宇宙科学の集い~再使用ロケットの研究について

開催日時

  • 2015年6月15日(月)14時30分~


中継録画

NVSによる中継

  • 【放送予定】6月15日(月) 14:30~ 宇宙科学の集い ~再使用ロケットの研究について~ | NVS-ネコビデオ ビジュアル ソリューションズ-(http://blog.nvs-live.com/?eid=299

(1)21世紀の宇宙利用と再使用ロケットの研究


登壇者
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 教授 稲谷芳文(いなたに よしふみ)

宇宙研は宇宙輸送の未来を切り開こうとしている。自分はイントロダクションとして。研究活動の進展があったためそれを紹介したい。

宇宙を取り巻く世の中の状況。

大きな流れとして宇宙ステーションは完成、運用中。この先どうしていくかは議論がある。それを作ったスペースシャトルは退役。1980年代はシャトルよりもっといいものを作ろうという時代。しかしなかなか現実化していない。

西側諸国は困難な状況がある一方新興国は我々とは少し違った動機で頑張っている。まったく新しいことに取り組んでいるわけではない。

アメリカでは民間活動による宇宙開発がさかんになりつつある。スペースX、ヴァージンギャラクティックなど。

このあたりを背景にして我々はどうするべきか。

スペースシャトルの理想と現実。週1回打ち上げれば頻度が上がってコストも下がるはずだが…見込みと結果の違い。

輸送コストを下げようとしてきた。輸送コストが1桁下がると、2桁下がるとというのがこのグラフ。

宇宙輸送の需要と次のゴール。

未来の輸送需要を作るには:2桁のコストダウン、1日に何十回もの打ち上げなど航空のような世界にならなければならない。

そういう世界をもたらす輸送機とは。

  • 1日に10回飛べる
  • 1回に100トン運べる
  • 1000回の再使用が可能

これらが我々のゴール。


  • 成功確率95%を99%にする
  • 民間や新興国とのコストダウン競争

動画。

動画。RVT#3

アメリカの民間が1段目を戻してくるのをやっているが我々は2000年ごろからやっている。

宇宙輸送の将来。再使用ロケットの研究

次のゴールは再使用型の観測ロケット。

羽根を使わず降りてくる方式。

クイックターンアラウンドの実現のためには地上での整備を簡単にしなければならない→垂直に上がって垂直に降りてくる

水素利用という面

来るべき水素社会に提供できるものごとがさまざまにあるだろう。

次のゴールは宇宙へのルーチンアクセスと2桁のコスト低減

この絵はニューメキシコ州の宇宙港の写真に我々の設備を合成したもの。

将来の宇宙は羽田から1日1000回飛び立つようなもの。今は飛行機の世界と比べると1桁2桁頻度が少ない。宇宙活動が活発になっていってほしい。

質疑応答

産経新聞くさか:再使用ロケットの世界として「故障を許容」とあるがどんなものか

稲谷:飛行機の世界は100万回のフライトで1回。1万日=30年であるから1日100回飛んで1回あるかどうか。非常に少ない。ライフを全うする飛行機は100機中ほとんど100機だろう。
ライフの間にたとえば1万回飛ぶと必ず全うできないというものは世間では許されない。1万回に1回では許容されないだろう。故障率や事故率を自分のライフの間以上にしなければならない。
使い捨てロケットは故障すると爆破。再使用ロケットはもう一度使う。故障があっても安全に降りられるというしくみ。たぶん何千回何万回に1回しか故障しない世界を作れるはず。その構築が大切。その基準はこれから作られていくだろう。

?:1000回、1万回に1回では許容されないとのことだが荷物が人かそうでないかで変わると思うが

稲谷:スペースシャトルで評判が悪いのは、荷物を運ぶだけのミッションに人が乗っていかなければならなかったこと。135回飛んで2回落ちてしまった。
荷物と人を分けて考えるというのは確かにあるだろう。

NHK水野:JAXA内での扱い、位置づけは。年間予算など

稲谷:飛ばす機体の開発が認められているわけではない。前段階の技術実証には予算がおりている。
宇宙戦略室の輸送部会(去年まで)で検討してきた。実用の横で基礎的なロケットをやってきた。これもその中でやっている。

