熱帯降雨観測衛星(TRMM)の15年間継続観測による成果に関する記者説明会

登壇者

  • 宇宙航空研究開発機構 宇宙利用ミッション本部 地球観測研究センター 研究領域リーダ 沖理子(おき・りこ)
  • 東京大学大気海洋研究所 教授 高薮縁(たかやぶ・ゆかり)
  • 情報通信研究機構 電磁波計測研究所長 井口俊夫(いぐち・としお)

中継録画

※01:35くらいに始まります


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配付資料

※配付資料とプレゼン内容が一部異なるため写真を交えています



















「熱帯降雨観測衛星(TRMM)による降雨の15年間継続観測の成功」(沖理子)

TRMMの概要

1997年打ち上げ
降雨の観測に特化
3つのセンサーがひとつの衛星に乗った
降雨レーダは2メートル×2メートル

熱帯降雨と大気の循環

従来定量性で難があった

TRMM15年の成果(技術的・科学的意義)

継続観測で利用が拡大
実利用としていくつかの分野からデータの取得がある

世界で初めて衛星搭載降雨レーダ(PR)の高品質・高信頼性を実証

PRのセンサーとしての安定性が高い
校正がちゃんとされていない地上レーダーもあり、PRをもとにキャリブレーションした

Global Monthly Accumulated …

軌道高度を350キロから402キロに上げたとき補正によって長期的に均質なデータが取れていることがわかる
「A-side←」と「→B-side」の時点で冗長系へ切り換え

降雨レーダによる三次元の降雨観測

複数センサによる降雨の正確な観測1

受動型センサの精度が上がる

複数センサによる降雨の正確な観測2

マイクロ波放射計で降雨推定

PRによる降雨システム気候学の進展

エルニーニョとラニーニャでは同じ月でも降水域が変化している

TRMM/PRによる年積算降水量分布(14年平均)

3時間で衛星から全球を観測するには?

GPMは65度まで観測する。
同時に世界の雨がどうなっているかを知りたい
世界各国の衛星のデータを使うとカバレッジを増やせて3時間でほぼ埋まる

JAXA/EORC 世界の雨分布速報

観測から4時間後に提供
写真は万里の長城で観光客が遭難した時間帯のもの

全球洪水予警報システム(GFAS)

実利用の例
ハリケーン「サンディ」が襲来した際の北米大陸東海岸の様子

熱帯降雨観測衛星(TRMM)による降雨の15年間継続観測からの科学的成果(高薮縁)

TRMM15年観測の科学的成果

雨の立体観測が可能になった
極端降雨データの15年ぶんの蓄積

雨の立体データが得られる

降雨レーダーの搭載によってTRMMは宇宙から雨の立体構造を観測できる唯一無二の衛星となった

降雨量だけでないということ

TRMM観測の特長

雨の鉛直分布(92°E)

ベンガル湾あたりの断面図
乾期の方がむしろ激しい雨が降る
Chitagongの低い地形が雨に大きな影響を与えていることがわかる

日時計線(?)による雨の日変化(最も雨の降る時刻)

海と陸で大きく違う
陸は一般に午後の雨が多い
海はどちらかというと夜中から午前中の雨が多い
ヒマラヤは夜降ることが多い

雷の多い雨、少ない雨

海の雨と陸の雨でここでも違う
陸の雨は雷が多い
海の雨はなかなか発雷しない
夕立の雨が陸の代表
台風の雨が海の代表
乾期の雨(雷が多い)と雨期の雨

雨を降らせる気象の特定

ある地域の雨がどういうところから降っているのか
日本の夏の雨は雲クラスター(熱帯の大きな雲のまとまり)から来ることが多い
冬になると温帯低気圧、モンスーンの季節風などからくる雨が多い

