三菱重工:H-IIBロケットの打ち上げ輸送サービス事業を開始

登壇者

  • 三菱重工 航空宇宙事業本部 宇宙事業部 事業部長 淺田正一郎
  • 三菱重工 航空宇宙事業本部 宇宙事業部 営業部長 阿部直彦

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配付資料

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資料の補足

7ページ
  • H-IIBの打ち上げ能力に匹敵するロケットはアリアン5、デルタ4、アトラス5、プロトン
9ページ
  • JAXAから三菱重工への打ち上げ事業の移管は当初より念頭にあった
11ページ
  • H-IIBは8トンの衛星を静止遷移軌道と申し上げたが種子島から打ち上げる場合のことで、赤道直下から上げるほかのロケットとは違う。グラフの右端の7トンクラスはH-IIBは対応できないため白くしている。
  • H-IIAでは衛星サイズの50パーセントまでしかカバーできなかったものをH-IIBで90パーセントまでカバーできるようになった
  • 打ち上げ衛星の大型化傾向がある(携帯電話、放送衛星など)
13ページ
  • ヨーロッパやロシアの為替レートも重要。円は1.3倍に上昇、ユーロやルーブルは下落、結果的に1.6倍の差が出ている。この差はコスト低減では追いつけない

質疑応答

日刊工業新聞あまの:14ページ。「国内他産業における汎用技術の適用等によるコストダウン」について具体的に
淺田:次期基幹ロケットの開発は正式に決まったわけではなく、いつまでにとは決まっていないが2020年までにはと考えている。ファルコン9などは低価格。対応にはH-IIA/Bでしか使わない部品や材料を使うのではなく、自動車産業などで使われている汎用部品、最新技術を適用できないか模索中。たとえばコンピュータを使えないかなど。材料についても特殊なアルミ合金ではなく一般的なアルミ合金に交換できないかなども。
あまの:以前MRJとの部品共有といった話をしていたが
淺田:MRJはあくまで例で、航空機でもっと数が出る製品などとの共通化ということ。航空機とロケットは部品の共通化はなかなか難しい。自動車は進んだ技術を使っていると信じている。こういったことを今後研究していきたい。

日経ビジネスあべ:H-IIAを事業として成立させるために年間4機と言っているが、H-IIBの民間移管によって年間最低何機という数字は変わるか
淺田:H-IIAとBは共通のエンジン、材料。区別せず4機と考えている。
あべ:海外勢との競合でどうH-IIBを受注していくかの作戦は。ファルコン9はだいぶ安い
淺田:価格では負けている。これは為替のせい。もともとのコストで考えたときヨーロッパと日本でそう変わらない。リーマンショック以前に戻れば十分戦える。しかし現状はこの通りなので2つの衛星を同時打ち上げするなどで国際競争力をつけたい。
また15ページの「まとめ」にもあるように宇宙関連産業維持方策を要請していく。
為替レートの1.6倍はコストダウン意欲も失せるレベルの違い。
あべ:こうのとり以外の官需に期待はできるのか
阿部:具体的計画はないが期待はしている。そうすることでH-IIBの需要を下支えできるだろう。
淺田:H-IIAでは上げられないがH-IIBでという需要も出てくるかもしれない。

日本経済新聞××:打ち上げ費は従来150億円弱と聞いたが民間移管でどの程度下がるか
阿部:価格についてはなかなか私どもからは申し上げられないが1.5倍内にH-IIA204やH-IIBが入る。価格とよく言うがアリアンは2機同時打ち上げなどで下げている。どこまで落とせるかはH-IIAの実績を活かしてもっと下げていきたい。
××:H-IIBの民間移管で今までにない営業先はあるか
阿部:今まで6トン衛星はできなかったがH-IIBで付加価値がついて戦える。単独打ち上げでは見合わないものも2機同時打ち上げできるなど幅が広がる。

NHKあずま:今後宇宙ビジネスの将来性というか動向を聞きたい。また受注の目標があれば
淺田:官需はいま年に2〜3機上がっている。国内的にはこのレベルで推移するだろう。年間4機にはちと足りない。残り1機か2機を商業衛星打ち上げで支えたい。
11ページにある「年間20機」はこれ以上増えない。大型化するだけで。各国の観測衛星は大きくはなく1トン程度だが資源探査、災害監視などで増えてきている。それ以外の宇宙利用はなかなか出てきていない。
H-IIBの移管にどのくらい期待しているかは、格段に売り上げが増えることではない。ただし今後の展望として14ページの通りで国際競争力をつけて機数をいまの倍程度まで伸ばしたい。

ニッポン放送はたなか:7年間でここまできた心境は。また円高についてこのくらいのレートになるとうれしいというような水準はあるか。さらに想定レートは。
淺田:9ページ。協定を結んだとき担当者だった。1号機は世界が驚愕した。ロケットもHTVも初号機で120パーセントの成功だった。日本の技術レベルはたいしたものだと海外は驚愕し我々もそう思った。いまは安心してHTVを打ち上げられるかというとそうではなく、上げるたびに生じる問題がある。不具合を解消しながら運用していく。完成したものを受け取ったとは考えていない。
円高はなかなか厳しい。1ドル100円になれば戦える。一緒にルーブルなどが下がれば苦しいが。
想定レートは社内では決まっているがわたしからは申し上げにくい。

