ親を持つ兄弟は地球にたくさんいるがトランスジェニック(遺伝子導入生物)なので自然に放すと大変なことになり厳しく管理されている。子供たちにメダカ宇宙飛行士やその兄弟を直接見せることができればよいがそれは難しい。
NASAやロシアはメダカの実験に非常に協力的で「メダカのことなら」といろいろ融通してくれた。

会見の所感など