イプシロンロケット打ち上げ経過記者会見

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(第1部:機関代表報告)登壇者

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(03:00くらいに始まります)

打上げ結果報告(奥村)

イプシロンロケットを打ち上げ、無事所定の軌道に投入できた。8月22日、27日と2回延期し、数多くの国民の皆様にご迷惑とご心配をかけたが、暖かいご支援をいただき打ち上げることができた。改めて感謝申し上げたい。

若干の補足を。すでにプロジェクトマネージャより皆様にもご案内申し上げているとおり新しいロケットシステム。技術実証ができたのは意義深いものと考えている。本年から新しい宇宙基本計画ができ大きな政策方針にもとづく第一歩としてこのイプシロン、低コストで大がかりな準備を要しない。宇宙基本計画の趣旨を活かすものと思っている。新しい基幹ロケットの開発にも着手する。2つがそろうことでロケットの市場に向けた我が国の基幹ロケットがそろう、その最初の年になる。とても意義があるしロケット開発のおおきな節目になった。これは多くの皆さんのご支援と同時にロケットを作ったIHIエアロスペースなど関係機関のご支援があったことも申し上げたい。

もうひとつ。JAXAは今年10周年。イプシロンロケットはいわゆるISAS以外の旧NASDA、旧NALの技術も取り入れて三機関統合の象徴でもある。さらなる我が国の宇宙航空の研究開発にまい進したい。

とはいえ今回の打ち上げにあたっては大きな教訓を得たとも感じている。今後しっかり検証していきたい。

ご挨拶(福井)

文部科学大臣のコメントを見ながら。今回の成功を受けて文科相として3点ある。SPRINT-Aが所期の目標を達成すること。M-Vから7年ぶりの国産固体ロケットの打ち上げ成功は喜ばしい。そしてイプシロンロケットやH-IIIという基幹ロケットで宇宙輸送の自律性、高信頼性を確保し宇宙利用を拡大する。

内之浦では400回目の記念の打ち上げになった。全国から見に来てくれた宇宙ファン、国民の一人ひとりに感謝を申し上げたい。

隣にいて照れくさいでしょうが、奥村理事長にはこの2回の延期という事態を乗り越えたリーダーシップに高い敬意を深く申し上げたい。危機感や検証チームを作り組織の中で戦わせ徹底的な検証をしたことがこの成功に結びついたであろうし、リーダーシップやプロジェクトの進め方に大きな示唆を与えた。

ほかにテレビに出ている人ばかりでないJAXAの人、研究者、リサーチャーの方などに感謝したい。

質疑応答

朝日新聞はたの:奥村理事長へ。打ち上げ成功したときの正直な所感を

奥村:いや、もう言葉にならないくらい感動しました。2回の困難が直前にあったことも影響して感動が大きかったのではないか。

はたの:市場へとのことだがイプシロンロケットでどういう戦いをしていくのか

奥村:これから打ち上げられる衛星の幅広い重量分布があるがより小型、より安価な衛星を高い頻度で打ち上げていくマーケットがある。そこを中心にイプシロンを適用していけたら。逆にいえば別の基幹ロケットであるH-IIBやH-IIIとの補完関係もとりうる。基幹ロケットはマーケット対応力がかなり上がってきていると理解している。

朝日新聞東山:奥村理事長へ。大きな教訓について具体的に

奥村:予定通りの計画に打ち上げられなかったこと。22日の延期の発生原因、これを次回にくりこさないようにしたい。

東山:不具合を発見できなかったということか

奥村:こういうことが出てきた遠因、背景を社内で検証し対策を立てていきたい。

時事通信かんだ:延期のとき奥村理事長は原因の究明が大切と言っていた。こういうときどういう方針で対処する気持ちを持っているのか当時の心境を

奥村:事象が起こった直接原因とそれが起きる背景を両方考えて対処しなければならないと日頃から考えている。これをあてはめて直接原因をまず探る。その上で打ち上げをしている人以外の視点から原因を探るため特別点検チームを作った。

読売新聞のより:マーケット対応について。イプシロンは2017年頃高性能かつ低コスト版の計画があるがそのための技術実証をできたと思うが考えを

奥村:マーケットの具体的な調査と並行して開発していかなければならない。今のJAXAの能力で対処できるかどうか、そしてそれを開発できるかという両輪で進めていく。

南日本新聞社高野:奥村理事長へ。この2週間で地元の応援をどう感じたか

奥村:わたしもこの地域内に泊まっているが今まで経験したことのない地元の方の熱意を感じた。たびたびの延期にもかかわらず見学の方を迎えるなど地域全体で迎えていた。直接実感できる応援として大きな力になっている。

(東京会場へ)

