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JR福知山線脱線事故:航空・鉄道事故調査委員会「事実調査報告書」発表

漢字ばっかりのタイトルだけれど、そういう話。

国土交通省航空・鉄道事故調査委員会20日付で「事実調査報告書」を公表し、事故の全容を明らかにした。高見隆二郎運転士(当時23歳、死亡)が、運転ミスについて車掌から総合指令所に報告していた列車無線の交信内容に気を取られたため、ブレーキ操作が遅れ脱線に至った可能性を強く示唆した。

(中略)

事故調は(高見運転士が)宝塚の(ATS:自動列車停止装置を作動させた)ミスを考えながら伊丹(駅)のオーバーランを起こし、運転席で傍受中の列車無線に聞き耳を立て運転に集中していなかった可能性があるとみている。

尼崎脱線:運転士、無線に気を取られた形跡 事故調報告書−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

直前に運転ミスが重なっていたこと、列車無線に気を取られてブレーキが遅れたという見方が出ているそうだ。

ここは、事故車両の一両目に乗り合わせて助かった吉田恭一さんの手記「福知山線5418M、一両目の『真実』」を読むと、ちょっと違った印象を受ける。

私の感触では、まったくブレーキはかかっていない。つまり、体感的にはカーブ進入時で120km/h近くあったように感じた。

もちろん、普段、電車に乗りながら速度計を見ているわけではないので、この数字になんの後ろ盾もないのであるが、直線部分の最高速度が120km/hであったならば、108km/hにまで落ちるほどの減速を感じなかったのである。いくら座席に座っていても、急ブレーキがかかったなら体が振られるはずだが、それがなかったのだ。

:2005年4月25日 福知山線5418M、一両目の「真実」1章

また、吉田さんは、今年の9月6日に同委員会から発表されている「経過報告2」(←ここからPDFをダウンロードできる)を引いて、「ブレーキをほとんど感じないままカーブに突っ込んだ」と書いている。

(「経過報告2」で明らかになったのが、)列車が転倒するまで、運転士はほとんどブレーキをかけておらず、問題のカーブへの進入速度が、おおよそ115km/hであったことである。これは、私の体感とほぼ一致する結果である。

(中略)

私は、運転士は曲がりきれないことを承知で、わざとオーバースピードのまま、あのカーブに突っ込んだと思っている。この思いは、事故直前に「!」と感じた瞬間から、全く変わっていない。このスピードで、まさか電車が転倒するとは思わなかったとは言わせない。

(中略)

ましてや、何かに夢中になって、うっかりブレーキをかけ忘れたとも言わせない。電車はクルマと違ってハンドル操作がないぶん、前方から目をそらしても、即事故につながらないとはいえ、運転士が気絶でもしない限り、目の前の風景から何十秒も目を離すことはあり得ないはずだ。

2005年4月25日 福知山線5418M、一両目の「真実」10章

実際はどうだったのか。ほかの記事にはこんなくだりがある。

あと数秒で制限速度70キロとなる現場のカーブ。だがブレーキ操作はしていない。同(2005年4月25日9時18分)50秒過ぎ、最大ブレーキをかけたが、電車は同54秒、1両目から脱線。マンションに突っ込みながら、10秒後に止まった。

尼崎脱線報告書:「焦り」まざまざ…運転席の記録−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

ここでは、脱線する4秒前にブレーキをかけたことになっている。うーん、「経過報告2」や吉田さんの感覚とはずいぶん違っている。

上の記事では、「事実調査報告書」に基づいて事故へ至る経過が再現されている。

(2005年4月25日8時)54分、宝塚駅で到着番線を勘違いしたのか、自動列車停止装置(ATS)による非常ブレーキが作動した。本来、このときすべき総合指令所への無線連絡をしなかった。2分後、また非常ブレーキが作動した。

電車は宝塚で折り返し、事故を起こす快速電車となる。折り返し前、運転士と車掌は席を交代するが、高見運転士は約3分間運転室にこもったまま。車掌がATS作動の有無を尋ねたが、「ムスッとした感じ」だった。

総合指令所と車掌との交信を傍受しようとした痕跡は、この出発前に残っていた。

9時4分、宝塚を出発。交信が気になったのか、伊丹駅の643メートル手前で、時速113キロになる。運転室内にはATSの女性の音声「停車です、停車です」が響く。さらに、男性の音声による警報音「停車、停車」が鳴る。最大ブレーキをかけたが間に合わず、非常ブレーキがかかり約72メートルのオーバーランとなった。

