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公開シンポジウム「今、日本の宇宙戦略を考える」メモ2/2

※前半はhttp://ima.hatenablog.jp/entry/2012/10/28/130000

論点

雨の日にこのような対話集会にいらしていただいて感謝
論点整理というと誤解される、話の方向性を
ご意見をいただきたい点は……

  • 宇宙政策、安全保障、外交
    • 中期計画と長期計画の関係
    • 安全保障の役割、JAXA
  • 官需と民需のバランス
    • 民需を開拓しなければ
    • 技術開発のリニューアルをどうやって
  • 大型科学ミッションの立ち上げ方
  • 「探査」という言葉
  • 輸送系の将来展開、開発方策
    • いまのロケットをどうするかではなく今後どうするか
  • 有人宇宙活動
    • 現在のISSの役割、近視眼的かもしれないが
    • 有人探査に至るような展望、あり方
  • 軌道上サービス、グローバルな課題解決の取り組み
    • 広義の通信、放送、測位
    • 宇宙ビジネスは結局は衛星ロケットを打ち上げる
    • 地球観測分野

東京会場でご意見をいただきたい点(論点)

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  • アジアの中の地位を確保する方策
  • 海外からの受注に向けたトップセールスなど
  • 技術を持続的にリニューアルさせるしくみ
  • 大型の宇宙科学プロジェクトの進め方
  • 宇宙輸送の将来像は何か
  • 有人活動の将来像
  • ISSの今後の役割と活動のあり方
  • 地球環境観測へ果たすべき我が国の貢献、および体制のあり方

総合討論

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  • 特別ゲスト:前文部科学省宇宙開発委員会委員長 池上徹彦/評論家・ジャーナリスト 立花隆
  • モデレータ:TBSアナウンサー 鈴木順

鈴木:ここから参加の池上さん、宇宙戦略について。会場の方は質問したい、意見を言いたいときに挙手してください。簡潔に。

池上:戦略という言葉について吟味してほしい。日本は不思議な国だと言われる。目標がなくても戦略を立ててうまくいっている。目標をどうするか、さまざまなレベルで存在する。5年6か月半宇宙開発委員会にいた。守秘義務もある点ご理解いただきたい。
タブーなしでもって議論していただきたい。利害関係者が集まってとことん議論をし、納得は行かないまでも理解できるように。宇宙探査でやり残したことはパブリックミーティング。
戦略を立てる上での課題。宇宙というと安全保障(national security)について議論してほしい。commercial,civil,military。日本の宇宙戦略はそれぞれについて話をしてほしい。
宇宙庁は今回できなかった。新しい体制を作るにあたってひずみがありそれをどう解いていくかが大切。自分としては新体制を支援していきたい。でなければ日本の宇宙開発の方向は出てこない。
宇宙開発について日本はいずれプレゼンスが下がり中国になるだろうが今はキャスティングボートを握っているというのが欧米の理解。特にISS
産業界の意向をよく聞く必要がある。
ドラゴン宇宙船が戻ってくる。火星ではキュリオシティが探査中。中国製GPSが打ち上がった。もう一度我々は外を見ながら決めていくべき。

鈴木:安全保障という言葉が出てきたのでそちらを。
事前の質問として「国家戦略をもとに宇宙戦略を考えていかねば」とあった。

池上:日本では安全保障についてきちんとした議論が出ないため宇宙についておかしな話が議員に来ても乗ってしまう。
安全保障は不思議なもので防衛省の中にはそういう名前の部局がない。議論する場がない。
潜在能力としてのソフトパワー防衛省が使っているかというとそんな状況ではない。
イプシロンという固体ロケットを開発中。あれは固体で1トンまで積める。海外から見ればミサイルかもしれないが宇宙科学用。正面装備としての日本のミサイルはありえない。
ミリタリー分野においてインテリジェンスなネットワークを作る方向へシフトしている。テロからまた別のものに変わりつつある。サイバースペースの中での主権と結びつけてどうするかの議論をしている。そう言う場にも日本は入っていってほしい。
いずれにしてもきちんと議論をしてほしい。
IGSをどう使っていくか。
海上保安庁はよく役立っている。dual use的にどうしていくか。

