読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

イプシロンロケットの記者説明会

登壇者

中継録画


Video streaming by Ustream

(04:20くらいに始まります)

打ち上げ日時、メッセージ応募結果と機体デザインについて

「みんなの宇宙への敷居を下げる」「宇宙のすそ野を広げる」がイプシロンロケットの目的のひとつ。
固体燃料ロケットは軌道投入精度が低いというのは迷信。PBSをオプションで選べるようにしてさらに高精度を実現。
衛星ユーザーの要望にバッチリ応えるのがイプシロン

開発目的

ロケットの世界に革命をもたらそうとしている。知能化による自律点検、モバイル管制。
一歩一歩前進してきたロケット開発に革命。
これまでの古くさい「アポロ方式」から少人数、短期間でロケットを打っていく「イプシロン方式」へ転換しようとしている。
ユーザーの要望に応えること、ロケットの世界に革命を起こすのがイプシロンロケットの2つの目的。
低軌道換算で1.2トン、コストは下げて38億円。射場での準備はM-Vの2か月から1週間へ。

機体構成とコンセプト

  • 革新的取り組み:輸送系共通技術、打ち上げの革新。モバイル管制
  • 古典的取り組み:基幹ロケットで培われた低コスト化技術、M-Vロケットの高性能化技術をそれぞれ伸ばす

コストと性能の両方をよくするのは難しいが多段式にすることで道が開ける。
1段目と上段ロケットは要求が異なる。
1段目はコスト圧縮効果が大きい。上段は燃料が少なく値段は低いがロケットの性能に及ぼす影響は大きい。
1段目は量産効果があるSRB-Aを。世界最高といわれるM-Vの3段目と4段目をイプシロンの2段目と3段目に。性能も向上させた。
トータルとしてコストパフォーマンスにすぐれたロケットになった。
イプシロンはM-Vより3割くらいよくなっている。(今村註:どういう基準でか聞き逃した)

イプシロンロケットの開発状況および打ち上げ準備状況について

M-Vを終えてから開発に入るまでの研究段階が長かった。そのぶん新しい取り組みに挑戦できた。M-Vの時代にはなかったモバイル管制などを実現できた。

推進系

スピン安定するためのモータ(スピンモータ、SPM)がある。
M-Vからの改良点2つ:材料の向上で性能とコスト向上、作り方をシンプルに。
モーターケース(燃料を入れるケース)はCFRPにカーボン→焼成する。
圧力もかけて作っていた(オートクレーブ)のを常圧で焼けるようになった。圧力鍋からオーブンへの変化。
イプシロンロケットはいかにシンプルにするか。製造のプロセスも簡単にしていく。
PBS(Post Boost Stage)について。初号機にも搭載。タンクの中にヒドラジンを入れて燃やす。
射場で薬液を充填するのは大変。工場で燃料を詰めてきてしまう。そうすれば現場では危険物ではなく単なるタンクとして扱える。弁のふたは火工品で飛ばさないと開かない。

構造系

ロケットと衛星をつなぐジョイントは制震機構がある。1段目のSRB-Aは燃焼時の振動がある。ロケットの先端に伝わると衛星の乗り心地が悪くなる。新規開発の制震機構。
ユーザーにとっての使いやすさをよくして乗り心地をよくしようというキャンペーンの一環。

フェアリング

円筒形と円錐形がつながったもの
以前は円筒部と先端部を別々に作り工場でくっつけていた。ボルトとナット、手間とお金がかかっていた。
円筒部と円錐部を一度に作った。部品を組み合わせる手間がなくなった。
組み立て終わった状態に最初から作ってしまう。部品点数が減って信頼性が上がる。手間が省けてコストが下がる。
製造プロセスのシンプル化。ガンプラ方式。プラモデルを組み立てるような簡単さ。

アビオニクス

自律点検などの新規要素以外はH-IIAのものを流用。誘導制御計算機のボードをイプシロン用に入れ替えて使えるようにした。
ロケット用の搭載機器はそれまで専用が基本だった。これからは共通化が大事。どんなロケットにも乗せられるアビオニクスを。
自律点検について。ROSE-S(スレーブ)からROSE-M(マスター)へ。点検結果、プロセスなどをモバイル管制システムへ送る。
どういう情報にもとづく判断かがわかる。
連休明けに総合試験が終了。

打ち上げ関連施設設備

M-V用をイプシロン用に改修完了。発射台位置を約12メートルかさ上げ。衝撃波がロケットに戻ってこないように煙道を作った。
管制室は宮原(みやばる)、警戒区域の外へ移動。つくばの図書館をモデルに普通の建物の一室で管制する。

