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立ち読みでもいいから本や雑誌を読んでください

【元記事:立ち読みでもいいから本や雑誌を読んでください:d:id:manpukuya:20061101:tachiyomi

さっき、近所のコンビニエンスストアで漫画を立ち読みしていたら、突然、隣りに立った店員に「お会計していただきます」と声をかけられた。

(中略)

立ち読みをやめてほしいなら、そう言えばいいじゃん。「それ以上お読みいただくなら、ご購入してもらいます」でもいい。なんの警告もなしに、いきなり「買え」はないんじゃないかと。

Something Orange

それはまた、すごい方針のコンビニだ。

上の記事を書いた人は「たしかなのは、ぼくはもうそのコンビニへは行かないだろうということです」とコメント欄で発言している。このコンビニは、潜在的なお客さんを一人失ってしまった。

逆に言えば、こういう方針を採ることで目先のお客さんが一人減っても、入れ替わりに別のお客さんが二人以上増える目算があるということか。しかしそれは一体どういうものなのか。

本を作る側の自分としては、すでに何度も書いているように、本や雑誌はどんどん立ち読みしてほしいと思う。図書館や古本屋はもちろん、ブックオフだってまったくオーケー。その代わり、面白い本を見つけたら、そのことを人に話したりネットに書いたりしてほしい。あと買う前の本は、なるべくていねいに扱ってください。

ただ乗りしかしない人に対しては、「面白いと思ったら次は買ってね」「立ち読みですんじゃう商品でスイマセン」と思う。立ち読みすらされない本や雑誌に比べれば、立ち読みされるだけでも幸せなのだ。

この書き方、本や雑誌を読む習慣を持つ人は「心配しすぎ」と思うかもしれない。しかし、音楽業界がここ数年味わってきた混乱を思い出してほしい。それは出版業界も何年後かに必ず歩くことになる道であり、本の未来を占う貴重なモデルケースである。

音楽業界は、MP3の普及からiTunes Music StoreiTMS)でのネット販売が立ち上がるまで、CDなどにパッケージ化された商品の売り上げを守ることにこだわりすぎた。CCCDなど、過剰だが穴のある著作権保護のしくみは、音楽にお金を払っている人だけが不便になり、ただ乗りの人は引き続きただ乗りできた。おまけに、「CCCDはなにか面倒そうだから買わなくてもいいや」という人も出てきて、売り上げを大きく落としてしまった。

個人レベルでは、音楽は本よりもデータ化しやすい。また音楽の本質は音そのものであって、CDなどのパッケージに入っている必要は実はない。そのぶん、音楽をコンピュータで楽しむスタイルへの移行にストレスが少なかった。

本は基本的に、組み版や手ざわりも含めて成立する商品である。そして流通のしくみは今のところ、紙に印刷して製本した大量の現物を、直接扱う方法にとどまっている。電子ブックとかケータイ小説の市場や電子ペーパーの技術はまだまだこれからだが、いつまでも「まだまだこれから」であるはずがない。本が電子化してゆく将来、レコード会社やJASRACのように、既得権益を守ろうとして醜態をさらすことだけは避けたい。

本は音楽と同じ嗜好品であり、もしなくなっても死ぬわけではない。本に気持ちよくお金を出してもらえる環境作りを怠れば、出版業界の方がゆるやかに死んでいくだろう。

「どんな方法でもいいから本を読んでいてほしい」という書き方は、その危機感の表れのひとつである。そして出版業界は、人に読まれるのにふさわしい本を作り続けていかなければならない。

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【元記事:「Start Mac体験モニター」当たったよ!:d:id:manpukuya:20061101:startmac

これは嬉しい。本当に嬉しい。貸与されるのはiMacかな、MacBookかな。楽しみ楽しみ。

はてなダイアリーではモバイルの偉い人、id:itokoichiさんも当選してますね。あとGPSの偉い人、清水隆夫さんも当たってます。「GPS萌え」と認定された(→d:id:CAX:20061030:gps)者としては、なにか光栄な感じ。

4ヶ月間、この[startmac]カテゴリで頑張ります!