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小惑星探査機「はやぶさ2」のタッチダウン実施にかかる記者会見

小惑星探査機「はやぶさ2」は、リュウグウの中心から約20km上空のホームポジションの位置から、2月21日の13:15にリュウグウへの降下を開始しました。
はやぶさ2」のリュウグウへのタッチダウン実施にかかる記者会見の様子を、ライブ中継(配信)いたします。

タッチダウン実施にかかる記者会見のライブ中継(19/2/22) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2019年2月22日(金)11:00~12:30

登壇者

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(image credit:JAXA

(左から久保田氏、照井氏、津田氏、佐伯氏、吉川氏)

中継録画

JAXA公式

NVS

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津田プロマネから


津田:本日、人類の手が新しい小さな星に届きました。
JAXA小惑星探査機はやぶさ2リュウグウタッチダウンする運用を実施。
プロジェクタイルの発射を含むタッチダウンシーケンスが予定通り進んだことを確認。
タッチダウンが成功と確認しました。
5時間延期しましたが計画を万全にして着陸に臨んだ。ベストの状態で着陸できた。たくさんの応援や声援に感謝したい。NASA、DLR、CNESなど各国の協力があった。
こういう場を実現できたことを感謝している。ありがとうございます。

佐伯氏から

佐伯:プロジェクトエンジニアは探査機のシステム全体のとりまとめ。今日はフライトディレクタとして運用を統括。
感想を言わせていただくと、非常に疲れた。同時に本当にほっとしている。今回の運用が成功したというのはチーム全体のしつこさが実ったのかなと思っている。
リュウグウ全体を観測してL-08をしつこく観測し、しつこいぐらい議論して、10月予定の着陸を延期して、しつこいくらい検討し確認した。しつこさが今回の成功に結びついたと思っている。
このあとも続く。今までやってきたようにしつこくリュウグウを攻略していきたい。
はやぶさ2という野心的なチームでこのような成功を体験したことを誇らしく思う。ありがとうございました。

航法誘導制御担当の照井冬人氏から

照井:今回のタッチダウンではあらゆる場面で高い精度が要求された。ターゲットマーカが地球を向いている時間に高度20キロから向かっていく。
タッチダウンする場所がたいへん狭い。ピンポイントでタッチダウンしなければならない。すべてに高い精度が必要。昨年の第3回リハーサル以降さまざまな数字を洗っていた。その結果高精度でタッチダウンできた。
メーカの方々、チームの協力と努力でできた。
このような結果を得られたことを素直に喜びたい。

詳しい経緯を津田プロマネから

津田:できたてホヤホヤのデータはのちほど。
昨日の朝に降下を開始。当初予定から5時間遅れで。前の設定に見直すべきところができたため。GOできるか判断する必要があった。5時間遅らせたがリカバリをチームががんばってくれた。
降下速度を通常の2倍に。毎秒90センチで降下していった。シミュレータで訓練していたためすみやかに判断できた。

(中略)

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(image credit:JAXA

電波の状況をグラフにした。
プロジェクタイルのうち、1番プロジェクタイルを発射した。いくつかの条件のうち1つを検知したらタッチダウンと判断する。今回は姿勢の変動を検知してプロジェクタイルを発射し上昇。
今はホームポジションへ戻っている。復帰は24時間後。

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(image credit:JAXA

探査機からはタッチダウン前後の情報が下り始めている。日本時間で7時29分(探査機上の時刻)に火工品の温度が10度ほど上昇している。これは発火した=弾丸が発射されたと判断。
このあとコンテナ(サンプル室)を閉める運用を昼くらいまでに実施する。

質疑応答

日経新聞かとう:小惑星に再度着陸した。なぜ世界をリードしていけるのか

津田:日本にとって小天体探査ははやぶさ2が最初ではなくはやぶさがあり、その前はハレー彗星探査機の「さきがけ」「すいせい」があった。小天体科学への興味を持ってきた長い歴史がある。
ミッションへの考え方に大きく影響を受けている。うまくいったところ、いかなかったところをたくさん吸収している。
小天体探査はよくわからないところへいきなり探査機を送り込むもの。不確定性が高いものに対して二の手三の手を考えて実行。
エンジニアリングとサイエンスで設計の深い絞り込みができる土壌がある。
はやぶさ2はわずか600キロにたくさんの機能を絞り込んで搭載。エンジニアとサイエンスのチームどちらも納得して。
日本の科学ミッションには現実の制約条件を把握してやりきる能力がある。