日本の雨の特徴

中緯度ながら亜熱帯気候が近接している

雨が気候に果たす役割の定量化

降った雨の量だけ潜熱を運び上げている

TRMMから求めた雨にともなう熱の持ち上げ

地表面が暖かく熱をたくさん持ち上げられるところもあれば乾燥していて途中までしか持ち上げられないところもある

気候モデルの改良への貢献

「悩みが多い」雨の降らせ方が難しい

長期観測の効果

大きな雨域(100キロ以上)から降る雨の割合

年を経るごとに地形が浮かび上がってくるほど分布がはっきりわかってくる

極端降雨の検出

まれに降る豪雨を検出
雨が少ないところでは1日50ミリでも豪雨
日本のようなところでは1日200ミリ、300ミリが豪雨
日本の豪雨は世界的に見ても強く広いが高さは低い

TRMMからGPMへ

GPM時代は固体降水(雪)を観測

質疑応答

日経サイエンスなかしま:地球観測衛星関連で15年続いたのはほかにあるのか

沖:日本ではTRMMだけと思う。アメリカのUARSが確か長かったが分野が違う。温度と湿度の鉛直分布を測るものだったかと。現在は終了。

なかしま:設計寿命がここまで延びたわけは

井口:レーダーはトランジスタでできている。寿命が長い。マイクロ波放射計はAMSR、しずくなどがあり大きなアンテナをぐるぐる回している。TRMMはビームを電子走査で打っていて機械部分がない。

なかしま:いま上がっている降雨観測衛星はどれも長くなるのか

井口:TRMMが最初の降雨観測衛星。GPMで2つめ。

なかしま:降雨観測が地上ではフェイズドアレイでやっとだがこちらは15年も前からだった

井口:コストが違う。地上レーダーはお金がかかる。レーダーをくるくる回すので十分ではということ。最近素子の値段が下がり地上でもできるようになってきた

なかしま:エルニーニョやラニーニャのメカニズムがわかったといってよいのか

高薮:エルニーニョはどちらかというと大気と海洋の相互作用。メカニズムそのものにTRMMが迫ったというわけではないが同じような熱帯地域の海洋の降水では東太平洋と西太平洋でずいぶん違うことがわかってきた。雨をもたらす雲の構造などが違う。
エルニーニョとラニーニャで太平洋の各地域での雨の特性が違うとわかる。
雨の特性が違うと持ち上げる熱も違う。そういうのを調べるのに役立っている。

なかしま:極端気象について

高薮:TRMMレーダで画期的だったのは高いところから観測している立体降雨。地上からのものに見劣りしない。地上のレーダーは精度やバイアスなどさまざまだがTRMMはひとつのセンサーで観測できている。空飛ぶレインゲージだということ。

なかしま:常に全球を見たいというのができつつある?

高薮:ほかの8機はマイクロ波観測。マイクロ波観測の精度を上げるのにコア衛星が貢献している。

井口:高いところから見ているからぼけているということはない。地上のレーダーで横から見るよりは分解能が高い。縦方向には特に細かい構造が出るようになった。

日経新聞くさしお:最新の成果となるとどこになるのか

高薮:極端降雨の検出(16ページめ)などが最近の成果。大きな雨域から降る雨の割合(15ページめ)についても13年間のデータを用いている。
14年間の降水量変動(14ページめ)も。

くさしお:15ページめ、雨域とは

高薮:雨の観測されるピクセルがつながっているところを雨域という。夕立の積乱雲は雨域が狭く、低気圧の雨域はひとつながりで広い。メッシュは0.1度メッシュ。もとは5キロくらいの解像度。このくらい細かいと南米やヒマラヤの地形効果がよく見えてくる。

なかしま:雨の降る時刻で、ヒマラヤの南側が夜降るのはなぜ

高薮:地形にともなう風向の日変化がありそれにともなう。

朝日新聞たなか:最近5年間と昔10年間などで違いの傾向はあるか

高薮:降水量変動(14ページめ)について。変化の傾向はみられるがここ10年の変動によるものかはわかりにくい。地球温暖化の効果などを調べるのは難しい。日本の雨がどのように変わっているのかといった研究なども現在進行形で行っている。雨量の変化だけだとよくわからないが雨の特性の変化に注目した解析で最近の雨の変化がわかるようになるかもしれない。

(以上)

その他の配付資料