(2)再使用観測ロケットのコンセプトと技術実証計画


登壇者
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 准教授 小川博之(おがわ ひろゆき


再使用観測ロケット計画の目的


観測ロケットの再使用化

現行の使い捨て型観測ロケット。1回で使い捨てということで低コスト化や高頻度多数回が求められている

→弾道飛行する観測ロケットの完全再使用化を目指す

  • 技術的実現性は高いと考えている
  • 継続した飛行需要が見込める

ペイロードの持ち帰りなどの変化で望める新しい成果がある

再使用観測ロケットの概要

4基のエンジンを搭載、1基が故障しても安全に帰還するシステム

今回はエンジンについて紹介

使い捨てロケットから再使用ロケットへ

高頻度飛行運用:1日2回飛ばすことも可能

期待される弾道飛行機会の飛躍的拡大


再使用観測ロケット実現に向けた研究開発

姿勢制御エンジンにヒドラジンではなく酸素/水素燃料を使うなど

ヘルスモニタシステム:故障許容の一環

再使用観測ロケット技術実証プロジェクトの進捗状況

開発スタートに向けて活動を行っているところ

再使用観測ロケットに向けた研究の現状

開発着手前の研究を行ってきた

質疑応答

稲谷:水野さんへの答えとして今年度はここまで許容されている。

日経新聞にしやま:今後具体的にどこでどのような実験を行うか

小川:未定です。

にしやま:実証実験計画が終わったらどうするのか

小川:具体的な開発計画をまとめ計画を提案し採用されるべく活動を行う。

にしやま:実現するとしたら初号機はいつごろというイメージか

小川:予算が認められ開発スタートしたら4年で実証機を飛ばすと考えている。

にしやま:そのときの高度は100キロ?

小川:はい。いきなり100キロではなく1000メートル、1万メートルと上げていく。最終的には100キロ。
初号機の最初の実験は1メートルからだと思う。

読売新聞ちの:現実的な投資額とあるが具体的には

小川:具体的には申せませんが衛星1機には満たないレベルで。
70~80億くらいを考えている。

sorae.jp鳥嶋:再使用によって低コスト化を図れるとあるがメンテナンスコストが上がるところもあると思う。低コスト化の裏付けはあるか

小川:再使用のメンテナンス費用を考えて、運用コストとして観測ロケットの1/10は見込めるのではないか。

?:内之浦から上げている観測ロケットはいまいくらくらい?

稲谷:ものによるがロケット1機に実験機器を含めて小さいものは2億円、大きいものは4億円程度。

NVSさいとう:アメリカの観測ロケットは一部機器にパラシュートをつけて回収している。世界を見て再利用型観測ロケットを投入するメリットは

小川:パラシュートではハードランディングになる。射点に軟着陸するのがメリット。探して拾いに行く必要がなく欲しい場所に戻ってくることもメリット。

JAXA広報:騒音の問題はどうか

小川:おそらく…観測ロケットと同程度かと思うが。

成尾:当然研究している。騒音の影響する範囲は航空機より少ない。エンジンの騒音は当然あり航空機の清音化の研究などアプローチする。

毎日新聞:全長13.5メートルは現行の観測ロケットと比べてどうか

稲谷:観測ロケットは8メートルから10メートルなので大きくなる。

毎日新聞:なぜ大きくなるのか

稲谷:今の使い捨てロケットは固体燃料でコンパクトにできている。液体燃料を使う分大きくなる。

毎日新聞:現行のロケットを再使用できないのはなぜか

稲谷:現行の観測ロケットは戻ってくる機能を持っておらず観測が終われば海に落ちる。回収をしたこともあるがとても大変。回収後もう一度飛ばすのも現実的ではない。

毎日新聞:帰ってくる機能とは。射点へ戻ってくるということか

稲谷:その通り。射点へ戻ってくるようにすればいろいろメリットがある。1機作って10回や100回飛ばせればメリットがある。飛行機や車と同様1回使って終わりにしないのが再使用ロケットが目指すところ

