大西卓哉宇宙飛行士のISS長期滞在決定会見

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登壇者


(※写真はNVSによる中継から:http://blog.nvs-live.com/?eid=168

  • 大西卓哉飛行士(ヒューストンよりテレビ会議で出演)
  • JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部長・JAXA理事 長谷川義幸
  • JAXA有人宇宙ミッション本部宇宙飛行士運用技術部長 山本雅文

経緯

(山本)
大西卓哉飛行士がISS長期滞在決定。ISS48次、49次。H22年2月に選抜され基礎訓練。23年7月にISS搭乗飛行士として認定。訓練を続けNEEMOに参加するなどISS搭乗員としての資質を向上させてきた。

大西飛行士はISS長期滞在が初の宇宙行き。

滞在はH28年(2016年)6月から6か月を予定。往復ともソユーズ。フライトエンジニアとして運用、科学実験なども担当。

今後はソユーズやISS搭乗のための訓練を始める。

(長谷川)
将来の有人探査計画に備え基礎経験を蓄積させて準備したいと思っていたところへ決まった。

搭乗員の国際調整の過程でNASAから提案を受けた。ほかの国も支持してくれた。きぼう、こうのとりの確実な運用で国際的信頼を得た証。

大西飛行士は航空宇宙工学を学び卒業後は航空会社のパイロット。厳しい経験を持ち合わせており臨機応変な対応ができるだろうと期待。

ソユーズの搭乗時に船長補佐としてアサインされた。大西飛行士の技量を他国が高く評価している証。

ヒューストンでの訓練での仲間からの信頼も厚い。

大西飛行士から

このたび長期滞在搭乗員に決まりました大西卓哉です。決定をうれしく思いましたし長期滞在という任務の重大さに身が引き締まる思い。自分だけで決まったわけではなくお世話になったすべての方々にこの場を借りて深くお礼を言いたい。

2009年に宇宙飛行士候補となり2年間ヒューストンで基礎訓練。宇宙飛行士の認定を受けたあとは2年間ISSの運用の現場に立つ機会に恵まれた。

候補に選定されてからの4年半は長いとは思わなかった。毎日を大切にしていこうと思っていたから。それが今日につながった。

CAPCOM(ISS管制官)の訓練を経て任命されミッションコントロールセンターで仕事をしたのが大きな経験となった。実際どのようにISSと地上が交信して仕事をしているかがわかった。

ISSのきぼうを運用している日本の運用チームの運用力は高い。先日こうのとり4号機がISSに物資を届けた。ランデブーからキャプチャしてISSに結合するとき仕事をしたがNASAと互角にわたりあってうまく進めていて感銘を受けた。

NASAが日本をどのくらい信用しているかを肌で感じることができた。

任命にあたってソユーズの船長補佐になった。求められる運用技術は船長と同様。これはまさに前職、民間の副操縦士と同じでそのバックグラウンドを活かしていきたい。

これから2年半訓練を受けていくが関係者のみなさんすべてとうまくやっていきたい。

来年3月には若田さんがISS船長に就任する。日本の有人活動の重要なマイルストーン。先輩の実績に恥じないよう精進していきたい。これからもご支援ご声援をよろしくお願いします。

質疑応答

NHKこぐれ:いただいたコメントに「子供に宇宙を身近に」とあった。改めて思いを

大西:宇宙飛行士候補としてヒューストンに来てすぐ施設を見学した。当時は月計画(コンステレーション計画)があった。月居住モジュールを見学した。解決が必要な課題がたくさんあると言われた。
40年前に月に行っているのになぜ今もと聞いたら当時の技術者は退職していて、文書はあるがわからないこともたくさんあると。
人間の技術はデータや文書にして簡単に残せるものではなく、人間から人間へ継承していくことが大事と感じた。
先輩からのバトンを受けて自分が宇宙開発の魅力を子供たちに伝えたい。その思いでコメントした。

こぐれ:長期滞在にあたって

大西:ISSにはロボットアームがある。ISSの大きなものの移動やこうのとりのキャプチャ、その操作は旅客機の操縦に似ている。キャプチャオペレーションはぜひやりたい。
大学時代は航空宇宙材料を研究していて材料の実験の毎日だった。材料実験についてはきぼうでもマランゴニ実験が行われている。そういった実験にたずさわれることが楽しみ。

共同通信ふかや:今後大西さんが楽しみにしている訓練、ここが弱いので強化したいと思っていることは

大西:どちらもソユーズについての訓練。ロシア語はとても難解で、これを用いて訓練するのは大変。ロシア語の向上が必要。自分の副操縦士というバックグラウンドを活かせるという意味で楽しみでもある。

テレビ朝日たかいし:宇宙でこういうものを見たいなど個人的なものは

大西:いろいろ考えたがISSで長期滞在をしてきた先輩は誰もが地球の美しさについて語っていた。星出飛行士のときのクルーはキューポラというISSから地球に向いた窓のことをブラックホールと呼んでいた。そこに行くとつい引き込まれて地球を眺めてしまう。
そういう地球の美しさを実感できることが楽しみ。

共同通信すえ:長谷川理事もふれていたがISS以降の有人宇宙探査をふまえて今回のフライトについて

大西:今後は国際間で協議。今回の長期滞在で宇宙飛行士としての基本的な技量に磨きをかけたい。
ISSにはコマンダーという指揮官がいる。どういうリーダーシップを発揮するか吸収して、将来は自分がその役割につけるように今回のミッションにのぞみたい。

