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線分を3等分する問題を楽しめるか

日本数学会が出した問題が話題になっていた。「平均」を勘違いしている大学生がけっこう多くて大丈夫? みたいな話。

問題の問題は問題文があまりよくなく、これで「平均」の理解度をちゃんと計れているかというとちょっと怪しい気もする。解答は上のページの「正答例」(PDF)にあります。

ある中学校の三年生の生徒100人の身長を測り、その平均を計算すると163.5cmになりました。この結果から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。

  1. 身長が163.5cmよりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ50人ずついる。
  2. 100人の生徒全員の身長をたすと、163.5cm×100=16350cmになる。
  3. 身長を10cmごとに「130cm以上で140cm未満の生徒」「140cm以上で150cm未満の生徒」…というように区分けすると、「160cm以上で170cm未満の生徒」が最も多い。
  • この問題への意見:「平均」の意味うんぬん - 情報の海の漂流者(d:id:fut573:20120224:1330114209
  • この問題は問題だという意見:マジメな子ほどひっかかりそうな「大学生数学基本調査 調査票」の設問 - あらきけいすけの雑記帳(d:id:arakik10:20120225:p1

それはさておき、調査に使われた中で最後の問題をやってみたら恥ずかしながらたいへん苦労した。中学3年の問題とのこと。

右の図の線分(引用者註:単なる横線です)を、定規とコンパスを使って正確に3等分したいと思います。どのような作図をすればよいでしょうか。作図の手順を、箇条書きにして分かりやすく説明してください。なお、説明に図を使う場合は、定規やコンパスを使わずに描いてもかまいません。

線分の長さを定規で測って3分の1にする…というのはたぶんだめなのだろう。日本数学会の「報告書」でも、そういう回答をよくない例として挙げている。定規は長さを測るのには使わず、2点を直線で結ぶ目的に限定して考えてみることにした。上の「正答例」では「この線分に平行な線を引く」なんてさらっと書いてあったけれど、定規とコンパスだけで平行線を引くのはそう簡単ではないですぞ。

幾何の問題の考え方などすっかり頭から抜けている。今もし線分を作図するならIllustratorを使うだろうし、それを3等分する必要があったらs(拡大/縮小)コマンドで33.333%にするか、そもそもあとで3等分するのならまず適当に線分を描いてそれを3倍しておくだろう。

とか考えていても上の問題は解けない。しばらくうんうんやって、ようやくできた。

(答えをこの下に載せました。自分で解きたい人は気をつけながらスクロールしてください)

こういう問題を面白いと思う人が増えてほしい

問題を解くのは大変だったけれど、それをいやだとは思わない。知的な刺激があって楽しい時間だった。

でも世の中にはこういう問題を「ああ難しそう、自分にはもう無理」とか、「こんな問題を解けたって生活の役には立たないさ」なんて思う人もたくさんいるだろう。

そんな人に、問題を解く楽しさを知ってもらうにはどうしたらいいだろうか。

ウミガメのスープ」でも似たところがあって、「別に理由がわからなくてもかまわない」「そんな問題を解いてなんの得があるのか」のような反応が返ってくることがたまにある。頭を使うのは楽しいんだけれど、そういうのを好まない人もいる。

調査にはこんな問題も出ていた。これもなかなか面白い。

次の報告から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。

公園に子供たちが集まっています。男の子も女の子もいます。よく観察すると、帽子をかぶっていない子供は、みんな女の子です。そして、スニーカーを履いている男の子は一人もいません。

  1. 男の子はみんな帽子をかぶっている。
  2. 帽子をかぶっている女の子はいない。
  3. 帽子をかぶっていて、しかもスニーカーを履いている子供は、一人もいない。

世の中の全員がこういうものを楽しめるようになるべきとはさすがに思わない。でも、今よりもうちょっと増えたら世間はもっと楽しくなるんじゃないだろうか。

「線分を3等分」の解答

下のページに、21通りもの解答が載っている。自分が考えたのはこの中の「方法18」に近かった。

こんなふうにして3等分しました。

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緑の線は、なぜこれで3等分できるかを説明するための補助線。

「方法1」をちょっとアレンジした上で律儀に作図するとこんな感じ。定規とコンパスだけでどうやって正方形を描くか。これもパズルのようで面白かった。

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これらの図を見て「どういうことかな?」となって読み解こうとする人がもっと増えてほしい。こういうところから周囲の世界への興味がわき、世界への自分の関わり方を考えることにつながるだろう。そして世界はよい方向に動くはず。それにはどうしたらいいだろうか。