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小惑星探査機「はやぶさ2」クレーター探索運用の状況報告について

日時

  • 2019年4月25日(木)17:00~17:30

登壇者

はやぶさ2」プロジェクトチーム

中継録画

プレスリリース

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報告

(津田氏から)

本日クレーター探索運用(事後)を行った。高度1.7キロメートルまで降下、クレーターができたと思われる領域をくまなく撮影。運用は予定通り進行、すべての撮像を終えて上昇中。撮影された画像を下ろしているところ。その中からはやぶさ2が生成したものと思われるクレーターを見つけることができた。

(資料p2~p4)予定通りの観測ができた。

(資料p5)SCI衝突前と後の画像の比較。この画像は一辺20~30メートル。地形が変わったと考えられる領域は10メートル四方くらい。地形が明らかに変わっている。ここはSCIが狙った領域。

どの部分にSCIが当たって地形が変化したかは断定できていない。クレーターの直径などはまだわからない。10メートル四方くらいの領域が変化しているとわかる。精度200メートル以内と申し上げていたが、実際には狙った場所から10~20メートルくらいの位置に当たったものと思われる。狙うべきところに人工クレーターができた。

資料p6は衝突前と衝突後の画像。このときは地形の変化がSCIによるものと断定できず。画像の中央に変色がある。

資料p7はS01に印をつけたもの。青い丸の少し北側を狙っていた。衝突痕は狙った位置に非常に近い。

資料p9はさらに引いた絵。(高度19キロメートル)

p11は降下中のONC-W1による航法画像。ナビゲーションに使うもので解像度は低い。降下中はそこにクレーターがあるとはこちらでも見えなかった。

S01の少し北側を狙い、まさにその付近にクレーターができた。

p13は今後の予定。運用としては明日はやぶさ2ホームポジションへ戻る。データを詳細に解析し考察結果を5/9に記者説明会で示したい。

質疑応答

テレビ朝日ながの:世界初の試みが成功したといえるのか

津田:人工クレーターを衝突器で生成した。事後に詳細観測することも含めて世界初。ディープインパクトとよく比較されるが衝突エネルギーははやぶさ2のほうが小さい。人工クレーターを作って後日詳細に観測するのは世界初。
SCIの運用の日に一度成功宣言している。もともとのはやぶさ2の目的にてらすとリュウグウに衝突器を衝突させたことを確認できたことで成功と。
今回このように明らかなクレーターを作れたとわかったので大成功といってよい。

ながの:クレーターができたという発表でよい?

津田:はい。

久保田:衝突装置でできたクレーターを画像で確認できた。模様も変わっていて形状にも変化がある。内部の物質も見られるようになった。大成功といえる。

共同通信すえ:お気持ちを一人ずつお願いしたい

荒川:7年間この日を待ちわびていた。イジェクターを見たときも感動したが数メートルの大きさという想像以上のものができていて人生最高の日。

吉川:自分もはやぶさ2の打ち上げの時からSCIの挑戦がうまくいくかと思っていたが今日の結果を見て大成功。サイエンスはこれからだが今後に非常に期待。楽しみ。

久保田:一目瞭然ではやぶさ2リュウグウに足跡を残して内部を見られるようにしたのは大きな扉を開いた。

津田:足跡を残せたのは深宇宙探査で初めて。飛び上がるほどうれしい。管制室に歓声が上がった。たくさんのメンバーが関わっていて打ち上げ後に入ってきたメンバーもいる。挑戦的で世界初の自覚をもってやってきた。明らかにクレーターができている画像はうれしい。チームと感想を共有した。たいへんうれしい一日。

ライターあらふね:できたクレーターにタッチダウンできそうか。2回目のタッチダウン地点の選定状況は

津田:そこ興味ありますよね(笑い)。チームの中でもそういう議論をし始めている。今日のところでどうともいえない。どう思われますか?
場所によってデコボコがきわだった部分と、さらさらの更地になったように見える部分がある。資料5ページ。狙うとしたら更地のあたりを狙えるかという議論をするが、まだ実際にタッチダウンするかどうかの前に地形を調べる必要がある。ステップを踏んでやっていきたい。
太陽との距離の関係で6月末から7月初頭がデッドライン。それまでに方針を決めて実行するか決める。

NHKはるの:冒頭の発言中、「はやぶさ2が生成したと考えられるクレーター」とあったが断定できる?

津田:「はやぶさ2が生成した人工クレーターを見つけることができた」といえる。

はるの:現在の画像でどんなことがいえるか

荒川:わたし、ここに到着したのが15分前で今見たところだが地形が変化した領域が10メートルほどある。事前予測のほぼ最大径。一番流動化しやすくこれ以上大きなものはできないだろうという想像の最大がこれ。これほどボルダーが多いリュウグウでこの大きさができたのが意外。とても興味をそそられる。

毎日新聞いけだ:10メートル以上の領域に地形変化があるというが具体的には

荒川:まず明らかにへこんでいる。それだけでなく、いくつかの岩が移動しているようにも見える。もともと埋まっていたボルダー
(中略)

いけだ:(略)

荒川:クレーターができたとき放出物を分離カメラで見た。ほとんどのものは宇宙空間へ飛び散るが遅い放出物も発生する。それがクレーターの周囲に再度堆積する。それが周囲より黒いのでこのような模様ができたのかもしれない。

いけだ:砂なのか、もっと粗い石?

荒川:それはこの写真ではなんともいえない。

時事通信かんだ:40メートルの暗色領域について。10メートルの地形変化の領域に加えて堆積物がある周囲もタッチダウン点の候補になる?

津田:はい。必ずしもクレーターの真上に下りる必要はなくイジェクターを採取するのが目的。クレーターの周囲からも候補を探す。

かんだ:撮影した場所のデータをどういう順で下ろしたのか。

津田:管制室のメンバーはみんな早く見たいと思っていた。ここを狙って撮影したものを先に下ろしたということはない。降下運用が終わって地球を向いて姿勢が安定したところで送信を始めるが送信開始を早くできた。今日はアンテナの状況がよかったので通信速度が速かった。データが早く下りてきた。

かんだ:管制室の様子をもう少し詳しく知りたい

津田:こういう画像が下りてくるモニターは少し奥まったところにある。ふだんは人が集まらないが今日画像が下りてきたときはみんなが集まって芋洗い状態。画像処理をかけたメンバーが画面上でいじりつつ、後ろから「ここを拡大」「色合いを変えろ」など言いつつ。
画像が見えたとき「おおー」という歓声が起きて拍手も出た。

ライター林:画像について。着陸するとしたらサラサラの領域というが具体的には

津田:一般論としてはやぶさ2が安全に着陸できない場所を探す必要がある。この地形は1回目のタッチダウンの時も痛い目にあっているが、サラサラに見えても近づくと岩だらけと言うことがある。いまのところどこに着陸するとはいえない。

林:荒川先生は以前、イジェクターカーテンが左右に非対称と言っていた。この写真をみてどうか

荒川:クレーターの形状を見ると変化している領域の中央近くに大きなボルダーがある。そのあたりにイジェクターカーテンがぶつかったのなら非対称な形状になった可能性がある。

林:地形変化の10メートルは事前の実験では最大径と思っていたかそれに近かったとのことだった

荒川:サイズに関してはまだなんともいえない。思っていたよりは大きい。

(以上)