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「双風亭日乗 - アマゾン『なか見!検索』って、どうよ?」

【元記事:「双風亭日乗 - アマゾン『なか見!検索』って、どうよ?」:d:id:manpukuya:20060316:amazon

「ネット書店で立ち読みができる」というふれこみで始まったAmazonの「なか見!検索」について、出版業界紙新文化」で行われた紙上議論をまとめた記事。

ここで、「『なか見!検索』は版元や著者、既存書店の利益にならない」という意見が出ているのが目を引く。そう考える人がいることはわかる。でもこのサービスは逆に、出版業界全体にとって大きな利益になっているんじゃないだろうか。

それは、「本を読む」という、生活において必須ではない行為の敷居を、「なか見!検索」が押し下げてくれていると思うからだ。

音楽のネット配信ビジネスである、AppleiTunes Music Storeはとても使いやすいらしい。1曲の単価が150円と安いこともあって、100円ショップのようについつい余計に買ってしまう、といった話をよく聞く。つまり、音楽を気軽に買えるようになったぶん、音楽を聴く人の総支出は増えているのではないか。

お金を出しやすい環境が整っていれば、人の財布はちゃんとゆるんでくれるものなのだ。「なか見!検索」は、その「お金を出しやすい環境」を整える一助になっている。

上の記事では、HOTWIRED Japanのアンケート「最近、どこで本買う? Webvoter : Hotwired」が紹介されている。

本のことなんですが、ウェブ上で注文する習慣がついてしまい、

めっきり書店に行かなくなりました。

行動形態の変化に自分でもとまどってます。

皆さんはどうなってますか?

最近、どこで本買う? Webvoter : Hotwired

という内容である。回答者のコメントもとても面白い。

ネット書店でつらいこととして、立ち読みができないことが多く挙げられている。ネットでは、本の感触を確かめたり、本を開いてぱらぱらとめくり、目次やあとがきにちょっと目を通してみる、といったことができない。それによって、ネット書店では見つけたものの、結局買ってもらえない本は少なくないはずだ。「なか見!検索」はその不満をやわらげるためのしくみになっている。

なか見!検索」で購買意欲が高まり、でもやっぱり手に取ってみないと、という人もいるだろう。そこはリアル書店の出番だ。ここで気をつけるべきは、「なか見!検索」がなければ購買意欲がわかなかった人もいるだろうということだ。「なか見!検索」がリアル書店へ人を連れてきてくれることもあるのだ。

なか見!検索」を敵視している人は、「本は普通誰でも読む」と思い込んでいないだろうか。

何度も書いてきたけれど、出版業界は業界内で誰が儲けているとか誰が損しているとか考える前に、本を買って読んでもらう機会そのものをもっと増やし、人が本を読むことへの抵抗を減らすことを考えたい。

ウラゲツ☆ブログ : アマゾン・マーケット・プレイスは版元への営業妨害?」では、「新文化」での紙上議論への反応として、アマゾンマーケットプレイスを問題視することについて言及している。これももちろん「並列販売が営業妨害である」とは思わない(いわゆる「Amazon八分」問題は別である)。安く買える機会があるなら、長い目で見れば読まないよりは読んでもらうほうがよほどいい。古本で買われるのがいやなら、新本で買いたくなる本を作ればいいのだ。

本を読まなくても死ぬことはない。本という、生活に必須でないものをわざわざ買っていただくためのチャネルは多いほどよい。

みなさん、世の中には面白い本がたくさんありますしリアル書店にネット書店、古本屋など本を買える場所は各種取り揃えてございますので、ぜひもっと本を読んでください。「もうたくさん読んでるよ!」という方は、もっと本を読むか、面白かった本を紹介してください。