読売新聞ちの:福井副大臣へ。これからのイプシロンロケットの打ち上げ計画、2015年以降科学衛星が有望と思うがこのあとの計画については

福井:8月30日に提出した概算要求でイプシロンロケット2号機のために66億円を出している。その先は今やっと実験機が打ち上がったところでもありこれから議論させていただければと思っている。

ちの:今回打ち上げてまた2年後だが何年間隔が適切と考えるか

福井:現在はまだ答える段階ではない。

東京新聞さかきばら:イプシロンの将来計画。商用衛星の受注につなげるか政府としてどうやっていくか考えを

福井:直截なお答えよりは文部科学大臣から2020年のオリンピックを契機として明治維新のように日本はけっこういけるぞという日本人に変えていこう、これをすべての分野にと言っている。この中にロケットやロケットのビジネスも入っている。オリンピックは4本目の矢だがイプシロンも4本目の矢のようだ。その記念すべき日である。どうするかは政府全体で考えていきたい。

(つくば会場へ)

NVSかねこ:これで固体液体と2つのロケットがそろった。射場もメーカーも違うがそれぞれツートップとして運用していくのか一体として運用していくのか

福井:縦割り行政や担当分野が違う中で齟齬があればどう乗り越えるかという質問と思う。奥村理事長のすごいパフォーマンスはそれを乗り越えたからこそと思う。たくさんの項目をチェックする指揮をし手本を示した。
その上で種子島と内之浦、どう統合していくかは奥村理事長が積極的な回答をしてくれるだろう。

奥村:今後世界の宇宙ビジネスに打って出るならそういう議論を政治・政策レベルのものが行われるだろうと思っている。ビジネスをする以上大切なのはライバルがどういう戦略なのかなど力関係が重要。議論としては起こってくるだろう。

(質疑応答は以上、フォトセッションへ)

(第2部:技術説明)登壇者

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(すぐ始まります)

打ち上げ結果概要説明(森田)

見に来てくださってありがとうございます。全国の宇宙ファン、内之浦に来てくれた皆さん、来られなかったがパブリックビューイングなどで見てくれた皆さんへ。

ようやく心の底から笑える日が来た。M-Vの運用中止から7年間、苦しいこともあったがチーム一丸となってがんばってよかった。終わってみれば最高だった。内之浦でのオペもだいぶ鍛えられ、最後には産みの苦しみを味わったが結果としてごらんのように一号機は見事な成功だった。本当にありがとうございます。

天候はぎりぎりまでドキドキしていた。発射の直前になって貨物船が警戒区域に近づいたとのことで15分延期になったがきれいな打ち上げになった。これほどきれいな打ち上げは今までなかったといってよい。応援に心から感謝したい。

飛翔の様子についてシーケンス表の実測値と予測値。今日はほぼ決められたとおりに決められたイベントが行われまったく正常な打ち上げだった。PBSは3段目までで生じた軌道誤差を修正するもの。なので多少ずれていてもこれはPBSが正しく機能したということ。最終投入軌道は現在解析中。ほぼ計画通り。大きく見積もっても数キロの誤差しかないだろう。

のちほどお話してもよいがイプシロンロケットは小型固体ロケット技術と大型ロケット技術、ISASNASDAを融合して未来を拓くようなロケットを作ってきた。いろいろトラブルがあり総点検、特別点検がありJAXA一丸となって打ち上げを行った。JAXA統合から10年の節目の年にこのイプシロンロケットが日本のロケット開発の集大成としてきれいに飛んでいったのはわたしとしても感動的な出来事だった。

ここまで非常に苦労してきたが全国の宇宙ファンの後押しを受けてここまで来た。我々は宇宙ファンの皆さん、肝付町の皆さんと二人三脚でやってきたが今回ほどありがたいと思ったことはない。イプシロンロケットの挑戦はこれが始まりである。モバイル管制や自律点検を作って新しい宇宙開発の時代を到来させた。イプシロンロケットJAXAにとっても宇宙開発にとっても大事なもの。ロケットスタートで新しい時代の幕を切って落とした。力を出し切った。

衛星の状況について(澤井)

きれいにロケットが打ち上げられ衛星も健全な状態。打ち上げから約2時間で内之浦の上空に戻ってきて太陽電池パドルが開き姿勢制御もうまく機能している。太陽電池を太陽に向けて安全な状況。非常によい状況。こうなったのもロケットがきれいに上がったおかげで感謝している。

恒例の衛星の名前について。科学衛星の伝統にもとづき「ひさき」と命名しました。肝付町にとって新しい夜明けの象徴となりたい、安全な航行を象徴したい。
意味もあり、観測対象は惑星。太陽活動でどういう影響があるかを調べるため「ひ(太陽)」の「さき(先)」とした。また内之浦の地名「火崎」。内之浦で最初に朝日が当たる場所。漁の安全を祈願する場所でもある。内之浦を旅立つ船としてのSPRINT-Aでもある。

