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洞爺湖サミットの警備と、ベトナムの交通行政は「元気玉」

洞爺湖サミットが終わるまで、都心の駅ではテロを警戒して、ごみ箱や自販機をふさいで使用禁止にしているそうだ。テロリストは開催地で要人を直接狙うことはなく、人が多い都心を狙う。そうしてテロとしての効果を上げるのだ。

さて、ふだん使っているごみ箱や自販機をこの期間使えないのは確実に不便である。でもそれは、利用者にとって深刻な問題ではない程度に抑えられている。ごみは家へ持ち帰ったり、飲み物はキオスクで買ったりできる。

つまりごみ箱や自販機の利用者は、不便さを許容するという形で、サミットの警備にリソースを供出していることになる。

いってみれば、サミット警備という孫悟空が「ふだんのままでは日本の治安を守れない、オラの警備(=元気玉)のために、みんなの元気をちょっとずつ分けてくれ!」とお願いしているわけだ。

話変わって、当局から「みんなのリソースをちょっとずつ分けてくれ」とお願いされる状況は、ベトナムでも見ることができた。

ベトナム(のハノイ)では、交通行政がうまくいっていないと感じることがよくあった。信号がなかなか変わらない、幅のある道路でも車線が引かれていないことが多い、バイクが多くて「突っ込めー」みたいな勢いでスピードを出している。

それで歩行者はどうしているかというと、すごい工夫があるわけではない。たとえば左右をよく見て、安全だと思ったら横断歩道でない場所でも道路を渡る。そうしていないと移動できない。バイクや車の人々も、車道が安全だなんて思っていないから各自周囲に気を配りながら走る。だからカオスのような道でありながら、交通事故は案外少ないのだそうだ。

これもつまりは元気玉だ。国が「予算はほかのもっと優先すべきところに使っちゃうので道路を整備するお金はない、だからみんなの元気(=注意力)をちょっとずつ分けてくれ!」と言っているのだった。

日本の交通行政はベトナムとは正反対で、とりあえず信号を守っていれば相当の安全を得られる。まれに守れない・守らない人もいるけれど基本的には、与えられたルールに従っていればだいたい大丈夫だ。この作り込み具合って日本人向きだよねーとも思ったりする。その話はまたそのうちに。

(書いてるうちに、「元気玉」状態って税金も年金も教育も環境問題も、なんでも適用できちゃう気がしてきた。でもいいや「日記を登録」だあー)

7月9日追記

ハノイに住んでいたことがあるという方から、「警察に届けていない交通事故がけっこうあるかも」というコメントをいただきました。郊外の国道で、「血だらけの被害者が救急車を待たずに『乗せてくれ〜』と車のドアをドンドンしてきたりします」だそうです。

ガイドさんが私たちに教えてくれた事故率は公式の数字でしょうから、そういうのを入れると変わってくるかもしれません。