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ホリエモンとロケットまつりな面々が本当に宇宙開発を始めていた件

夕べのロフトプラスワンイベント「ホリエモントークライブSESSION6」はすごかった。「宇宙はそんなに遠くない!」のタイトルはだてではなかった。

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今回のイベントは、この面々が「宇宙はいいねえ」「宇宙へ行きたいねえ」「今の宇宙開発はこんなだねえ」と語り合うくらいのものだろうと思っていたら全然違った。

この人たちが、もう3年も前から自分たちの手でロケットエンジンを作っているなんて、まったく思いもよらなかった。

ホリエモントークライブSESSION 6「堀江貴文松浦晋也笹本祐一あさりよしとおの宇宙はそんなに遠くない!」
ウェブマガジン「魚の目」でも宇宙論を展開する堀江貴文が、ロケットまつりでお馴染みの松浦晋也笹本祐一あさりよしとおを迎えて本気で話す宇宙の未来。
【出演】
堀江貴文
【Guest】
松浦晋也(ノンフィクション作家/ロケットまつり)/笹本祐一(SF作家/ロケットまつり)/あさりよしとお(漫画家/ロケットまつり
●六本木で働いていた元社長のアメブロ
http://ameblo.jp/takapon-jp/
松浦晋也のL/D
http://smatsu.air-nifty.com/
笹本祐一 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/笹本祐一

イベントの様子はすでに記事にまとめた人がいる。イベント中の書き取りで粗いけれど、発言の記録としては正確だし雰囲気がよく伝わってくる。というか本当、びっくりですよねえ大塚さん。

ホリエモントークライブ - 大塚実の取材日記
http://blog.goo.ne.jp/pepani/e/b8692aeded2fe0d19312fa192e46706e

あさりさんのマンガ『なつのロケット』は、小学生がロケットを作って人工衛星を打ち上げる物語である。

なつのロケット (Jets comics)

なつのロケット (Jets comics)

ここに出てくるロケットは、実際に作れば宇宙まで飛んでいくことを目指して設計されている。設計したのは「マツドサイエンティスト」野田司令こと、宇宙機エンジニアの野田篤司さん。設計の詳細は以下に公開されている。

「もしかしたら、本当に、こんな超小型ロケットだったら作れるかもしれない」と思わせるほどのリアリティーを持たせようと技術的な裏付け検討を行った。この種の作品の場合、リアリティーがあればあるほど、読者に夢を与えるだろうからね。

マツド・サイエンティスト研究所 研究報告11 なつのロケットは本当に飛ぶか!?

しかしよく考えてみれば、設計したら作ってみたくなるのは当然だったのだ。

一方そのころホリエモンはというと、ロケットを作れる人を探していた。ガイナックス赤井孝美を通じて笹本さんを紹介してもらったという。これはお互い幸せな出会いだった。

笹本「ロケット作りたいけどお金がない、どこかに宇宙好きの大金持ちがいないかなあ……あっ、いた!」

そんなこんなでロケットエンジンの開発が始まった。主な面々は、有人宇宙船「ふじ」構想の立案に関係した人々とのこと。

われらの有人宇宙船―日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」

われらの有人宇宙船―日本独自の宇宙輸送システム「ふじ」

実際には今のところ、大金持ちが必要なほどお金はかかっていなくて、新車を買えるかどうか程度だそうだ。

作りやすそうなところからコツコツと、ということで「なつのロケット」ロケットの2段目エンジンから作り始めている。と書くだけなら簡単だけれど、今回公開された燃焼ガスが噴射する状況に来るまででもう、本当に苦労の連続だったとのこと。

たとえば液体酸素をパイプに入れることができない。入れるそばから沸騰して、ガスが入れ口から吹き出してきて押し返してしまう。液体酸素の入れ口とは別に、ガスの逃がし口を作って解決するまで3か月停滞、といった具合。

あさり「これを体験した後、スペースシャトルがあの巨大な燃料タンク(オレンジのあれ)に燃料をたった3時間で入れられることのすごさを本当に理解できたと思った」

こういう試行錯誤ってまさに、「ロケットまつり」で垣見恒夫さんや林紀幸さんにさんざん聞かせてもらった、「自分たちでやってみて、意外なところで失敗して学んでいく」話そのものではないか。くわー、うらやましい。

垣見さんや林さんの意外な苦労話はこちらで。(宣伝)

一方で、今の技術の恩恵も充分に活用している。カシオのデジカメ「EX-F1」は1秒に最大1200コマ撮影できるので、燃料の噴射の様子をハイスピード撮影してすぐに確認できるという話はよかった。

民間での宇宙開発という話は、特にアメリカではたくさん出ている。

松浦「アマゾンのジェフ・ベゾス、『DOOM』や『Quake』を作ったジョン・カーマックなどなど、IT長者はなぜか宇宙を目指す」

ロケットやロケットエンジンはいまロシアの力が強く、売り手市場のため高騰しているそうだ。ものの開発を民間に委譲してコストが下がる例として、松浦さんはFAXを挙げていた。NTT内でFAXを開発していたころは一台300万円の世界で「誰がわざわざ買うんだ」と言われていたのが、民間に出たらすぐ1万円にまでコストが下がったという。

ほかにもホリエモン拘置所にいたとき、差し入れに「ロケットエンジンの設計図」と書かれたものが届き、ニヤニヤしながら眺めていた話とか、面白い話が満載のイベントだった。

とここで終わればイベントレポートとしてはおさまりがいいけれど、しかしこんなに身近でこんなにエキサイティングなことが行われていて、しかもそれをまったく知らなかったというのは複雑な気分だ。まったくうらやましい。うらやましい!