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あかつき金星周回軌道投入失敗からの改善事項とあかつきの現状および今後の運用

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質疑応答


読売新聞きむら:逆止弁が今後不具合が起きても大丈夫ということについて。補加圧で
2015年は逆噴射しない?
中村:そういう運用も考えられる(RCSを使わずスイングバイだけする)。検討中。
きむら:最悪2015年は少し逆噴射しそのまま逆止弁が閉じてしまったときは?
中村:それでも大丈夫。
稲谷:CV-Fが動作不良を起こした逆止弁。CV-Fが完全に閉塞した場合ここにある有効な体積に圧力がかかっている状態になる。有効なかたちで
CV-Fが詰まっても大丈夫ということ。
きむら:2015年や2016年というと大ざっぱなので、いずれも日付を知りたい。
稲谷:1回目の会合は決まっている。2015年11月。2回目の会合は2015年の運用次第。約200日後。スイングバイしたら2016年6月。
きむら:遠金点、近金点の距離は
中村:300キロ/■。
稲谷:どの作戦をとるかによって変わる。いろいろなオプションがある。2015年に探査機がどの状態にあるかによる。今これが確実にできると申し上げるより今後アップデートしていきたい。
きむら:気持ちとしては2015年より2016?
稲谷:一回回した方がいい軌道に入れることは間違いない。

共同通信きくち:2016年以降とあるが期待の劣化で条件は悪くなっていくのだろう。
稲谷:スイングバイするたびによい軌道に入れる。無限にスイングバイできるならよりよい軌道に入れる。しかし時間をかけると探査機が劣化していくということ。その意味で2回目、3回目のスイングバイはありうるが、そこばかりに頼って永遠にいい軌道を探すということはしない。
きくち:今と同じ状態なら2016年と言っていたが、2015年のスイングバイのあとよろしくないとわかったら2016年を狙うということ?
稲谷:2016年に投入するなら2015年はこういうスイングバイをする、といった計画をあらかじめ立てる。そのあとうまくいかなかったらどうするかということはあるかもしれないが。
きくち:2015年のスイングバイで2016年に適した軌道をとれるかわからない?
稲谷:少しの修正は必要かもしれない。

産経新聞おの:事故の原因はシールド部分の蒸発した酸化剤が通ってしまったということだが設計ミスか
稲谷:設計ミスの言葉の定義にもよるが…想定していなかったことではある。あらゆる可能性がゼロになることはないが、ここまで透過するとは今回の設計では想定していなかった。
おの:製造ミスということではない?
稲谷:設計通りに作られているかどうかという意味では製造ミスではない。
おの:バルブを作ることに関する経験不足が原因?
稲谷:一般に部品を調達する場合にどこまで情報が開示されるかがある。どんな試験をしておかないと危ないなどがある。たとえば外国のメーカーから買う場合情報開示がどこまでされるか。今後の改善事項を参照。
おの:今回またバルブが原因で計画が狂ってしまったことについて
稲谷:たいへん残念。このことを設計段階で想定できていれば防げたかもしれない。一方でこのバルブは一定の実績がありまったく否定されるべきものでもない。衛星がどういう運用をするかを考えれば想定できたかもしれない。今後このようなことがないように改善事項をまとめた。

ライター青木:いつ軌道に乗せるかと設計寿命がかかわってくるが、観測装置の中でどれが寿命が早く来そうか。ある軌道に乗せてからでないとわからないのか。
中村:比較的危ないのはCCDなど撮像素子の部分。CCDのカメラは白飛びができてくる。(宇宙放射線で)放射線をどの程度浴びるか、太陽活動にもより不定。星を見て撮像することは可能なので事前にある程度チェックしていく。
青木:様子を見ていつ軌道に乗せるかを決めるのか
中村:判断材料にする。なにを観測するかいまから考えておき準備をしておく。総合的に判断していく。
青木:当初予定で軌道に乗らなかったことで太陽活動が極大期を迎える。想定外だったか。
中村:想定していたより多くの放射線を浴びることは確か。しかし根性で。

