小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。
今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、「はやぶさ2」のMINERVA-II1分離運用についての説明や、小型着陸機MASCOTの紹介などを行う予定です。
小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/09/27) | ファン!ファン!JAXA!
日時
- 2018年9月27日(木)15:30~16:30
登壇者
- 「はやぶさ2」プロジェクトチーム ミッションマネージャ 吉川真(よしかわ・まこと)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
- MINERVA-II1担当 吉光徹雄(よしみつ・てつお)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授)
- ドイツ航空宇宙センター(DLR)MASCOTシステムエンジニア 佐々木要 (ささき・かなめ)
(Image credit:JAXA)
(左から佐々木氏、吉光氏、吉川氏)
中継録画
本日の内容
目次
「はやぶさ2」概要
ミッションの流れ概要
1.プロジェクトの現状と全体スケジュール
2.MINERVA-II1速報
分離直後に撮影された画像
ぶれているのは暗い部分が多く、露光時間が長いためこうなった。ここはオートで撮影している。
2.MINERVA-II1速報
分離直後に撮影された画像
2.MINERVA-II1速報
ホップ中に撮影された画像
2.MINERVA-II1速報
Rover-1Bが撮影した写真
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日09:46JSTにRover-1Bがホップする直前の画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日09:43JSTにRover-1Aが撮影した表面画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日10:10JSTにRover-1Bが再着地したころの表面画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日09:43JSTにRover-1Aが撮影した表面画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日09:48JSTにRover-1Aが撮影した表面画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
2018年9月23日09:48JSTにRover-1Aが撮影した表面画像《初公開》
2.MINERVA-II1速報
Rover-1Bが動画撮影に成功《初公開》
1Bには落ち着いたらそこにしばらくとどまるプログラムを仕込んでいた。
毎日1回ホップしている。
2.MINERVA-II1速報
2018年9月21日13:02JSTに高度70メートルからONC-W1で撮像
探査機で分離速度をキャンセルして脱出速度を超えないようにした。
2.MINERVA-II1速報
これらの輝点がなんであるかは未確定。
朝になってホップしたときの画像から、前日落ち着いた地点がわかる。画像を人間が見て判断するので時間がかかる。
3.MASCOT分離運用
(佐々木氏から)
MASCOTシステム概要
3.MASCOT分離運用
MASCOTシステム概要
着地時の向きが重要。(アンテナが上を向くように)
3.MASCOT分離運用
MASCOTの着地点候補
3.MASCOT分離運用
MASCOTの着陸候補地点
青い点のどこかに着地するものと考えている。
3.MASCOT分離運用
(吉川氏から)
MASCOT分離運用シーケンス概要
基本的にはMINERVA-II1と同じ。分離の予定時刻は10月3日11時前後。
MASCOTを分離後、上空3キロメートルへ上昇したらホバリングし1日程度滞在。MASCOTからのデータを受け取りホームポジションへ戻る(MINERVA-II1のときは分離後一気にホームポジションへ戻った)。
4.リュウグウの画像
BOX-B運用で夕方方向を撮影《初公開》
夜側は可視光だと暗くなって見えないが、TIRで撮影すると形状がわかる。
資料の43ページ(下図)も参照。
8月24日に撮影した画像は公開済み。
4.リュウグウの画像
タッチダウン1リハーサル1運用取得画像《初公開》
高度約3キロメートルで撮影したもの。これまでは高度5キロの写真までだったので少し細かく見えるようになった。安全なタッチダウン地点を探すのに使う。
参考:「はやぶさ」での最高解像度の画像
6.今後の予定
参考資料
MINERVA-II1
MINERVA-II1の着地候補地点選定
MINERVA-II1分離運用概要
BOX-B運用
BOX-B運用取得画像
タッチダウン1リハーサル1
質疑応答
共同通信すえ:Rover-1Bは順調に動作しているのか
吉光:わかっていることはRover-1Bから電波は出ているがローパワー。はやぶさ2にテレメトリが届く段階にはなっていない。ハイパワーにするコマンドも送っているが届いていないようだ。
少なくとも搭載コンピュータのプログラムは動作している。分離後のsol.2やsol.3と同じ状況。sol.10は月曜日で、臼田の運用でリンクが取れているのは見えたがバッテリーの電圧が急に下がった。影領域に入ったのでは。電波が出ているのは壊れていないということ。
すえ:コンピュータは動いている、壊れていないが予定通りに進んでいない部分もある?
吉光:はい。
読売新聞とみやま:温度は測れた?
吉光:キャリブレーションが必要だが表面温度は速報値で65度。もっと低い温度や高い温度もある。ただキャリブレーションはこれから。
とみやま:現状をどう思うか
吉光:ローバーが表面から動いたのは喜ばしい。しかし宇宙探査の一部であり、打ち上げられ移動しようやく着陸。探査の最後の部分。日本の技術で達成できて喜ばしい。関係者に感謝している。
sol.はほかの天体に下りないと使えない単位。はやぶさ2も時間は地球に合わせている。sol.を日本で使えるようになったことが感極まるものがある。
とみやま:MINERVA-II1の点数は
吉光:完璧ではないので99点。
日本テレビいが:資料12~13ページや32ページ、でこぼこしている。今回の着陸は初代と比較してどのくらい難しいのか
吉川:イトカワもでこぼこしているところはこんな感じ。イトカワは平らな場所があったのが大きな違い。
30ページの図を見るとL08はまだ岩の数が少なく見える。ここからいい場所を探す。
いが:今のところの難易度はなんともいえない?
