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小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(小惑星近傍運用の総括など)

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(19/12/19)ライブ配信 | ファン!ファン!JAXA!

小惑星探査機「はやぶさ2」は、小惑星リュウグウを出発し、現在、地球へ向けて順調に航行を続けています。 今回の説明会では、小惑星近傍運用の総括、科学成果の発表状況、帰還巡航運用の計画などについて説明を行う予定です。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(19/12/19)ライブ配信 | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2019年12月19日(木)15:00~16:00

前回の記者説明会

登壇者

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(image credit:JAXA

はやぶさ2」プロジェクトチーム

(左から大島氏、益田氏、佐伯氏、津田氏、吉川氏)

中継録画

関連リンク

本日の内容

(吉川氏から)

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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2.小惑星近傍運用総括(JAXA

(津田氏から)

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降下計画は17回、実際は18回。ほぼ計画通りこなすことができた。

着陸に使ったターゲットマーカは1着陸1個ですんだ。

工学的成果

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はやぶさ2が成し遂げた7つの「世界初」

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p9-10はp8の内容を写真で示したもの。

JAXA-NEC協業体制でのNECの大きな貢献

(佐伯氏から)

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JAXA-NEC協業の実例

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3.小惑星近傍運用総括(NEC

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小惑星探査機「はやぶさ2」近傍運用フェーズの完了の総括について

(大島氏から)

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Orchestrating a brighter world

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本日、お話したいこと

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1.NECの関わりについて

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NECの関わり

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2.初回タッチダウン運用の技術支援について

(増田氏より)

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運用の技術支援、現場での対応について

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運用の事前準備

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運用計画にもとづく“安全な運用”のための運用手順書づくり

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タッチダウン成功”までの「運用の技術支援」

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振り返り:タッチダウン成功の要因

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いい意味でまかせきらない関係があった。

小惑星近傍運用を終えて

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小惑星近傍運用 総括

(大島氏から)

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未知の場所へ行くというのは探検だと実感。こんなに砂が舞い上がるとは思っていなかった。

ただ第2回というわけではなく太陽系のタイムカプセルを持ち帰ってくれるだろう。

人類のフロンティアを拡大していきたい。

今後について

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初号機は今日の段階では通信途絶していた。それを思うと、完全な姿で地球帰還を始めていて喜ばしい。初号機でMINERVAを小惑星表面に落とせなかった、プロジェクタイルが発射されなかったことが心に引っかかっていた14年間だった。

1回目のタッチダウンのあと「このまま地球へ帰った方がいいのでは」という空気の中、技術者を信じて2回目のタッチダウンを支持してくれたサイエンティストのためにも安全に地球へ帰還させたい。

4.業績(論文、表彰)

(吉川氏から)

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5.帰還巡航運用計画

(津田氏から)

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帰還フェーズ軌道図

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イオンエンジン運転は2期に分けて行う。
第1期の運転時間は600時間ほど、第2期は1,900時間。太陽が遠いので最初は1台運転。

6.今後の予定

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さよならリュウグウ(フルバージョン)

「さよならリュウグウ」のフルバージョンを作った。Twitterに11月21日に上げたあとダウンロードした画像を使った。

クレジット:JAXA, 千葉工大, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 明治大, 会津大, 産総研(credit:JAXA, Chiba Institute of Technology, University of Tokyo, Kochi University, Rikkyo University, Nagoya University, Meiji University, University of Aizu, AIST.)

途中リュウグウが視野内でカクッと動くのは、はやぶさ2が姿勢を変えたため。

Twitterに投稿された旧バージョン

参考資料

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Science、Nature論文リスト

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表彰リスト

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質疑応答

NHKつつい:NECの方へ。運用の上で大変だったこと、嬉しかったことは。

大島:嬉しかったのは第1回タッチダウン、プロジェクタイルを撃ったところ。一連の5つ6つのテレメトリが成功を示していたところは本当に嬉しかった。

益田:大変だったのはMINEVAやMASCOTの分離運用を準備しながらタッチダウンでどんな手順ができるか議論していた。どうやって間に合わせるか、人のやりくりも含めてしんどい闘い、計画の作成をしてきた。その時期が一番大変だった。
嬉しかったことで心に残っているのはMINERVAやMASCOTの分離。はやぶさ2の打ち上げ前は観測機器のインターフェース調整の仕事をしていた。MINERVAやMASCOTの担当の先生方と調整していた。きれいに分離できて画像を見られた、飛んでいくさまを写真で撮れた。あれだけ苦労したものがうまく飛んでいって成果報告が上がってきた。これはすごいことだなと思ったのが印象に残っている。

ビーメディア(おそらくBee Media)くらさわ:帰還巡航プロセスの中で大きなリスクはあるか

津田:1年後のあるタイミングで決められた場所にはやぶさ2を誘導しなければならない。イオンエンジンは長時間噴く。正しいタイミング、正しい方向、正しい強さで噴かなければならずうまくいかなかったら行き先がずれてしまう。それを事前に察知して起きていることをフィードバックし決められたところへ誘導するのは神経を使う。
往路の時もやっているが帰還は到着日をずらせない。計画を確実にこなす。ヒューマンエラーがあってもはやぶさ2自身は間違えないというところをきちんとやるのが重要。
集大成になるのがリエントリの精密誘導。ナビゲーションと軌道計画を立てるメンバー、実現するシステムメンバーが同じ場所で作業をして間違いなく地球へ戻すのをきちんとやっていかなければならない。
タッチダウンほど華やかではないが、きちんとやっていくことに力を注ぐ。