かとう:津田さんは学生時代の超小型衛星プロジェクトの経験はどう生きているか

津田:めちゃくちゃ活きていて、キューブサットという10センチ立方の人工衛星を作った。開発、検証、打ち上げ、運用まで学生のときに経験できたのはとても大きい。ここの佐伯や照井も当時から一緒にやってきて仲間ができた。計画をひと通り経験できた。
今なにを心配するべきか、気にするかというところを考えられるようになった。

日本テレビいだ:先ほどと違って発射が確認された?

久保田:先ほどはコマンドが出たことを確認したと話したが、温度上昇がわかってこれは弾丸を撃った証拠といえる。タッチダウンは大成功。

いだ:頭はクールに、心は熱くと言っていたが保てたか

津田:クールにできていたと思う。タッチダウンの確認までチーム全体が冷静に判断していた。タッチダウンを確認できちゃったらちょっとクールでなくなったかもしれない。

いだ:ゆっくり眠れて今日を迎えたか

津田:そんなことはなかった。当日はクールだが冷静ではいられない問題点も見つかったし、クールでないところもあった。
降下開始してからひと眠りしてから管制室に入った。5時間遅れのこともありあまり眠れなかった。

ライター林:はやぶさ2は新しい探査機として運用していきたいと話していた。探査機としての位置づけをどう感じるか

津田:初号機から受け継ぐ部分を大切にして「はやぶさ2」と名付けたがまったく新しい探査機として成功させよう、成果を出そうとやってきた。
成功したピンポイントタッチダウンは、初号機でできなかったことをやりとげたいというだけでなく、初号機を超えて次に残す技術はなにかを議論して取り入れたもの。
最初から使うとは思っていなかったが、チャレンジに対しても真摯に設計して実現方法を打ち上げ前から打ち上げ後まで議論して作り上げたもの。
そういう意味では新しいミッションと言える。
次につなげる新しい資産を残せた。

林:初号機を超えた?

津田:成功が確認できたとき、初号機のプロマネ川口淳一郎先生とも話した。「初号機の借りは返しました」と話すと笑っていてくれた。

林:次はクレーター生成運用(SCI)だが

佐伯:SCIははやぶさ2のハイライト、リスクの高い運用。まずはタッチダウンに頭を使ってきた。今日から頭を切り換えて…明日からにして(笑)万全に準備を進めていきたい。
今回のタッチダウンの結果も反映させて運用に臨みたい。

林:SCIの自信につながったか

佐伯:もちろん。しかし慎重に進めたい。

福島民友新聞社

津田:会津大はリュウグウの形状モデルを作るところで力を出していただいた。リュウグウ到着後に一番必要なデータ。
続いてL08-E1の高精度な3次元地形を作ってもらった。これがなければタッチダウンできなかった。キモとなる後援をしていただいた。
会津大も含めてたくさんの人の協力、いいチームワークで着陸を実現できた。将来の科学ミッションにもよかった。

福島民友新聞社:震災後初の探査ミッションということで関係の企業にも喜びと思う。福島県民になにを伝えられたか

津田:福島県内ではSCI(インパクター)の技術では福島県内の企業の協力をいただいている。日本のメンバーが企画、実行して一つのマイルストーンを超えた。まだチャレンジが続く。真摯にそれぞれの専門性を生かして関わっていただいている。福島県のみならずたくさんの方々が関わっている。
この成功がなにかの形で人間の希望につながれば幸せ。
佐伯は開発時SCI担当の技術者だった。コメントを

佐伯:開発時は福島の会社にお世話になった。福島の方は非常に粘り強いという印象。震災後道路が崩れているようなところに訪ねていったことを思い出す。
無茶を言ったが音を上げず粘り強く対応してもらった。このあとSCIが待っているがともに喜びたい。

テレビ朝日まえだ:インパクターを作った福島の企業に頼んだ無茶なこととは

佐伯:開発期間の短さの中で見つかる問題点
試行錯誤が入ったときどうしても時間がかかるところを「この日までになんとか」と希望を出し、「できません」ではなく「やってみます」と対応してもらった。