森田:澤井先生が格調高い話をしたあとでお茶目な話を。
固体ロケットはラムダ1号機(おおすみが上がる前)から性能計算書を作っている。軌道計算の結果や打ち上げ能力が書かれている大事な資料。表紙に限っていえば遊び心や心の余裕をあらわしている。宇宙開発でなにが大事と思うか。一番大事なのは柔軟な発想。その思いで性能計算書の表紙は遊び心満点でやっている。

「新燃」と書いて「しんねん」と読む。お酒のラベルを使っている。
なぜこうか。M-Vロケットが廃止になったとき個人的には自分はM-Vの分身だと思っていたため悔しい思い。恩師の秋葉先生、この人は糸川英夫先生の一番弟子。「宇宙開発にたらもればもない、宇宙開発の未来を拓け」と言われて大きな後押しになった。M-Vよりもいいロケットを作る信念で進めてきた。「しんねん」と読み新しいロケットで新しい時代を開く。
たいへん失礼しました。もう一つのお話はのちほど…。

質疑応答

読売新聞ながの:お二人に。打ち上げのとき、または打ち上げ成功のときの率直な感想を。

森田:ロケットサイドの話。7年間の道のりも長かったが射場に来てからも長かった。とても鍛えられた。苦しいと思うこともあったが開発チーム一丸となって苦しくともがんばってよかった、終わってみれば最高だ。そういう気分。
いつも自信満々で語っているが大勢を率いる立場からするとそうせざるをえないぶぶんもあり、今日だから言うが眠れない夜を過ごしたこともあった。自分やチームを奮い立たせるために強気の発言をしてきた。ここまでの成功は想像していなかった。我々の想像を超えたきれいな成功だった。ミッション全体からすると衛星がミッションを始めるところから、バトンを渡した。全力でがんばってほしい。

澤井:率直に言ってうれしいの一言。うまくいきすぎて拍子抜けしたところも。衛星は荷物でありロケットによって宇宙へ運ばれる。必ずしも理想的に運ばれることがないことも想定して100以上の手順を組んで異常に対処しようとしたが全部むだになったため。
人間にたとえればひさきは新生児。これから観測して世のサイエンスの向上に貢献していかなければならない。気をゆるめてはいけない。

NHKこぐれ:森田さんに。カウントダウンのときはどんな気分か。衛星分離の時の気持ちは。また7年間ストップしていた固体燃料ロケットの伝統を引き継いだことについて

森田:カウントダウンに関してはいろいろな理由で何度も練習したため今回に限れば静かですがすがしい気持ち、無心でカウントダウンに入れた。みなさんに応援されて心配されたイプシロンだがここまで来られたのはたくさん練習するという意味ではよかった。固体ロケットは何度も打っているが各段のロケットがちゃんと燃えてくれるだけで感極まるものがあった。ただ飛んでいくだけでもありがたいと思ったのは今回が一番。
衛星を分離したときはみんなに拍手をおくった。ロケットの打ち上げは生半可なものではなく舞台裏ではいろいろあり一歩間違えば失敗していたということもある。今回はまったくなく、練習しているかのように上がっていきPBSもきれいに燃えてくれた。これが7年間のみんなの努力の成果。感銘を受けた。
固体ロケットがただ好きというだけでこの重大な任務を引き受けているが自分の能力を超えるようなことも何度もあった。みなさんの応援にいつも後押しされて現場に来てから強く感じた。プロマネは孤独な仕事とよく言うが自分に限ればみんなの後押しでただ飛んでいた。
7年間は今にしてみればあっという間だった。きれいな打ち上げはすばらしかった。本当にすばらしかったのはみんなと走った7年間かもしれない。
イプシロンはこれからが本当の勝負。イプシロンをさらに進化させていく。小型衛星とイプシロンのコンビで面白いミッションをこなしていきたい。応援よろしくおねがいします。

産経新聞くさか:前々からうかがっていたがイプシロンの名前の由来について。秘密の由来は。満を持してお答え下さい

森田:すばらしい質問です。ありがとうございます。ホームページなどでご紹介しているExcellence、Evolutionなどは半分。残りの半分のその半分はEという記号の意味、小さいが大きな意味を込められている。これはあちこちで少し話している。
残りの1/4はこれから初めて話す。
イプシロンが3年前に国から開発を承認されたとき名前をつけようということになり、宇宙研のこれまでの固体ロケットを作ってきた先生がたに相談した。共通の意見は…Mロケットの精神を忘れるなと言うトーン。
Mロケットの精神は固体ロケットの精神、糸川精神などともいわれる。それは世界を追うのではなく世界の先を行け、自分たちの力で未来を拓けということ。
モバイル管制や自律点検など新しいことをして固体ロケットの精神を引き継いだもの。
M-Vの次でM-VIではひねりがない。M組立室で的川先生と相談していた。

