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特撮とはミニチュアのことなのか考えた(特撮博物館にて)

東京都現代美術館へ「特撮博物館」を観に行った。10月8日(月)までで会期末が近いので平日を狙ったら今日は都民の日で、子供がたくさん来ていた。ははは。

行きに浅草のあたりを通ったので、ちょっと寄り道して一枚パチリ。

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(なんのことかわからない方はd:id:yms-zun:20060413を。今の最新はd:id:yms-zun:20120918

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ものすごく展示が多くて大変で、10時すぎに入って出てきたら14時くらいだった。このボリューム、10年くらい前にここでやっていたマンガの展覧会を思い出した。そんななのですごく面白いですが体調を万全にして時間に余裕を持って行くことをおすすめします。

展示は最初のうちはわりとおとなしめで、後半(地下展示室)に来るとだんだん濃くなっていき、映像資料もたくさん上映されていて時間をとられてしまう。そしてじっくり見たくなるものがありすぎて困っちゃう。

たくさんのミニチュアやデザイン画はもちろんよかったのだけど、途中に掲示されていた成田亨の談話が心にしみた。いわく「怪獣などの図案を最近はデザイナーが考えるがあれはよくない、デザイナーは商業的な受けを狙ってしまうからだ。芸術家は自分と世界との関わりをとことんまで考える。そうしてできる造形はすぐれたものになる」といった内容。思い出しながら書いているので正確ではないけれど、そんなことが書かれていた。なるほどねえ。

最後は特撮のミニチュアセットを自由に撮影できるコーナー。

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(上の渡り廊下が展示の中間地点で、上からは撮影禁止)

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これは面白くってたくさん写真を撮ってしまう。動画も撮った。

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ミニチュア団地。

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ミニチュアクレーン。

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ミニチュア西荻窪

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手前の民家にはちょうど自然光が当たっていて、ますますリアルに感じられた。

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低いアングルでも撮ってみたけれど、もしかするとパンフォーカス(手前から奥まで全体にピントが合っている状態)のほうがそれらしく見えるのかもしれない。画角(ズーム)にもコツがありそうだ。

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そして1/1の世界に戻ってきた。

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そんなこんなでたっぷり楽しんで出てきて、一緒に行った方々と話をしていたらなんだかわからなくなってきた。特撮ってなんだろうね?

今回の展覧会では、東映仮面ライダー戦隊ものの展示は基本的にない。展覧会の主催が日本テレビで、東映特撮はテレビ朝日だからということだろう。ウルトラマンはあるのでTBSと日テレは仲がよいのかもしれない。それはそれとして、よく考えてみると仮面ライダーって果たして「特撮」なのだろうか? 世間では特撮として分類されている映像作品なのはわかる。でもじゃあ特撮ってなに? 「特殊な撮影」という意味に立ち戻ると、仮面ライダーは本当に特撮なのかどうか自信がなくなってきた。

戦隊ものが特撮であることは納得がいく。なぜかと考えてみて出てきたのは基地や巨大ロボットのミニチュアを撮影しているかどうかの違いだった。初期ライダーは基地や乗り物のミニチュアは出てこず、すべてのセットは実物大だった記憶がある。ライダーのアイデンティティであるバイクも実物だ。となると撮影に必要な技術は普通の劇映画と同じではないかなーと考えたのだった。

すると特撮とはつまりミニチュアのことなのだろうか。

大きなものを小さく作ってそれを撮影し、大きなものと思わせる。映像を見る側はそれが実は小さいことを知っている。そう考えると特撮ものが人気である理由のひとつもわかる気がする。ミニチュアに対するフェティシズムは多くの人が抱くものだろう。もとの大きさからそのまま縮小した立体物を愛でる感性。特に日本人は食玩がブームになったように精巧なミニチュアが大好きだ。

もちろん光学合成なども特撮だから、ミニチュアがなければ特撮でないとはいえない。でもミニチュアは特撮の大きな要素で、そこに惹かれる人は多いのだろう。

ミニチュアにしてもそのほかの特撮技術にしても、頭の中で考えた映像をいかにして実現するか、その創意工夫の結晶である。この展示会のために撮影された短編映画「巨神兵東京に現わる」でも、ビルを破壊する新方式が考案されていた。目的の映像を撮るためにさまざまなアイデアが詰め込まれているのが特撮の大きな魅力だなあと、最近DIYを楽しんでいるせいかそこが心に残ったのだった。

行き帰りに東京スカイツリーをいろいろなアングルで見た。スカイツリーは東京タワーの2倍近く高いのにのっぺりしているから距離感やスケール感をつかみにくい。そういう意味ではよい造形ではなく、ミニチュアの逆の状態だと思った。

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