まえだ:インパクター運用に一番期待していることは

佐伯:世界で初めてのこと。DCAMでクレーター生成を撮影する予定。クレーター生成の様子を画像で見られたら最高。

共同通信すえ:応用問題とも言っていたが挑んでみての手応えは

津田:今回のはめちゃくちゃ応用でしたね。ピンポイントタッチダウンは当初はクレーターを作ってからと考えていた。リュウグウの表面が着陸に難しかったため持てる技術をいきなり投入することになり「いきなり応用問題」と話した。
技術者としては一つずつ進めていきたかったが今回は最初から応用問題になった。
自己満足に陥らないようにすることが大事。照井は上司で大先輩ですが、どうすればいいかたくさん議論した。こうしてはと出すと×がついて返ってくる。照井から出た提案に×をつけたこともある。
技術力を強調したいがチーム力も強調したい。仲良しというより磨きあい、たたき合って成長していく。応用問題はこうして解くのだなと実感できた。

すえ:インパクター運用のスケジュールは

津田:今日の結果を下ろしきってからスケジュールを確定したい。期間は限られている。リュウグウが太陽に近づいてくるため熱くなってくる。6月までには終わらせている。2週間おきに降下運用をしなければ。
SCIは何度かの降下運用がある。クレーターを作るための降下、そこを見つけるための降下など。タッチダウンも含めて検討。
このあと1か月まるまるなにもしない計画ではなく、探査機は健全そのものなので2~3週間おきにクリティカルな運用を入れていきたい。

吉川:タッチダウン後の画像について。画像は明日になるかもと先ほど話したがONC-W1の画像がもう下りてきた。今しがた届いた画像を。

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津田:タッチダウン後上昇中に撮影。
黒いところは上昇のための噴射の痕跡と考えられる。上昇中に砂を巻き上げる。黒いのは噴射で巻き上げたものか、サンプラーホーンのへりで引っかけたものが落ちていくのが見えているのかも。
ターゲットマーカ上空からオフセットさせて位置を安定化させるので黒く見えているのかも?
探査機の幅が6メートルなので目標点の大きさも推定できるだろう。
現在の推定はこういうところ。

照井:はやぶさ2はもともと広いところにタッチダウンする設計だった。
自分の位置がわかってもスラスターで細かく制御するのは初号機と同じやり方では難しい。1メートルくらい誤差が出るので制御系の数値をいじって探査機の位置精度は25センチほどまで追い込めた。秒速8ミリ程度まで抑えるよう調整。
100パーセント下りられるという確信を持って運用。結果的には完璧な場所に下りられた。

読売新聞とみやま:試料採取の蓋然性は

津田:弾丸は発射された。舞い上がるものがリュウグウに存在することが今回触れてみて強く示唆される。それなりの量のサンプルが入っているだろう。
我々としてはこれ以上ない期待できる情報があるためふた閉めもすぐに行うと判断。

とみやま:初号機の経験がどう生きたか

津田:初号機では管制室でスーパーバイザ。宇宙ミッションを仕事にするのは初めてだったためその経験が活きている。
探査ミッションはこうするんだと吸収する側、勉強だった。はやぶさ2を始めたときふり返るととにかく忙しかった。しっかり腰を落ち着けてする時間がなかった。その中で正しい選択をできていたと思う。
十分な時間と十全な探査機があれば探査は成功すると考えてきた。それが実った。

とみやま:自律に切り替えた高度を確認したい

照井:20キロからは地上から管制、高度5キロで自律に切り替え。300メートルくらいまでの情報をもとに地上からGO判断を送ったあとは探査機の判断でシーケンスが進む。

NVSさいとう:リュウグウはけっこう均質な性質と以前言っていた。どこで採取しても似ているというサイエンスの判断があったらどうなるか、サイエンス側の考えは

津田:ばらけ具合が均質。バラエティに富んでいるがその状態がどこでも同じということ。サイエンスからは複数地点を見ることに価値があることに変わりはないと評価されていると認識している。
限られた時間でやるべきことをこなしていく。今日の結果をふまえ最高の状態で来週以降の計画を考えていきたい。じきにご報告できると思う。

