日時
- 2018年4月19日(木)13時30分~14時30分
登壇者
(image credit:JAXA)
- JAXA宇宙科学研究所「はやぶさ2」プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ、JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 津田雄一(つだ・ゆういち)
- ミッションマネージャ、JAXA宇宙科学研究所 宇宙機応用工学研究系 准教授 吉川真(よしかわ・まこと)
- プロジェクトエンジニア、JAXA宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教 佐伯孝尚(さいき・たかなお)
- 光学航法カメラ担当、東京大学大学院 理学系研究科 教授 杉田精司(すぎた・せいじ)
※写真左から杉田氏、佐伯氏、津田氏、吉川氏
中継録画
配付資料とリンク
- http://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/files/20180419_hayabusa2.pdf
- 小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会 | ファン!ファン!JAXA!(http://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/detail/11780.html)から
- JAXA Hayabusa2 Project(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/)
2018年の小惑星リュウグウ到着にむけて小惑星探査機「はやぶさ2」の近況
津田:おかげさまではやぶさ2は太陽系を飛行中、2か月半ほどで小惑星に到着する運び。間もなく到着するのでそれに向けた準備ができているご報告と今後のご案内。
プロジェクトの現状と全体スケジュール
小惑星リュウグウの初観測
実際に写真を撮って確かにそこにリュウグウがあることを確認
色の情報(スペクトル)を得ることでリュウグウの組成を知る
動いているのがリュウグウ
「ちゃんと来ているな」という動かぬ証拠
リュウグウの近くに一瞬見える輝点はノイズ。「これはジェットですか」という質問が来た。みなさんよく見ている。
このときの撮像は最長露光(約3分)で、その間に宇宙線が来るためノイズが入る。リュウグウに近づけば露光時間がごく短くなるのでノイズはほとんどなくなるだろう
地上観測からの推測に合致する(調和的な)画像を撮影できている
カラー合成で星の表面温度による色の違いがわかる。少し緑に見えているがもう少し黄土色っぽくなる。変な吸収がなく太陽の光がそのまま反射しているというC型小惑星の特徴に合致する。水や有機物を持っている可能性を支持する結果
イオンエンジン運用
往路におけるイオンエンジン運用のまとめ
往路におけるイオンエンジン運転のまとめ。黄色いハッチングのところでイオンエンジンを運転している。地球スイングバイの手前でも少し噴かして軌道修正している
イオンエンジン運転で2台に落とすところがあるのは太陽から遠ざかり、発生電力が少なくなるため
ミッションスケジュール(暫定版)
アプローチ運用で2,500キロからさらに接近。リュウグウまで20キロに着くのは6月21日~7月5日予定。リュウグウは自転軸すらわかっていないので幅がある(自転周期は7時間とわかっている)
重力計測降下で自由落下させて重力を測る
「スロット」ごとにタッチダウンやローバの投下を行う
クレーターを作る運用は2019年3月~4月。結果がよければタッチダウン運用のスロット3を行う
運用訓練
着陸点選定訓練(LSS訓練)と実時間統合運用訓練(RIO訓練)
はやぶさ2ハードウェアシミュレータの構成図
CMD遅延とTLM遅延:地球から電波を送ってはやぶさ2に届くまで最大20分かかる。この遅延を出すための装置。遅延なしで訓練するとわりと楽だが遅延が入るととたんに運用が難しくなる
GCP-NAV:画像を用いた地上からのフィードバック制御
小惑星の画像を地上へ送ってきてそれを地上で見て探査機の位置を推定する
推定の見え方と実際の画像を合わせてずれを見る
右は下りてくるときのパス。緑が予定でそれに合わせて精度よく下りている
小惑星近傍で想定される降下運用
コンテンジェンシー(不測の事態)を想定
出題チームが不測の事態を出してくる。その分類の例3つ
広報・アウトリーチの一覧
- はやぶさ2をつくる | デアゴスティーニ・ジャパン(https://deagostini.jp/hy2/)
「はや2NOW」
- Haya 2 Now(http://haya2now.jp/)
アメリカのDSNが探査機との通信状況をリアルタイムに提供していて、それに似たものを作った。運用状況がわかるようになっている
打ち上げから到着までの動画
暫定版。後日公開
今後の予定
5月にスタートラッカ(STT)による撮像
質疑応答
(52:41くらいから)
毎日新聞永山:準備が整ってきたということだが、どのくらいまでできていて残りはなにか
津田:実運用と訓練に分けて申し上げる。実運用は7割方。太陽系を動いている小惑星を追いかけるようにタイミングよく到着しなければならない。イオンエンジンをタイミングよく噴いたり止めたりする必要がある。うまくないと到着が遅れる。近づくほどタイミングが重要。残りの3割が大切。ここを慎重にやっていかなければ。
訓練は47回中43回終了。かなり習熟してきている。出題側もこういうことが起きるだろうと想定。それ以外は想定外となる。リュウグウの形も行ってみなければわからない。探査機の挙動もそれによって変わってくる。これからは想定外も含めて自信をつけたといえるのではないか
永山:5月のSTT撮像でわかることは
津田:科学観測には不向きなカメラ。小惑星の位置を精度よく決める。現在100キロ程度の軌道精度。ナビゲーション技術で精度が上がった。STTでさらに精度を上げる。
永山:自転軸がわかるのは6月以降?