鈴木:阿部さんに安全保障について。

阿部:2つ申し上げたい。宇宙基本法が成立して安全保障という言葉が入った。「我が国の安全保障に資する貢献活動を」。安全保障にはなんでも入る。作った人も今やってる人もそこまで考えてはいないだろう。憲法の範囲。自衛のため。攻撃のためのミサイルは持たない。
とはいえフレキシブルにやってきた。控えめにやるだろう。どう控えめかというと議論はあるだろうが。
國友さんの話で気にかかったこと。自律性を確保する、ということ。
中国が自分でGPSを始めた。ロシアもヨーロッパも。日本もそう考えなければならない。コストのかねあいとの程度問題。
すべて国産でやりたいだろうがなかなか。

國友:「自立」ではない「自律」。憲法の理念にのっとって。専守防衛を旨とする。その範囲で宇宙も使っていくのが宇宙基本法の理念。防衛専用の通信衛星などインフラ整備も。
JAXA法が改正された。その範囲で研究開発もできるように。安全保障がタブー視されていることはない。
自律性について。オートロミーvs.エフィシエンシー。どういう技術を持つべきか、最低限持つべきハードはという話。
衛星を作る技術と打ち上げる技術はそれを他国にお願いしていては仕方ない。

鈴木:壇上の方もどんどん手を挙げてください。
次は立花隆さんにお話を。TBSが秋山デスクを宇宙へ送ったとき立花さんはテレビの解説係、わたしはラジオの実況。

立花:皆さんのいろいろな話をうかがっていてスケールが小さすぎる。宇宙スケールの話になっていない。宇宙のことを本当に考えるとは空間的にはどこから宇宙か。議論はあるが高度100キロ内は宇宙ではないとあるが静止衛星までは地球圏内と考えたほうがよいと考える。
となるとほぼすべての話が地球圏内。しかも防衛となると国家の枠内の話になっている。
宇宙の現実は国家のスケールを超えている。
ISSも国際プロジェクト。国威発揚のために宇宙開発するのは時代遅れの中国くらい。時代遅れの話はここではする必要はない。
川口先生の話はスケールが大きい。宇宙という巨大スケールの中で本格的に活動するには人間の普通の時間軸を離れなければならない。そのために人工冬眠が必要。まずこれを獲得しなければならない。しかしなかなか難しい。それでどこまで距離を克服できるか。
宇宙では距離の克服がとても大事。人工冬眠で解決できるかわからないがそこまで考えなければならない。それにはとても時間がかかる。相当時間をかけてそちらに進めていかなければならない。
川口先生が言うには宇宙スケールで探求を進めていくと宇宙に必要なものは深宇宙港。いちいち地球からロケットを上げるのではなくラグランジュ点に深宇宙港を作りそこから探査機を飛ばす。研究所もそこに作る。これもまたやろうとすれば大変な時間がかかる。川口先生はわりとすぐにできるというが。
方向的にはそういうことを考えてそのための活動を考えていく必要がある。
はやぶさのことは知っているつもりでほとんどの人は本当のことは知らない。映画も4本あったがそれぞれ欠点があり、数冊読むとはやぶさのことが一番よくわかる。
なぜ成功したのか、宇宙機を飛ばして戻したことではなくサンプルリターンに徹底的に特化したこと、完全に自動化されたロボット、人間を排除したシステム。
さらに帰ってからの分析。これがプロジェクトの最大目的。スプリング8などの分析でここまでの成果ができた。
スプリング8を宇宙へ持って行くわけにはいかないというがこれでないと得られないものがたくさんある。世界一の分析機械を日本が持っていてそれを使ったから成果が出た。そのことを知らなければはやぶさのことはなんにも知らない。
日本が宇宙にどう行くべきかについて、先日「ふわっと'92 20周年シンポジウム」があった。日本の宇宙飛行士がずらっと並ぶ中有人飛行をやるべきでないと口火を切ってから議論が白熱した。宇宙飛行士たちは有人飛行をやるべきという意見。
いまのISS程度の有人でできることはほぼやってきた。あれはあれ以上続けてもそうそう劇的なことは起きない。
日本の宇宙の最大の成果ははやぶさ。戻ってからの分析も含めてこれはほかの国にできないこと。サンプルリターンに徹したから。
中国は国威発揚をしたがって月へ行くかもしれないが時代遅れ。すべてインターナショナルな方向に行く。中国のようにナショナルな方向をしているのは時代遅れでそういうことをする必要はない。
日本ははやぶさの技術をさらに進めていく。はやぶさは200億、JAXAは1800億円。日本でなぜ独自の有人宇宙活動をするべきでないかは日本人の犠牲が出たときものすごくブレーキがかかるだろうから。また財政難が続くことを考えると独自の有人にはとても金がかかる。他国の二番煎じをやっても意味がない。
日本にできないこと、はやぶさなら200億。有人は数千億かかる。であればはやぶさをいくつも飛ばしていろいろなリターンを得るのがよい。物質的なリターン、人類全体に与える利益が大きい。
人類全体が共同事業としてやる領域にサイエンスその他も入っている。そこへネイションステートな話をする必要はない。

