マツド・サイエンティスト・ナイト2「かっこいい宇宙船の作り方」

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夕べはロフトプラスワンでの「マツド・サイエンティスト・ナイト2〜Art of Spacecraft」を見てきたのだった。野田司令こと野田篤司さんを司会に、工業デザイナーの山中俊治さん、宇宙機の擬人化イラストを描いているしきしまふげんさん、はやぶさコスプレの秋の『』さんを迎えてかっこいい宇宙船をどうやって作るかについて語り合う。とても刺激的でいろいろな考えが浮かんできた。

ジュール・ベルヌの「月世界旅行」の初版の挿絵では、宇宙船に煙突がついていたそうだ。刊行当時の最先端技術は蒸気機関だったからとのこと。「かっこいい」を記号で処理しようとするとこういうことが起きてしまう。

戦前だったかの「100年後の未来」的なグラフ記事で、「交差点で手信号をする警察官ロボット」というのがあったのを思い出した。未来を想像するには今あるものを基準にせざるを得ない。鉄腕アトムドラえもんの内部図解で「超小型原子炉」みたいなのがあるのも、原子力が明るい未来のエネルギーだった時代の産物だ。

機能の本質からデザインせず、かっこいいものにはこういうものがついているという方向でデザインすると上のようなことになり、「かっこいい」の基準の変化に弱くなる。

いやもちろん、そういう方法でのデザインでもかっこいいものはたくさんあります。スコープドッグとか。ターレット式メインカメラ、アームパンチ、ローラーダッシュ、ターンパイル、うーんかっこいい。かっこいいものを足して作られたものは能動的なかっこよさといえそうだ。

一方で、機能美もまたかっこよさにつながる。工場や重機が典型ですね。必要なものだけを用いて必要な形に作る。余計な装飾をつけない。かっこよくしようと思って作られたわけではないのにかっこよくなる、いわば受動的なかっこよさ。

モノの背後にあるストーリーを知るとかっこよく見えてくるのもこの系列ではないか。小惑星探査機はやぶさはデザインだけ見るとかっこよくはないかもしれないが、運用の奮闘ぶりや成果を知るとかっこよく感じられてくる。

野田司令は今のJAXAの衛星開発手法に、「かっこよくすること」がまったく盛り込まれていないのが問題だとしきりに話していた。宇宙機はかっこよくあるべきか。スペースシップワンなど民間宇宙旅行に使われる宇宙船はとにかくデザインがかっこいい。一般の人を相手にする商売では「あのかっこいい宇宙船に乗る」という気分も重要だからデザインを工夫するのはよくわかる。じゃあ放送衛星とか気象衛星のような実用衛星はかっこいいのがよいのだろうか。現物を一般の人が見ることはまずない上に、打ち上げてしまえば誰もそれを見られなくなる。実用ものだから機能美の方向を狙えばいいのだろうか。

税金でデザインをがんばるなんてけしからんと思うだろうか。しかし橋などの土木ものは機能も重要だがデザインにもすごく気を遣う。完成後たくさんの人が見るからで、必要ならデザインにも税金を使うということだ。じゃあきちんとした理由があれば、JAXAが作る宇宙機でもかっこよさを追求してよいことになりそうだ。たとえば国民が「あのかっこいい衛星を作った我が国」と思えるような宇宙機にするべきとか。

こういう理由作りは官僚の人の得意技だろうから、うまいことやればいい感じになるのかもしれない。

とかなんとか、いろいろ考えが出てくるいいイベントでした。