このマーク、Mというマークがありますが「ちょっと回転させてみてよ」と的川先生に言われた。Mを横にするとEの文字になる。Mを引き継ぎながらまったく新しいロケットに変身したということ。これが最後の理由です。

共同通信ふかや:今日管制室で打ち上げを見ていてどんな気持ちになったか。またモバイル管制を何人で行ったか。モバイル管制の意義と感想について

森田:飛んだ瞬間は前回8月27日にああいうことがあったので飛んだだけでも喜んだ。こんなところで喜んでいてはいけないが「飛んだ」と声を出した。誘導制御が専門なので軌道の数値を見ていた。これを見てすばらしいと確信を深めていた。
モバイル管制はパソコン2台、原理的には1台(冗長系がもう1台)。2台の画面の前に1人ずつ、それをオーサライズする1人の3人。今回の打ち上げ作業の指揮をするコマンダー、その補助をする人、搭載電源のスイッチを入れたりする人(これは今後コマンダーが兼任するかも)、ランチャーの操作(これも減らせるかも)ということで8人。わたしはその中にいて外野の選手として見つめていた。
この人数をさらに効率的にできるかと思っている。

(ここで澤井先生退席)

(東京会場へ)

フリーランス秋山:PBSの燃焼時間。予測に対してどのくらい修正が少なくすんだのか感覚でもどういう感じか

森田:予測値はずいぶん前の予測で手元の資料には反映されいないがノミナル軌道でいうと1回目のPBSの燃焼は4分強。実測も約4分ちょっと。最終飛行経路に対してほぼ計画通り。

読売新聞ちの:打ち上げをネットで見ていたが黒い煙が出て緊張感が走ったが新しいサイドジェットか

森田:SMSJというものを乗せていて発射の10秒前に元気よく煙を出して発射の合図。

ちの:不具合ではなく毎回ああなるのか

森田:はい。ロケット本体はなるべく燃焼の高いほど推進効率がよいためオレンジ色の光。SMSJは意図的に燃焼温度を下げて不完全燃焼のようになっている。そのため黒っぽい煙。おっ、ついに出たなというところ。イプシロンの標準設備です。

ライター喜多:黄色いリストバンドも聞きたいが祝電が届いている。「成功を祝す。だが私を引き合いに出すのはそろそろよしてくれ。固体ロケットは君たちのものだから。糸川英夫

森田:糸川先生は私からすると先生の先生で遠い存在。糸川先生についてわたしが論じることは不可能。イプシロンはモバイル管制を実現し世界のロケット開発の常識をくつがえす。糸川先生が喜びそうなポイントと思うが「まだまだ甘いよ」というレベル。その祝電が本当に糸川先生から届くように精進していきたい。

(つくば会場へ)

NVSかねこ:12年ぶりの新型ロケットということで国内や海外からの視察がどのくらいあったのか

森田:VIPの観覧席にいくらかいたが、どこからどなたがというのはちょっとわからない。

広報:あとで個別に回答します。

内之浦へ)

南日本新聞高野:打ち上げを待ち続けてきた内之浦の人へと応援メッセージへひとこと

森田:みなさんの応援やご支援がわれわれがここまで来られた最大の要因。イプシロンは全国の宇宙ファンのみなさん、肝付町のみなさんと二人三脚で進めてきた。よかったねと言いたい。
特にこの2週間は発射直前まで行きながら延期になりご迷惑をかけた。そもそも5月からのオペは長く宿のおばさんも疲労困憊だった。ほとんどぎりぎりの状況で支えてくれていた。そんなとき延期になって無理に無理を重ねたところへさらに無理をということで絶対成功させねばと思って自らを奮い立たせていた。
今日上げられなかったら町の皆さんの疲労も極限を通り越していただろう。今日上げられてよかった。宿のおばさんに「がんばりました」と報告したい。
8月27日の直前の延期で緊張が頂点に達していたためその後の毎日は肉体的にも精神的にもつらかった。くじけそうな日もあった。口では強気なことばかり言っていたが落ち込んでいたこともあった。宇宙ファンの皆さん、内之浦の皆さん、そのほかから応援メッセージをいただいた。色紙や入院中の方からのお手紙など。はげみになった。病気の人は生きるのが大変な環境で自分たちの夢をイプシロンに託している。それを痛切に感じた。みなさんの応援で成り立っているイプシロンだがいっそう感じた。応援が我々をふるいたたせ勇気づけて前へ進むことができた。
皆さんのたくさんの夢を載せたイプシロンが成功をつかめたのは本当によかった。皆さんにお礼を申し上げたい。ありがとうございました。

(報道陣から拍手)

(終了)