NHKこぐれ:次期基幹ロケットについて。H-IIBに対してどの態度コストを下げるかなどの具体的イメージはあるか。また宇宙政策委員会での話は進んでいないようだが
淺田:スペースX社のファルコン9。これは従来の市場価格の半分くらい。かなりの受注を取っている。それと勝負できないといけない。そこがひとつの目標。ただしコストダウンだけならある程度。
インドは商業ロケットを開発中。2020年ごろにはできるようになるだろう。こうなるともともと賃金が違うところと勝負しなければならずコストだけでは生きていけない。ほかのロケットと違う特色を出したいが具体的な内容はライバルに知られたくないので差し控えさせてほしい。
我々はアクセス手段を確保しなければなにもできないといつも言っている。H-IIBまで開発を続けてきて技術者が育ってきた。世界トップレベルと信じている。そこまで来た技術力をH-IIBを上げるだけで維持するとなると人が定年でいなくなってしまう。私もそろそろあぶない。H-IIBは16年たっている。開発経験者がいなくなってしまう。確実な輸送手段の確保が重要。サプライヤーも事業を成立させなければならないが数が少ない。海外へ出て行って数を増やしたい。
H-IIBの射点はH-IIAのころ作ったもので相当年月がたってきている。維持費もかなりのコスト。運用、維持コストを圧縮してお値打ちに上げられるようにしたい。宇宙予算で余りが出たら開発に回したい。運用と開発をバランスよく。
こぐれ:種子島の維持コストは
淺田:具体的数字はJAXAに聞いてほしいが年々上がっている。

航空新聞社わたなべ:H-IIAの高度化の内容といつごろまでか
淺田:11ページ。ΔV=1500m/sでの打ち上げ。種子島は赤道直下より条件が厳しい。
2段目の作動時間、打ち上げ30分くらいで役目を終える。クリスマス島のあたりで衛星分離。ここで分離せずもっと衛星を持ち続けて静止軌道に近いところで衛星を分離することで衛星の負担を軽減したい。
そのために2段目の作動時間(エンジンの点火時間ではなくコンピュータや通信時間など)を2万秒くらいまで伸ばしたい。電池容量を増やす、搭載する液体水素の蒸発を抑えるなど。実現は2年後を期待している。

フリーライター林:新興国へのパッケージングについて。具体的にどのくらいのニーズがあるのか。またビジネスの可能性の感触は
淺田:弊社のみならず経産省なども各国行脚でニーズを把握しようとしている。自分が行った範囲ではまず観測衛星で自国の状況や災害監視に興味を持っている。タイの洪水など。観測衛星は小さめで新興国でも手が届きやすい。地上の通信インフラが整っていないところでは通信衛星の需要。日本は地上網が発達しているから通信衛星なんてと思うが新興国では通信衛星をひとつあげれば一気にインフラが整う。通信衛星は災害に強い。地上の光ファイバー網に比べて維持費も安い。地上網が未発達だったり広大な面積を持つ地域では需要が高いだろう。
阿部:ベトナムODAが去年決まった。宇宙センターの起工式に参加した。そういった設備、人(エンジニアの育成)、製作のノウハウなどを提供。お互いいいことだ。外向的な側面でもよい。ああいう形での、ロケットや製品だけではない、人と人とのつながりがあるパッケージの輸出は産業だけでないメリットがある。
林:新興国はH-IIBよりH-IIAということか
淺田:通信衛星ならH-IIA、観測衛星はH-IIAでも大きすぎる。イプシロンもあるが(※イプシロンロケットの開発はIHIエアロスペース)。韓国の衛星も観測衛星だったが小さくて官需衛星とのデュアルロンチとも相性がよい。どういう手段が一番安く提供できるか考えるのが我々。
林:ファルコン9について、アメリカは賃金が安いわけでもないのになぜできているのか。どう見ているか
淺田:我々もあのコストの理由は勉強していて反映させたい。まず彼らのプライスはイコールコストではない。つまり我々が輸送業をやるとき慣れ親しんだ業者が頼まれやすい。アリアンスペースはそういう信用がある。そこへ新しく入るとき同じ値段では絶対に受注できない。商業衛星の実績がないところへ殴り込みをかけるには安値しかない。そのコストが実現できているかどうか私にはわからない。しかしそうしないと契約を取れない。そういうリスクテイクをできることは尊敬に値する。点検などに対する労力を省いているのだろう。我々は徹底的に検証して上げている。傍証として、前回ドラゴン宇宙船を上げるとき9つのエンジンのうち1つに故障があった。不具合のあったバルブを交換して3日後に上げた。我々はバルブの故障の原因を徹底的に確認するまで打ち上げない。手法が違う。
林:いちかばちかのところがある?
淺田:そこまでは言わないが彼らはリスクテイクしている。我々はすごく慎重。

NVSかねこ:イプシロンや新興国の需要が小さめとのことだが打ち上げサービスとして小さい衛星はどう考えているか
淺田:イプシロンが民営化されるかは我々にはわからないが、幅広い需要にこたえるラインアップを持つことは重要。アリアンスペースはベガを持ったり、ロシアからソユーズを上げたりしている。それらもひとつの方法。
もともと国内需要が少なく数が出ない。コンポーネントの共通化でサプライヤーの負担がないようにしたい。

(終了)