小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(2018/08/23)

小惑星探査機「はやぶさ2」は、引き続き小惑星 Ryugu(リュウグウ)の観測活動を実施しています。

今回の説明会では「はやぶさ2」の現在の状況、リュウグウの観測状況、タッチダウン地点・MASCOTやMINERVA-IIの着陸地点選定の進捗と候補地(※)について説明を行います。

※ 候補地であり、8月23日時点で決定している情報ではないことにご注意ください。

小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会(18/08/23) | ファン!ファン!JAXA!

日時

  • 2018年8月23日(木)16:00~17:30

登壇者

  • JAXA宇宙科学研究所 研究総主幹 久保田孝(くぼた・たかし)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 教授)
  • はやぶさ2」プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 津田雄一(つだ・ゆういち)(JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授)
  • プロジェクトサイエンティスト 渡邊誠一郎(わたなべ・せいいちろう)(名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)
  • ドイツ航空宇宙センター(DLR) 小型着陸機MASCOT担当 Tra-Mi Ho(トラミ・ホー)
  • フランス国立宇宙研究センター(CNES) 小型着陸機MASCOT担当 Aurélie MOUSSI(オーレリー・ムーシ)

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(image credit:JAXA

※向かって左からムーシ氏/ホー氏/渡邊氏/津田氏/久保田氏

中継録画

トラミ・ホー氏からのコメント

DLRを代表して、はやぶさ2ミッションに関わることができて光栄。8年にわたって実りが多かった。これからもよい関係を続けたい。

オーレリー・ムーシ氏からのコメント

CNESにとっても光栄。機会を与えてくださったJAXAにお礼を。いろいろチャレンジなことがあると思うが一緒にがんばっていきたい。

着地点候補について+本日の内容

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目次

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はやぶさ2」概要

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ミッションの流れ概要

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1.プロジェクトの現状と全体スケジュール

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本資料における注意点

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2.着地候補地点と予定日

(津田氏より)

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8月17日の会議で結論を得ることができた

2.着地候補地点と予定日

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  • タッチダウン:L08(バックアップはL07、M04)
  • MASCOT:MA-9
  • MINERVA-II-1:N6

場所のすみ分けをしつつ科学的に意義がある場所を選んだ。

2.着地候補地点と予定日

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Lは低緯度、Mは中緯度の意味

2.着地候補地点と予定日

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  • タッチダウン1リハーサル1:9月11日~12日(最下点到達は12日14時ごろ予定)
  • MINERVA-II-1運用:9月20日~21日(分離は21日13時ごろ予定)
  • MASCOT運用:10月2日~4日(分離は3日11時ごろ予定)
  • タッチダウン1リハーサル2:10月中旬
  • タッチダウン1:10月下旬

3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の前提条件1

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の前提条件2

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込みの手順

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第1段階(形状モデルより)

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第1段階(形状モデルより)

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色のついた範囲で100メートルにわたって青い領域があればよいのだが見つからなかったため、相対的にいいところを選定した。低緯度に11か所、中緯度に4か所。候補にする場所は低緯度のみとする予定だったが、いい場所が見つからない可能性を考え中緯度にも4か所を選んだ。

3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(画像より)

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(画像より)

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L07、L08、M03、M04は右側のM01、L05、L12に比べて岩塊が少ないため選定した。(正方形の1辺は100メートル)

こうやって選定していく過程でボルダーが少ないところが見つかるのではないかと期待していたが、リュウグウに関しては一面ボルダーだらけだった。

光学的に安全な場所を絞りきったあと、そこに科学的評価を行う予定だったがこの状況なので、相対的に安全なところを科学的に評価することになった。

3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(実現性より)

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3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(実現性より)

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L05地点のボルダーマップの例。はやぶさ2の着陸位置の精度は100メートル四方。この正方形の中のどこかにタッチダウンする。運が悪いと大きなボルダーに当たる。直前の安全機構はあって離脱できるがそもそも成功確率があまり高くなさそう。

3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(実現性より)

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3メートル以上のボルダーがある場所のマッピング。L08が比較的よさそう。次点はL07、M04。

3.タッチダウン候補地点選定

タッチダウン候補地点の絞り込み:第2段階(実現性より)

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ボルダーの分布。M04が一番小さいのだが中緯度にタッチダウンする難しさ(緯度が上がるほど精度が下がる)もあるためL08にした。

