年末に書いた記事が公開された。
- Make: Japan | キーボードを愛し、キーボードを自分で作り出す人々「天下一キーボードわいわい会 Vol.1」(https://makezine.jp/blog/2019/01/tenkaichi_keybord_waiwaikai.html
)
自作キーボードの世界をひと通り理解できる記事にしたくて、調べてはちょっと書き、調べてはちょっと書きのくり返しで時間がかかってしまった。苦労したのでホットエントリになってうれしい。
記事では採り上げられなかったけれど、紹介したかったキーボードがいくつかある。
まず、押下圧280グラムというとても重いキースイッチ(通常は50グラム前後)を使ったキーボード。よいしょっと押さないと入力できない。(写真を撮り忘れた)
#天キー 260gキースイッチ!握力鍛えるのに最適。欲しい pic.twitter.com/KgzkBmoGiL
— Jhon Smith (@push_back) 2018年11月3日
立体キーボードは記事ではDactyl-ManuFormを紹介したけれど、日本でもColosseum60があるのでこれも紹介したかった(写真を撮り忘れた)。
戦士たちよ…闘いの幕開けだ。
— しろとり (@swan_match) 2018年10月30日
今こそ情報化社会を勝ち抜く剣を取れ!
フルカラーLED円形闘技場型キーボード「Colosseum60」
最後に生き残るのは誰だ…?#Colosseum60 pic.twitter.com/ehaOZt3X4i
- 情報化社会を切り裂く剣「Colosseum60/44」を創造した件 - LANケーブルは100mしか繋がない(http://swan-match.hatenablog.com/entry/2018/12/15/145535
)
イベント当日の様子はTogetterにもまとめられている。
- #天キー 販売物まとめ 天下一キーボードわいわい会 Vol.1 当日 - Togetter(https://togetter.com/li/1285285
)
去年は自作キーボードのムーブメントが一気に広がった。自分の観測範囲に入ってきたからそう見えるわけではなく、イベントで登壇したアーリーアダプターの人が何人もTwitterに「2018年はフォロワー数がすごく増えた」と書いていた。
キーボードの自作はパラメータが多すぎて、「自作できるんだな」からすぐ「ちょっと待って、それはものすごい沼なのでは」と思い至る。キーの配置、キースイッチ、キーキャップ、キーマップ(どのキーを押したらどんな文字が入力されるか)と、キーボードを作るにあたって自由になる項目はたくさんある。それぞれをどうするかの選択肢もまた無数にある。
自作キーボードの界隈では「エンドゲーム」というフレーズが頻出する。究極の、理想の、迷いがなくなる、そういった意味である。「このキーボードが自分にとってのエンドゲームになるはずだ」のように使う。裏を返せば、そこにたどり着くのがとても大変であることも想像させる。
キーボード沼がどんな沼かを概説した記事が、「沼 Advent Calendar 2018」(すごい名前だね)にあった。キーボード沼が扱う分野として、「既製品沼」「キーマップ沼」「キースイッチ沼」「キーキャップ沼」「電飾沼」「音響沼」「ケース沼」「電子沼」「ケーブル沼」が紹介されている。
- キーボード沼マップ(ぬまっぷ)(https://blog.ikejima.org/make/keyboard/2018/12/23/keyboard-numa.html
)
沼はいろいろあるけれど、キーボード沼はカメラ沼や自転車沼より実用度が高いのが面白いと思う。なにしろキーボードはパソコンを使うなら絶対必要だ。自分に合うキーボードを使えば肩こりが楽になるといった効能も期待できる。
冒頭の記事を書くために、自作キーボードを販売している人、作ってみた人、いじっている人のブログやTwitterをたくさん読んだ。そうするうちに、自分だったらこういうキーボードがほしいなーというアイデアが出てきた。
自分の現状と不満点
今使っているキーボードはエレコムの「TK-FBP044」である。買ったのは2014年の末。
- 新しいキーボードを買う(d:id:Imamura:20141224:TKFBP044
)
写真の上側はそれまで使っていた「TK-FBP014」。新モデルのTK-FBP044はいくつかの不満点が解消されていたので乗り換えた。
TK-FBP044のいいところ
TK-FBP044から改善できるならしたいところ
このキーボードに特有の不満点ではないが、こんなふうになったらいいなというポイントは以下。
キーボードを作るならこうする
- 左右分割型のキーボードを使い、中央にテンキーを置く。ポインティングデバイスも中央に置ければなおよいが、それが無理でもホームポジションからみたマウスの位置は普通のキーボードでいうとテンキーの場所になるので近くなる
- 「BLE Micro Pro
」を使えばTK-FBP044と同じように自作キーボードを複数マシンで切り替えながら使うことができる。自作キーボードのファームウェア(QMK
)はMacモードもちゃんとあるようだ
- 通常のキーボードはファンクションキーも含めて6列あるのが基本だが、キー列はファンクションキーの列や数字キー列を省略して4列あればよさそう。自作キーボードの記事でとてもよく見るのは、「数字キーがない自作キーボードが多いが自分には必要だろうと思って数字列があるキーボードを作った、でも使っているうち数字キー列は不要だとわかった」という感想。中には「数字の列がないキーボードを使い始めてこれは無理と思い数字列つきの自作キーボードを発注、しかし部品が揃って作るころには数字列がないキーボードに慣れていた」という記事もあった
