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アメリカ兵によるタクシー運転手殺害のはなし

先月の19日に起きた事件について、ニュースで聞いた範囲でわかっていることを、まずまとめてみる。

  • 犯人の米兵はナイジェリア国籍の22歳、オラットゥンボウスン・ウグボグ。
  • タクシーに乗って横須賀市に入り、降りる際にウグボグ容疑者の頭の中に「誰でもいいから殺せ」という声が聞こえた。そのため、持っていた包丁で運転手を刺した。
  • 手持ちのクレジットカードは使えなくなっていたが、支払うぶんの現金は持っていた。
  • 被害者のタクシーには、売り上げ金がそっくり残されていた。
  • 容疑者の頭に声が響く症状は、彼が高校生の頃から起きていた。そのために周囲とトラブルになったこともあった。
  • 逮捕・拘留後の容疑者は、悔悟と反省の念を強く抱いている。

という話だそうなのだが、ここから考えられるのはまずこれだ。

  • 「頭の中に命令する声が聞こえる」は統合失調症のきわめて典型的な症状である。

これはまず間違いがないと思う。だとすれば、アメリカ軍は統合失調症のナイジェリア人を軍人として雇ったことになる。

気になることがいくつかある。

  • 容疑者がアメリカに渡った(?)のはいつごろか(現地採用の可能性もある)。また米軍入隊の目的は。
  • 容疑者がアメリカ軍に入隊する際、精神疾患についてのテストは行われていたのか。行われていたのであれば、彼はそれを(嘘をつくなりして)切り抜けたのか。

運転免許を取る際のテストなどで、「よくある‐たまにある‐ない」みたいなアンケートを受けることがある。その中にはたいてい、「自分に命令する声が聞こえる」「自分の考えが読まれている/自分の考えがほかの人にもれている、と感じる」統合失調症)とか「自分が消えてしまいたいと思うことがある」(鬱病)というような、精神疾患の有無を調べるような設問が入っている。

精神疾患を持つ人を、米軍がそのまま入隊させることはないだろう。であれば、それをなんらかの方法でテストしているはずだ。でも容疑者は、明らかに統合失調症と思われる症状を示したことがあるにもかかわらず、入隊を果たしている。ここの流れがどうなっているのか知りたい。

また容疑者本人が、なぜ米軍に入隊したかも知りたい。

最近の米軍でよく聞くのは、国内での人材確保のために底辺校を訪れ、「勉強しながら軍の専門知識も身につけることができる」と軍への勧誘を行っているという話だ。いまの米軍は、ほかに仕事が見つからない人がやむなく行く、貧困層の受け皿としての役割も担っているという。

容疑者はナイジェリア国籍だそうなので、もしかするとお金を稼ぐためにアメリカへ渡ったか、または現地で米軍に入ったのかもしれない。そう考えると、精神疾患のチェックをなんとかしてくぐり抜けないと入隊できない、と本人が考えたとしても不自然ではない。

であれば、これは粗暴なアメリカ兵がタクシー運転手を殺してしまった、という単純な図式に収まらない、現代のありさまが投影された事件のようにも思えてくる。

貧困層の人が金を稼ぐためにアメリカへ渡った、しかし思うようにいかず、軍への入隊を考える。持病はなんとかごまかして入隊を果たすも、その病気のために赴任地で事件を起こしてしまう…。

こういうシナリオはある意味でわかりやすいし、自分の想像の範囲を超えない。でも、そういう背景があったとしてもおかしくないなあと思う程度にはありそうな話だと思うのだった。

(4月5日・記)