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観測ロケット「MOMO」2号機の打ち上げ実験後記者会見

日時

  • 2018年6月30日10:00~

登壇者

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(image credit:NVS

稲川社長からの説明


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(提供:インターステラテクノロジズ

結果としては途中で推力を失い推進剤を残したまま墜落、内部の燃料が結合して爆発的な燃焼を起こした。

多くの方の支援、協力で打ち上げに来られたが失敗したところは深く反省し申し訳なく思っている。

ペイロードとしてインフラサウンドセンサーを搭載していた。打ち上がり遠くへ行かないと機能しない。今回はデータを取れなかった。

起きたことを改めて。エタノールのメインバルブを開く信号を送ったときを0秒とする。燃焼が始まったが途中で不具合を起こしt+4秒で推力を失った。飛び上がったあと地上へ自由落下。

打ち上げ実験に際しては作業員は機体から600メートル離れている。一般の方は1.5キロメートル。機体の墜落や炎上で破片は飛び散ったがこの距離までは届かず人的被害はなし。

射場の墜落・炎上でかなり火が回ったが遠隔で見る限り地上設備の大きな破損は非常に軽微。そこは不幸中の幸い。

起きた事象と原因推定はすぐには難しい。速報的な情報になる。

t+4秒でメインエンジンの燃焼圧力(推力に比例)がなくなったことはテレメトリで確認済み。

t+5秒でホットガススラスターの燃焼圧も下がり停止。映像データを見るとホットガススラスターの周囲に火が出ている。配管が破れたものと思われる。ホットガススラスターそのものの不具合ではなく周囲の状況に引っぱられたものと推定。

t+1秒以内に燃焼圧力が1MPaになるが0.7MPaに下がったことが確認されている。(…)

過去の試験ではこのようなことは起きていない。メインエンジンに何らかのトラブルが起きたものと推定。

現物調査をしないと圧力低下の根本原因はわからない。現状射点周囲に火があり近づけない。安全確保中のため現物確認できていない。テレメトリから判断している。

メインエンジンが主原因とはまだ断定できない。

ホットガススラスターは新規開発要素。ロール制御用。見えているデータでは不具合見られず。フェアリングに搭載されているアビオニクスからのテレメトリは×秒後までデータが来ていた。大きなトラブルは確認されず。電子部品は健全であったと現時点では推定。

メインエンジンがt+1秒で圧力がガクンと下がりt+4秒で圧力がほぼゼロになった原因はまだ特定できていない。

2号機の失敗だが初号機の不具合とは違うところで発生と考えている。

初号機から2号機にかけて各種の改良やペイロードの搭載などをしてきたがそこに不具合は今のところ見つかっていない。

メインエンジンの設計は変わっていない。起きた現象が設計由来なのか、製造由来なのかは断定できる情報は揃っていない。現物も含めて調査していく。

原因究明、調査はインターステラテクノロジズの社員が中心に行う。外部の有識者にも協力を求める。初号機でも有志のロケット開発経験者に入ってもらいFTA解析など原因究明にご協力いただいた。今回もそのような形で原因究明を行っていきたい。

今後原因調査が本格的に始まる。公開をなんらかの形で行いたいが詳細は未定。

2号機は「みんなのロケット」という形でやってきた。支援いただいた方々、打ち上げ協力してくれた、クラウドファンディングしてくれた方、みなさんに説明しなければならないと考えている。

初号機においてもテレメトリなど多くの情報を公開している。2号機でも開かれたロケット開発として「みんなのロケット」をコンセプトにしている。時期は未定だが公開していきたい。

MOMO3号機以降の今後の計画。現段階ではまだなにも決めていない。インターステラテクノロジズだけで打ち上げ実験できるわけではない。金銭的なスポンサー、地元の協力者(地元の協力者のおかげで実験できている)の協力が必要。

現状インターステラテクノロジズのメンバーは墜落が起きてから原因究明、対処、復旧に向かい前向き。気持ちはチャレンジし続けたい。ただ多くの方の協力が必要なこともありどういう形になるかは今後決まってくるだろう。

事象説明と今後のスケジュールはこんなところです。

堀江貴文氏から

僕が言うことはあまりありません。今回打ち上げに際して技術的に問題がある部分はひと通りつぶして打ち上げに臨んだか今までにない失敗モード。ちょっとだけ上昇して墜落。これから次のMOMO3号機を打ち上げるためにどう改善が必要かが課題になってくる。そこへ全力投球できるようにバックアップ体制を強化していきたい。

藤野英人氏から

声をからして応援していたのでこんな声で失礼します。失敗についてはスポンサーサイドとしてとても残念。宇宙開発事業に我々がスポンサーとなりなんらかのデータを残して次へつながる材料ができたことは一定の役割を果たせたのではないか。

3号機のスポンサーをするかは未定。宇宙開発をここで止めるわけには行かない。インターステラテクノロジズを応援したい。そのためにファイナンス面で支えていくことが重要と考えている。いろいろな支え方がある。

今回稲川社長から、メンバーがやる気を失っていないと聞いた。心強く思っている。3号機は未定だが前向きに宇宙開発をやりたいと思っている人がいてそれを支える北海道の人たちの気持ちがあれば3号機もあるだろう。