リハーサルで我々の技量を測る。中緯度でもいけそうだとなればM04にするかもしれない。リハーサルは高度30メートルほどまで行き近接画像を撮影。

4.タッチダウン候補地点についての科学的検討

(渡邉氏より)

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科学的には非常に興味深いところがたくさんあり面白い天体だが、タッチダウンしなければならないとなると難しい。どういうところを考えるべきか。

昼間の温度変化が小さいのは科学者的に驚きの結果。

4.タッチダウン候補地点についての科学的検討

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4.タッチダウン候補地点についての科学的検討

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物質の特性で赤い領域と青い領域に分けた。赤い領域と青い領域のどちらに行くか?→各候補地点を調べると、赤い領域の中に青い領域があったりまたその逆もあった。どこへ下りても両方のサンプルを採取できそう。

4.タッチダウン候補地点についての科学的検討

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青いところは粒子の多様性がやや高いが僅差。

4.タッチダウン候補地点についての科学的検討

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どこから採取してもリュウグウ全体を代表する多様性のあるサンプルを採取できそう。

5.MASCOTの着地候補地点選定

(ホー氏より)

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MASCOTは靴箱くらいの大きさ、重さ10キロ。

5.MASCOTの着地候補地点選定

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MASCOTが通信できるのは16時間に限られる。

5.MASCOTの着地候補地点選定

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5.MASCOTの着地候補地点選定

(ムーシ氏より)

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5.MASCOTの着地候補地点選定

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5.MASCOTの着地候補地点選定

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5.MASCOTの着地候補地点選定

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どういうバウンドをするかわからないので着陸候補地点は400メートルくらいの範囲に広がっている

(ホー氏より)
10月までは眠れない毎日を過ごすことになりそう。

ボルダーが少ないところがいいがどうなるかわからない。最終的な分布がわからないことがMASCOTのリスクになっている。

6.MINERVA-IIの着地候補地点選定

(久保田氏より)

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6.MINERVA-IIの着地候補地点選定

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6.MINERVA-IIの着地候補地点選定

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7.着陸実現に向けた戦略

(津田氏)

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ボルダーが多いことが挑戦的な条件。

7.着陸実現に向けた戦略

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(しばらく中継中断)

8.今後の予定

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  • 9月5日(水)11:00~12:00
  • 9月27日(木)14:30~15:30

質疑応答

NVSさいとう:津田氏に。着陸スケジュールについて。ターゲットマーカーは?

津田:ターゲットマーカーは着陸運用の最終的な降下のとき使用。

さいとう:ターゲットマーカーが落ちたところがボルダーが多かったとき、着陸をキャンセルするような判断は地上から可能か

津田:ターゲットマーカーの分離後は基本的に探査機の自律的な判断になる。そこから先は探査機がリュウグウの地形をきちんと判断できるかがポイントとなる。

NHKすずき:津田氏に。着陸候補地点について、どんな場所なのか

津田:緯度0度、リッジの上になる。尾根になっている場所。クレーターの中ではない。

すずき:50センチ以下の岩がある場所をリハーサルで選定?

津田:全体で平均的に見ると着陸に向く場所はないということになるが、一点一点で見ると3メートル以上の岩がない場所もある。そういうところに下りられるかどうか。

すずき:水や有機物は期待できるのか

渡邉:近赤外線で見るとリュウグウ全体から弱いが水の反応がある。またリュウグウが暗い天体である原因を一番うまく説明できるのが有機物が存在するということ。有機物はどこに下りても確実に、水も可能性は均等にある。

すずき:津田さんに。着陸点選定の気持ちは

津田:誰も行ったことがない天体に行くとなにが起こるかわからない。その典型を味わっている。経験できている。これこそ我々が実地に行ったから得られた知見であるとポジティブに考えている。探査した価値があると実感。
技術的には安心できないリュウグウの地形。ここからさらに挑戦が必要。訓練で技術習熟度は上がっているがどうやってタッチダウンを決めるかは創造的に解決していく必要がある。

共同通信はっとり:10月下旬の着地で行うことは。サンプル採取以外に観測をするか

津田:着陸はサンプル採取のみ。サンプリングして上昇しホームポジションに帰る。その前後に観測のため写真を撮ったりはするが主目的は着陸のみ。

はっとり:ボルダーが多いとのことだがぶつかって損傷するなども考えられるのか

津田:着陸が最後まで推敲できるか(着地できるか)。最後は探査機が自律的に判断し、ちょっとでも危なかったら逃げる。着陸できるかがポイント。
あまりに意地悪な地形の時、安全か危険の判定を誤らないかが心配。危険なのに安全、安全なのに危険、どちらの判断もよくない。はやぶさ2がどういう反応をするか、もっとよく調べる。