NHKはるの:再投入の時期について。現時点のターゲットは2015年11月、2016年6月、オプションとして2017年以降?
中村:その通り。
はるの:RCSの推進能力がわかれば軌道もという話が以前あった。一番いい軌道に乗れた場合の軌道要素は。
中村:RCSは期待通りの能力を出している。計算している最中。ここの図が2つしかないのはそこまでしか計算していないため。今後金星に接触しないよう軌道計画は微調整が必要。

フリーランス大塚:2015年と2016年の判断はいつまでに。
中村:少し前でよい。考える時間は2014年くらいまである。
大塚:近日点マヌーバのときRCSの正確な比推力はまだわからないとあったが
稲谷:だいたい予想通りだった。ΔVがこれだけあるならこのくらいという数字は出せる。今後の計画がひっくり返らない程度に予想通りだったといえる。
必要な燃料消費量で必要なΔVを出せることが大切。

読売新聞きむら:逆止弁の運用方法によって透過がある/ないとのことだが
稲谷:透過とはある物質の前後にガスがあるとき突き抜けること。今も状態によっては透過が起き続けている。酸化剤は捨てたのでごく少ない。バルブの不良と、透過が起きるかどうかは別。2010年12月は逆止弁が閉塞していたようだ。詰まり方が運用状態で変わることを示している。バルブが今後一切ガスを通さなかったとしても大丈夫とはわかっている。軌道変更は可能。
きむら:今までも使ってきて詰まることはなかったということは、これまでとどういう使い方の違いがあったか
稲谷:あかつき前はなかったが、地上での再現実験で塩が生成したため逆止弁が閉塞したと判断。推進系の配管やコンフィギュレーションはさまざまなためバルブ単体で今回どうだったから塩が生成したとはいいにくい。
きむら:2015年の会合までに観測を行う予定はあるか。
中村:金星に近づくときは予定している。太陽を通して通信するとき太陽大気を通る影響を調べるなども観測計画に含まれている。

朝日新聞たなか:透過による塩の生成は想定されていなかったのか。
稲谷:資料1の4-5ページ参照。CV-F以外にもさまざまな弁がある。シールをすり抜けていくのが透過。2種類のガスがどこで混じるか。
たなか:透過を想定しなくてもうまくいっていたということか。
稲谷:透過するほど酸化剤が来なかったか、大量に透過しなかったか。のぞみでも(これが不具合の原因ではないが)
バルブそのものはのぞみとあかつきで使った。外国でいくつかの宇宙機で使われた。そこから透過の不具合は報告されていない。ただ運用時間の違いなどさまざまな条件を考えなければならない。
一般に透過は少ないと考えられているのはバルブの内部構造がすべて開示されるかがさまざまであることもある。
たなか:今後はDB化していくと
稲谷:これまでの知見から防げたかどうかはなんともいえない

NVSさいとう:太陽フレアの影響は
中村:すごくドキドキしたが幸い大丈夫だった。
さいとう:磁気圏を回っている宇宙機より一般的に影響が大きい?
中村:大きなフレアが出たときは磁気圏が小さくなり地球近傍でも影響が出ることもある。必ずしも惑星探査機が不利であるとは限らない。ただ違う影響を受ける。
さいとう:フレアに備える姿勢などはあるのか
中村:危なそうな素子を守るためにこの姿勢を取るなどはある。

NHKはるの:今後の抱負を。
中村:みなさんの期待を担って打ち上げさせていただいた衛星が時間がかかるとはいえ軌道に入れる可能性が出てきたことはうれしい。サイエンス的にも国民の皆さんの期待にこたえるという意味でも。国民の皆さんにはここまで支援をしていただいて心から感謝している。

配付資料

※2月1日追記:以下のJAXAサイトに掲載されました。PDFは概観に不適と思うので、以下のスキャンはこのまま掲載しておきます

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