おっと危ない、自作キーボードについて調べているうちに沼に入りかけてしまったようだ。
でももう買ってしまった。
- Attack25(キット内容&ビルドガイド) | techsp(http://www.sho-k.co.uk/tech/821.html
)
- (紫軸のキースイッチ)☆New version☆ Kailh Box Royal switches (10 pcs) – KBDfans(https://kbdfans.cn/products/kailh-box-royal-switches-10-pcs
)
いきなりちゃんとしたキーボードを作るのはさすがにハードルが高いと考え、まずはテンキーから作ることにした。感触がわかってフルの分割キーボードを作ったあとも使い道はあるから無駄にはならない。
作例を見るとテンションが上がる。
- Zinc / Attack25 製作例 | techsp(http://www.sho-k.co.uk/tech/954.html
)
Attack25はテンキーとしてはキー数が多いので、独立した「=」キーを作れる。紫軸のキースイッチは、「天キー」で触らせてもらったキーボードの中で感触が好みだったものを選んだ。念のためキースイッチを交換できるようにしたいのでベリリウムを買おう。
以下はキースイッチを取り外し可能(ホットスワップ)にする作例。
- Holtite Socketsではんだ付け無しでスイッチの交換し放題なPCBを作ろう - Voxel Highway(http://riv-mk.hateblo.jp/entry/holtite_sockets
)
- キースイッチを交換できるHelixを作った #Helix祭り - にるぽっぽ(http://nillpo.hatenablog.com/entry/2018/02/25/022158
)
- crkbd (コルネ DIY keyboard) をキースイッチスワップ仕様で組んだ - よしなし(https://hdbx.hateblo.jp/entry/crkbd_1
)
それからこれも買った。
- Majestouch Linear「マジェスタッチリニア」 日本語108キーボード・かななし・黒 黒軸モデル - DIATEC|ダイヤテック株式会社 製品情報(http://www.diatec.co.jp/products/det.php?prod_c=442
)
ジャンクのMajestouch Linear(黒軸)。十数個のキーが入力できないため安かった。キースイッチとキーキャップを自作キーボードに流用するつもり。キーキャップを取り外す工具(キープラー)はついていなかったので、久しぶりに3Dプリンタを使って出力しよう。3DデータはThingiverseで見つけてある。
- Parametric keycap puller by al177 - Thingiverse(https://www.thingiverse.com/thing:63154
)
左右分割型のキーボードをどういうものにするかは今後考えることにする。たぶん今年中にModulo対応の自作キーボードキットがいくつか出てくると思うので、上の条件でいい感じのを探そう。キースイッチを交換できるようにすれば、しっくり来るものを見つけるまで試行錯誤もできるだろう。
「天キー」を取材した段階では、実はまだ自分でキーボードを作ろうという気分にはならなかった。楽しそうにやっている人たちの様子を知りたいというスタンスである。しかし記事を書くために調べていたらどういうものかだんだんわかってきて、これなら自分でもできそうだしやってみたいという気持ちになってきた。
自作キーボードが盛んになったら、こういうことが起きそうな気がする。
- メーカー製パソコンのBTOオプションに分離型キーボードが含まれるようになる
- 「タモリ倶楽部」「マツコの知らない世界」「沼にハマってきいてみた
」のいずれかでキーボードの自作が採り上げられる
そのほか、「キーボードが別売りのノートパソコンが発売される」…と書いてから「それはタブレットPCだ」と気がついた。ははは。
キーボードの自作で恐ろしいのは、どういうキーボードが一番いいかは使う本人にもわかっていないということだ。作って使ってみると不満が出てきたり、ほかのもっとよさそうなアイデアが出てきてしまったりする。そういうところが沼の沼たるゆえんではないだろうか。
こうしていつの間にか、自分なりのエンドゲームを目指す沼に入りかけている。沼にはまりすぎないよう、ほどほどに楽しみたい。
追記
とか書いていたら「天キー」こと天下一キーボードわいわい会の次回開催が告知された。10連休の真ん中の5月4日とのこと。これは楽しみ。
【速報】天下一キーボードわいわい会 Vol.2の開催が決定しました! 開催日は5/4(土)、場所は前回と同じく東京六本木のDMM本社スペースをお借りできる予定です。参加希望の人はスケジュールを空けといてください!! 続報を待てっ!!
— ゆかり@自作キーボード (@eucalyn_) 2019年1月9日
追記2
第2回のフォトレポートを書きました。
- アイデアを詰め込んだ自作キーボードたちの百花繚乱「天下一キーボードわいわい会 Vol.2」(http://ima.hatenablog.jp/entry/2019/05/04/123000
)