鈴木:ラグランジュ点とは地球-月、地球-太陽?

立花:最初は近い方で地球-月。

山根:今日はタブーなしでとのことだがISSの話が出てくるとタブーなことがありつらいこともある。サラ・ブライトマンが行くのはいいことだ。ああいうことをもっとやってこなかったのは反省すべき。あそこは安定していてひとつの文化。ISSに宇宙飛行士が行きましたといってもバンザイなんてもうならない。
「あそこは宇宙ではない」という話も。
ビッグプロジェクトはインターナショナルという話。CERNに対する日本の貢献は大きい。ALMAも日米欧の協力で。TMTという30メートルの望遠鏡を作ろうとしているのも国際協力。
理研が新しい元素を見つけて日本が見つけた元素が載ることになった。競っているのはドイツ、アメリカ、ロシア。だいぶ前からロシアとアメリカは協力していた。人類の歴史を変えることはインターナショナルなのだろう。そういう中で日本の宇宙開発も考えていくべき。
かといって日本がどうすべきかというとアジア。アジアの他国、宇宙技術を持っていない国の人が宇宙へ行けばもっと喝采を浴びるだろう。NASDAのNはnationalだからAsiaにしてAASDAにすればよい。
種子島でロケットを打ち上げるには不利が多い。クリスマス島にはアメリカが占領したときすばらしい飛行場がある。あそこに射場を持って行ってはという話もかつてはあった。内閣府が入ってきてから変わったのか、そういう話を聞かなくなった。
先ほどスプリング8の話があったがXFELがすごいという話ははやぶさの話題で初めて聞いた。これを京都のスパコン京と結びつければすごい。そう考えつつ議論を進めていくべき。

西田:楽しい話で、こういう話だけですめばいいがそうはいかない。国際協力はそんな簡単なものではない。日本の研究者の実力がアメリカから高く買われたからこそうまくいった国際協力があった。安くすむとかそういう考えではダメで、国際協力は協力の前提として競争がある。

池上:なぜ日本で有人がタブーか考えた。人間のethic、根源的な問題と言われた。なぜ日本人が火星へ行こうとならないのか。
人が一人死んだら大変なことになるというがなぜそうなのか。海外では火星へ行くのは当たり前という感覚。日本ではそういうことはなかなか出てこない。JAXA霞ヶ関を気にしているのかそういう話は出ない。
日本は気候変動があれば森へ逃げればよい。ほかの国は砂漠しかなかったりする。今の場所がダメになったら移動しなければならないという感覚があるからでは。
日本は有人で一人犠牲者が出たら宇宙の計画すべてがダメになる。霞ヶ関は「一人死んだら誰が責任を取るんだ」というカルチャー。
しかし日本には武士道があり自分が死んでもよいという感覚があるはず。タブーになるのは霞ヶ関の論理が働いているからでは。
有人探査をやるという宣言を政治レベルでやってほしい。古川宇宙戦略担当大臣は有人探査をと言っていたがこの間それに「国際協力で」とついた。work togetherが日本人は下手。そこを抜けていかないと難しい。

西田:日本人は国際協力が下手とは思わない。実力があれば堂々とできる。お金が惜しいとか衛星がほしいという低い考えではダメ。

鈴木:林さん、日本人は国際協力が下手でしょうか

林:下手ですね。タイの百貨店では日本のデパートが人気。フロアごとに様々な国がしつらえてあり世界を巡れる趣向。海外旅行に行けない国の人の工夫。
中国は2020年に独自の宇宙ステーションをという話が出ている。米露、EUとどう協調するかという話になるだろう。そのとき中国の技術をどのくらい信頼しているか。
トレードオフの関係でアジアの人はなにを臨んでいるか。医療のプロフェッショナルを日本に送り込みたい。その代わりバーターとして宇宙を含めたセンサーの技術がほしいと考えている。

鈴木:地球観測衛星のデータのやりとりはどのように?