フリーライター荒舩:JAXAがおおまかな計画を立ててNECが実現していくとのことだが、意見が対立したような状況はあったのか

(一同うーん…と考える)

益田:一番議論が白熱したのは1回目のタッチダウンで方式を検討していた8月~11月ごろ。狭いところへ確実に降りるのが難しく、ターゲットマーカを複数落とすか、それにはこんなリスクがあるなどと示す。JAXAさんは必ずタッチダウンさせようと次々アイデアを繰り出してくる。できる可能性があるものはしっかり検討して、やっぱり厳しいですとお伝えしなければいけなかったり、これはいけそうと思っても検討すると…ということもあった。JAXAさんからすると大変だったのでは。

佐伯:これはどう、これはどうと提案するがかなりの割合で却下された。仲が悪いわけではなく、実現に持って行かなければならないのでNECさんは責任を感じて安易に進めず慎重に、こちらは大胆に。2つの役割がうまくいったのでは。

津田:と言っていますが、佐伯は益田さんや大島さんの回答が来ると「NECは着陸させるつもりがないのではないか」と言ったりもしていた。そのあと代替案をすぐ出してくれるので冷静になればそうではないのだが。
やりたいこと(タッチダウン)は同じなのでヒートアップはしていた。

荒舩:実現性が見えてきたのはLRFの使い方の変更か

津田:はい、転換点は12月末から1月のあそこです。12月27日のあの時間までは我々全員答えが見えていなかった。我々が「これでどうですか」と伝えたことに年明けすぐに回答があった。これが大転換点だった。

荒舩:そのときの感想は

益田:最後の案が来る少し前にも別の案を検討していて、「やっぱりダメですね」と伝えた。それで年末だしと思っていたらもう一案いただいた。おもに一番検討してくれているのは自分よりも姿勢系の担当者。彼らが本当に執念深くやってくれたおかげ。
津田先生の案を最初に見たときの印象は「これならいけるのでは」という直感。姿勢系の人に「ギリギリのタイミングで来たけれどどうかよろしく」とお願いをした。ギリギリまでがんばってくれて年明けに「いけるのではないか」と回答できた。
これで「本当にタッチダウンできるんだな」と。かなり厳しいのではないか、ダメじゃないかという回答が多かったので、本当にタッチダウンできるのかなという気持ちが正直あった。年明けに回答したときは「これで行くんだな」と。

フリーランス秋山:大島さんと益田さんに。初号機からの探査機運用、膨大な手順書を作成してきたとのことだが、そのやり方は属人的なノウハウだと思うが今後にどう引き継いでいくのか

大島:初号機は実験機だったこともあり、はやぶさ2ではしっかり準備するようになった。運用計画書をしっかり作り込むことで、あとからプロジェクトに入った人もそれを見れば手順書を作れるようにするなど、初号機に比べてかなりやりこんだところ。これが今後のプロジェクトにつながっていくだろう。

益田:当たり前のことではあるが、計画をしっかり作ってそれを引き継ぐ。運用訓練が始まるころ、小惑星に着く1年くらい前に入ってきたメンバーに運用計画書を見せて意思統一ができ作業ができた。携われる人を増やすことができてきちっとスケジュールをクリアできた。当たり前のことをしっかりやっていくこと、変更の検証プロセスをきちっと構築してスケジュールを確保するといったことを次回以降にも生かしていく。

秋山:ドキュメントを作る方法のドキュメントがあるということ?

津田:これは自分が言うのはおかしいかもしれないが…これは自分からもお願いしたいが、世界で唯一小惑星に着陸成功させたメーカーなので、将来の探査技術に生かすにはどう継承していくかを考えていかなければならない。
計画書のことを強調していたが人の話もある。NECさんの言うことは厳密を極めていて、だんだんしゃべる言葉がコンピュータ言語のようになっていく。人間としてはどうかと思うが(笑い)、間違いのない厳密な表現をする。メールでもそう。計画書は読みづらいが厳密さにつながっている。理解さえすればきちんとできる。そこはノウハウかなと思った。

フリーランス喜多:探査の継承について、宇宙戦艦の艦長の國中先生が去る11月末の講演会で「はやぶさ2は地球帰還の後どうなるのか」と聞かれ「次の探査は決定事項ではない、延長運用の費用に見合う科学的価値がある天体を決め、工学的に意義のある運用計画が立案されなければならない」。今、吉川先生は指で「シーッ」としましたが(笑い)、いつごろお知らせいただけるかスケジュールを知りたい

津田:それは完全に未定でして…技術者、科学者が集結していますので、やれる可能性はくまなく当たるつもりではいます。リエントリは来年の11月、12月ですので、それ以降なにをするかの方針はそれより前に決めなければならない。
そのためのスタディは始めている。しかしどういう形で決まるかは白紙ですので何も申し上げられません。

(以上)

次回の記者説明会