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「143キロのパパ 摂食障害のわたし」の構成

夕べ、BS1でやっていたドキュメンタリー。話の流れが面白いと思いながら見た。

イギリスのランカスターに暮らすエマは15歳。この1年で体重が6キロも減った。食事をとろうとせず、家族で食卓を囲むことも無くなってしまった。イギリスでは20人に1人がこうした摂食障害に陥っていて社会問題となっている。 エマの家族はEDN(摂食障害ネットワーク)というボランティア団体に相談。毎週1回のカウンセリングが始まり、やがて食べない理由が判明する。それはパパの肥満だった。

BS世界のドキュメンタリー:<シリーズ 子どもたちの挑戦>143キロのパパ 摂食障害のわたし

まず、摂食障害のわたしが登場する。彼女は気が(©『虚航船団』筒井康隆)…じゃなくて、どうにも食べられない悩みを持っている。両親は心配するから、家族みんなで食事をしているとき、わたしがちゃんと食べているか監視されている気分になってしまう。朝食はそれぞれのベッドで摂るようになってしまった。

次に、カウンセラーが登場する。彼女は…、ええと彼女はわたしが摂食障害を克服するために、そもそもなにが原因なのかをさぐっていく。

そしてパパが登場する。彼は気が、もとい彼の体重が、わたしの摂食障害の原因だった。143キロのパパが、健康保険に入る話をしているときに冗談めかして「この体重のままだと50歳まで生きられないってさ」なんて言うものだから、わたしはパパのような体型にならないか不安になってしまったのだ。

食べなければいけないわたしと、食べすぎてはいけないパパに挟まれているママも大変だ。カウンセラーはママにも話を聞いた。すると、パパとわたしのきちょうめんすぎる行動が浮かび上がってきた。

パパは棚の中のびんやクロゼットの服が、自分の中のルールに従って並んでいないと気がすまない。それも大きなびんはよく使うものでも後ろ、シャツはハンガーに2センチ間隔でと、合理性に欠けたりいささかやりすぎだったり。

実はわたしも、自分の中にルールを持っていた。カーテンを閉じるときのしぐさ、ぬいぐるみの足の位置などが思い通りでないと、なにか悪いことが起きる気がしていた。しかもジンクスはジンクスでとばかりに、うまく閉まらなかった扉を64回つつくのをルールにしていたり。

カウンセラーは、パパとわたしに強迫性障害の傾向を見た。パパを育ててくれた祖母が厳格な人だったことも影響しているのかもしれない。

食べなさすぎるわたしと、食べすぎるパパ。二人は正反対だけれど、強迫性障害という共通点があった。

というところでHDDの容量がいっぱいになって、録画が切れてしまった。うわー残念。50分の番組の41分まで。

でもここまでで、番組の大きな流れはつかめた。

  1. 摂食障害のわたしが登場(点としてのわたし)
  2. 体重があるパパが登場(わたし−パパの線)
  3. 実はふたりに共通点があるとわかる(わたし−パパ−強迫性障害のトライアングル)

こういう構成は、ドキュメンタリーではふつうの作り方かもしれない。「実は…」の部分は、作り手はずっと前から知っていたのだろう。でも番組ではなかなか明かさず、結論をいきなりは示さない。わたしとパパの奮闘を見せつつ、「わたしとパパはどうしてこうなった?」が十分たまるようにしていく。そして終盤にその原因がわかって腑に落ちるというわけ。

森達也の「放送禁止歌」は、なぜ特定の楽曲が放送禁止扱いなのかを探っていく秀作ドキュメンタリーだ。でも森自身は、最初から理由を知っていた。もちろんだましたとかそういうのではなくて、番組を興味を持って見てもらうための構成だった。

そんな話を思い出しながら見た。

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放送禁止歌 (知恵の森文庫)

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