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SPRINT-A(惑星分光観測衛星)報道公開

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登壇者

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中継録画

(1:43くらいに開始)


Video streaming by Ustream

ミッション概要

衛星の概要(澤井)

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高さ4メートルくらい
バスというところ(衛星の基本的な計器部)が1メートル立方くらい、片翼3メートルくらいの太陽電池が開く
惑星を観測する衛星。
目的:惑星を極端紫外線で見る望遠鏡(EXCEED)を搭載。オプションとして次世代衛星に使われる電源装置(太陽電池パネル含む)の実験も行う
ミッションをこなす、科学を行う衛星であるがほかに衛星の作り方が従来とかなり違う特徴がある。
「SPRINTバス」:衛星にはいろいろな機能がある。通信、温度を保つ、姿勢を保つなど基本的な部分を「バス」といい衛星には必須。そこを共通化セミオーダーメード型にしさまざまな要求に柔軟に対応できるバスを目指している。その初号機がSPRINT-A
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EXCEEDの科学観測には惑星に正確に向けなければならない。5秒角という高精度。それを普通に達成したのではリソースがかかるため知恵を出して乗り切る。ガイドカメラによる姿勢制御。
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オプション実験「NESSIE」:次世代の高性能な衛星用電源。2つの新技術。高効率薄膜太陽電池セルとリチウムイオン・キャパシタ
高効率薄膜太陽電池セルは質量あたりの発生電力がよい。リチウムイオン・キャパシタは新しい蓄電装置。リチウムイオンバッテリより安全性が高く扱いやすい。将来的に訴求できないかと考えて研究中。

観測概要(山﨑)

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地球周回軌道からリモート観測
地球に対して磁場が弱い惑星>強い惑星:金星>火星>水星>地球>土星木星
磁気圏:惑星の固有磁場が太陽風(コロナのガス)が惑星に侵入できない領域
木星は地球の100倍以上のスケールの磁気圏を持っている(※惑星の直径に対しての話?)

ミッション1:木星の磁気圏を調べる

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木星の衛星イオから火山性ガスが出ている「イオトーラス」は極端紫外光で光っている。このエネルギーの状況を把握しつつオーロラを同時観測したい

ミッション2:惑星の大気を調べる

固有磁場がない惑星の大気と太陽風との相互作用を調べる
大気の散逸量が太陽活動にどのくらい依存しているか
→惑星の大気進化の理解が進む

打ち上げ後の観測計画

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ハッブル宇宙望遠鏡との協調観測も
観測期間は1年

SPRINT-Aの開発スケジュール

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地球から惑星の大気を細かく観測するため高精度な姿勢制御が必要
来週から輸送準備を始める
今月中旬に内之浦へ搬入
ロケットと衛星の結合前に内之浦で報道公開の予定
衛星とPAF(ロケット側)の結合
打ち上げ後愛称発表

質疑応答

テレビ朝日ますや:わかりやすく衛星の目的を

澤井:目的は2つ。まず惑星の環境を知りたい。もうひとつは新しい衛星の作り方を試したい。
モジュール型の衛星作りという考え方を進めている。パソコンの世界ではCPUはどれ、HDDの容量は、など選択して自分にあったパソコンをセミオーダーメードで作る。これはCPUなどの部品がモジュール化されていること。衛星もこういう作り方をできないかと考えている。それを試したい。

ますや:磁気圏と大気進化で初期の太陽系の様子がわかるということか

山﨑:必ずしも直結はできないがある理論に載った解析をしていく。

サイエンスライター青木:NASAなど宇宙機関が宇宙大気や磁気圏を観測している。それとの違いは。また愛称は公募か

澤井:愛称は内部で決めて打ち上げ後に発表と考えている。これは多くの科学衛星と同じやり方。
観測手段としては極端紫外線であることが特徴。

山﨑:これまでの衛星だと観測時間の制約や視野角の制約などから全体を長期間にわたって観測できていない。大気や磁気圏全体を観測できるのが新しい。

青木:愛称の候補はどのくらい出ているか

澤井:実はまったく考えていない。SPRINT-Aでは味気ないので自分たちでは「きょくタン」と読んでいるがこれは絶対愛称にならない。それ以外はこれから考える。
いい愛称があったら参考にしたい。

週刊アスキー秋山:SPRINTバスについて。バス名についてと商業衛星の標準バスとの違いについて。また観測期間が1年間というのはSPRINTバスの制限によるものか。探査機への応用は

澤井:このバスは「SPRINTバス」と呼んでいる。
SPRINTバスを使った2機目「ERG」は地球の磁気圏を観測する。軌道はだいぶ違う。
地球の周囲から惑星を高精度に見るのがSPRINT-A。ERGはスピンしながら地球を観測。
地球観測衛星への応用も考えていて共同研究を行っている。
1年間の観測期間は信頼度などを考慮して決めた。寿命がある機器がある。バッテリーがへたってくるなど。また太陽電池パネル、MRI(熱防護するシート)も劣化していく。寿命を決めてそこからある程度のマージンを持って設計している。
個人的には惑星探査への応用に大いに興味がある。使えればと思っている。探査機は重量の要求が厳しくなるのでモジュール化だと軽くなりづらい。そこをチューンアップした形で惑星探査できないかと考え研究してきている。

時事通信かんだ:望遠鏡は小型化したとき物理的な制約が大きいかと思うが工夫した点があれば。またSPRINTバスの衛星の計画はどのくらいあるのか。NESSIEの実験の次段階は

山﨑:衛星は重心位置が高くなるが焦点距離を高めるためこのような縦型にしている。

澤井:SPRINTバスを使った衛星は5ないし10くらいの提案がある。これから選定。
NESSIEは軽い電源系。これがうまくいったあかつきにはいくつかオプションがあるが3号機では今回の薄膜太陽電池セルに置き換えたい。

(以上)

機体公開で撮影した写真

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