今後の予定

5月末から各段を順次搬入、組み立て、システム点検。
打ち上げ数日前にY-0リハーサル。報道公開を予定。

イプシロンロケット打ち上げCG上映

SPRINT-Aは世界初の惑星専用宇宙望遠鏡。小さい衛星でも夢は広がっていく。

打ち上げ計画について

打ち上げチームの構成。

  • 打上執行責任者(ロケット系、衛星系、つまり現場系の責任者)
  • 打上安全管理責任者(準備を含めて独立して安全をはかる)

M-Vまでは実験主任が一人いただけだったのを分割。機能や責任が分散されている。
PBSは2回燃焼、軌道へ精密誘導。
昼間打ち上げると地球の裏側、夜の側で分離される。極端紫外線を見る望遠鏡は太陽を見てはいけない。
高度が高すぎるとバンアレン帯に入ってしまい都合が悪い。地球に近すぎてもよくない。
高度1000キロに上げるのはあまりない。イプシロンは特殊な軌道への投入に使える一例。
(以下、資料より)

1.5 打上げの期間及び時間

  • 打上げ予定日:平成25年8月22日(木)
  • 打上げ予定時間帯:13時30分~14時30分(日本標準時) ※
  • 打上げ予備期間:平成25年8月23日(金)~平成25年9月30日(月)
  • 打上げ場所:内之浦宇宙空間観測所

(※)打上げ予定時間帯は、上記予定時間帯の中で打上げ日毎に設定する。

表2-1 ロケットの飛行計画

事象 打上後経過時間 距離 高度 慣性速度
時:分:秒 km km km/s
(1)リフトオフ 0:0:0 0 0 0
(2)第1段燃焼終了* 0:1:52 70 88 2.6
(3)衛星フェアリング分離 0:2:30 131 147 2.4
(4)第1段・第2段分離 0:2:41 148 162 2.4
(5)第2段燃焼開始 0:2:45 154 167 2.4
(6)第2段燃焼終了* 0:4:27 415 323 5.1
(7)第2段・第3段分離 0:10:24 1658 822 4.2
(8)第3段燃焼開始 0:10:28 1671 823 4.2
(9)第3段燃焼終了* 0:11:57 2061 840 7.5
(10)第3段・PBS分離 0:16:48 3846 864 7.4
(11)第1回PBS燃焼開始 0:19:8 5943 896 7.4
(12)第1回PBS燃焼停止 0:29:58 7447 921 7.4
(13)第2回PBS燃焼開始 0:53:50 17431 1143 7.2
(14)第2回PBS燃焼停止 0:60:30 19020 1154 7.2
(15)惑星分光観測衛星分離 1:01:40 19722 1151 7.2

*)燃焼圧最大値5%時点

質疑応答

南日本新聞たかはら:初号機の射点での準備期間は

森田:運用段階では6日間で打てるが初号機は開発の一環、開発過程で必要な作業がある。1段を射座に据えつけてから39日を予定。
7月の半ばくらいから作業する。

日本テレビもり:高頻度が特徴とのことだが今後どういうペースの運用計画を考えているか

森田:イプシロンの開発は2段階。初号機は第1段階。低コストにする研究を進めている。その成果を反映して数年後にはもっとコストを下げた形、30億円を切るくらいにする。この規模のロケットとしては世界標準よりも安くここからが本領発揮。
低コスト版イプシロンは年2回打つ下地ができてくるだろう。低コスト版が何機目になるかはこれから。そこへ向けて確実に打ち上げていきたい。

もり:着実に打てるようになったとき欧米の商業衛星も視野に?

森田:その通り。M-Vは科学衛星を打つのがメインだったがユーザーの使いやすさを追求。いろいろなニーズの衛星を打ち上げて商業打ち上げにも利用できるようにしていきたい。

産経新聞くさか:コストとして定常運用時は38億円とあった記憶があるが?

森田:38億円は今回打ち上げるイプシロンの機体タイプのこと。本来の打ち上げでは不要な作業がある。ロケットに振動を加えたり。だから初号機はもうちょっとかかる。
定常運用に入ると今の機体で38億円。低コスト版が30億円を切るということ。

NVSさいとう:H-III基幹ロケットの構想がスタートしたという報道もある。イプシロンのブースターをH-IIIに利用することで生じるシナジーについて

森田:イプシロンPBSは小型軽量高性能なアッパーステージで固体、液体ロケット問わず活用できる。そういう研究も進んでいる。そういった融合は十分はかれる。

さいとう:衛星の管制も宮原で?