毎日新聞:今あるロケットに戻ってくる機能をつけるということか

稲谷:今の観測ロケットに帰ってくる機能を追加するとこうなる。

(3)再使用観測ロケットエンジンの研究開発の現状

登壇者
宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系 助教 成尾芳博(なるお よしひろ)

4か月前に再使用ロケットのエンジンの技術実証を終えた。その経緯を紹介したい

再使用ロケットエンジンに求められる機能・性能

スライドの右側の機能をすべて満たす必要がある

長寿命

スペースシャトルのメインエンジン「SSME」は55回使えるとされていたが毎回分解・整備していた。点検・整備の容易性が必要

航空機的繰り返し運用

シャトルの教訓:単に再使用できればいいのではなく頻繁に再使用できなければならない。

技術実証エンジン設計方針


再使用性の確保

燃焼ガスに接する壁の温度をあまり上げたくない。再使用性を確保するため内壁温度を700K以下に制限した

温度を下げると性能が低下する。長寿命化は性能とのトレードオフとなる

寿命管理部品は寿命管理計画を立ててそれにもとづいて使う

高性能化

寿命と性能の両方を満足する絶妙な作動点、バランス点を見つけるのに「高信頼性設計手法」を採用

エンジンのロバスト性確保のため6σ(標準偏差)の余裕を確保

高頻度運用

飛んでいる最中に次の飛行が安全かどうか判断できるシステム=ヘルスモニタリングシステムを構築

開発した再使用エンジンの諸元と実証試験結果

寿命試験においては短い燃焼で1回のフライトに相当する負荷をかけられる試験方法を確立。142回の軌道停止、3785秒の長寿命な燃焼時間

エンジン燃焼実験の一例

(動画)

フルスロットル後120秒で最高高度に達するが試験では12秒で停止、再着火

アイドル燃焼

エンジン周波数応答試験でエンジン応答性を確認

1回の試験で最大5回着火するのを1日3回行うなど高頻度に試験

他の再使用ロケットエンジンと今回開発したエンジンの比較

性能の指標となるISP(比推力)はほかの多くのエンジンより高性能

LE-5Bの比推力は高いが真空中でのみ使用する。設計寿命の「4MDC」は使用時間の4倍の時間使えればよいということ

今回の再使用エンジンの推力制御22%~109%は非常に幅が広い

まとめ


質疑応答

読売新聞ほんま:温度を700K以下ということについて。また高信頼性設計手法について。現在の観測ロケットの推力との比較は

成尾:一般的には860Kでそれより低くしている。
高信頼性設計手法はいろいろな故障モードを設定し設計段階で盛り込む(フロントローディング)。センサーのばらつきなども考慮して設計することでロバスト性を確保できた。
4基のクラスター試験を最終的には行うが現在は1基で性能確認した。

稲谷:観測ロケットとの比較は目的など異なるためあまり意味はないが…観測ロケットの推力は10トン内外、再使用ロケットのエンジンは4トンで4基なので16トン

NVSさいとう:今後プロジェクトを立てていくうえでのキーワードやコンセプト、ひと言で言える言葉は

稲谷:キャッチーななにかですね。どこも捨てないというのがキーワードかなと。飛行機のような。ロケットでは捨てるのが当たり前となっているのを変えたい。
世界中で次のロケットをどうするか、どんなエンジンがいいかなどがいま論争的。
その中でこんなふうなのができたと言いたい。

小川:「高頻度再使用」。高頻度とは1日1回以上ということ。

成尾:「高頻度再使用」がキーワード。スペースシャトルはすばらしかったが当初2週間に1回と言われていたのが難しく2倍3倍のコストになってしまった。
エンジンのメンテナンスでは機体からエンジンを離すことなく行えるのを目指した。

稲谷:この絵を描くとき、どこに置かれている絵にしようかというので羽田の滑走路に置かれている絵にした。
今はこんなことは危なくてできないが、この絵のようになるにはもっと安全で成功率が99%以上などが必要。そのために故障しない、故障しても戻ってこられることが大切。
羽田に置かれた絵はその象徴。
東京オリンピックは水素オリンピックというがこれを会場の上空に飛ばすのは難しいだろうが目標として持つことは大切。