今回は残念だがスポンサーとしては人的被害がなかったのはよかった。次につながる失敗だったのではないか。今後もサポートしていきたい。

質疑応答

HTV北海道テレビよだ:堀江さんのほうから「失敗」とあったが稲川さんとしては「失敗」という認識か

稲川:明確に失敗。ただ完全な失敗ではない。完全な失敗はデータが取れない、なにも残らないもの。今回はテレメトリを取れたしカメラでモニタリングできている。機体の一部は残っている。原因の究明ができる、結果が残り次につなげられる失敗。

よだ:改めてふり返って、墜落を見てのまずの気持ちは

稲川:自分自身は機体を見ずテレメトリだけを見て緊急停止の判断をする。燃え広がっているところから見た。最初はなにが起こったのかすぐにはわからず。過去のロケット開発で多い失敗例。V2ロケットアポロ計画に続くようなロケットで見てきて研究してきている。そういう意味では宇宙開発の黎明期の現象が目の前に広がったと感じた。

よだ:改めてロケット開発の難しさをどう考えるか

稲川:たくさんの部品のすべてが合格しないとうまくいかない。そこが難しいところ。初号機で多くの不合格、うみを出し切ったと思っていたが不十分だった。ぱっと見にはわからない、一見うまくいったようでもそうでない。そういうところが難しい。

よだ:堀江さん。落胆の表情だったが今後への意気込みを

堀江:自分はバックアップ。そのことで頭がいっぱい。今後の軌道投入機の開発もありそこをどう進めていくかもある。ベンチャーではデスバレー、死の谷があるとよく言われる。ソフトウェアのデスバレーはそれほど深くないがロケット開発のデスバレーは深い。アメリカでは幾多の先人がデスバレーを超えず消えていった。そこを超えられた会社はスペースX社くらいといっていいくらい。
モチベーションを保ちつつどう進めていくか考えているところ。

よだ:稲川さんに。デスバレーの深さは想像以上か

稲川:大変な時期があるだろうと覚悟があって始めている。実際こういうところに至ると苦労はある。しかし現場は死んでおらず次に向かっている。モチベーションは落ちていない。

朝日新聞はまだ:今後の予定について。インターステラテクノロジズ2020年代前半に100キロのペイロードを高度500キロへという計画はどうなるか

稲川:MOMO計画がどうなるか現時点で未定。不具合の解消、開発にリソースは取られる。順風満帆には行かないだろう。目指すところは超小型人工衛星を打ち上げるロケット。そこで会社は大きく成長する。すべてのリソースをそこへ注げるわけではないが開発のスピードを殺さず進めていきたい。

はまだ:映像では少し浮上してから落ちてきている。何メートルくらい上昇したか

稲川:はっきりしたことはいえず今後公式データを出したい。

NVS齋藤:1.2トン級のエンジン開発でこのような出火は今までにあったか

稲川:小さいものも含めた燃焼試験は40回ほど。同じような現象は今のところ確認できていない。今後の精査が必要。過去のデータを洗い直さないと。現場の直感、第一印象としては過去にない燃焼。

齋藤:打ち上げ中止後バルブなどを改良しただろう。配管関係に苦労しているように見える。そのあたりはまだわかっていない?

稲川:1秒で少し下がり4秒でほぼゼロになったというのが見えている現象。あらゆるパターンが考えられ現時点で配管に問題とは結論できない。

読売新聞:前回から2か月での再チャレンジをした理由は。拙速ではなかったか

稲川:GWでトラップ、不具合になったところを洗い出し機器の交換、リハーサルの実施(t-0秒まで)、直前までエラーをつぶしてきた。今回はtプラスからの現象なのでリハーサルや地上の検証では出てこない。地上の燃焼試験でも同じようなことは見られなかった。事前の確認で発見するのは難しかった。飛ばしてみなければわからない。やれるだけのことはやってきた、人的被害はなく安全に実験できたことについてはよかった。

読売新聞:出資者や地元に結果を出せなかったことについて社会的な責任をどう考えるか

稲川:クラウドファンディングしてくれた方、大樹町や北海道、地元で応援してくれた方は今後に期待してくれていると感じる。今回の打ち上げもマイルストーンだが期待は民間での宇宙産業が育ち宇宙開発が面白くなるところだから支援してくれているのだろう。
ステークホルダーの方にどう恩返しをするかといえば開発を止めないこと。前向きなところは止めないことが肝心。

フリーランス大塚:推力低下については。ノミナルでは1MPaへ1秒かからずに上がるのか

稲川:0.0秒のタイミングではバルブが開いただけで推力が出ない。0.1秒くらいですっと推力が立ち上がり1MPaで定常状態になるのが正常な燃焼。速報データでは0.6秒ほどで通常通り立ち上がっている。その後0.数秒でガクンと圧力が落ちてゆっくりグッと下がり(…)4秒でストンと落ちている。
なにが起きたか決めつけにくい。
まったくわからないということではなく特徴的なデータを取れている。フォトロンさんに撮影のスポンサードをしていただきハイスピードカメラで撮影している。そのデータは確認中。さまざまなカメラでデータが取れているのでこれからの解析でわかってくるだろう。

大塚:射点でなにかが起きることへの想定は

稲川:安全計画を立てている。こういうことが起きたらこうしようという。どんなことが起きても人的被害を出さないことが大事。一般の方も含めて。射点の物的な損傷は二の次。ある程度は許容するポリシーで進めている。

大塚:計画通りに進んだか

稲川:地上で火災が起きたときのモードは周囲のボンベなどが破損しても人的被害がないよう待避するよう決めていた。その通りにできた。その点については計画通り。安全は確保できていた。

(以上)