9月5日から8日までの4日間、2泊3日の予定で屋久島へ行ってきた。計算が合わないのは、台風18号が来て飛行機が飛ばず、帰宅が1日延びてしまったため。
普通の日記風に記録してみる。
9月5日(日)
屋久島へ空路を使った場合、羽田から鹿児島までは約1時間40分、鹿児島から屋久島までは約40分。鹿児島から屋久島まで、往路の飛行機は「Q400」だった。
雨と風が少し強くなってきている中、ヤクスギランドへ。名前はお子様向けのゆるい施設のようだがそんなことはなく、たくさんの屋久杉を含む原生林を味わうことができた。ヤクスギランド、侮りがたし。
屋久島のテレビは鹿児島に準ずる。天気予報で「桜島上空の風予報」があるのが面白い。夜8時45分からのNHKの地方ニュースでは、冒頭のテーマ曲が首都圏のそれと同じだった。ホテルのテレビで映る民放は4つのチャンネル。9時からは日曜洋画劇場で『L.A.コンフィデンシャル』をやっていた。台風情報を見て早く寝る。
9月6日(月)
早朝、気づくと停電していた。屋久島では台風が来ると、たいてい停電するそうだ。午前7時ごろ回復。雨、風ともに昨日より強くなってきている。しかしまだ、本格的な暴風雨ではない。
白谷雲水峡へ。2時間半ほど歩き、苔が美しい一帯である「もののけ姫の森」に着く。ここに来る途中でも、大きな屋久杉や、苔むした岩や木をたくさん見ることができる。道中の地面には、木の根がうねうねとはい回っている。屋久島の大地は花崗岩質だそうだから、根が地中に入らず、少ない養分を求めてこうなるのではないかと想像。
また、ヤクスギランドも白谷雲水峡も、暗さによる手ぶれさえ抑えることができれば、誰でもいい感じの写真を撮れそうだと思った。北海道の富良野や美瑛もその手の風景がたくさんあり、誰がカメラを向けても絵はがきのような写真を撮れる。それほど屋久島の山の中は、いい風景がたくさんあった。帰り道にヤクシカ3頭を見る。家族らしかった。
午後、山を下りるころには風雨が強くなってきた。宮之浦のスーパー「Aコープ」で買い物。パンの棚は空っぽで、「フェリー『屋久島2』が欠航のため、パンが入荷しませんでした」という貼り紙がしてある。屋久島の焼酎「三岳(みたけ)」などを買う。
白谷雲水峡からの帰り、空港へ寄ってみる。今日は全便欠航。空港職員の話では、明日の朝8時をめどに、その日だけ使える、キャンセル待ちおよび臨時便搭乗のための整理券を配る由。「今日は船、飛行機ともすべて欠航だったため、屋久島に600人ほどが足止めされている。明日は1000人くらいに増えるだろう」「整理券を取るために徹夜して並ぶ人もいるが、空港の建物は7時にならないと開かない。徹夜は危ないのでしないように」とのこと。
明日帰る予定ではあるが、予約してある14時15分の便が飛ぶとは限らない。そうなるとキャンセル待ちと臨時便だけが便りになる。明日は早起きして整理券行列に加わることに決める。
夕食時、ホテルから「停電する可能性が高い」「その際、エアコンが使えず蒸し暑くなっても絶対に窓を開けてはいけない」「風雨の音がうるさくて眠れないかもしれないので、ビールなり焼酎なりを飲んで早く寝てしまうとよい」といった説明。停電に備えて懐中電灯が配られる。
今晩から明日朝にかけてが、台風18号のピークという予報。
9月7日(火)
ホテルは停電しなかったが、空港の周辺は信号が消えていた。暴風雨の中、5時半くらいから、屋久島空港の入口に並ぶ。登山のために買ったレインウェアだったが、この時が一番活躍した。7時前に空港の建物が開き、中に入れた。8時前に整理券が配られる。もらった整理券の番号は70番台前半。
空港の責任者は「飛行場長」であり、「場長(じょうちょう)」と呼ばれている。その場長から、「今日の整理券は明日も使えることにする」というアナウンスがある。今日屋久島を出ることができなくても、明日は今日のように、早朝から整理券のために並ばなくてもよいことになった。歓声が沸く。
いったんホテルに戻り、少し休憩して10時にチェックアウト。外は時折激しい雨が降るが、風、雨とも少しずつ弱まってきている。
レンタカーを空港で返却。レンタカーは返却直前に、指定のガソリンスタンドで満タンにするのが一般的だ。指定されたガソリンスタンドは、リッター148円もして愕然。
空港ロビーへ。通常便は、最終便以外はすべて欠航と決まる。乗るはずだった14時15分の便も欠航。臨時便が出そうだという説明に望みをつなぐ。何時に出て何人乗れるのかがわかるまで、空港からは移動できない。
臨時便が出るというアナウンスに拍手が起きる。17時30分発、74人乗りとのことで、これに乗れれば鹿児島までは戻れると喜ぶが、「JALゴールドカードの方が4名いらっしゃいます」という説明。このカードを持っていると、整理券を持っていなくても優先的にキャンセルや臨時便に案内されるというしくみ。すると乗れないではないか。
少しすると、臨時便がもう1本出るというアナウンス。16時35分発、36名。これなら確実に屋久島を脱出できる。喜びつつ鹿児島の宿を手配、ANAへ連絡して、明日の朝一番に鹿児島を出る、羽田行きの飛行機を予約。今日中に帰ることはできなかったが、明日の朝10時すぎに羽田にいられるなら十分だ。
ところが、17時30分の臨時便は欠航というアナウンスが出る。今日屋久島を出ることができるのは、臨時便の36人と、通常の最終便の人だけと決まった。がっかり。
屋久島を出られるかも→出られる→やっぱり出られない→いややっぱり出られる→結局出られないと確定、という上がり下がりの大きい事態で、しかも自分ではどうにもならない。大いに消耗。
収容所の捕虜を意気阻喪させる方法として、安心させるような情報を流してから否定する操作を繰り返す、というものがあったような気がした。
夕方には雨は止み、日が差してきた。しかし屋久島を出ることはできない。鹿児島の宿にはキャンセルを連絡。屋久島のホテルを予約し、レンタカーを改めて借りて向かう。ANAへ連絡して、鹿児島から羽田行きの飛行機の時間をずらしてもらう。この日はほとんどずっと空港にいたことになる。疲れた。
9月8日(水)
憎らしいほどの快晴。朝8時すぎにホテルを出て空港へ。得られた情報は、10時前に36人乗りの臨時便が出ること、整理券番号は38番まで進んでいること。ということは、この臨時便に乗れる。やっと屋久島を出られることになった。
その臨時便の前に、9時25分発の通常便がある。キャンセルがたくさん出て、驚いたことにこちらに乗れた。月曜日の欠航で、屋久島に来ることができなかった人のぶんがキャンセルになっていると推測。
屋久島から鹿児島まで乗った飛行機は、国産唯一の旅客機である「YS-11」。14時に鹿児島空港を出る飛行機で、15時40分に羽田に着いた。
大変な目にも遭ったが、屋久島の自然はすばらしかった。しかしスケジュールを台風シーズンに合わせたのはやはり無謀だった。次は天気がいいときに行って、縄文杉を見たい。