テレビ東京あいうち:今日を迎えるにあたってかけあった言葉は、またねぎらいの言葉など印象に残っている言葉は

津田:リュウグウに着いてからは毎日顔を合わせていてしゃべっているので好き嫌いにかかわらず(笑)コミュニケーションをとっている。
着陸前にはカツを食べに行った。コミュニケーションよくやってこれたのが成功の要因と思う。

照井:はやぶさ2の部屋は狭いので物理的に近い。3人が三角形の位置にいるので決断は早い。情報の流れやコミュニケーションは密だった。決断の早さや正確さ、情報の流れの潤滑さにつながったと思う。

久保田:わたしはスポークスパーソンなので一歩下がって見ていたが皆さんわかりやすい。5時間遅れで難しい顔のときもあったがあわてずに落ち着いて。最後にはミッションを楽しもうとリラックスしつつ細心の注意でエンジョイしつつしっかりやってくれた。

佐伯:特別な言葉というと…。津田プロマネはよく運用前にいい言葉を言っている。今日はどうでしたっけ、いろいろなことがありすぎて覚えていないが。
寝食を共にするようなコミュニケーションをしてきた。「仲が悪いわけではない」というのはいつもイエスエスと言っているわけではなく、意見の対立はあっても自分なりの意見を述べる、コミュニケーションがよくとれる雰囲気がよかった。

吉川:とりわけ一つの言葉ということはなく、コアメンバーは同じ部屋で難しい議論もくだらない話も。いい雰囲気なのがこのプロジェクトチームのいいところと思う。

あいうち:ベストの状態でタッチダウンできたとのことだが、タッチダウンが早まったのはスムーズにいきすぎたのか。想定外はあったのか

津田:想定外はあった。技術者は最良と最悪の可能性の中間くらいになるよう設計をする。最良だけを信じるとうまくいかないこともあるので、皆さんに予定を言うときは中心から幅を持って話していた。今回はすべてがうまい方向へ倒れた。倒れるべく設計したことがその通りになった。意図通りに働いてくれた。

あいうち:リュウグウの岩石の硬さは推測できるのか

津田:今の段階ではわからないがここは面白いところで、探査機はバウンドしているの挙動を詳しく調べると硬さがわかるかもしれない。探査機のほかにもMINERVA-IIやMASCOTなどローバーを接地させている。それでわかるかもしれない。

JAXA TVはここまで)

ニッポン放送はたなか:5時間遅れのときの作業は想定内? 心境を。また成功に対してどういう意味があったのか

津田:探査機を降下させる前に着陸シーケンスを教える丸一日くらいの作業がある。ほぼ終えたとき意図通りになっていないとわかった。探査機に対する指令はおおよそ3,000項目ある。検証したり実機で試してきたものもある。3,000項目のうちレアなケースのとき齟齬を起こすことがわかった。
5時間遅れてキャッチアップできるのかは今回初めてやったこと。5時間の猶予内で初期設定できるか訓練の中でやったことはあった。あのときのやり方だということで進めた。
降下速度を速める訓練は2年前にやっていた。いろいろなケーススタディをしていろいろ訓練したのであのときのあれだということで進められたのが大きい。

はたなか:自律モードでコマンドを打つとき念を入れたりおまじないをしたりは?

照井:おまじないは入れていない。自律のプログラムは作って終わりではなくソフトウェアでシミュレーションをくり返す。間違いがあったり思ったような動作にならないことがある。何度もくり返して確かめて、はやぶさ2と同じハードウェアが地上にあるためそこで試してから実機に載せる。たくさんの検証をしているということ。

ライター秋山:海外からの反応、特にOSIRIS-ReXチームからは? 先輩として聞きたいみたいな要請はあったか

津田:兄弟ミッションのようなOSIRIS-ReXでよくやりとりしている。PIのダンテさんからは事前に「成功をお祈りしています」と。砂、レゴリスがどのくらいあるかは向こうも非常に興味を持っている。方式は違うが知見をほしいと要請を受けている。
運用はNASAのDSN(深宇宙ネットワーク)をたくさん使わせてもらった。NASAの技術者や科学者も立ち会ってもらって臨んだ。成功したときは握手したしおめでとうとも言われた。

