小惑星探査機「はやぶさ2」の取得画像に関する質疑応答機会(2018/06/21)

日時

  • 2018年6月21日(木)14:00~15:00

登壇者

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(image credit:JAXA

中継録画


配付資料とリンク

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今日は質疑ということで最新の画像を紹介する。

本日の内容

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1.本日の「はやぶさ2

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2.リュウグウの画像(01~16)

合計16枚。左がオリジナル。画像処理は画像平滑化、明暗強調。

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形が非常に特徴的。コマ(独楽)型。またはそろばんの珠のような形。ちょっと意外。理由はのちほど。

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200メートルより小さそうなクレーター。溝なのか複数のクレーターのつながりかはわからない。たくさんの特徴を読み取れる。

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リュウグウから100キロで撮影。

中央に大きめのたぶんクレーター、丸い構造。てっぺんのすぐわきにもたぶんクレーター。横にでっぱり、ボルダー、岩塊がある。(南半球の)小さなボツボツはボルダー、岩塊。

正確な大きさはまだわからない。正確な距離がわからないから。LIDARで正確な距離がわかれば大きさもわかるだろう。

いまの距離は軌道から推定したもので誤差がある。

この大きな丸いクレーターはおおむね直径200メートルくらい。見えてる範囲の小さなボルダーは数十メートルくらいと予想。

これまでリュウグウは「丸い形」と言ってコマ型とは言ってこなかった。形状がアップデートされてきてコマ型、トップシェイプとは明言していなかった。行ってみたらきれいなコマ型だった。

参考:他のミッションの探査候補小惑星

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ベンヌはコマ型、2008EV5も同様。ディディモスもコマ型。このような形の小惑星がけっこうあることはわかっていた。

参考:他の“コマ型”小惑星

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これらは探査対象ではない小惑星。どれも似たコマ型をしている。自転周期が短いのが共通した特徴。2時間から3時間台。

一方リュウグウは7時間半なのでコマ型とは想像されていなかった。

参考:“コマ型”小惑星の形成シミュレーション

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自転周期に依存する理由について。自転速度が速いと球形からコマ型に変型していくシミュレーション。自転が加速していく。ヨープ効果で加速する。高速回転する小型小惑星はコマ型になるという研究があった。

リュウグウは比較的大型で自転もゆっくりなのにコマ型なのが意外。

今回初めてコマ型の小惑星を探査することになり生成や進化のメカニズムがわかるだろう。サイエンスは非常に期待している。

参考:軌道図

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ほかの小惑星リュウグウに近い軌道を回っている。

探査機からのリュウグウ観測の履歴

前回と同じ。

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探査機が見た小惑星

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シュテインスはややコマ型。ほかの小惑星はおおむね球形。

探査機が見た彗星

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参考資料

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質疑応答

産経新聞くさか:現時点でリュウグウの形状がなぜこうなったのか想像できることは

吉川:細かい情報がないためなんともいえない。かつては自転が早かったのが遅くなったのだろう。そのメカニズムが謎。ヨープ効果は熱放射の圧力で自転速度が変わるもの。ヨープ効果が遅くなる方向に働いたのかも。

コマ型の小惑星には衛星が多い。衛星が分離したときに周期が変わったのかも。

今後ミッションで情報を取得していく。

バイナリーは2つ、トリプルは3つ衛星がある。

くさか:コマ型であるとわかったために衛星がある可能性が高まった?

吉川:はい。でもバイナリーやトリプルは大きな衛星を持っている。今のところリュウグウにそのクラスの大きさの小惑星は見つかっていない。

くさか:凹凸が目立つから金平糖型とかいえる?

吉川:そう言ってもいいかも。

時事通信かんだ:着陸できないということはなさそう?

吉川:イレギュラーな形ではないのが安心材料。ただ狭い領域の凹凸が問題になる。大きなクレーターの内部が平らだとすると着陸の可能性が出る。数メートルの岩があっても障害になるので着陸のリスクは評価できない。

かんだ:ここを見たら面白そうというものは

吉川:特定していない。どこを見ても面白いだろうと。クレーターは地下が見えている可能性がある。大小の岩塊、ボルダーがどのくらいめり込んでいるとかなど。今後表面のスペクトルが取れると物質の違いがわかってくるかも。目指すのは有機物。それがあれば興味深い。

テレビ朝日さとう:ネットで公開すると「スター・ウォーズ」のデススターに似ているという声。現場では?

