最近、東京メトロの案内板が新しくなってきている。特に気になるのが、使われているフォントが以前とは違って、ちょっとこう、読みづらいというか主張しすぎる感じがするというか…そんな印象の書体になってきていることだ。今までの書体は視認性が高く、同時に書体としての押し出しは控えめで、真面目な雰囲気が好きだったのだが。
写真は、上が従来のフォント、下が新しく使われているフォント。黄色がややレモン色に近づいたのも微妙に気になる。
06/03/20追記:3月7日ごろ、駅名表示のパネルも新しくなった。新旧を比べられる写真を追加。
新しいフォントは、日本語は新ゴ、詳しくいえば、ウエイト(線の太さ)から新ゴMだろう。新ゴは、よく使われるしよく使うからすぐわかる。一方アルファベットはちょっとわからず(欧文フォント全般は苦手)。
では、今までの地下鉄フォントは? 予想では、日本語は見出ゴMB31に少し平体をかけ(文字をつぶし)、アルファベットはヘルベチカかなと思っていたら違った。
「textbox.jp のネタ帳 :: 060130 :: 東京メトロのサインシステム更新」によると、新しいフォントの日本語はやはり新ゴ、アルファベットは「Frutiger Condensed」のようだとのこと。新ゴは、案内板などで使われるとちょっとチャラチャラしていると感じる。Frutigerも頑張っておしゃれして、繁華街ではなじむけれど地元の駅に戻るとちょっと浮いてしまう若者のようだ。
上の記事では、出口の案内色も変わりつつあるという話も出ている。今までの原則は、出口へ向かうための案内は黄色の地に黒い字で書かれ、出口そのものの案内は黒地に黄色い字で書かれるというものだったが、それも変更されつつあるという。
また、今までの日本語フォントは「ゴシック4550」、アルファベットは「フォント ブログ: 『有名・定番 欧文書体 #9』」によれば「Akzidenz Grotesk」だそうだ。
欧文は詳しくなくても和文のフォントはそれなりに、と思っていたが、「ゴシック4550」は不勉強で聞き慣れない。調べてみると「4550」という名前は、このフォントがもともとちょっと平体がかかっており、縦45:横50という比率だからだそう(→「Hints of fonts on the web -- Section 11」)。
「udf weblog‐表参道駅の『床サイン』」(d:id:udf:20041107#p1)によれば、ゴシック4550の制作をはじめ、サインシステムの総合的なデザインをしたのが「黎デザイン総合計画研究所(→rei design & plannings Homepage)」。ゴシック4550は郵便局でも一時期使われていたそうだ。
- サインシステム更新に関する東京メトロのプレスリリース:「東京メトロ|ニュースリリース〜新しい旅客案内サインシステムをスタート!」
上の「別紙」には、乗り換えの案内に新しく紺色を使うことなどもふれられている。
サインシステムのリニューアルは、「営団地下鉄」が「東京メトロ」に変わったことをよりアピールしたいという目的もあるのだろう。その際、フォントの変更は誰にもわかりやすい。
しかしそのために、読みやすいフォントがなくなっていくのはとても残念だ。変化するにしても、今までのいい味はなるべく残していってもらいたい。
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- 「作業メモとか考えた事とか (2004年4月)‐フォントのある風景‐営団地下鉄、おわる」:ゴシック4550が消えることを惜しみ、ロンドンの地下鉄では100年近く前に作られたフォント「Johnston Underground」が今でも使われている、と紹介。
- 「@nifty:デイリーポータルZ:フォントの分かる男」:プロのデザイナーが、街で見かける文字のフォント名を当てる! 当てる!