(?):渡邉先生に。水のスペクトルはNIRS3ではほぼないと前回話していたが、それと今日の水の反応があるという話との整合性は

渡邉:北里先生がおっしゃっていたのは、現在のところスペクトルから水の存在が確実といえる観測結果はない、ということ。一方で水の徴候は見つかっている。それが本当に水かどうかをNIRS3チームは解析中。

(?):津田さんに。はやぶさ2が危険の察知をくり返してなかなか着陸できないときは、危険検知のソフトウェアを書き換えるなども考えているか

津田:まずは情報収集。リュウグウの環境、はやぶさ2の特性。どういう手を打てば解決に近いかを随時考える。まずは着陸のリハーサルではやぶさ2のレスポンスを見る。

(?):みんなのメッセージが入ったターゲットマーカーはいつ落とすのか

津田:5つすべてに同じように名前が入っているのでいつどれを落としてもみなさんのメッセージ入りということになる。

ライターあらふね:着陸候補地の選定について。17日の会議でどのようなことが話し合われたのか

津田:まずこの日の会議までの解析は非常にスムーズだった。最終的な候補地点はそれぞれぶつかることもなくうまく選んだように見えるがこれこそ訓練の成果。お互い相手はここを選ぶだろうと理解しつつ候補地を挙げることができ自然にばらけた。どうコンフリクトしないかの議論はスムーズだった。
工学的な選択は絶対安全ではなく相対的安全。そこも含めて合意する必要があったため議論が白熱した。

ホー:トゥルーズで長い議論をしてきた。そのバックグラウンドをはやぶさ2チームに伝える必要があった。吉川先生がタイムコントロールを厳しくする中で発言した。すべての工学的、科学的側面について議論が必要で長い時間がかかった。

ムーシ:優先順位が高かった候補地とバックアップ候補地でほかと重ならないように考える必要があった。事前の訓練よりうまくいきラッキーだった。

あらふね:タッチダウンなどを行うかどうかの判断基準は

津田:これからの予定は以下で、それぞれうまくいくことが次へ進む前提になる。運用がうまくいかなかった場合、その理由が次に波及する場合スケジュールの変更もありうる。

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うまくいった場合でもタッチダウンのリハーサル1、2の後は着陸誘導制御技術とリュウグウの表面の状態から、安全に着陸できる精度があるかを評価してタッチダウンを行うか決める。

日刊工業新聞とみい:津田さんへ。リハーサル1は今までの運用とどこが異なるか。3つの候補地をいっぺんに判定できるのか

津田:リハーサル1は初めて小惑星の上空20~30メートルと非常に接近した高度になる。地上から誘導できる範囲を越えるのでタッチダウンは探査機自身が判断しなければならない。着陸時重要なLRF(Laser Range Finder)が機能するのは高度40メートル以下。それまではLIDARを使う。LIDARはすでに使っていて実績があるがLRFは実地で試すほかない。リハーサルが大きな試金石になる。
リハーサル時はL08メインに評価するが降下中は近くのL07やM04も観測できる。そちらも見て総合的に判断。

日刊工業新聞かとう:MASCOTとMINERVAの現時点での健全性は確認しているのか

久保田:MINERVA-IIは健全性を確認している。小惑星の重力に合わせてホップ速度を設定する。これも設定済み。

ホー:MASCOTについては堅牢性を保つよう設計している。このくらい(10センチくらい)から落としても大丈夫なように設計されている。
小惑星の表面地形がわかっていないので、不幸な場合には岩と岩の間にトラップされてしまう可能性がある。

久保田:MASCOTもこれまでに通信を行って健全性を確認済み。

かとう:クリティカルな運用が始まると海外局での運用が増えてくる。そのイメージは

津田:到着してからは必要なときに使わせてもらっている。マドリード、キャンベラ、ゴールドストーンは軽度で120度ずつ離れていて8時間ごとに切り替わりながら運用。
タッチダウンなどは連続運用になってくるのが今までとは違う。日本やキャンベラで運用し、通信が切れることなくキャンベラ、ゴールドストーンへスイッチしていく必要がある。そういうふうにアンテナを使わせていただく必要があるのが今までとは違う。
それぞれのDSN局は複数のアンテナを持っているので、各局使わせていただくといってもアンテナをはやぶさ2が占有するわけではない。

(以上)