はてなはPalm(CLIE)やMacと同じだなと、常々思う。その心は、「奔放な恋人に振り回されながら尽くす」。
入れあげて、裏切られても別れられない。「なんで別れないの?」と聞かれると、「いや、そういうことじゃないんだ。わかってもらうのは難しいかもしれないけれど」とちょっとむきになるような。
Palmの魅力
Palmは、買ってきたそのままでの使い勝手は「悪くない」程度である。で、ここがPalmの不思議なところだが、「こいつをなんとかしてあげたい」と考えてしまう妖しい魅力があるのだ。そこでいろいろなPalmwareを入れて、少しずつ使いやすくしていく。「自分色に染め上げる」というとちょっと気持ち悪いけれど、そういう感じ。
かつて、英語版しかなかった頃のPalmで日本語を使えるようにしたのは、山田達司という個人が開発した「J-OS」だった。これによって日本でもPalmの知名度が上がり、ついに日本IBMから日本語版のPalmである「WorkPad」が発売されたのだった。このとき、山田は「男と娘」という文章を発表している。Palmのために、無私の心で作った成果が大メーカーを動かした。嬉しいような寂しいような。「尽くしても振り回される」という内容ではなく、むしろ希望に満ちた終わり方だけれど、男が「娘を幸せにしなくては」と思うほどに、Palmは魅力的であったのだ。
性悪なMac
Palmのこのあんばいは、Macの話になればもっとわかりやすそうだ。
特にiMac以降、新しいMacはいつも驚きと賞賛をもって迎えられてきた。青いポリタンクのG3、四角くてコンパクトなG4 Cube、OS X、PowerBook、iBook、Mac mini、そしてiPod。どれも質感に優れ、所有する喜びを与えてくれる。
一方でMacは、爆弾が出たり電源の不具合やバグがあったり、けっこうなじゃじゃ馬でもある。
モデルチェンジの悲哀は誰もが共感するところだろう。ついに最新型のMacを買った、と思ったらその晩新しいMacが発表され、CPUやHDD、メモリが強化されてお値段据え置き、しかも明日から発売されるから今日買ってきたこの最新型のMacは明日から旧型です、なんてことがしょっちゅうある。
それでもたくさんの人がMacが好きだし、思い入れを持っている。
「新しいMacを買うと(もしくは、新しいMacを買うことを考え始めるだけで)、今まで使っているMacの調子が悪くなる」という話はよく出るし、そう思わせる謎の説得力がMacにはある。Classic Mac OSでは正月や誕生日に起動すると、起動時の画面がちょっと変化した。こういう細かいくすぐりが、Macは本当にうまいのだった。
性悪な「はてな」の魅力
上のような雰囲気が、はてなにもある。なにしろ使いやすいし、面白くて誰にも予想できない機能がどんどん追加されていく。ユーザーは「なんとかしてあげたい」と思うから、ああしたらいいこうしたらいい、と思い思いの意見が自然に出てくる。
ときどきユーザーとしては、それはちょっとどうよ、と言いたくなる行きすぎがあるところもまたいい。住所登録問題しかり、ヘルプ作成の手伝い募集しかり。
今回の、忘年会での一部ユーザーとの話し合いを、はてなアイデアやinfo@へのメールetc.よりも優先したととられかねない書き方もそうだ。
- 「次期はてなアイデアについてのミーティング音声を公開しました」(g:hatena:id:hatenaidea:20051212:1134371411)
- それへの反応:d:id:anonymous_27:20051212#p1(これには大いに共感)
こうしてときどき裏切られたような気持ちになっても、はてなは魅力のほうが大きいからなかなかやめる気にはならない。
もちろんときどき、かわいさ余って憎さ百倍、となって退会する人もいる。でも多くの人にとってはてなは逆に、「憎さ余ってかわいさ百倍」のような存在なのではないだろうか。
関連記事
- 「ヘルプ作成の手伝い募集」に対する意見
- 「はてなダイアリーのヘルプ執筆者募集はボランティア?」(d:id:Imamura:20051014:hatena)