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まん延するニセiPhone

[画像:Apple iPhone site]みなさんは、「ニセiPhone」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

いやなんでもありません。いや最後まで読んでください。

ともかく、iPodで電話やネット閲覧、PDA的使い方ができるすごい製品「iPhone」がついにアップルから発表された。

本体は11.2mmと驚きの薄さで、全体のサイズはCLIEの最終期モデル「PEG-TH55」をひと回り小さくした感じ。前面には「ホーム」ボタンと大きなタッチパネル液晶しかなく、操作は基本的に、タッチパネルを指でつついたりなぞったりして行う。

このタッチパネルの操作が、とても洗練されていて驚く。たとえば本体上面のボタンでスリープを解除(携帯電話的には「ロック解除」、PDA的には「電源投入」)したときには、画面にスライドスイッチが表示される。これを指でなぞって「オン」側に入れて初めて、タッチパネルが機能するようになる(と同時にスライドスイッチはすっと消える)。こうやって、鞄の中などで予期せず電話をかけたりしてしまう誤動作を防いでいる。

ほかに、ビューワで画像を表示中に指を二本揃えてタッチパネルに置き、Vサインを作るようにぐいっと指を広げれば画像が拡大されるなど、人に見せたくなるスマートな機能がたくさん。

ほかにもセンサがいろいろついていて、面白くかつ地味に便利。

まず、周囲の明るさに応じて明るさ感知センサが働き、液晶の明度を自動調節する。

ほかに、iPhoneを縦に持つと縦画面に、横に持つと横画面に自動的に切り替わる。これは加速度センサの仕事。

もうひとつ、iPhone本体を耳に近づけると近接センサがそれを感じ取り、タッチパネルが消えると同時に一時的に機能しなくなる。

(詳しくは→「Apple - iPhone - High Technology - Sensors」)

iPhoneの中にはMacOS Xが入っているそうで、ちょっとした操作での細かく、かつ嫌みのないエフェクトは確かにOS X的である。

まさに「本当にスマートなスマートフォン」。それがiPhoneなのだった。

これらの多くのことは、単純に機能だけを取り出すと、先行しているスマートフォンであるWILLCOMW-ZERO3WS003SH)などでもできる! できるけど、できるけど…。

スティーブ・ジョブスiPhoneをお披露目するスピーチ「Apple - QuickTime - Macworld 2007 Keynote」(にある「Watch iPhone Intorduction」)をぜひ見てほしい。1時間半ほどあるけれど必見。あと、最後の10分くらいは音楽の演奏で、その間ジョブスは出てきません。

これを見ると、「できます」のレベルがW-ZERO3iPhoneは全然違うとわかるだろう。iPhoneは、単に「できます」ではなく、「楽しい操作で嬉しくできます」になっている。Macintoshという「うれしいパソコン」を作れたアップルならではだと思う。

ウォークマン」がヘッドホンステレオの代名詞となり、「iPod」が携帯用音楽プレーヤーの代名詞になったように、「iPhone」はスマートフォンの代名詞になるかもしれない。

となるとほかのスマートフォンは…(以下冗談)

まん延するニセiPhone

みなさんは、「ニセiPhone」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

これは、見かけはiPhoneのようだけれども、実は、iPhone的とはとても言えないもののことで、「疑似iPhone」や「似非iPhone」などとも呼ばれます。

『そんなものがどこにあるんだ』とお思いの方も、例として、【ピー】や、【ピー】や、【ピー】などの名前を挙げれば、『ああ、そういうもののことか』と納得されるかもしれません。それとも、かえって、『え?』と驚かれるでしょうか。

(中略)

「ニセiPhone」が受け入れられるのは、iPhoneに見えるからです。つまり、ニセiPhoneを信じる人たちは、iPhoneが嫌いなのでも、iPhoneに不審を抱いているのでもない、むしろ、iPhoneを信頼しているからこそ、信じるわけです。

たとえば、スマートフォンがブームになったのは、『携帯電話にPDAを組み込んだスマートフォンは便利である』という説明を多くの人が「スマートフォン的知識」として受け入れたからです。

しかし、仮に、ニセiPhoneのユーザーに、『その【ピー】で、ブラウザで表示した画像を拡大して見られますか』とたずねてみても、単純には答えてくれないはずです。

コンテキストメニューを出して[画像を別名で保存]を選択して、保存場所を選択して[保存]ボタンをクリックする。ビューワーソフトを起動して、ああこれはあらかじめインストールしておくんだけれど、ぶつぶつ……』と、まあ、歯切れの悪い答えしか返ってこないでしょう。

それがスマートフォン的な誠実さだからしょうがないのです。

ところが「iPhone」は断言してくれます。

『画像を表示した状態でタッチパネルを指でダブルクリックすれば、拡大表示されます。』

このように、「iPhone」は実に小気味よく、スマートフォンをスマートに使えます。この使い勝手の良さは、ニセiPhoneには決して期待できないものです。

しかし、パブリックイメージとしてのスマートフォンは、むしろ、こちらなのかもしれません。『スマートフォンとは、様々な機能を、すぐに直感的に使えるもの』、スマートフォンにはそういうイメージが浸透しているのではないでしょうか。

そうだとすると、「iPhone」は初めて登場したスマートフォンに見えるのかもしれません。

(元ネタ:「まん延するニセ科学」)