吉川:NASAの科学部門のトップ、ロリー・グレイズさんから事前にメッセージをいただいた。

秋山:模擬リュウグウへ弾丸を撃ち込んだ話があった。それと実際が違っていた場合、どんなことが想定できるか

津田:模擬リュウグウは上空にいる間、接地するまでの訓練をしていた。接地ではなにが起きるかわからない、なにがおきてもいいように訓練をしていた。
接地のときなにが起きるかは想像の範囲外。幅広い防御ラインを引く程度。
先ほどのような画像が得られたのも新鮮な驚き。
タッチダウンの検知が姿勢の変化だった。サンプラーホーンが曲がるのを最初に見ていたがそうではなく、その次の姿勢変化からタッチダウンを検知した。そこからわかることがあるかもしれない。

久保田:去年12月から模擬地形を撃つ実験をした。大気中だったので違いがあるかも。
材質は炭素系ではあるがまったく同じではない。弾丸を地上で発射してみるとけっこう穴が空いてチリも広がるとわかった。
地上の実験もいい線いっていたかも。

(東京のサテライト会場から)

(聞き取れず):MINERVA-IIで取得した画像がどう生かされたか

久保田:MINERVA-IIは今は太陽距離が遠いのでお休み中。600枚ほど写真を撮った。昨年12月の弾丸発射実験ではそのときの画像を参考にした。ジャンプして移動するのでその情報を提供した。それが役に立ったかも。
新しい知見が得られれば提供したい。

(聞き取れず):自律降下について(聞き取れず)

佐伯:UTで2245から臼田アンテナを使用。今も臼田のアンテナで交信中。
今回の運用は海外のアンテナもつないでつないでバトンを渡して通信してきた。

(聞き取れず):

佐伯:海外局ではなく臼田から通信しているとき着陸するようにしたのは、クリティカルな運用の可能性があったため。

(聞き取れず):

津田:精度が厳格に要求される中での運用だったという感想は今も変わらない。20キロ上空から、もとは甲子園球場内への着地だったのがマウンドを目指さなければならなくなった。チャレンジだったが無理はしていない。できることを積み上げていき、できると思ったので実施した。マウンドに下りられてよかった。
マウンドのどこに下りたかは今後の解析で。

(聞き取れず):

津田:一つ挙げよと言われるとターゲットマーカの技術と思う。去年の12月にTMを地上に降ろした。その上でホバリングできることを確認。なにもわからない小惑星上に人工物を置くことができれば、そこを基準にして自分たちのフィールドになる。
TMを下ろして追尾できたことがターニングポイントと思う。
初号機からの技術だが、これがあったからピンポイントタッチダウンができた。発想のすごさを実感。世界にない我々の、日本の技術と思う。

ライター林:2月6日の記者説明会で津田プロマネに一番の心配事はと聞いたところ4つのチェックポイントを確実に通過できるか、信頼しつつも心配、ドキドキしながら見守るだろうと話していた。ドップラーデータを見守っているときの心境は

津田:技術者としては自分たちが設計し仕込んだものに対する自信はあるが、一方で技術者の性というか、自分がしたことに疑いを持つ。このときはこういうことが起きるかもしれないがどうだろうということが頭の中をめぐっていた。進行していくと心配事が移っていく。最後の最後まで心配が尽きないというか、疑問や今できることはなんだろうということがぐるぐる巡っていた。最後まで不安は尽きなかった。

林:予定より早く進んでそのときは?

津田:4つのハードルを想定の中で早いタイミングでクリアできた。きれいに最速パターンに従って進行していった。探査機の能力がそこまであった。狙ったところに着陸できる能力があった、設計できたと自信が持てた。

林:6メートルの範囲に着陸できたことについて。この精度は世界初の難易度。世界の小天体探査に対する意味、どういう世界が開けていくと思うか

津田:よくわかったところ(月や火星)へタッチダウンする計画はいろいろあるが未知の天体へ最初に出掛けていきこの狭い範囲に着陸できるというのは非常に大きなステップアップ、可能性が広がる。
科学探査だけでなく資源探査や地球に危険をもたらす小惑星の探査にも。ここの場所のこういうことを知りたいという

(中継が停止)

そこに手を伸ばしてそこの物質を手に取って持ち帰るということも含めて、遠い目、遠い手を持ったことと同じ。誰も行ったことがない場所で初めてのことをする。遠い将来何らかの形で人類に貢献していると思えるアクティビティ。関われることが幸せ。楽しくてしょうがない。

(以上)(会場から拍手)