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アリさんマークの引越社にはもう頼めない

我が家の引っ越しはだいぶ前にすんだのだけど、これはやっぱり書いておこう。

先日の引っ越しは「アリさんマークの引越社」にお願いした。そうしたら一部の本が汚損されていた。

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(自分ではもう見たくない写真なので小さく)

引っ越し後積み上がった箱を開けていたら、アリさんの箱の一つから『風雲児たち』が出てきた。自分で調達してきた段ボール箱に入れていたはずなのに変だなと取り出してみたら濡れていたり破れていたり。30冊以上がとても読めない状態になっていた。

とても残念なのは、この状態が引っ越し時にアリさんから報告されず、荷物を開けていたらしれっと出てきたことだ。

電話で連絡すると、今回の引っ越しの担当者(見積もりから当日の作業まで担当した人)から折り返して電話があった。荷物の一部がこれこれこうなっていて、と話すと驚いた様子。当日の作業スタッフに連絡を取って再度かけるという。

次に副支店長という人から電話があった。事情を調査してお詫びにうかがいたい、とのことだった。

数日後、副支店長と担当者が菓子折持参でやってきて調査結果を説明した。

  • 引っ越し先でトラックから荷物を降ろして運ぶときに箱のひとつを落としたら破れ、中身が散乱し一部はぬれた地面に落ちてしまった
  • 当該の箱を落としてしまったのはバイトである
  • 本来、荷下ろしの際は社員をトラックに一人以上、運び込む新居に一人以上配置することになっている
  • しかし今回、家具の組み立てなどの作業があったため社員が新居側に集まってしまい、トラック側にバイトしかいない時間帯ができた。その時に事故があった
  • 荷物に汚損が生じた場合、報告義務があることはバイトにも十分周知させているつもり
  • しかしバイトは「大変なことをしてしまった」と、とっさに箱を詰め替えて搬入してしまった
  • バイトにはペナルティも考えている

そういうような話だった。

それに対して、こちらが話したのは以下のようなことだった。

これは、車で人をはねてしまって「恐くなって逃げた」というケースと同じだ。大変なことをしたと十分以上にわかっていると、かえって適切な行動をとれなくなることがある。

もしそのバイトがもっと狡猾であれば、たとえば運んできたトラックの奥に汚損した荷物をこっそり入れてしまうこともできた。トラックからすべての荷物が運び出されたことを客が確認する手順はある。しかしそれは多分に形式的であり、30冊ほどの本をトラックに隠すのは簡単だ。そうなればこちらは、すべての段ボールを開くまでその本がなくなっていることに気づかない。なくなっていることに気づいても、その時になってから引っ越し業者に心当たりがないか問い合わせるかどうかは微妙だ。

しかしくだんのバイトはそういうことをせず、すぐに露見するような工作しかしなかった。これは仕事に対する責任感を持っているからこそである。

ペナルティを課すのは、「お客様の荷物を汚損してはならない」という意識を徹底させるためだろう。しかしそれはすでに、十分すぎるくらいしっかりしている。その先の、もし汚損してしまったらどうするかの教育がおろそかになっていた。

となればバイトの人と同じ程度に、管理側も責を負うべきであろう。社員からバイトへは「もしものときは必ず申し出ること、どうしたらいいか一緒に考えよう」などと常から話し、このような工作で問題を先送りしないようにしておかねばならない。

だからバイトの人を首にはしてほしくない。仕事に対する責任感を持っていることは明白であり、そういう人を首にして別の人を採用することになればそのバイト本人はもちろんのこと、会社にとっても不利益になる。それよりは教育内容を改善して、事故が起きたときにそのことを隠そうという気持ちを起こさせないようにしてほしい。

前回の引っ越しもアリさんマークの引越社にお願いし、その時はなかなかよいと感じたので今回もここにした。しかしこのようなことになってはもはや信頼できず、引っ越しを頼むことはできない。

これは「もう頼まない」ではなく「もう頼めない」である。

引っ越しはそうそうあることではないし、どこがよかったという話もなかなか聞くことができない。ここに頼めば安心というところが見つかれば、次回どこの引っ越し業者に頼めばよいかという懸案がひとつ減る。前回の引っ越しでよい業者が見つかったと思っていたら違っていた。次に引っ越すときは、よさそうな業者を改めて探さなければならない。それが残念だし憂鬱だ。

そういう話をした。

そして引っ越し費用を返してもらう必要はない、そうしてもらっても意味はないとも言ったが、先方からの提案で費用の数割が返還されることになった。今思えばこちらは「会社も責を負うべき」と言っているのだから、直接的な不利益を得てもらうためにこちらから金銭的負担を求めるのが筋だったかもしれない。

ともかく汚損した本の新品を手配してもらい、費用の一部を振り込んでもらうことになった。対象となる本が絶版になっていなかったのは幸運だった。ただ、新品の本といっても自分で書店で選ぶわけではない。美本マニアではないつもりだが、他人に届けてもらう場合だとちょっとの折れや汚れが気になるものだなとも思った。

そして、「本を手配中です」「本がいついつにこちらに届きます」「本が届きましたので発送します」まではまめに連絡をくれていたのだがその後、「本は届いただろうか、返金は×日ごろになる」という話をたまたま電話を取った家族に伝えたのを最後に連絡がとだえてしまった。通帳を見て返金されたことはわかったのだが、すべてが完了した段階で最後に直接連絡をくれればベストだったように思う。またこの件をうけて、内部でどのような改善が行われたかもこちらにはわからない。

今回の件では怒る気持ちにはならなかった。怒るのは疲れるし、怒ってみせても本は元には戻らない。こんな事故は起きないのが誰にとっても一番なのは確かだが、気をつけていても起きるときは起きてしまう。汚れた本を隠してしまったバイトの人の気持ちもよくわかる。「困った」という感情が一番近かった。

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「恐くなって逃げた」については以前書いている。

ひき逃げした人が出頭したり捕まったりしたとき、「恐くなって逃げた」と心境を語ることがときどきある。あれってなにを恐れたのだろう。自分がそうならない自信がないので、事故のあとの心の動きを知りたい。特に、捕まるのではなく自分から出頭した人が、それを決意するあたり。

長期的に見るなら、やっぱり事故を起こしたときに逃げちゃわないのが一番なんだけれど、そう判断できないなにかが存在するケースも確実にあるようだ。

ひき逃げこわい - まんぷく::日記