津田:その通り。
時事通信かんだ:訓練の失敗から手順を更新したなど改善点の具体例を知りたい
佐伯:改善リストを作っている。何百個も改善点がある。たとえばリュウグウとの距離を測りながら下りるとき地上が持っているモデルと実際のリュウゴイドの形状(地上チームには非公開)の差で精度が上がらないことがあるとか、ツールの画面が見づらい、グラフのこの線は不要などといった細かいところまでいろいろ。
かんだ:打ち上げから休眠している観測機器の動作確認スケジュールは
佐伯:到着までは着くことに専念。到着後は本番になるのでチェックアウトで機器が正常かチェックする。
津田:ずっと休眠しているわけではなく半年に1回ほど恒星や惑星を見るなどして健全性を確認している。
LIDARは宇宙空間では近くにレーザーを当てる対象がなく確認できないので、センサーやカメラ類で航行中確認できるものは確認しているということ。
NVSさいとう:RIO訓練について。43回のうち大規模訓練9回で何回サンプルを採れたのか
佐伯:大規模訓練ではタッチダウン訓練だけでなくローバーの訓練なども行っている。タッチダウンの訓練は2~3回。サンプルは基本毎回採れているが精度がよかったのは…結果の評価は津田プロマネから。
津田:成功は成功でもスコアが低いこともある。「撃墜」と評価。2回は成功(うち1回は大成功)、1回は撃墜に近い成功(正しく失敗しているかなど)。43回のうち半分くらいは不満足だった。
さいとう:アポロやこうのとりの訓練では最初が易しく、だんだん難しくしていくそうだがはやぶさ2も同様?
佐伯:その通り。TRIOで最初は小惑星に下りられないことがあった。熟練度が上がっていくと難しい訓練ができるようになる
読売新聞たけうち:STTによる撮像について。どのくらいのレベルで見えるのか。7月のONC-Tではどのくらいの姿か。イトカワのような写真はいつごろ撮れるのか
津田:イオンエンジン運転中は小惑星に対する精度が2倍(50キロ程度)になる。小惑星まで20キロになったら2キロ程度の精度に。2,500キロですとONC-Tでは2~3ピクセル。20キロなら30~40ピクセル。日々お見せできるようにしたい。
杉田:イトカワは細長い形状と到着前からわかっていた。リュウグウは球形なので、かなり近づかないと具体的な形状はわからないだろう。明るさに関係なく大きなクレーターがあれば驚きの成分がある。6月以降の30ピクセル以上になってくれば。
ライター××:訓練の1巡目2巡目とは。残り4回の訓練の力点は。遅延について
佐伯:難易度を上げた。1巡目では真ん中にタッチダウン、2巡目は端にタッチダウンなど。1巡目で出てきた改善点を短期間で修正し2巡目へとするなど。
残りの訓練は運用訓練の総仕上げ。
遅延があると地上の対処が間に合わないことがある。探査機が自分で判断できるものが必要と訓練でわかってブラッシュアップされていく。
××:ファーストライト画像で「太陽の光をそのまま反射している」とはリュウグウにあまり色がついていないということか
杉田:その通り。わりと灰色。光の吸収がなく太陽の光がちょっと暗くなるだけでそのまま反射している
××:今後の希望は
津田:イオンエンジン往路の完走。我々がはやぶさ2の最重要技術。ぜひ完走してほしい。小惑星が見えてくるのでその報告をしたい。
(以上)