岩崎:今はアジアに教えに行くつもりかもしれないがデータ解析についてはプログラムやアルゴリズムが得意な人は各国どこにでも生まれる可能性があるから日本もうかうかしていられない。

鈴木:会場からは?
客席から:相模原から来たSと言います。人材育成について。わたしは的川先生の宇宙の学校の実施団体の活動ボランティアをやっている。親子に宇宙についての実験や工作を通じて理系なことを学んでもらうことを進めている。宇宙教育センターやKU-MAなどの成果を教育にフィードバックしてもらいたい。

西田:宇宙科学研究所はもともと東大の中にあった。共同利用機関でもあり全国の大学の先生も共同で利用している。総合研究大学院大学でもある。しかしこれで十分というつもりはない。大学が法人化されてから、大学の先生が宇宙研に来て仕事をするのが難しくなっていると感じる。

池上:2つ側面がある。国内でいうとたとえばそこの秋山先生、宇宙について学生をクレイジーにする専門家で非常に期待している。NASAのやり方はstudent touchといってとても関心を持っている。宇宙飛行士が学校を訪ねて宇宙の魅力を語ったりしている。そういう活動が活発。
日本にもそういう芽はあると思うがもう少し広く展開していけたらと思う。
いまはアジアに対してモノを売っていこうという段階。途上国は人材育成を求めている。日本の大学は研究第一で論文を書くことに興味がある先生はあまりいない。ISASも研究に忙しく教育に目が届いていない。大学が本気になってやれば。
韓国では大学どうしが原子力工学について協定を結んだ。相手の立場に立って考えるべき。

松本:教育が重要なのはその通り。日本はあまり教育していないと池上先生からおしかりを受けたがそうでもない。宇宙研の先生は子供を集めてやっている。今日の司会をしているイソベ君なども加わって教育プログラムをやっている。たとえばチラシを置いている「古事記と宇宙」も。
学会でも宇宙関係の教育はユニバーサルに行われている。宇宙を理解するには理論だけではない、国際宇宙シミュレーションがずっと行われている。親への教育で宇宙への理解が深まるのでは。

山根:前から松本先生に聞きたかったことがある。宇宙に太陽光発電所を作るという話。JAXAの中にも研究チームがある。20年前に聞いてスケールに驚いていたが京大の学長になった。突出した壮大な夢を出していくことで感化された若者が集まってくるということは実感しているか。

松本:宇宙はでかい話で宇は空間、宙は時間の軸。宇宙は空間と時間の軸に広がっているもの。太陽系は当面対象に考えよう、次は太陽系の外。何年かかるかわからないが、というのが欧米の理解とあった。
打ち上げ産業を担っている重工業が世界の産業をアクティベートするだろう。エネルギーの問題ひとつ取っても「宇宙の人はどうしてやってくれなかったのか」は国民の観点としてあるのではないか。どのくらいの人をつぎ込めるのか。
宇宙への情熱を持っていない人に宇宙の必要性をどう訴えていくか。日本のために、アジアのために、世界のためになりますというビジョンをどのくらい示せるかではないか。

鈴木:JAXAは広報活動に力を入れていると思うが若い学生さんが宇宙の勉強をしても社会に出たときどのくらい活かせるかという悩みをよく見る。

川口:教育は教えて育てること。教えるだけではダメできっかけを与えていくことが大切。機会を作っていくことが大事。教科書を教えていてはいけない。機会を持続的に与えていくことが重要。

鈴木:会場に学生さんいらしてます?