吉川:確かにデススターに似ているとかガンダムのソロモンに似ているという声も。お団子ではなかったということで運用の工学チームにとっても関心が高い。

さとう:吉川さんとしてはなにに似ていると思うか

吉川:そろばんの珠に近いと思った。

ライターあらふね:形状と自転の関係について。リュウグウが逆回転していることは関係ある?

吉川:回転方向で違いはないと思う。高速自転すればコマ型になるだろう。

あらふね:逆回転であることは確か?

吉川:はい。

あらふね:自転軸の傾きなどで驚きはあるか

吉川:きれいなコマ型になっていたのが驚き。自転軸がほとんど傾いていない(10度くらいと予測)のは今後の探査計画を立てやすい。

ニッポン放送はたなか:形状が探査の都合のよさにどう影響するか

吉川:基本的には変わらない。一つだけ気になるのは赤道部分が張り出している、リッジと呼ぶがここはタッチダウンしやすい。この傾斜がきつすぎるとリスクが上がる。赤道部分にクレーターがあり平らになっていたら下りやすい。

はたなか:赤道を避ける可能性もある?

吉川:あまり避けられない。探査機は地球と小惑星の一直線上から下りていく。太陽電池パネルに光が当たりやすい赤道が有利。極地方へ下りようとすると探査機が傾いて電力が少なくなる。

毎日新聞永山:コマ型になるところ。高速回転で扁平になるのを言葉で説明するとどうか

吉川:シミュレーションを見てほしい。球形から高速回転させる。ゆっくり回っているうちは変化しないが高速になると遠心力で形状が変わる。レゴリスがゆるやかにつながっているだけなのでこうなる。

永山:極域にあるレゴリスが遠心力で赤道に集まっていく?

吉川:その通り。

永山:砂礫だとかレゴリスでおおわれていることが条件?

吉川:ひとつの大きな岩だとこうはならない。

永山:工学チームはタッチダウンのシミュレーションを始めている?

吉川:それはまだ。タッチダウンにはもっとローカルな地形がわからないといけない。基本的には極域への着陸は難しいので赤道付近でよい場所を探す。

NHK水野:27日の到着は赤道面の上空20キロということ?

吉川:どこから20キロとは決めていないがLIDARのレーザーが小惑星に当たると赤道から20キロということになる。

水野:リュウグウに到着したら追随して移動していく?

吉川:小惑星のまわりを回ったりはしない。常に小惑星と地球を結ぶ線上、小惑星から20キロの距離。

水野:クレーターは他天体がぶつかったものと思うが岩塊はどうしてできるのか

吉川:面白い研究テーマ。大きな丸がクレーターだとして天体がぶつかったものとするとその破片が落ちて岩塊になっている可能性がある。ラブルパイル天体の構成物がこう見えているのかも。

イトカワはラッコ型だった。たくさん細かい岩塊が集まってできていると考えている。その一部がボルダーとして見えているというもの。

フリーランス秋山:リュウグウの南極北極はすでに決まるのか。小惑星に地名をつけるのはいつごろになるか

吉川:南極点や北極点はまだわからない。到着して精密観測してから。画像からいうと逆行自転しているため下が北極、上が南極となる。

地名はまったく決まっていない。地形が見えてきてどの地形に名前をつけるべきか…名前をつける理由がある場所に名前をつけていく。プロジェクト内で検討中。勝手に名前をつけられず、IAUへの申請が必要。

NHKふるいち:TCMについて。6回目までは順調か。27日に到着できるのか。到着はなにをもっていうのか

吉川:参考資料の図「リュウグウ-探査機間の相対速度」を参照。6回目までは順調、予定通り。TCMのたびに軌道を測定して次を決めていく。非常に細かい制御をしている。残り4回目のTCM10は小惑星から20キロに静止させる。その時点をもって到着。20キロという距離を確認するのはLIDAR。

相対速度もモニタしゼロになっていることを確認する。ドップラーの変化を観測する。

(「両方同時に」という回答は質問が聞き取れず)

共同通信すえ:クレーターの直径は大きいと思うが不思議ではない?

吉川:小惑星の直径に対して大きなクレーターがあることはままある。小惑星シュテインスなどは半分くらいの大きさのクレーターがあったり。

すえ:鮮明な姿が見えてきたことの感想

吉川:本当にワクワクしている。イトカワが見えてきて表面がでこぼこだったのが驚きだった。今回はコマ型だったのが驚き。まだ大きなクレーターやボルダーしかわからないがもっと鮮明になってくればいろいろな特徴があるはずで非常に関心を持っている。

朝日新聞はまだ:先ほどおっしゃった小惑星の形成や進化のメカニズムがわかるというのは小惑星一般についてわかるということ?