テレビ朝日たかいし:油井飛行士は中年の星になりたいと言っていたが大西さんは

大西:先輩たちは自分なりの方法で宇宙の魅力を発信してきた。JAXAのサイトでコラムを書いているが、自分の体験を詳しく書くことで理解してもらえるところがある。
こういうことがあったと書くと簡単だが、そのバックグラウンドを細かく説明しないとどうすごいか伝わりにくいと感じている。
自分なりの言葉でわかりやすくTwitterなどのSNSも利用してわかりやすく具体的に伝える人になりたい。
一番身近に感じてもらえる宇宙飛行士になりたい。

NVSさいとう:候補に決まってから4年ちょっと、長期滞在が決まったのをどこで聞いてどう思ったか

大西:連絡を受けたのは日本時間で昨夜、上司から電話で。最初に思ったのは素直にうれしい、目標としてがんばってきてきた。同時に任務の重大さを感じて身が引き締まる思いも。

ニッポン放送はたなか:4年半は日々の積み重ねとのことだがつらかったこと、やればできると思ったことは

大西:一番苦労したのはCAPCOMの訓練。通常アメリカの飛行士は要領がよければ1か月もかからないが自分は8~9か月かかった。ネイティブスピーカーからたくさんの情報が飛び交う中、飛行士に伝える情報をピックアップして上げられるようにする。
自分の訓練はとても基礎的なものであり周囲はレベルが高い。ISSはとても複雑なシステムで理解が大変。マニュアルを聞いて勉強したりできることはすべてやった。自分が交信している内容を録音して英語の先生とレビューしたり。
この訓練に臨むにあたってはほかの業務の一環としてだった。やるかと聞かれた、やらなくてもいい(語学の問題もあるし)と言われてどうしようか迷っていたとき若田飛行士に会い、「それはもう絶対やったほうがいいですよ大西さん」と言われて決心した。
苦労したぶん学んだことは一番大きかった。背中を押してくれた若田飛行士にとても感謝している。

ライター林:ソユーズのフライトの仕事は航空機の副操縦士とどう違うか。また気をつけることは

大西:気をつけることはとにかく緊急時の対応。旅客機や宇宙機は自動化が進んでいるが緊急時の対応は人間にしかできない。コマンダーとの連携の取り方など気をつけていきたい。
旅客機の経験と違うと思うのは国際的なチームであること。コマンダーはロシア人。語学の壁がある中で意思疎通をはかるところ。

林:長谷川理事へ。ISS後も有人計画に参加していくのか

長谷川:宇宙基本計画のとおり2020年まではISSへ参加していく。その後は検討。

林:大西さんならではの個性や長所、期待している点を

長谷川:油井さんはテストパイロットというバックグラウンドを活用。大西さんはエンジニアだしロボットアームを中心に能力を磨いてきた。将来にわたってコマンダーになってもらうチャンスもあるだろうし高いレベルであることを世界に示してほしい。技術の獲得は世界へのワイルドカードになるので技量を高めてほしい。

産経新聞くさか:人類はなぜ宇宙を目指すのか、大西さん流でお話しください

大西:(よどみなく)人間が本質的により遠くへ、行っていないところへいくものだと思っているから。海の向こうへ、空を飛びたい、そういった原動力になっている。だから宇宙を目指す理由は人間の本質の一部だと感じています。

NVSさいとう:長期滞在クルーの仲間も決まりつつあると思うがどういうコミュニケーションを維持していきたいか、どういうポジション、キャラクターを発揮したいか

山本:48次、ソユーズに3名。現在は手続き中で決まっておらず公表できない。ソユーズの船長がロシア人ということだけは決まっている。

大西:ISSのクルーは過密なスケジュールで訓練するので仲間と一緒に訓練することは少ないためその機会を大切にしたい。メールや電話で日ごろから情報交換を密接にしていきたい。
どういうチームになるか決まっておらず難しいがチームワークを重視したい。組織の潤滑剤になれれば。

朝日新聞:決定を家族や友人にどう伝えてどんな反応か

大西:友人には伝えるチャンスはない。妻と娘がいるが妻は自分のことのように喜んでくれた。娘は小学校前だがしばらくパパといられなくなるかもしれないと言うと「どうして」と言うから「遠くへ仕事へ行くから」と言ったら「自分も一緒に行く」と。宇宙で仕事をするということに実感がないようだが将来が楽しみ。

時事通信かんだ:宇宙へ行けない可能性もあるがポジティブと聞いていた。これまで迷いはあったか

大西:訓練の中で迷いは小さいところではあるかもしれないが根本的な、将来宇宙へ行けないかもといった恐怖や不安は感じたことはなかった。
自分にまかされていることをひとつひとつ確実にこなしていくことが将来につながると思ってやってきた。

ニッポン放送はたなか:今回初の宇宙行きとなり先の道のりは長いだろうと思うが、大西さんの宇宙飛行士としての究極の目標は。山でたとえればどこまで来ているか

大西:人類の活動領域の拡大に貢献したいと思っている。2020年以降の将来計画に関わってくる。自分がいま何合目かというと2合目くらいというのが実感。
(以上)