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99/01/10 (Sun.)

元記事:ただ日記−99/01/10 (Sun.)】

髪を切りに行く。床屋の鏡に映る自分の顔。
 ここのサイトに載せている「点取占い」の文面に、「なぜ鏡は上下を逆にしないのか」というものがある。鏡は左右を逆にして映すのに、上下は変わらずそのままである。これはなぜか。2つの目が横についているからか。
 結論から言えば、鏡は左右を逆にしているように見えて、実は前後を逆にしているのだった。前後を逆にして映し出された像が、結果的に「左右逆の像」として知覚されているにすぎない。では「前後を逆にする」とはどういうことだろうか。
 鏡に右手をかざしてみよう。腕の中で、いちばん鏡に近いのは手のひらだ。この手のひらから、鏡に平行な平面で腕をどんどん輪切りにしていったとする。手のひら、手の甲、手首、肘といった順に輪切りされた腕は、鏡の中で再構成されて像になる。その位置関係は、肘−手首−手の甲−手のひら [鏡] 手のひら−手の甲−手首−肘、となる。これが、鏡の「前後を逆にする」しくみである。
 では、なぜこういう操作によって「左右が逆」に見える像が鏡に映るのか。
 力士の色紙を思い出してみよう。サインと一緒に、手形がばんと捺されている。右手を捺せば、手形は左手になっている。これは、先述の「鏡に平行な平面」が手のひらの薄皮を一枚はがし、それを鏡の向こうの空間にそのまま貼り付ける操作と同じになる。見よ、右手の像は「左右が逆」になり、鏡には左手が映っているではないか。同じことが手の甲、手首、肘と、先述の「前後を逆にする」操作の中で行われていけば、鏡の中には一見「左右が逆」に見える腕の像が出現するという寸法なのだ。
 こんな説明でわかってもらえるだろうか。
 「鏡は前後を逆にする」ということを知ったときは、なかなか目からウロコの気分だった。点取占いの「なぜ鏡は上下を逆にしないのか」は、そんな気分から出てきた文面なのだった。