吉川:最終的にはそう。まずはコマ型のほかの小惑星についての形成過程がわかるのではないか。

はまだ:小惑星の大きい、小さい、自転が早いというのは基準はあるか

吉川:基準はとくにない。見つかっている小惑星は数メートルから数百キロまである。自転はだいたい4時間未満を早いとしているがもっと短いものもある。いろいろな性質がある。ここでいう「小さい」はおおむね直径1キロ以下、「自転が早い」は3時間以下。

はまだ:小惑星の自転が遅くなる原因は

吉川:早くなる原因と遅くなる原因、両方がある。ヨープ効果。小惑星の表面温度が上がると熱放射が出てその反作用で自転速度が変わるというもの。もともとヤーコフスキー効果というものがある。赤外線による熱放射で軌道速度が変化する。これがあることは観測でわかっている。さらにヨープ効果が関係すると考えられている。

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はまだ:自転方向が変わることはあるのか

吉川:そこまではないような。自転が逆行している原因は小惑星が誕生した時までさかのぼるのでは。生成時の状況に依存するのでは。

日本テレビいだ:コマ型、トップシェイプという呼び方は一般的なのか

吉川:日本語でコマ型という言い方はあまりしてこなかった。論文ではトップシェイプという。

ライター林:赤道付近が着陸しやすくクレーター内がよさそうだが大きな岩がないところ、有機物がありそうなところを選ぶのか。

吉川:岩は1メートルクラスのものがないところを選びたい。サンプラーホーンの長さは1メートル程度なので。有機物があるかどうか判断して選ぶ。

林:南極近くの岩塊はそれほど面白いわけではない?

吉川:そんなことはない。解像度が高い写真が撮れてくれば面白いだろうと注目している。溝のようなクレーターの連なりのようなところも。

NHKつつい:自転軸が垂直だと極地方の観測は可能なのか

吉川:はやぶさ2の居場所をずらすことはやってみる予定。極地方も観測する。

毎日新聞永山:ラブルパイルがコマ型になりうるのか

吉川:ラブルパイルでない、ひとつの大きな岩だとコマ型にはならない。

永山:リュウグウイトカワと同じように岩塊が集まってできたと考えるのか

吉川:それは今後の観測。イトカワはS型、リュウグウはC型とタイプが違うのでそれで構造の違いがあるかもしれない。面白いところ。

NHK水野:有機物をどうやって探すのか

吉川:有機物は直接見るというより含水鉱物があるところを探す。含水鉱物があるところに有機物がある可能性がある。NIRS3という赤外線スペクトルを取るセンサで全体をくまなく調べた上で3ミクロン単位の吸収がある場所を探す。

水野:現状どこがというのはわかるのか

吉川:赤外線のスペクトルはまだ取れていない。ONC-W(広角カメラ)のフィルタで観測はしているがNIRS3ではこれから。

水野:ではなぜ現状で有機物があるらしいとわかっているのか

吉川:リュウグウはC型小惑星。スペクトルから決まる。C型小惑星から来たと考えられている隕石が炭素質コンドライト。その中に有機物が確認されている。だからC型小惑星には有機物があるだろうと考えられている。

フリーランス大塚:自転軸が垂直に近いのが意外。自転軸が寝ているという予測が外れた理由は

吉川:自転軸が寝ている予測のほかいくつかの予想があった。寝ているのが一番ありそうな予測だった。立っているという予測もあることはあった。結果的に自転軸が立っていたので計画は立てやすくなった。

もともと丸い形ということで自転軸を予測しづらかった。もっと細長ければライトカーブ、明るさの変化から自転軸を予測しやすい。

大塚:極地方の観測について。近づいていってONC-Wで見るのか

吉川:まっすぐリュウグウに向かっていけば赤道地方しか見えないが上下から回り込むようにして極地方を見る。

(…):たびたびすみません。クレーターにリュウグウ固有でないものがあるとしたらそれをサンプルリターンしてしまう可能性は?

吉川:どの小惑星にも隕石が落ちる可能性はあるからそれは排除できない。今回リュウグウ固有の物質がたくさんあるだろうところにタッチダウンする。月のクレーターを見ると放射状の筋がある。そういうのも見る。

(以上)