会場:栃木から来たSといいます。院生です。日本の大学の方針だと授業料を払って教えてもらうものだが海外では研究に参加すると給料が出ている。そのことをどう思うか。

鈴木:お金のことは大事。

秋山:学生のうち宇宙に行けるのは1割か2割。関心を持たせるのに宇宙はとてもよい。わたしは理学で工学は専門ではないがチームの運用などで学ぶところがあり宇宙分野へ進まなくても得るものは大きい。
宇宙へ行かなくてもアポロ型のプロジェクトマネージメントなど学べることが多いと感じている。

鈴木:宇宙へみんなが行ってしまうと地球に誰もいなくなってしまう。宇宙で食えるという状況ができれば人材に悩むことはなくなるだろう。

林:私自身25くらいのとき大学の先生になるか悩んでやめた。大規模データの分析ができる、などの経験を出して就職した。すぐに宇宙のことが役立つことはないかもしれないがあとで役立つことがある。

山根:大学生や研究者だけでなく子供たち、若い人たちのことも大事。JAXA iに大きなメッセージボードを貼ったらあっという間にいっぱいになった。子供、女の子がよく書いている。何枚貼っても埋まる。聞いてみるとはやぶさのことをよく勉強している。学校で小学生や中学生が宇宙開発について教科書で学ぶ機会はあるか。

西田:今はインターネットで勉強していますよ。

山根:先生も勉強しなければならない。はやぶさプロジェクトは日本の文化的資産。もっと活かしたい。

池上:文科省でもわたしは科技庁の流れですが、機会均等を与えることが国の役割という考えで止まっていると感じる。

山根:理科の教科書に載せようと思うからそうなる。「そうまでして君は」を国語の教科書に載せるべき。

池上:幸か不幸か今はお役ご免でした。

立花:高校の国語の教科書にわたしの「人類よ宇宙人になれ」が載っている。指導要領で、ネットで宇宙について調べさせて議論させるというパターンが載っていた。数か月前仙台でその授業に参加する企画があった。それをNHKがテレビで放送する。
子供たちに正しい知識を与えるために宇宙開発の現状や将来像を知らせるというので若田さんと交信するというのまでやった。学生がついて議論を進めさせた。子供たちが書いた宇宙の将来像について数時間議論をした。子供のことだからとほうもないことも出てくるが驚いたのは子供たちがインターネットを使い尽くして情報を集めてきている。現場では子供が変化を起こしている。今までの学校しか知らない人には驚くような変化が起きている。

山根:国語の教科書に載るのはきっかけですね。

会場:Tといいます。民間の通信衛星会社で働いています。宇宙は理系と感じがちだがこれから日本は宇宙をどうしていくのか戦略を立てる人材が必要になるだろう。アメリカはスペースポリシーという政策の専門の場がある。日本にはあるのか。なければ作るべきでは。

松本:教育の現場で技術系の話はあるが宇宙考古学などに興味を持ってくる学生もいる。宇宙人文学をやろうという先生や宇宙哲学をという先生もいる。

鈴木:宇宙が好きな者から見ると物理がわかってないなーと思うこともあるが、文系の考えをちゃんと取り入れているかと考える。

会場:これからは人文系のことも。京大では倫理系の話もやっている。総合的に宇宙を勉強できるような場を自主ゼミでやっている。

会場:防衛研究所の者です。法学部の先生も加わって話しているのは理系文系またがって宇宙政策、どこで誰がどう決めているか、なぜこう決めたのにうまくいっていないのかという話をやっている。私自身宇宙法とサイバー法の専門。ISPSという宇宙科学のシンポジウムがあり国際協力という部屋がある。ただ分母が理系の皆さんと比べれば少ない。

会場:産業界にいると宇宙の利用を拡大するということに興味がある。宇宙インフラを使い込み衛星データを使うのは当たり前。日本では研究利用は進んでいるが実務ではなかなか進んでいない。教育という意味では政策利用、実務の中で衛星データを利用するというのが大切では。雇用の問題や教育の問題にいい効果が出てくるのでは。

岩崎:航空宇宙の学科に進んでも将来に生きないという話に関わるが、他分野から「産業ないじゃん」「学生のうちしかできないから宇宙は人気があるんじゃないの」といじめられている。

國友:産業基盤をつくる上ではまず宇宙利用の拡大を進めなければ。宇宙データをこういうことに使えると言っても、サービスを提供する主体が必要。宇宙を利用してソリューションを提供すべき、売り込んでもらう立場が必要。
アジアの国は機械だけほしいのではなくソリューションがほしい。
日本の国際協力のベースは円借款金利をつけてお金を返してもらうためには雇用が発生しなければならない。そういう意味では日本の国際協力は成功している。お金を生んでもらって返してもらえている。宇宙を利用するとこんないいことがあるというソリューション。大きいのは防災。そのためには宇宙に数機の衛星が常時必要。それは日本だけでは負担できない。
そのために相手国に自立的な技術が必要。パッケージインフラはソリューション、人材育成などのパッケージ。