吉川:はい。L08を詳しく調べて、イトカワよりは難しいが安全な着陸の方策を見出したい。
時事通信かんだ:放熱の仕組みが1Aと1Bで異なるとのことだったが、計測温度に影響は?
吉光:あまり考えられない。ピンの先だけでなく内部温度も測っている。
傾向としてはマイナス10度~20度くらいで朝が来て、夕方にプラス20度くらいになる。
かんだ:石のサイズ感はわかるのか
吉光:カメラの画角がわかっているのでわかります。
かんだ:降下に関して新たにわかったことは
吉川:資料30ページ。大きな岩がない領域もいくつかあり、着陸の障害となるボルダーがあるか検討を進める。ここだったら安全というのはまだ。
かんだ:砂利が多そうなところにサンプラーホーンを突っ込んでサンプルを採取できるのか
吉川:ボルダー、岩塊の大きさが50センチ以上あると本体に当たるのでリスクがある。それ以下なら地面がどんな状況でもタッチダウンできる。弾丸を撃ち出してどのくらい収量があるかはわからないが、初代のころも含めていろいろ実験している。
かんだ:下りられるスペースがあれば採取できる?
吉川:そうです。
ニッポン放送はたなか:面白い画像とは具体的に。撮影できたことの心境は
吉川:見た目の感想にすぎないが、MINERVA-IIが撮影した12ページや13ページを見て、ある程度の大きさの石ころがたくさんあった。砂のようなところがない。その原因は何だろう、面白いなと思った。
10ページの写真は本当に感動した。リュウグウを初めて見たときよりも大きな感動。
宇宙作家クラブ上坂:MINERVA-IIのカメラの画角は
吉光:対角125度。
上坂:露出はカメラまかせというが何秒くらいの露出か
吉光:ぶれているから長め。10秒や20秒ではない。1秒以内と思うがちょっと正確にはわからない。値はわかるのだが秒に変換していない。Xの値で6,000くらいだったかな。
上坂:将来的には画像の露出情報は公開するか
吉光:公開するかはわからないが、サイエンス的な分析には使う。オートではあるが露出時間はわかる。なんらかの物量が出る。
ライターあらふね:電源がいつオンになるか、また上面を上にする方法について詳しく
佐々木:電源オンは降下中に。はやぶさ2がオンになるとバッテリーが入る。
モビリティについては資料22ページ。おもりとアームを動かしてモーメントを発生させる。科学機器の領域とEboxの中間にある。
あらふね:側面が下に来ても大丈夫?
佐々木:はい。小惑星表面の形状によってどうバウンドするかはやってみないとわからないところがあるが、どの姿勢からでも何回かのモビリティ運用で最終的には目的の姿勢になる。
あらふね:ホップするタイミングはあらかじめ決められている?
佐々木:資料23ページ。主要なデータのアップロードが終わったらホップするようプログラムされている。
吉川:通信を確実にするため。近いと電波も強く、通信が安定する。
あらふね:MINERVA-IIでホップを1日1回のモードにした理由は
吉光:一度ホップすると整定まで45分から1時間かかる。バッテリーの減り方によっては通信が切れる。
回転しながらより静止している方が発電しやすい。静止中は2時間くらい動作するがホップすると1時間45分くらいで切れる。
NVS齋藤:MASCOTの分光観測計は夜も使えるのか
佐々木:広角カメラと分光顕微鏡は昼と夜どちらでも運用の予定。昼の温度が高いときは計測できないかも。
■新聞いけだ:それぞれのRoverのホップ回数と距離は
吉光:1Aはデータリンクを取れている回数を数えればわかる。9回ホップしてますね。1回で想定通り10~20メートル動いていると思う。ランダムホップなので戻ってくることがあるかもしれず、どこまで離れたとはいいづらい。このあと解析の予定。
1Bは4回ホップしている。
いけだ:温度について。最低と最高温度は
吉光:温度データは精査していないが65度が速報値。それより高い温度、低い温度両方がある。
いけだ:1Bがホップ直前に撮影した画像(12ページ)からわかる岩塊の大きさは
吉光:数メートルということはない。数十センチ以下。
いけだ:もっと細かい岩があると思った理由は
吉川:強い根拠はない。天体にはクレーターがたくさんある。クレーターができるときに砂もできるはず。少なくとも上の写真では砂利か石ころ程度なので素朴な疑問が出た。
いけだ:Roverにつける名前は
吉光:2案あるがまだ秘密。小惑星表面での挙動を見て決めたいと思っていた。今後の動きで確定させるのでまだ秘密です。運用が終われば決める。
(以上)