森田:その通り。M-Vまでは離れていたが今回からは管制室が隣同士。

さいとう:公募のメッセージはどのあたりに掲載されるか

森田:資料をご参照ください。

テレビ朝日たかいし:赤いラインにメッセージが載るとのことだが赤い文字を並べるのか、赤い地に白い文字なのか。

森田:近づくと文字に見えるが遠くからなら線に見える。

広報:赤い地に白い文字で掲載します。

たかいし:イプシロンロケットの打ち上げのインパクトは

森田:革命という言葉で表現するのがふさわしい。性能を上げるのが至上の命題であり打ち上げ方は誰も重視していなかった。現在のロケットの打ち上げ方はアポロから変わらない重厚長大、低頻度。
これからの宇宙開発で必要なのは性能ばかりではなくコストの観点。ロケットの打ち上げシステムをいかにシンプルにできるか。
50年後の宇宙ロケットの姿を考えると飛行機くらい身近な世界になるだろう。そういう世界を構築できるようがんばっている。
単に性能がよいロケットではなく簡単に打てるロケットでなければならない。すぐに打ち上げられるシステムにするには打ち上げシステムの革新が必要。
これこそ今までのロケットの常識をくつがえすもの。しかし未来のロケットに必要なこととして投入する。
アポロ方式からイプシロン方式にしていきたい。短期間少人数で打てるコンパクトなシステム。将来の日本の基幹ロケットや外国のロケットで使える技術になる。いずれ世界の標準になっていくだろう。

毎日新聞さいとう:固体ロケットの開発が中止になって7年、今打つ意義は。商業打ち上げの見通しについて具体的な計画はあるか

森田:固体ロケットの意義はいろいろあるのがM-V中止以後わかってきた。
固体ロケットはシンプル。液体ロケットではエンジン開発がロケット開発の大きな部分を占める。固体ロケットはエンジンがいらない。部品点数は半分くらい。開発期間が短くコストも下がる。新しいことに挑戦しやすい。液体ロケットは開発に10年かかるので挑戦しづらい。
新しいことをどんどん挑戦していける。固体ロケットが未来を切り開くのによいとわかってきた。
商業打ち上げについてどのくらい儲かるかはなかなか難しい話。
宇宙ロケットの世界はまだ産業になっていない。どのくらいもうかるかなどを考える段階ではない。イプシロンをもっと身軽にしていかなければならない。製造を簡素化するなど新しいことをリスクをかけてJAXAが行いプラモデルのように組み立てられるように。
そのくらい製造プロセスをドラスティックに変えていかねばならない。これは管制システムの改革の次にすること。
製造プロセスに常識をくつがえすような改革をしていかなければならない。それができれば宇宙ロケットが産業になっていくだろう。
具体的にはフェアリングの一体構造やモーターケースのオープン成形など。

日経新聞電子版すぎはら:世界標準について。またなぜドラスティックな改革ができたのか。

森田:打ち上げ方式の改革は点検の自律化、モバイル管制。少人数、短期間、コンパクト、低コストなシステムが重要。各国の取り組みとしてそういうモチベーションはあるが従来の常識の中での改善にとどまっている。日本で達成しようとしていることはけた違いに前進している。これが世界標準の技術になるだろう、世界より二歩も三歩も進んでいるということ。
なぜできたかというのは一日語れるくらい。逆転の発想。M-Vロケットが中止になってからイプシロンの開発が始まるまで4年間あった。その間未来を見据えた研究をしっかり進めることができた。
M-Vのときも打ち上げシステムの改革を考えてはいた。しかしモバイル管制のレベルではなく「コンテナ管制」、つまりコンテナ(2メートル、1メートル、1メートルくらいの箱)に打ち上げシステムが収まるようにという目標だった。当時の研究が結果としてモバイル管制になった。
M-Vを引退させられてよりどころとなるロケットがなくなったことが今の成果につながったと考えている。

フリーランス秋山:世界展開について。宇宙政策委員会の宇宙システム部会でアリアンスペースからの申し出でベガロケットについての協力ということがあったが相互協力はありうるか。するなら具体的には。また3号機の搭載ペイロードの検討状況について

森田:民間レベルで相互補完的にどういう協力ができるかという話が出ている。ベガとイプシロンは打ち上げ能力の目標が違う。組むことでより広いスペクトルの広い打ち上げニーズに応えられる。
3号機については科学衛星3号機が近い。公募がもうすぐ始まる。選定されて決まるのは今年度内くらいかなと思っている。

