やっと読了。
民間の企業が、戦闘やそれに付随すること、たとえば訓練や兵站、情報収集などを請け負うようになってきている。これらは「PMC(Private Military Companies)」や「PMF(Private Military Firms)」と呼ばれる。現状の報告と問題提起、そして今後のための提案。
歴史的な「傭兵」との違いから話が始まり、じっくりじっくりと必要なことが書かれていく。堅い翻訳とあいまって、読み進めるには集中力が求められてつらかった。けれど中身はとても興味深い。
たとえば、PMCの契約社員の給料は、たいていの政府軍より高い。そのため高給を求めて軍からPMCに移ってしまう人がいる。A国の政府が訓練した兵士がPMCに移り、A国の政府と戦う契約に従ってA国を襲うかもしれない。とか。ほかにも:
- 契約を遂行したかどうか、特に戦闘行為を伴うとき確認が難しい
- 会社が所在する国の利益に反する契約を、企業として結ぶかどうか
- 情報収集と作戦の遂行をまとめて同じ会社に発注すると、会社に有利な契約を結ばされるかもしれない
- アメリカでは、発注総額が基準より低い場合、議会の承認が不要。国民は米軍を出すことには敏感だが、PMCへの発注まではなかなか目が届かない
- 資金さえあれば、弱小国やとるに足らない反政府軍が、周囲をおびやかすほどの軍事力を前ぶれなく手にできてしまう
というような話がぎっしり。
ともあれ、会社が軍事力という商品を扱うとなると、ほかの商品と違って微妙な問題をはらんでくる。たとえば、民間企業の力が、政府の枠組みを越えてしまいかねない危険性がある。
士郎正宗の作品では、政府が弱体化して大企業が世界を牛耳るようになった未来がよく出てくるが、現実にそういう状況が生まれつつある分野や地域もあるということだ。
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