鈴木:トップセールスで国の果たす役割、これまでとこれからは。

國友:海外ではモノを売るのに武器輸出をからめたりするが日本はそれはできない。品質と価格だけでは日本は勝てない時代。売るときには政府を上げて売っていく、大統領や総理大臣が自ら売り込んでいく。相手にどんなメリットがあるか。

林:トップセールスというとトップが行けばいいという話になりがち。地デジは中南米へはブラジルの大統領を動員して売り込み成功した。
日本はブルドーザーがうまくいっている。コマツGPSを使って稼働状況を得る。日本は衛星で精度を上げたいとしているのだから日本の機器は宇宙につながっているようにする。PDCAという。産業や企業が中心になったときどんな雇用ができてくるか。企業側の目線でビジネスモデルを再構築してもらいたい。

会場:埼玉のMと申します。学部の4年で文系です。社会学部ですが宇宙を勉強していて、文系の中でも宇宙に関わるという立場。塾講師のアルバイトをしている。宇宙についての話をふると宇宙開発の話題よりもビッグバンやブラックホールの話になる。立花先生が小学校の現場でうまくいった話をしていたが伝わっていないのでは。
宇宙にあまり関心のない子供たちにどう知らせていったらいいか。

鈴木:会場の最前列から手が挙がっています。お名前を言ってしまってかまいませんよね、元宇宙飛行士の山崎直子さんです。

会場:山崎直子です。宇宙政策を一緒に考えるとき無人と有人で対立で考えてほしくない。ハッブル宇宙望遠鏡は宇宙科学の象徴だが宇宙飛行士がメンテナンスした。HTV(こうのとり)もISSへの連結には宇宙飛行士によるアームの操作が必要。お互い切磋琢磨しつつ適材適所で。50年後100年後の日本で宇宙へ行かない未来は寂しい。独自でなくてもうまく投入するところは投入してアクセスを確保してもらいたい。
いつも有人は「検討する」で終わってしまうのがはがゆく悩んでいる。宇宙探査もそうだがしっかりしたコミュニティ、センターが一部としてなにか機能するのでは。

会場:Sです。京都大学から来ました。100年後ではなく20年後30年後の日本の宇宙科学について悩んでいる。現場で苦労している者に対して。

國友:政策としては現状の政策をどう変えるかも重要。財政事情もふまえて。20年30年の大計で考えるべきことも。宇宙を利用するというのは今はもう目の前の仕事。
有人無人の議論はすぐに結論を出せないので検討して。すぐになにかを決める必要があることではない。NASAも2020年以降の有人政策はない。

池上:世界の流れでどこも苦労している。なかなか難しい。日本は既存技術がよくできていて宇宙をどう使うかが難しい。NASAにしても宇宙で新技術を開発するには深宇宙へ行かなければならないとなっている。フランス、イギリスも既存技術の応用で間に合ってしまっている。
そのために具体的なアジェンダ設定をしなければならない。目的が一緒ならいいが(東北が大変だからとか)。
共通の話題が火星計画になってしまっている。

秋山:レイヤーの問題。50年のレイヤーや500年のレイヤーがある。

会場:Tといいます。静止軌道をさらに超える宇宙の話として輸送系が大事と思うが宇宙エレベーター。将来性は。

國友:政策を考える上で宇宙をいかに利用して国民生活をよくするかを考える。軌道エレベーターでなにをよくするかを考えなければならない。

鈴木:IFが多すぎるきらいはある。

池上:学生さんと話をしているといつも宇宙エレベーターの話が出る。

鈴木:わたしも宇宙エレベーター協会と関係があり興味がないわけではない。

山根:日本としては宇宙を利用してもらえるようなことをやってほしい。そのときいつも民間で、という声が聞こえてくる気がする。官がなぜもっと国の衛星を使わないのか。情報収集衛星は震災でどのくらい活躍したのか。絵はなくてもよい、情報だけでもほしい。
デンマークで10年くらい前に聞いた土地利用の話。土地に課税される。登記所や税務署へ行く。申告者の衛星写真が出てきて課税をする。これが必須だという。驚いたが「日本ではやってないのか」と言われた。
芝生の手入れがいい人は収入が多いという話がある。芝生がきれいなのに納税額が少ない人は脱税しているかもしれないという話。
車庫証明を取るとき地図を描けという。いちいち描かなくても衛星写真を使えばよい。

