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同人誌を作るのは楽しいよ

【元記事:同人誌を作るのは楽しいよ:d:id:manpukuya:20061002:doujin

「『本を出す』より『本を作る』ほうが好ましい」(d:id:Imamura:20060414:book)の続きとして、以前作ってコミケで売った同人誌の話を。

以前から書こうと思っていたけれどなかなか書けずにいたところ、コミケ代表の米澤さんが亡くなってしまったのでお礼も兼ねて。

ゲームセンターに行くのが好きな人にとって、どこの店にどのゲームが置いてあるかの情報は貴重である。新作ならばともかく、何年も前のマイナーなゲームとなると、置いてある店を見つけることすら難しい。

あのゲームで遊びたい、でもどこに置いてあるのかわからない。そう考えているゲーマーはたくさんいるだろう。そしてそれは自分も同じだ。とはいえ、どこにどんなゲームが置いてあるのかわかるものなど、誰も作りそうにない。

じゃあ自分で作ってしまえと考えたのだった。

当時考えたコンセプトは「『ぴあ』のゲームセンター版」である。

「ぴあ」の映画欄には、どの映画がどこの映画館で、どんなスケジュールで上映されるかが載っている。また、映画館の場所がわかる地図や、映画のタイトルから上映館がわかる索引もついている。

これをアーケードゲームに置き換えてやってみよう。

ゲームセンターへ行って、置いてあるゲームのタイトル、1プレイの値段、大型筐体ものは筐体の種類、連射装置やヘッドホン端子の有無(マニアだね〜)などを全部メモする。これらを、できるだけたくさんの店について調べてまとめる。さらにそれぞれの店の地図と、ゲームのタイトルから置いてある店を引ける索引をつける。

調査エリアをどうするか。都心全部のゲームセンターを回るのは無理である。どこにゲームセンターがあるのかを知っている街でないと、調査の効率が悪い。また調査に時間をかけすぎると、最初に調べた店の情報が古くなってしまう。

そこで、調査する場所を新宿、渋谷、池袋、神保町に絞ることにした。

調査開始はなるべく遅くし、コミケの2週間くらい前。昼はゲームセンターを回り、夜はデータをまとめていく。それぞれの店に番号を振り、地図を描いて場所を書き込む。索引を作る。店の雰囲気などの寸評も書く。完成した原稿をコピーして、折ってホチキスで留める。最後に、製本屋の友人に頼んで、めくりやすいように小口を裁断してもらう。おかげで、中綴じのコピー誌としてはなかなかの質感になった。

こうして、ゲームセンターの場所と、そこに置いてあるゲームが全部わかる同人誌ができ上がった。

[写真:ロケーションマップ表紙]

[写真:ロケーションマップ中身]

本のタイトルは「ロケーションマップ」とした。「ゲームセンターマップ」ではベタすぎる。ゲームセンターのことを「ロケーション」とも呼ぶことから、この名前にした。今思えば「ゲーセンマップ」でいいじゃん、わかりやすいし、という気もするが、当時はそれなりに考えた名前である。

「ロケーションマップ」は、1990年と1992年の夏コミで販売した。特に92年版の製作は、90年と違って準備に全力を傾けることができた。といっても、神保町の情報は調べられないまま時間切れとなり、店の場所を書き込んだ地図を作るのが精一杯。おまけに製本ではあてにしていたコピー屋を使えず、コミケ前日にあたふたすることになってしまった。

なんとか製本できた50冊を、晴海のコミケ会場に持ち込んで設営した。開場は10時である。完売できればいいなという程度に考えていたが、開場と同時にどんどん人がやってくる。驚いたことに1時間で売り切れてしまった。そのあとは、代金と送料をもらって住所を聞き、増刷分を後日発送することにした。増刷時には神保町の情報も追加したので、コミケで買ってくれた人には申し訳ないとも思った。

