キヤノンのミニプリンタ「PIXUS mini260」は年賀状の印刷に何回か使ったが、インクが漏れることが多くなったのでしまってあった。修理するのは手間だし、オークションやフリマにジャンクとして出すのも面倒だ。

- 出版社/メーカー: キヤノン
- 発売日: 2006/10/05
- メディア: Personal Computers
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- キヤノン:Q&A検索|【インクジェットプリンター】PIXUS mini260機種仕様(http://cweb.canon.jp/pls/webcc/WC_SHOW_CONTENTS.EdtDsp?i_cd_pr_catg=003...
)
以前、こんな記事を読んだ。Make: ブログの「Make: Japan | 自分で直す権利:本当の意味で物を所有する権利のための戦い」(http://makezine.jp/blog/2014/09/righttorepair.html)を読んだ人のブログ。
私が考える「何かを所有する」という行為は、Wiens氏の主張するところ(引用者註:上の記事)の「モノそのものに加えて、それを修理、改造を始め、いわばなんでもする権利を所有する」ことに似ていますが、さらにそれらの行為を通じてそのモノを「完全に理解している」という状態に近いと考えています。
モノを完全に理解するということは、そのモノがどうやって動いているのかという原理を知ることはもとより、何で出来ているのか、さらに何故それで作られているのか、なぜある部分は金属で、しかもアルミで、なぜ1mmでも3mmでもなく2mmの厚さで作られているのか、なぜ穴が4か所ではなく3か所なのか、なぜ穴はその位置なのか、5mm左ではなぜダメなのか、などなどを理解するということです。言い換えれば、そのモノを考え出した者、設計した者と時を隔てて対話し、その考えを理解するということと言えるのではないかと思うのです。
今さら言うまでもなく、私たちの周りにあるほとんどのモノは誰かが作っています。決して木になっているモノを山から採ってきたり、地面に埋まっていたモノを掘り出したりはしていないのです。身の回りのどんなつまらないモノも誰かが設計し、誰かが作っているのです。
みら太な日々: 何かを所有するということ![]()
(ところで、この記事を書いた「みら太」さんはまごうことなきMakerである。レーザーカッターや3Dプリンタを自作するし、中国の激安CNCフライスを高精度に改造するし、霧箱も自作してしまう。知識と技術を駆使して、興味のおもむくまま好きなことをしていてすばらしい)
「身の回りのものは誰かがそうしたからそうなっている」は、このダイアリーでも何度か出てきたフレーズである。
本棚を自分でどう作るかを考えていると、なぜそこをそう作るのかに思考が及んでいく。そして身の回りのものに目を向けると、それらがきちんと機能するのはたくさんの人が「なぜそう作るか」を考えた結果であると改めて気づく。身の回りのものは誰かがそうしたからそうなっている。空気のように当たり前に使えるのは、空気のように使えるよう工夫して作られているからで、それは実はかなりすごいことだ。
本棚計画完了〜みんな本棚を作ろうよ![]()
「身の回りのものは誰かがそうしたからそうなっている」という見方がある。何の気なしに見ているものでも、そこにそれがあるようにした人の意思や意図がある。人々がそこに思いが至るようになると、長い目で見てよい社会になるだろう。そういう意味で『街角図鑑』は街歩きのお供にするには恐ろしい本だが、外部への想像力を養うにはとてもよい本だ。
街を歩くのが恐ろしくなる本『街角図鑑』![]()
「身の回りのものは誰かがそうしたからそうなっている」に気付くと世界を見る目が変わり、同じものでも昨日とは違って見えてくる。視野を広げてくれる考え方だ。
そんなことを考えて、ただ捨てるくらいならとプリンタを分解してみることにした。部品取りに使えるほどの知識はないので、なんとなくながめて勉強になることがあればよいくらいで。
- 本体の全景
- このあたりは普通のメンテナンスでも開ける
- おっCR2032を発見
- ねじをどんどん外していく
- 小さくてとても固いねじはドライバーを当ててペンチで回したりした
- 右上はインクがべったり
- こういう細かい作りに目がいく
- だいぶ開いてきた
- 宇宙船のモールドみたい
- 液晶画面の裏側
- だんだんメカが出てきた
- ふむふむ(わからん)
- こういう基板も美しいです
- モーター
- シャフトとプリントヘッド
- もうちょっと分解してみた
- 小さいねじがたくさん
- さらに分解
- なめそうなねじを回すにはネジザウルス

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- かなり分解されてきた
- ここもこうなっている理由があるんだろう
- このあたりは捨てた
- 取っておいても活用できなさそうだけれど取っておくことにしたもの
昼食を挟んで半日でミニプリンタは廃棄物になった。この製品に込められた人の意思について考えることになり、悪くない体験だった。
ファブスペースのワークショップで、不要な家電を分解してねじを回収するというのはどうだろう。元に戻すことを考えずに分解するのは気がねがいらず楽しい。一方でただぶっ壊すのではなく使えそうなねじの回収という目的もあるから最低限の秩序は保たれそうだ。同時に「誰かがそうしたからそうなっている」の考え方を学びやすく、教育的な効果もあるのではないだろうか。
- 参考:Make: Japan | 教育現場にメイカースペースが必要な今だからこそ考えたい、予算をあまりかけずに持続可能なメイカースペースを作る方法(http://makezine.jp/blog/2018/01/want-create-budget-friendly-makerspace-new-year-think-plan-organize.html
)
(2018年2月20日記)