國友:いろいろな使い方がある。なにに使うかが決まらないまま衛星を上げたきらいがある。

山根:官が使うことを前提に上げてほしい。

國友:スペースXはISSに対する輸送手段を民間委託したというもの。これまでNASAがやっていた。長期契約で民間企業を育てた。政府による需要保障、アーカテラシーという。
日本ではそれはまだあまりにも議論されていない。継続的に仕事が必要。官需の使い方も工夫が必要。官需だけでは財政が厳しいから難しい。

会場:モノカキのMといいます。政府の宇宙予算3000億とあるがBMDの600億が入っている。IGSも。ISS運用予算410億。日本の宇宙予算は減ってないふりをして実質的には2400億から1400億に減っている。
そうやって食い込んでいったもの、IGSは14年経っているが利権化してしまう。そうなるといい技術が出てきたときにつぶしちゃう。IGSと、これから準天頂衛星が危ない。GPSは2兆円かかったがESAガリレオは4000億くらいでできた。2020年代に準天頂をやるとしたらもっと安くできるはずだがそういう考え方は入っていない。

川口:宇宙エレベーターは宇宙工学会としてはちゃんと考えていかなければならない。
長期の展望にどうつなげるか。今と100年先は全然違うかというとそんなことはない。長期でどうなるかはわからない。利用の自律性の確保。バウンダリーを作ってしまう。戦略はロングレンジ(わからないかもしれないが)を見て今を考える。目先だけになってはいけない。

会場:民間ベンチャーについて。話を聞くと法律でしばられていてうまくいっていないという。改革するスピードを持っていかないのか。

池上:産業界から見たベンチャーとは。ドラゴンが戻ってくると大変なこと。スペースXはベンチャー。1800人のうち1/3はNASAなどからの転職。1/3は新規、1/3は××。優秀な人が集まっている。日本は人材流動がなく人が集まらない。スペースXには政府がたくさんお金を出している。

会場:宇宙利用について。私は昭和53年から宇宙開発にたずさわってきた。今はリタイヤ。宇宙発電所はすぐ目の前のように感じるが。

山根:松本先生にうかがったとき夢物語かなと思ったがJAXAの中では取り組まれている。松本先生お詳しいのでは。

松本:今日は産業界の方がいない。電力界、産業界を含めた話は第2回の京都会場で。宇宙利用の拡大は既定路線だが宇宙工学をおさめた学生が力を発揮できない状況。輸送系も重要だが。就職先の受け皿がない。

國友:ベンチャーの話について。事細かにサービスを提供してもらわなければならない。利用を拡大するための産業を作るようにしている。

立花:最後にひとつ提案を。昔東大の先端研にいた。中須賀先生も先端研に。宇宙研の先生とも組んで衛星設計コンテストを。コンテスト後実際に飛んでいるものもある。入賞はしなくても斬新なアイデアがたくさん出ていた。
宇宙利用が広がらないという話があるので宇宙利用設計コンテストをやってみては。すごいアイデアがたくさん出てくるだろう。

鈴木:このポリシーで100年200年行くんだというビジョンを示せるのは政府。となれば冷凍睡眠もできてくるかもしれない。
松本先生しめくくりに一言お願いします。

松本:幅広い方から宇宙戦略について聞きたくて企画した。いつかどこかで頭の中に入っていくだろう。この会の続きが京都で行われる。産業ベースの話もある。幅広い話を聞いて皆さんにお伝えできるだろう。

閉会あいさつ

遅くまで活発な意見をいただき、会場からたくさん意見をいただけて成功だと思う。京都や福岡にもいらしていただきたい。
日本学術会議、航空宇宙学会も共催ですと一言。

アンケート

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会場に置かれていたチラシ

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川島レイさん(たくさん質問していたUNISECの方)にいただいたチラシ

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