毎日新聞:再使用ロケットのために研究することは今の使い捨てロケットにフィードバックできるものがあるか

稲谷:使い捨てロケットは使い捨ての中で一番有利にしようとしている。無駄なものはおろして上りだけを考えている。
再使用ロケットのようにいろいろつけないと戻ってこられないというのはシステムの形、作り方や考え方は異なる。
だからこそ今までの使い捨てロケットでは1発100億円でも使ってもらえるようにする世界があった。
再使用はスペースシャトルが新しい世界を見せようとしたがうまくいかなかった。失敗と断じるのではなく反省を生かして次を作りたい。

NHK水野:繰り返して使われればコストが下がるが実際に複数回使われるようになるものだろうか

稲谷:コストが安くなればありうると思う。

水野:再使用観測ロケットの需要予測などはあるか

稲谷:定量性をもって十分かというのはあるが…。
宇宙ステーションへ行く前のパラボリックフライトなどがある。それよりはよい実験環境を作れるだろう。
今なにかマーケットリサーチがあるわけではない。
ただアメリカでも有人の遊覧飛行しかマーケットがないと考えられているわけではないようだ。
実験装置を何回も使えるとなれば科学の人にも有用だろう。
宇宙ステーションでの実験はなかなか大変。簡単に実験できるようになればいろいろ期待できるだろう。
お客の取り合いになるかもしれないが。

水野:需要のマーケティングもそろそろやっておかないと完成してもその次がなさそう。そういう心配はないか

稲谷:これだけお客があるからという話にしないと次にはいけない。ぜひいい話があったら聞かせてほしい。

朝日新聞おくむら:比較的低い高度のニーズについて。ISSからも比較的低コストで小型衛星を放出できるようになっている。
世界中でいろいろ検討されているという話について。4年後実証となるとそのころ世界の中でどういう位置になるか

稲谷:ISSは高度400キロ。ISSに載せれば長時間実験が可能だが持って行くまでにいろいろ複雑な手順が必要で大きなプロジェクトになる。去年立案して今年上げられるというわけにはいかない。
再使用観測ロケットなら無重力の時間は3分や5分だがクイックに提供できる。その点で要求が変わるかなと。
世界で弾道飛行しようとしている民間の活動。有人は高度100キロがせいいっぱいと見ている。こちらはより高性能、次代に貢献する。技術的には100キロで終わらない。次をにらんで輸送の将来全体に貢献することを考えている。そういうポジションを得たい。
どう使われるか、どんなやり方がいいか、費用対効果の効果をどう見るかでいろいろ価値は変わってくるだろう。

日経新聞にしやま:推力10倍は難しくないか

成尾:そういう研究も始めている。

にしやま:新型基幹ロケットの次はこれをと考えているか

稲谷:1段目を再使用にする可能性はもちろんある。このときこのエンジンでやってきたことは役に立つだろう。
思考実験としてやったらどうなるかは考えているが将来について今は議論されていない。
将来とりうるチョイスの一つとは思うが。
スペースXがやっているから同じことをするか、ほかの道を行くかはわれわれのチームだけで申し上げられることではなく差し控えたい。

sorae.jp鳥嶋:高度補償ノズルの実現方法は

成尾:(…)。無冷却のエンジンも検討中(実験はこれから)。高度補償ノズルの基礎研究は引き続き続けていく。

鳥嶋:複合材を使ったタンクについて。X-33やLNG推進系で極低温タンクを作るのが難しいという歴史があるがどんな方法で可能になったのか

稲谷:この小さいRVTで複合材タンクを使っている。小規模なものであればできるという経験を持っている。ぜひ追求したい。まだいろいろトレードオフがありそのまま載せるには難しい。
基礎研究としていろいろやっているが作ったり飛ばしたりは可能、その先はまだ。

成尾:製造となるとかなりの投資が必要になるだろう。

(以上)