テレビ朝日報道ステーションたきおか:H-IIAロケットよりも小型ということで手軽さを実現できたのか。小型のメリットは

森田:固体ロケットはエンジンがいらないため部品点数が少ない。射場での組み立てや点検の手間がそもそも少ない。加えて自律点検や管制の簡素化がイプシロンのシンプルさのポイント。これらは固体にとどまらずどんなロケットでも活用できるだろう。
開発期間が短いこともポイント。

読売新聞のより:部品点数の少なさ、低コストについて。具体的にどのくらい減ったのか。また自律点検についてそれが可能になったキーとなる技術は

森田:イプシロンは助走。ロケット全体の取り組みに広がる前段階。次のステップ、その次のステップに行くに従って適用範囲が広がり部品点数が少なくなっていく。ロケットの開発はそういう世界。
ノーズフェアリングについていえば円筒部分と円錐部分の部品がひとつになった。これで半分。円錐と円筒の部分をつなぐのにボルトが50〜60本とすると2本ですむようになる。こういう改善をロケット全体に広げていく。
自律点検とモバイル管制、その間をつないでいるのは単なるイーサネットのケーブル。ROSEが集めたデータをLANで地上の管制に送り点検結果をチェックする。ロケットの中のデータがモバイル管制装置から直接のぞけるようになったのが一番大きなポイント。それまでは1つのチェックに1本ケーブルを使うような世界だった。

のより:不具合があった場合は

森田:そのプロセスをどうするかもROSEなどに仕込むことができるようになっている。なにを交換すればよいなどが瞬時にわかるようになる。昔は人が集まってああでもないこうでもないとやっていた。

朝日新聞まつお:技術、部品、素材の海外調達の具体例は。モバイル管制についてどこでも管制できるシーロンチなどを視野に入れているか。また固体ロケットはJAXAになってほぼ初めてといえる。ISASでないことへの感想は

森田:特許で海外への依存はありません。素材は日本が世界最先端で海外から買う必要はない。部品はちょっとある。電気製品、アビオニクス、通信装置の中には汎用的な部品がたくさんある。DC-DCコンバータなど。こういうのが海外製品が安かったりするので使っているところもある。同じようなものが日本でも売っているので海外製品に依存しているというレベルではない。具体的に何パーセントか…難しいが数パーセント。
モバイル管制ではどこでも打ち上げられる世界を構築した。発射台とレーダーさえあればよい。レーダーもいらなくなるかも。世界中どこからでも管制するのも可能ではある。しかしわざわざ海へ出て打ち上げるよりは飛行機から落として打つようなのが考えられる。
ロケットの打ち上げには安全上の配慮や法的な部分も含めて実績が必要。周辺住民の理解も大切。決して気軽にあちこちで打てるものではない。内之浦は地元に応援されていたのがポイント。聖地として続けられるようがんばる。
そもそもJAXA統合後M-Vを3機打っている。完成したロケットをただ打っているように見えるかもしれないが衛星とロケットなどで人の連携も大事で一体としてしっかりやっていた。JAXAになってから3機打っていて連携ができていた。その際射場でのトラブルはまったくなかった。これはすごいこと。JAXAになってISASだけでなくNASDAの輸送本部も一緒になってやっていたからできたことでは。
M-Vは統合のシンボルと言われるが実体としても統合していた。
思うところがないかというと…イプシロンでは運用だけでなくまったく新しいロケットを開発するものだった。JAXAとしてひとつの組織が行った最初のロケット開発だった。その点運用だけだったM-Vから違う段階。

東京新聞さかきばら:打ち上げ要員の人数は。内之浦の改修にかかった金額は

森田:人数は運用時には管制室に最低1人、2台置くのでもう一人、その作業を確認する人がとなって4〜5人ですむ。今回は開発段階なので点検や手順書の確認、その確認など。なのでM-Vから劇的に減るわけではない。具体的な数字はうーんどのくらいかな。人日でいうとM-Vは2000人日。イプシロンの運用段階では150人日を目標にしている。初号機はやはり2000人日を想定。
施設改修にかかった金額は…地上設備を新しくしたりぶんも含めて50億円くらいと思う。

ニッポン放送はたなか:コスト削減についてしてやったりというか、ここまでできたゾという達成感はあるのか率直なところを

森田:M-V引退の理由がコスト面だったので感慨深い。低コスト化だけでなく次の世代につながるような自律点検やモバイル管制を実現できたほうが自分の中では大きい。将来につながる種をたくさん仕込むことができた。

(以上)

その他の写真

以下にあります:

関連記事