「ロケーションマップ」の販売価格は300円。1冊の制作原価(コピー代がほとんど)が200円強だったので、単純に繰り上げた。もう少し商売っ気があって、中身の価値を冷静に判断すれば500円くらいでもよかったかもしれない。なにしろこの本は、欲しい人が確実にいるとわかっていて、でも実際に作る人は自分のほかにいなかっただろうから。

最終的な販売部数は150部ほどで、利益は約1万円。かけた時間や交通費、コミケの参加費などを考えると、利益はほとんどない。しかし、自分が作りたいと思った本を作ることができ、それをたくさんの人に買ってもらえた満足感はたっぷりと残った。

「ロケーションマップ」の前後には、友人が作るゲーム系の同人誌にイラストやマンガを載せてもらったり、自分のイラストと文章をまとめた簡単な個人誌を作ったりもした。しかし、企画としての手ごたえがあり、またそれを満足のいく作りにできたと思えるのは、92年版の「ロケーションマップ」だけである。

これに満足したのと、ゲームセンターにあまり行かなくなったこともあって、「ロケーションマップ」は1992年以降作らなかった。同じ企画を誰かがやってくれるならその本は欲しいけれど、自分で作るほどの意欲はもう出ない。

職業として本を作るようになると、買ってくれる人の顔が見えにくくなると感じる。イベントでの即売など特別な状況を除けば、仕事で作った本を誰かが買ってくれる現場は、まだ見たことがない。

同人誌は、自分が作りたい本を自分で作りたいように作れる。コピー誌ならば、印刷や製本も自分の手で行うことになる。そしてそれを自分の手で売る。これが楽しいのだ。

どうですかこの本、面白いと思うんですが欲しくないですか。ぜひ買ってください。そして自分の本が売れたときの喜び。そう、それはまさに「自分の本」である。売れるも売れないも、すべての責任を自分で負う。その代わり、胸を張って「自分の本」と呼べる本を作れるのだ。

同人誌を作るのは楽しいよ。

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追記

現物が出てきたので書影と中身の写真を追加。しかし寸評やあとがきを読み返してみると、文章が悪い意味で若々しくて恥ずかしい。

Google PageRank的な「お受験2.0」

【元記事:Google PageRank的な「お受験2.0」:d:id:manpukuya:20061002:juken

とても面白い思考実験。

前提条件として以下のことを想定した場合の、新しい入学試験形態の提案。

  • 格差社会という現象が今後も続く
  • 「勝ち組み」といわれた人も、先のことが全然読めない状態は続く
  • 少子化は進み、大手学校法人でも、生徒を集めるのに苦労するようになる

こんな前提が続くのならば、「入学希望者を試験で選抜する」という従来の制度を止めて、 「受験を本人にやらせるのではなく、その子供の推薦人を試験で選抜する」という 試験制度を提案する大手私学が出てくるんじゃないか、という話。

レジデント初期研修用資料: お受験 2.0

推薦人の資質や社会的な地位をもとに合否を決めるという方法。きわめて不公平で非常にラジカルだけれど、個人的な経験からも一定の効果がありそうな気がする。

昔からある大手私学で、いわゆる「ブランド力」のあるところであれば、結構うまく行くような気がする。

根拠になっている理屈は2つ。

  • 優秀な人の友達は、やはり優秀である可能性が高い
  • 頭の中身に関係なく、優秀なネットワークに接続されている人は、社会的に成功する確率が高い
レジデント初期研修用資料: お受験 2.0

あれ、これってGoogleの「PageRank」にそっくりだ!

Googleは、検索結果の上位に表示するWebページを決める方法として、以下のようなロジックを採用している。

  • 多数のページからリンクされているページは、有用なページである
  • 有用なページからリンクされているページもまた、有用なページである

この独自の格付けによって、コンピュータが自動的に作る検索データベースは革命的に便利になったのだった。

上の受験システムは、個人よりも、その個人が持っているネットワークを評価する。その点で「PageRank」に似ている。

そう考えると、この考え方はほかの選抜システムにも応用できるのかもしれない。