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サヴァン症候群のドキュメンタリー「脳 未知のフロンティア」

【元記事: 未知のフロンティア」:d:id:manpukuya:20060807:brain

明日の8月8日からBS1の「BS世界のドキュメンタリー」で、「脳 未知のフロンティア」というドイツのドキュメンタリーが3夜連続で放送される。時間はいずれも午後11:10〜0:00。

サヴァン症候群を採り上げるもので、キム・ピークなどおなじみの面々が出てくる由。

脳 未知のフロンティア(Beautiful Minds:Voyage into the Brain/2006年ドイツ)
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた役は、重度の自閉症患者ながら特定分野に優れた才能を示す、ある実在の人物をモデルにしたものである。数学や芸術などの分野で超人的な才能と記憶力を発揮する彼らは、フランス語で“賢い人”、賢者を意味する“サバン”と呼ばれ、世界におよそ100人いると言われる。サバン症候群の人たちの半数は自閉症で、7人に6人が男性である。このシリーズでは、ドイツをはじめ、アメリカ、イギリスなど7か国の地域から、サバン症候群の例や最新のサバン研究の成果を紹介する。そして、サバンの脳を科学的に分析することにより、人間の記憶や創造性が脳とどのように関係し、また男女の脳はどのように違うのか検証し、脳の未知なる可能性を3回にわたり探求する。
第1回 驚異の記憶力 The Living Computers
第1回は、「レインマン」のモデルとなったキム・ピークと一般の人の脳を比べ、脳のどの構造と働きが優れた記憶力をもたらすのか検証する。そしてピークのようなサバン症候群の人たちの脳には、不必要な情報をふるい落とすフィルターがないため、その脳はデリートキーを持たないコンピューターのようなものだと結論付ける。また、自閉症などの先天的な障害をもたない男性が、頭に野球のボールが当たったことがきっかけで超人的な記憶力を示すようになった例を挙げ、人間は誰でもサバンになる可能性をもっているとする科学者の意見を紹介する。
第2回 限りない創造性 The Miracle of Creativity
第2回は、人間の創造性は脳のどのようなメカニズムによって生まれるか検証する。また、ヘリコプターに1回乗っただけで建物の窓枠や屋根の形まで事細かに記憶し、町の立体地図を描くことができる青年や、6歳でピアノを始め7歳にはジャズ音楽を作曲するようになった天才少年を紹介。脳に欠陥を持つ自閉症のサバンは、経験や先入観などのフィルターをもたずに世界をありのままに見ることができ、それが優れた創造性を生み出すと分析する。アインシュタインニュートンモーツァルト、ベートーベンなどは、いずれも自閉症かそれより症状の軽いアスペルガー症候群で、右脳と左脳のバランスに問題があったという研究結果もある。このようなことから、一般の芸術家の脳に刺激を与えて自閉症の患者と同じような状態にし、才能が伸びるかどうか見るという研究も行われている。
第3回 男女の違いと可能性 Men and Women are unequal
第3回は脳の男女差についての科学的分析をもとに、サバン症候群の行動を検証し、脳がどのような可能性を秘めているか探っている。一般に女性の脳は言語や感情機能に優れ、男性は機械に強く数学的な解決に長けているとされている。しかし、自閉症の人々は男女とも感情レベルが低く、脳は極めて男性的とされる。サバン症候群の女性テンプル・グランデンは、世界中の家畜用施設を設計してきた人物だ。自閉症の彼女は生まれつき動物の考えることは何でもわかったが、人間の言葉の習得にはとても苦労したという。一方、暴力的な男性が突然発作に襲われ、芸術的な才能に目覚めて穏やかな人間に生まれ変わった例もある。また20か国の言葉を操る自閉症の男性もいる。さらに、異性との関わりが少ないとされるサバン症候群の人々の中には、それぞれの才能を尊重しながらともに生活を送るカップルもいる。

4月に放送された「夫には7秒の記憶しかない」も、明日(8/8)の午前中に再放送される。

夫には7秒の記憶しかない イギリス・元指揮者と妻の20年(8月8日午前10時10分〜11時00分放送/The Man with the 7 second Memory/2005年イギリス)
イギリス人の指揮者クライブ・ウェアリングは1985年ヘルペス脳炎による高熱で脳に大きな障害を受け、7秒以上前の出来事を記憶することができなくなった。これは、妻デボラの目を通して夫婦の壮絶な闘病の20年を見つめた番組である。デボラは病気を受容できず荒れた夫に8年付き添った後、特別な介護施設を建設したうえで離婚。新たな人生を始めようとアメリカに移住するが、自分がクライブを求めていることを悟り2000年に再婚した。デボラの長い心の旅を通して、愛とはなにかを問いかけるこのドキュメンタリーは、昨秋イギリスとカナダで放送され大きな反響を呼んだ。

これの感想はd:id:Imamura:20060418:sevenに。脳の働きがどうこうという内容ではなく、20年間の夫婦の軌跡を追う作り方で、ほかの番組とはトーンが違う。これはこれで、余韻があって心に残った。

すでに放送された脳関係のドキュメンタリー番組

BS世界のドキュメンタリー」では以前、共感覚を扱ったイギリスの番組が放送された。

共感覚”の不思議〜言葉誕生の謎に迫る(2005年11月6日放送・Derek Tastes of Earwax/2004年イギリス/BBC

数字や物の名前に特定の色がついて見えたり、言葉と特定の味が連動して、言葉を味わってしまうという独特の感覚を持つ人がいる。シネスシージア(共感覚者)と呼ばれる。

通常、私たちは視覚、聴覚、触覚、別々の感覚として体験するが、共感覚者の場合、二つ以上の感覚が同時に現れるのが特徴だ。なぜ共感覚が起きるのかは長いこと謎だったが、各国の科学者たちはようやくその謎を解明する手がかりを見出そうとしている。この謎が解ければ言葉が生まれたメカニズムも解明できる可能性がある。BBC の科学番組「Horizon」のチームが、共感覚者のユニークな日常を追い、科学の最前線が共感覚のメカニズムをどこまで解明しているかに迫った。

これの感想は、d:id:Imamura:20060322:bsにちょっと書いた。

教育テレビの「地球ドラマチック」でも、「ブレインマン」や「脳の力〜記憶力の天才たち」など、脳ものをときどき放送している。

地球ドラマチック〜ブレインマン(2005年11月9日・2006年2月11日放送)
http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/36.html人間の脳には想像を絶する能力が秘められていると言われています。各種研究も進められていますが、まだまだ全貌の解明には至りません。実際に特殊な力を持つ人々を紹介し、最先端の脳研究の成果と共に、人間の持つ可能性と不思議を描きます。(引用者註:世界的に珍しい、知的障碍を持たないサヴァン者であるダニエル・タメットのドキュメンタリー)
地球ドラマチック〜脳の力・記憶力の天才たち(2006年7月26日放送)
http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/63.htmlアカデミー賞受賞作「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じた人物のモデル、キム・ピーク。驚くべき記憶力を持つキムは父親と米国やイギリスをまわり、講演などをおこないます。キムの持つ能力の秘密を解明しながら、父親や旅先で知り合った人々に見せる彼の素顔や日常をお伝えします。

関連書籍

これらの番組に出てくる人はたいてい決まっていて、研究者の側ではラマチャンドラン博士がよく出てくる。脳と意識についての本『脳のなかの幽霊』を書いた人で、この本はなかなか面白そう。