車掌が「次は尼崎」と車内放送したとき、高見運転士が車内連絡用のブザーを使って電話連絡を求めた。

運転士「まけてくれへんか」

車掌「だいぶと行ってるよ(ずいぶん行き過ぎているよ)」

高見運転士はオーバーランの距離を過少申告するよう依頼した。だがその直後、車掌は乗客からおわびを要求され、2人の会話は途切れた。

その後、出発したが、速度は再び110〜120キロに。9時18分。車掌が総合指令所を列車無線で呼び出し始めた。わずかにブレーキがかかる。

車掌「えー、行き過ぎですけども、およそ8メートル行き過ぎて……」

塚口駅を通過、名神高速道路をくぐり抜けた。

指令「(遅れは)何分でしょうか」

車掌「あ、1分半です。どうぞ」

あと数秒で制限速度70キロとなる現場のカーブ。だがブレーキ操作はしていない。同50秒過ぎ、最大ブレーキをかけたが、電車は同54秒、1両目から脱線。マンションに突っ込みながら、10秒後に止まった。

尼崎脱線報告書:「焦り」まざまざ…運転席の記録−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

宝塚駅では、今までの先頭車両が最後尾になる。そのため運転士と車掌が互いに席を交替する。吉田さんの手記はそこでのいきさつにも疑問を持っていて、その疑問の一部には今回の報告書が答えを出している。

ATSの警告は、客室内にまで聞こえるほどの音量で、運転室内にベル音が鳴りひびくし、ATSの確認ボタンは運転士から見て体の正面の一番押しやすいところにある。それなのに、(宝塚駅でのATS作動時に)確認ボタンを押さずに、5秒間も放りっぱなしにするのは、明らかにおかしい。

(中略)

宝塚駅でのATS作動などをうけて、)車掌───実は事故を起こした電車の車掌と同一人物であるが───は運転士が少しおかしいなとは思わなかったのだろうのか。このような運転を受けて、回送電車の”唯一の乗客”であった車掌が、折り返しのためお互い反対端の乗務員室に行く途中、運転士とプラットホーム上ですれ違ったときに、いくら顔見知りでなかったとしても、一声かけなかったのか、そしてそのときの運転士の様子は……

2005年4月25日 福知山線5418M、一両目の「真実」10章

宝塚駅で席を交替するとき運転士は、報告書をもとにした上の記事によると「約3分間運転室にこもったまま。車掌がATS作動の有無を尋ねたが、『ムスッとした感じ』だった」ということになる。

確かに、宝塚駅ですでに運転士はやや不審な行動を見せていたのだった。

ほかにも、「事実調査報告書」には乗客からの聞き取り結果も収録されているとのこと。

「車内はぐちゃぐちゃになり、洗濯機の中のようだった」−−。20日付で公表された国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の「事実調査に関する報告書」には、JR福知山線事故を体験した乗客らのなまなましい声も載せられた。

尼崎脱線報告書:「車内は洗濯機の中のようだった」−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

9月に公表された「経過報告2」のPDFは写真や図が多用されていて、事故についてかなり詳しくわかるようになっている。

「事実調査報告書」もそのうち、同じようにPDFが公開されるだろう。JR西日本のずさんな安全管理体質を厳しく指摘もしているとのことで、そのあたりも興味深い。

最終報告は来年の春くらいに出るとのこと。

吉田さんの手記を本にさせてもらった編集担当という立場もあるけれど、事故に至った経緯をできる限り明らかにしてほしいと思う。

福知山線5418M 一両目の真実

福知山線5418M 一両目の真実

安心して酔える相手を持つ幸福

【元記事:安心して酔える相手を持つ幸福:d:id:manpukuya:20061220:p1

いま私は相当酔っぱらっていて、明日この日記を見ると「うあーなんてことを書いているんだ」と思うかもしれない。

今日は会社を辞めるTさん、N氏、Yさんの個人的な送別会があった。

たまたま同じ年齢で、かつけっこう長い期間を同じ部署で共にした人々であって、そうなるとなかなか気の置けない関係になる。のだけれどこの人々は今日で辞めてしまう。

でそういう方々の送別会となると、いろいろぶっちゃけた話もしつつこれからもよろしく、となるわけで、そんな関係を持つことができたことを幸運なことだと思う。

こういうふうに、安心して酔って家に帰れる相手を持っていることは、人生の中でとても幸せなことなのだと改めて思った深夜なのだった。